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西村ちなみメールマガジン第195号(2008年11月10日発行)
「成功体験からの脱却」
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みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。
いつも通勤で通る道の十字路には、カラスがよく出現しています。木の実でも落としたのか十字路に転がる物体を拾おうと、歩道から車の途切れる隙を狙っているカラスを発見したのは先々週でしたが、先週は、電線に止まったところからくわえていた木の実を交差点の真ん中にわざわざ落とし、それをじっと見つめるカラスを発見しました。通る車に踏ませて餌にありつこうと考えたのだと推測します。いつ、どのカラスが、体験して成功し、学習したのか分かりませんが、知恵のあることよと感心しました。車に轢かれるなよ、車を侮るなよ、と思いながら通過します。
成功体験とは、常に私も追いかけたくなるものです。「以前こうやって上手くいったから、次もそうしよう」と、かつての記憶を思い出し、それと同じにやればよい、と考えるのです。それまで一度も経験のないことをやろうとすれば、他で試されたモデルや経験談を聞いて参考にすることはあるでしょう。しかし、最初の一度くらいならともかく、理科の実験とは異なるのですから、環境や状況が常に変わる社会の中で全く同じ条件で同じことが繰り返されることはあり得ません。同じ成果を得るためには、常に挑戦、改革の連続を行なっていかなければならないと思います。
麻生総理が10月30日に追加の経済対策として発表した「生活対策」のうち、特に、給付金の制度設計で政府与党は未だにもめています。経済対策を、給付金という形で行なうと発表された際、何年か前の「地域振興券」を思い出しましたが、まさにその再現にほかならないと思いました。一人あたり1万2千円という金額は与党内でもほぼ合意を得つつあるようですが、それ以外はまだです。仮に所得制限をつけるとすれば、所得の把握などのため膨大な事務量と事務費が発生してきます。バラマキするにも金が要るということです。
確信をもって言えませんが、経済対策と称してお金をばらまく方法は、先進国では他にあまり例がないのではないでしょうか。米国の新しい大統領に選出されたオバマ氏は、中間所得層への減税を公約としていました。おそらく経済対策として減税という手法をとるのだと考えます。しかし我が国の政府与党はここ数年間にわたり定額減税を全廃したりガソリン税などの暫定税率を復活させたりと、増税策をとり続け、そしてサブプライム危機が問題視されて1年以上も経ってから緊急経済対策だと称して給付金のバラマキをやろうとしているのです。なんだかとてもチグハグな感じがします。
政府与党には、地域振興券の配布をとおして、何か会得したものがあるのだと思います。そうでなければ、ここまでバラマキ的政策に固執する理由が分かりません。しかしここまで迷走を続けた政府与党の、給付金が、期待どおりの成果を挙げることができるのかどうか。そもそも実現するのかどうか。かつての成功体験が通じなくなったとき、この国の政治は本当の意味で浮遊してしまうのではと、危機感を持っています。