************************************** 西村ちなみメールマガジン第99号(2006年10月2日発行) 「所信表明演説」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。 「人生二毛作」「筋肉質の政府」「イノベーション25」「再チャレンジ支援促進のため、民間や自治体に対する総理表彰制度の創設」。さすがに本会議場からは与野党席を問わず失笑が漏れました。先月26日、安倍新総理の所信表明演説です。 「美しい国」と何度も繰り返されましたが、肝心の具体像についてはほとんど語られていません。多くは抽象論・精神論ばかり、官僚のよくできた作文と、スピーチライターの滑りすぎた筆とが目立つ、生煮えの演説原稿でした。民主党の小沢代表の言葉を待つまでもなく、政治とは生活そのもの。その生活をどうするのか、どうやって一人一人の人権を守り、多様な価値観の存在する社会の仕組みづくりをしていくのか、安倍総理の考えを聞くことはできませんでした。 例えば消費税です。今年の税収などを見る必要があるため消費税を含めて税制の総合的な改正を検討するのは来年の秋以降(すなわち来夏の参院選後)になると総理は述べるのですが、いくら経済が2.2%以上の成長率を記録したところで、人口減少でもあることですし、税収が急激に増加することは見込めるわけがありません。それとも定率減税の全廃、年金控除の縮小、老齢者控除などの廃止によって、かなり税収が増えると見込んでいるのでしょうか、だとしたら大増税だったことを政府自らが認めることになります。 このところ多くの自治体で、役所の窓口が大変混雑しているそうです。十分な説明もなく突然の著しい増税で驚いた人たちが、問い合わせに殺到しているのです。医療・年金・介護の保険料や自己負担も引き上げられ、障がい者やリハビリ患者がサービスの給付をあきらめて取りやめたという話も、身近に聞こえます。 安倍総理は、自らの美意識にとらわれ、そういう生活者の実態には目をつむっているのではないか、と私は感じました。多様な人が存在するという実社会に対応した政策よりも、自分の美意識のための政治をおそらく安倍総理は優先するでしょう。しかし残念ながら安倍総理の美意識では、多くの人たちの賛同を得られないだろうとも思います。なぜなら、「美しい国」そのものが、極めて抽象的であるのみならず、単一の価値観によって成り立っており、多様な価値観を尊重しあうものとはなっていないからです。 多元的な価値に基礎をおき寛容さをもつヨーロッパの政治では、地域コミュニティの重要性がことさらに見直されており、競争一辺倒のアメリカで家族・地域などが崩壊しているのとは対照的だと思います。日本が学ぶべきはどちらの政治スタイルか。顔のかたちや髪・目の色は異なっても、ヨーロッパには文明を作り出してきた歴史があります。長久の歴史をもつ日本が何もアメリカの真似をする必要など、どこにもないと思うのですが、皆さんいかがお考えでしょうか。