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西村ちなみメールマガジン第186号(2008年8月25日発行)
「派遣法を読み直す」
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みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。
労働者派遣法の見直しが、臨時国会の焦点となってきそうです。グッドウィルなどの法令違反が生じ、ワーキングプア(働く貧困層)、ネットカフェ難民などが社会問題となったこともあって、政府もさすがに放置できなくなったのでしょう。7月末に厚生労働省の設置した有識者による懇談会が「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」をとりまとめ、労働政策審議会の部会において検討が行われることになりました。先日の政府発表によれば、派遣労働者の労働災害は一般労働者に比べて桁違いに多いとも報告されています。
研究会報告書では、日雇い派遣を原則禁止、登録型派遣は待遇改善、マージンの情報公開義務化、などが盛り込まれています。民主党でも派遣法の見直しについて党内で議論してきましたが、日雇い派遣の禁止やマージン比率の公開義務化などは、研究会報告とほぼ同じ方向を目指したものと考えます。しかし、今後、労使によって構成される審議会の部会での議論がどうなるのか、その行方については見通しが立ちません。
正規労働者が減少するなかで、急速に増え続けてきた非正規労働者。パートや派遣、有期契約など、今や働く人たちの3人に1人は非正規労働者です。かつては補助的に短期間だけ働く人材とされてきたのですが、補助的業務ではなく基幹的な労働力として、また繁忙期などの短期間だけでなく継続的な働き手として、通常業務にも欠かせない存在になってきている現実があります。労働者派遣は、コストカット競争にさらされている企業における使い勝手のよい人手として、労働市場を侵食してきました。経団連はこれを「多様な働き方を確保するものだ」と正当化していますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
本来、多様な働き方は、労働者の選択の幅を広げるものだと思います。しかしこれまで派遣法は、経営側からの求めに応じて、その対象業務が通訳などの専門職から製造業などにまで順次拡大されてきました。働き方の多様性確保のためではなく、企業の利便性のために、派遣法は対象を大きくひろげてきたと言えます。
時間を自由に使いたいから、ということで派遣労働を望む人もいると思います。しかし現実に、正規労働を望みながら、それが叶わないためにやむなく派遣労働している人もいます。正規労働者と非正規労働者では結婚率に差があることは広く知られるようになりました。
一方で、新潟市内の事業主からは、「同業他社でも派遣を入れてやっているので、うちもそうしなければやっていけない」「できれば正従業員として雇ってやりたい」という苦渋の声も聞かれます。
法律は、社会の価値観を映し出す鏡だと思います。日雇い派遣などは、ただ単純に禁止すれば済むという話ではありませんが、かといってこのまま放置できる話でもありません。なぜ派遣労働が増え続けているのか、その本質を見極めながら、働く人の立場に立って考えていくことが大切ではないかと考えています。