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西村ちなみメールマガジン第183号(2008年7月28日発行)
「消費者のための政治」
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みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。
いささか旧い話となりますが、福田総理は「生活者・消費者基点の政治をめざす」と国会で演説しました。こんにゃくゼリーやBSEや中国産冷凍ギョーザ、また公園での遊具事故やエレベーター事故や振り込め詐欺などの多発で、「消費者を守る」発想が急浮上したためでもあります。そして総理は消費者行政を一元化して行うため「消費者庁」を創設すると公約したのです。
私たちは、これまで産業発展の一方で軽視されてきた消費者の権利を保護するため、政治の転換が必要だと感じてきました。10年前の民主党結党趣意書の中にも「生活者・消費者・納税者の立場に立つ」と書いています。そういうことからすると、福田総理の演説は我が意を得たり、と言いたいところなのですが、果たして「消費者庁」の創設が解決になるのでしょうか。
農水省や厚労省や経産省や国交省や金融庁や内閣府など、多くの省庁に消費者関係の法律が29本も分かれて所管されている現状から、権限を引き離して消費者庁に集めてくるのは、実現可能性からも難しいと思います。すでに各関係省庁では、法律の所管を消費者庁に渡さないとしているところも少なくありません。新しい省庁を作ることになるとすれば、37年前の環境庁(当時)以来です。また仮にできたときにも、本当に消費者の権利を守るような強力な権限を持つことになるのかどうか、具体的なことになると見えないのが現状です。
振り込め詐欺などは手を変え品を変え、シニア世代を狙い撃ちにしています。先日、暴力団組織がスイスの銀行に隠していた犯罪被害財産58億円のうち半分の29億円を、被害者に返還する手続きが、被害回復給付金支給法に基づいて始まったばかりですが、日本とスイスの政府間協定締結に時間がかかったという事情もありました。早期に、そして確実に、犯罪収益を返還できるように法整備すべきとする世論は高まるばかりです。
米国ではFTC(連邦取引委員会)が、常に悪徳商法に目を光らせ、立ち入り調査や業務停止や被害者に代わって損害賠償請求も行えるとされています。犯罪収益を、被害者に分配する組織もあります。
消費者庁の創設に水を差すつもりはありません。しかし、本当に必要な時に権限の行使ができるのかできないのか、現状ではとても曖昧で、このままでは、器は作ってみたものの、中身が伴わない恐れも大きいと思います。
民主党の消費者権利擁護官は、政府の外に作り、調査や命令や他機関と連携して損害賠償請求への支援も行いつつ、現存する消費生活センターと国民生活センターを活用し、行政の肥大化を招かないよう配慮しつつ制度設計を進めています。臨時国会では法案を提出することになりますので、しっかり議論し確実に消費者行政の推進に努めたいと考えています。