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西村ちなみメールマガジン第176号(2008年6月2日発行)
「否決された児童扶養手当法改正案」
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みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。
私が筆頭提出者となって前国会から衆議院に提出していた児童扶養手当法の一部改正案は、先々週ようやく「吊るし」が下ろされて厚生労働委員会での審議が始まり、趣旨説明も参考人質疑も含めて3日間の審議が行われたのですが、3日目の最後に採決が
行われ、否決されてしまいました。翌日の本会議でも採決にかけられ、民主党の同僚議員はじめ多くの野党議員からも賛同してもらったのですが、与党の賛成多数で否決されてしまいました「西村智奈美君他2名提出」と呼ばれた法案が否決されてしまうのは、本当に残念なことです。
この法案の条文はとてもシンプルなもので、半減されることになっていた母子家庭への児童扶養手当を、現在は政令で「就労意欲のない人」にのみ半減することとなったのですが、「ほとんどいない」と厚生労働省も説明している対象者を選別するため2億2600万円もの事務費をかけていることは何の意味もなく税金の無駄使いでしかないので、半減させるという条文そのものを削除するというものです。
小泉元総理の三位一体改革以降、社会保障費を毎年2200億円ずつ縮減するという「骨太の方針」によって財政運営が続けられています。こうした社会保障関係費縮減の圧力はもうずいぶん前から厚生労働省にのしかかっているのですが、こうした流れは三位一体改革によって加速したと言ってよいでしょう。厚生労働省は、母子家庭への就労支援を5年間にわたって集中的に行い、その後、児童扶養手当を半減させるという法改正を行いました。しかし5年たってみても母子家庭の就労状況は改善していません。全体的な雇用の流動化、非正規雇用とワーキングプアの増大などによってむしろ置かれている状況は厳しくなっているのです。
昨年夏の参議院選挙で敗退した与党は、秋にいくつか政策の修正を行いました。ひとつは後期高齢者医療制度で、保険料納付の減免措置を行いました。また米の緊急支援対策で下落した米価格の補てんを行いました。そして母子家庭への児童扶養手当については、この4月から半減させる方針を変え、政令によってこれまでどおりの額を維持することとしました。
これらの政策転換は、政府与党が完全に政策転換したものではなく、参議院選挙で負けた後に支持率回復のため一時的な措置としてとられたと理解したほうがよさそうです。政策の変更が、内閣支持率の如何によって行われるのは、いわゆる民意が敏感に汲み取られることでもありますから、ある意味において正しいのですが、その際に官僚や政府与党の責任が一言問われてしかるべきではないでしょうか。
母子家庭が自立の道を探ることが期待されますが、現状では就労訓練や就職活動などがかなり制限されています。経済支援と就労活動がセットで行われなければ、就労支援のみ行っても何の成果も生み出さないという有識者からの意見がありました。すでに多くの母子家庭の母は働いている、しかも頑張っても頑張っても平均世帯の4割しか所得がないという低賃金であるという点では、日本の母子家庭は欧米のそれは大きく異なります。だから日本なりの母子家庭支援策が必要なはずなのです。
今後ともこの課題、しっかり取り組んでいきます。