************************************** 西村ちなみメールマガジン第72号(2006年3月27日発行) 「夢のある立法」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。 先週はPSE問題で混乱がありました。電気用品安全法(PSE法)は平成11年に、電気用品の製造、輸入、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自発的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的として制定されました。PSEマーク等が付されているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならないこととなっており、5年の経過措置期間が今年の3月31日で終了するテレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子楽器、音響機器、ゲーム機器等が4月以降に販売できなくなるというものです。 経済産業省が広範な周知活動を今年2月中旬過ぎにようやく行うと、中古品が販売できなくなると業者などから反対の声が上がり、リサイクルや音楽文化などについての議論も巻き起こしながら大問題となりました。民主党は3月に入ってから経過措置期間をもう1年延長してその間に適切な対策を考えるという法案を検討してきましたが、3月31日までの日程では間に合わないということで頭を抱えていたところ、経済産業省が突如「検査を行ってPSEマークをつけて販売していただく」従来方針に変わりはないが、法的規制を受けない「レンタル」方式を活用して営業を継続できるとしたのです。何とも奇妙な論理でした。 ところで私は先月、予算委員会第一分科会で、無認可共済事業を規制するための保険業法改正について質問しました。改正保険業法は昨年成立しています。当時、無認可共済事業で被害にあう消費者が続出したことから、悪質な事業者を「発見」する必要が生じ、金融庁が少額短期事業者を届け出制とし、違反した場合は罰則が科せられるという仕組みに変えたのです。決算報告などのため規模によって数百万円の事務手続き費と課税負担が生じることになる、大変な法改正でした。 さて知的障害者の方々が入院するとき、付き添いの人が必要になることが多いのですが、その差額ベッド代や見舞金などを助け合うため親御さんが中心になって自治の原理で運営してきた共済事業が、全国各地に存在しています。こうした共済事業が各地で誕生した背景には、知的障害者の皆さんが医療保険に告知事項などで加入できないことなどがあると思います。保険業法の改正によって、新たにそうした共済事業も規制の対象になることになり ましたが、知的障害者の親御さんの共済事業者のいくつかにはヒアリングも周知も行われてはきませんでした。4月1日という届け出の時期が目前に迫った今年2月、規制の対象から外すことを求める署名活動が真冬の新潟市内で行われたのは記憶に新しいところです。 立法府として、こうした問題点に審議の過程で気付かなかったということについては、ただただ恥ずかしい気持ちでいっぱいです。同時に、文化や障害者の地位など本来私たちが目指すべき方向性と異なる法改正が行われてきたことに、驚きを隠すことができません。経済産業省は「国民に安全な電気用品を使ってもらいリユースを促すため」と言い、金融庁は「消費者保護と適正業者の信頼確立のため」と言います。しかし実際に行われようとしていることは「物を大切に使うこと」や「たすけあいの文化」を壊すことにつながりかねず、代わって国の仕事を増やそうとしているだけにしか見えません。最大の問題は、規制をかけようとするときに最終消費者(エンドユーザー)の視点が全く反映されていないことです。 夢のある立法を行いたい気持ちで国会にいますが、現実は、霞ヶ関から出される夢のない法律案の審議に時間をとられることが少なくありません。安全安心は規制の上でのみ成り立つものではなく、一人一人が社会を支える力の総体として生まれてくるのではないでしょうか。霞ヶ関の体質改善をこれからも求めていきます。