************************************** 西村ちなみメールマガジン第82号(2006年6月5日発行) 「国家百年の大計」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。 終盤国会はいよいよ法案の「促成栽培」の様相を呈してきました。小泉総理が通常国会は延長しないと発言しているため、残り2週間の会期内で提出法案すべてを無理矢理にでも成立させたいとする与党の姿勢が強化したためです。いちばん法案が詰まっているのが厚生労働委員会で、重要法案が男女雇用機会均等法の改正も含めてまだ何本も残っていますが、ねんきん事業機構法案の審議前に社会保険庁の各地方事務所における国民年金保険料の免除申請不正手続き問題が明らかになり、この集中審議を行うため、さらに委員会日程はタイトになりました。法務委員会では共謀罪の法案をめぐって二転三転、小泉総理がサミットに出かける前にお土産を持たせなければと考えているのか、与党は、会期内での成立に躍起になっています。国際テロ防止条約の批准については、民主党も賛成しました。しかし政府提出法案は与党の修正を待ったとしても国内犯罪にまで対象を広げることになり、大きな問題があります。国際条約の批准は確かに大切なことですが、国際条約の批准という目的のみを追求した結果、国内に暮らす人々の人権が逆に脅かされるようでは本末転倒と言わなければなりません。また日本には、国際社会から度々指摘されている課題にまだ対応できていないもの(たとえば高等教育の無償化や人身売買の問題など)があります。ここまで来たら振り出しに戻って出し直すしかありません。 こんななか、教育基本法に関する特別委員会でも、審議が着々と行われています。私も委員の一人として審議に参加していますが、今もって「なぜ教育基本法の改正が必要なのか」という説得力のある改正の根拠、言い換えれば立法事実をこれまで委員会の中で聞いたことがありません。確かに教育にいろんな課題があることは承知しています。しかし教育基本法を改正することで何が改善されるのか、どういう科学的根拠に基づいて法改正をしようとしているのか、具体策が全く見えないのです。 一連の教育改革論議は、故小渕恵三元総理大臣が平成12年3月27日に設置した「教育改革国民会議」における議論からスタートしました。まもなく小渕総理が逝去されると、その後は森喜郎前総理に引き継がれます。この会議の開会挨拶で、故小渕氏は一言も教育基本法について触れてはいませんが、森氏は総理に就任して直後の4月5日に開催された会議で教育基本法の改正について言及しています。同年12月22日に「教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−」がまとめられ、座長から報告を受け取る森前総理と同席していた町村元文部大臣は、基本法の見直しについて中央教育審議会等で議論を行いしっかりと取り組んでいきたいと発言しています。今、教育基本法に関する特別委員会の中で、森氏は委員に、町村氏は自民党の筆頭理事となっています。 教育は、国家百年の大計と言われるとおり国の根幹に関わることであり、皆で考えなければならないテーマです。仮に国会でどんなに良い改正を行ったとしても国民に定着し国民によって活かされなければ何の意味もありません。何よりも必要なのは、教育基本法を自らのものとしてとらえること、そのために教育のあり方について国民的な議論を呼び起こすこと、そのうえで変えるか変えないか、変えるとすればどのように変えるか、という判断をすることではないでしょうか。そのためにはもっと慎重でもっと幅広くもっと自由な議論が必要です。拙速な議論は避けなければなりません。 微力ですが、しっかり踏ん張っていきたいと思う今日この頃です。