************************************** 西村ちなみメールマガジン第64号(2006年1月30日発行) 「政府の大きさ」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村ちなみです。 「西村さんて大きいんですね」。初めてお会いする方からときどき掛けられる言葉です。そんな時、私は「新潟産のコシヒカリで大きくなりました」などと答えますが、さて私と会ったことのない方々は、上記のような会話から、私がどのような体躯だと想像されるでしょうか?また逆に「小さい」人とは、どんな体躯だと想像されるでしょうか? 「大きい」と「小さい」。考えてみれば何とも曖昧な言葉です。たとえばある人が「大きい」というとき、身長が高いのか、体重が大きいのか、明確ではありません。また、生活習慣病の恐れがあるほど「大き」ければ問題でしょうが、その人にとって健康的な生活を送ることができる「大きさ」であれば何も問題はないはずです。「大きい」といっても部分的に小さいところもあるかもしれませんし、また誰と比較して大きいのかも明確ではありません。 小泉総理はこれまで「小さな政府」について問われ、「政府の規模を大胆に縮減する」と述べてきました。昨年暮れに閣議決定された「行政改革の重要方針」では、「小さくて効率的な政府」をめざすと明記されています。 この政府の「大きさ」が今、問題となっています。「小さな政府」とは何でしょうか?また何のために「小さな政府」を実現する必要があるのでしょうか?以下、「小さな政府」にかかる5つの問題点を述べたいと思います。 第一に、何をもって政府の大小を測るのかが明確でない、という点です。歳出規模や公務員の人員数や人件費の総額などという量的基準なのか、あるいは官庁が抱える既得権益の大きさという質的基準なのかが、明確ではありません。質的基準について議論されたことは今までありませんので、量的基準をもって測るものと考えます。しかしその量的基準についても測り方がまちまちで、同じ土俵で議論しにくくなっています。 第二に、小さな政府を実現することによってどういう国のかたちを目指すのかが明らかではないという点です。確かに特別会計や特殊法人など多くの問題があることは民主党としても指摘してきたところであり、いびつな形の政府であることは間違いありません。しかし先日も内閣府や各省庁より小泉行革に関するヒアリングを受けましたが、「どういう国家の将来像を描いているのか」と尋ねても明確な答えは返ってこないのです。こうしたら減らせるという技術論だけに終始しているように思われます。 第三に、日本の政府は必ずしも大きいとはいえないという点です。仮に名目GDPに占める一般政府総支出比率を見ると、OECD諸国全体の平均値は約41%、日本は37.3%であり、相対的に小さくなっています。また仮に公務員数で見ると、人口1000人当たりの行政職員と防衛を加えた公務員数は、アメリカ、イギリス、フランスなどに比べて日本は半数以下と著しく小さくなっています。これを、痩せている人にもっとダイエットしろと言っているようなものだと言った人がいます。 第四に、政府が果たすべき役割は何かというきちんとした現状認識が欠けているという点です。地方分権と一体化した議論をとおして、政府の役割をまず明確にすることが必要なのではないでしょうか。 第五に、安全・安心を損なう恐れなしとしないという点です。規制緩和と組み合わせた政策によって、例えば大型店舗出店規制の緩和・撤廃にともなって旧市街地が空洞化し、高齢者などが暮らしにくい地域社会があちこちで出現しました。また耐震強度偽装問題や証券市場問題は、規制緩和が行われはしたものの、結果として安全や安心が二の次にされたために生じたとも言えます。 小泉総理が何を目指しているのか、私には未だに分かりません。識者によっては、小さな政府を実現して得をするのはアメリカの企業だという意見や、総理の政治的地位を保全するために郵政民営化の次のターゲットとして行政改革を打ち上げたなどの意見があります。「政府の規模を大胆に縮減する」というのであれば、総理はもっと丁寧に細かく、その中身について、そして生活の安全安心をいかに守るかについて、説明すべきだと私は考えます。