************************************** 西村ちなみメールマガジン第38号(2005年7月25日発行) 「少子化 パート2」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 一人の女性が出産する子どもの数を合計特殊出生率と呼びます。私は丙午の年(1966年・昭和41年)生まれの学年と同級ですが、この年は合計特殊出生率が1.58と例年から見ればきわめて低い年でした。1990年(平成2年)にはこの合計特殊出生率が丙午の年を下回ったことから「1.57ショック」と報じられ、少子化問題が表面化したのです。 それ以降の、日本におけるいわゆる少子化対策は、時系列的に3つの時期に区分することができます。 まず第一に1.57ショックから少子化対策への推進体制の整備をうたった有識者会議の提言までの少子化対策の形成期。1.57ショックへの対応として、平成2年には、厚生行政、労働行政、教育行政、住宅行政等を含めた総合的な施策の検討を行うため、14省庁からなる連絡会議が設置されました。平成3年には育児休業法が成立し、翌年から施行されましたが、この法律制定の背景には、少子化問題が存在したといわれています。その後、平成6年12月に「エンゼルプラン」が策定されました。この中では、子育てと仕事の両立支援の推進、家庭における子育て支援、住宅及び生活環境の整備、ゆとりある教育の実現と健全育成の推進、子育てコストの軽減という5項目が掲げられています。それに沿って平成7年に育児休業法が改正(すべての事業所への全面適用、休業中の所得保障・被用者への社会保険料の免除)、地域子育て支援センター事業がスタートするなどしました。さらに平成10年版の厚生白書では、「出生率の回復を目指す取組みとは(中略)子どもを産み育てることに夢を持てる社会をつくる取組み」であると述べており、また、平成10年に設置された「少子化への対応を考える有識者会議」は、①働き方、②家庭・地域・教育のあり方、③推進体制、の3つの領域について言及しています。推進体制の整備をうたったのはこの有識者会議が初めてでした。 第二に、新エンゼルプランの策定とその展開が見られた、少子化対策の確立期です。平成11年12月には「少子化対策推進基本方針」が閣議決定されました。それに基づく重点施策の具体的実施計画として策定されたのが、「新エンゼルプラン(平成12年度から16年度)」です。旧「エンゼルプラン」と比較して、不妊専門相談センターの整備、一時保育の推進、ファミリー・サポート・センターの整備などが新たに加わりました。また平成12年に児童手当法の改正(支給対象年齢を義務教育就学前に拡大)、平成13年には育児・介護休業法の改正(事業者に義務づけ)など、法改正も行われています。 第三に、新たな少子化対策の展開期です。平成14年には厚生労働大臣の有識者会議「少子化社会を考える懇談会」が、単に子育て負担の軽減を図るというアプローチだけでは限界があり、「望ましい社会像」を提示してそうした社会を目指して対策を講じていくというアプローチが必要であると提言しています。その流れで厚生労働省から公表された「少子化対策プラスワン」は、従来の、仕事と家庭の両立支援に加えて、①男性を含めた働き方の見直し②地域における子育て支援③社会保障における次世代支援④子どもの社会性の向上や自立の促進、という4つの柱を新たに加えました。その後平成15年には少子化社会対策基本法と次世代育成支援対策推進法が成立。それまでは、国が少子化対策を主導し、地方自治体や企業に働きかけるという方法でしたが、平成15年の法施行後は、地方自治体や企業自体に少子化対策を実施することを義務づけています。また平成16年6月には「少子化社会対策大綱」が閣議決定され、少子化の急速な進行に対する危機感が社会で十分に共有されていない」という認識に立ち、4つの重点課題が掲げられました。すなわち、①若者の自立とたくましい子どもの育ち②仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し③生命の大切さ、家庭の役割等についての理解④子育ての新たな支え合いと連帯、です。 こうした経過を辿ってきた、わが国の少子化対策ですが、効果が上がっているとは言えません。過去40年というもの、合計特殊出生率は下がり続けています。晩婚化・非婚化の傾向が直接少子化につながっていること、若者の雇用不安・所得不安・将来不安が少子化を後押ししていること、出産・子育て期に多くの女性が継続就労を断念している状況は昔も今も基本的には変わっていないこと、育児への負担感が増大していることなど、多くの要因が複雑にからみあっている結果でしょう。複合的な要因によってもたらされた少子化問題に、単一の解はありません。来週からは、具体的なテーマ毎に、考えることにします。