************************************** 西村ちなみメールマガジン第108号(2006年12月4日発行) 「少年法改正案」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。 新潟市内に雪が降りました。白いベールが覆いかぶさったようでため息が出るほど綺麗です。タクシーの運転手さんが「雪が降ると引き締まって活気が出る」とおっしゃっていたのを聞いて、そういう見方もあるのかと感心しました。降雪で年の瀬が近づいてきたことを知り慌てて、忘年会が増えるのだそうです。なるほど。 さて今日は少年法改正案について書いてみたいと思います。昨年の通常国会で提出された改正案は衆議院の解散と同時に廃案になりましたが、今年の通常国会に再提出され、この臨時国会で審議入りとなりました。現行法では14歳以上に限られている少年院送致の下限年齢を撤廃すること、保護観察中の少年が順守事項を守らない場合は少年院に送ることを可能にすること、刑事責任を問えない14歳未満で違法行為をした「触法少年」の事件に対して警察の調査権限を明確化し押収・捜索などもできるようにすること、などとなっています。 刑事対象とする年齢は2000年の改正で16歳から14歳に引き下げられました。それにもかかわらず、「少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加し、強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している上、いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生するなど、少年非行は深刻な状況」にあるということが、今回の法改正の背景だということです(カギカッコ内は法務大臣の法案提出理由趣旨説明文より抜粋)。 政策は科学的事実に基づいて立案しなければなりません。根拠のない政策は民衆にとって利益ではなくむしろ害悪を及ぼす危険すらあります。そういう目で、上記の趣旨説明を読むとき、一読すると正しいように思える文章でも実のところは多くの疑問点が浮かび上がってきます。 たとえば、本当に少年非行は増加しているのでしょうか?趣旨説明では「少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加」しているとあります。しかし少年非行の発生件数そのものが増加しているとは書いてありません。警察当局が、少年非行を認知し事件として扱って初めて捜査が行われ検挙されます。警察当局が、かつては事件として立件しなかった比較的軽い犯罪を、検挙するようになった結果として、言われているような状況になっているとも考えられます。 また「強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移」しているのは、何もこの数年に限ったことではなく、比較する年数を長くとれば戦後にみられる長期的な傾向であることが分かります。少年犯罪の凶悪化を世代論と結びつけるには、もっと綿密な論証が必要です。またこのところ強盗などの少年犯罪は、単独でなくグループで行われることが多いそうです。仮に一昔前の強盗などが単独で行われていたとすれば、発生件数そのものが減少してなければ検挙人員が高水準であるというのは計算が合わないのではないでしょうか。 そもそも少年非行の凶悪化が言われるようになったのは、厳罰主義で臨むべきだという世論や、教育の場で愛国心や公共の精神を教えるべきだという世論を誘導するためではないかという指摘がなされています。犯罪被害に遭われた方やご家族のお気持ちに立てば、真実を明らかにすることがまずは第一と思います。今回の少年法改正では、そういった視点からすると評価すべき点もあるのですが、あまりにも多くのことが混ぜこぜになっているのです。 一度罪を犯した少年が本当の意味で更生するには、多くの手助けを必要とします。罪を犯した少年たちが福祉的、教育的に育てなおしの機会を得るための法律であってほしい。民主党としての修正案を検討していきたいと思います。