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西村ちなみメールマガジン第205号(2009年3月2日発行)
「ユニバーサルな社会に」
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みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。
先日、頼まれて原稿を書いて思い出したのですが、私が大学に入学した翌年、車椅子を使う人と松葉杖を使う人が入学しました。校舎の入り口にはスロープが取り付けられ、大きなトイレが設置されるなど、必要な工事が春休みの期間中に行なわれたのですが、ちょっと驚きだったのは、そのときまでスロープや大きなトイレを必要とする学生や教職員が大学にはいなかったのか、ということです。もしかしたら大学に来たくても、設備がないために進学を諦めた人もいるのではないか、とも考えました。見えないニーズは、意識して掘り起こさなければ、なかなか可視化されないものです。
私が大学を1年休学してタイで勉強している間に彼ら二人が同じ学年になり、同期卒業し、大学院にも同時に進んで友人として共に学ぶことができました。二人にはいろいろ教えられたり帰り道を車で送ってもらったりしました、本当に感謝しています。
民主党では今、2007年9月に日本政府が署名し、2008年5月に発効した「障害者の権利に関する条約(仮称)」の批准に向けて、国内法の整備のため検討準備を行なっています。私もプロジェクトチームの一員としてヒアリングなどに参加し、当事者団体からのお話を伺っていますが、どうも政府は国内法の整備はともかく批准を急ごうという姿勢のようなのです。国内法の整備が伴わないまま条約が批准されると、さらに国内法の整備が疎かになるのではないかと危惧しているところです。
障害者の権利に関する条約が策定される過程においては、諸外国の障害当事者団体などがかなりの程度においてかかわってきました。Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きで決めないで)」という考え方が深く浸透してきた結果と考えます。条約では、障がい者が福祉の対象ではなく権利主体であるという考え方が確立され、その理念に沿った国内法の整備が多くの方々から待たれていたところでした。
しかし今、外務省の拙速な批准のための動きにより、条約の理念そのものが曖昧なものになりかねない局面にあります。たとえばpersons with disabilities も、persons with impairments も、ともに「障害者」と外務省は仮訳していますが、本来後者は単に「機能障害のある人」と訳さなければならないはずです。またinclusiveは「受け入れられる」ことと仮訳されていますが、条約ではもっと普遍的な意味合いで捉えられているはずなのです。
障がい者政策は、障がい者のためだけの政策ではありません。障がい者が暮らしやすい社会は、すべての人にとって暮らしやすい社会であるはず。ユニバーサルな社会をめざして、これからも国会でがんばって行動していきます。