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西村ちなみメールマガジン第207号(2009年3月23日発行)
「海賊対策その1―政府与党案」
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みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。
日本から遠く離れたソマリア沖で、海賊が出没し、海賊行為を繰り返しています。かなり近代的な装備だということは知られていますが、どんな背景をもった海賊なのかは詳らかではありません。マラッカ海峡と並んで世界の水上輸送の要所であり、日本船籍の船のみならず多くの船が往来しており、諸国は海上警備行動を行うようになりました。
日本も海上警備行動を行うべきだという声が生じたのは、海に囲まれた国ですから当然でしょう。もともと海の安全を確保するのは海上保安庁(国土交通省)の役割です。海上での逮捕などノウハウをもっているのも海保です。ですから、海上保安庁が第一義的には海賊の対応にあたるべきところなのですが、どこをどう焦ったのか、政府与党は、ほとんど議論することなく海上自衛隊を派遣することにしました。
先週13日、国会での十分な議論も事前の承認もないまま、海上自衛隊の「さざなみ」と「さみだれ」が400名の自衛官を乗せてソマリア沖に向けて出航しました。このとき、日本領海の取り締まりを行うという趣旨の自衛隊法第82条の解釈を変更しています。文脈は異なるのに遠海での取り締まりも可能であると、脱法的に読み替えているのです。武器使用基準については警察官職務執行法を準用し、正当防衛と緊急避難に限っています。
同じく13日に、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」が提出されました。この法案のおかしなところは、第1に、海上保安庁と海上自衛隊がともに海賊対処をとる形にはなっているのですが、第一義的に対処すべき海上保安庁からの要請もないうちに、防衛大臣が必要と判断すれば海上自衛隊をいつでも派遣することができるという作りになっていることです。第2に、海賊行為の定義は一応あるようですが、海賊の定義がありません。現在のソマリアの国情や海賊の実体がどうなっているのか政府はほとんど把握しておらず、「国または国に準ずる組織」にあたるか否かの判断は難しいのではと思います。第3に、このように重大な問題をいくつも含んでいるにもかかわらず、国会の関与はほとんど無視されており、事後に報告すれば足りるとなっていることです。シビリアンコントロールの根本が抜け落ちています。第4に、どさくさ紛れに恒久法となっていることです。
総じて言えば、この海賊対処法案は極めて出来の悪い法案であり、内閣の力量の無さを表していると思います。「さざなみ」「さみだれ」がソマリア沖に着くころには法案が成立していると見込んだのでしょうが、すんなり通るわけはありません。この件については代替案を党内で検討中ですので、また続報をお届けしたいと思います。