************************************** 西村ちなみメールマガジン第36号(2005年7月11日発行) 「いっせいの、せ」 ※無断転用、無断転載は固くお断りします※ ************************************** みなさんこんにちは。衆議院議員の西村智奈美です。 先週、日本青年会議所北陸信越地区協議会主催のシンポジウムに出席してまいりました。それぞれの県を代表する国会議員が集まり、一新塾の森嶋氏が基調講演につづいてコーディネイターをつとめてくださり、「地域主権」「地域力」「道州制」などをキーワードに議論を行ってきました。 道州制については、日本での実現を提言される方が何人かおり、議論が各地で進んでいます。初期はアメリカ型やヨーロッパ型の強い道州制を作るべきという考えが主流で、立法権などを有する、いわゆる「連邦型」を目指すべきだという主張が強くありました。市町村合併が進み、全国で3000から1800まで自治体の数が減った今、市町村合併の次は都道府県合併だという声はどことなくリアルに聞こえます。先月、地方制度調査会の専門小委員会で検討材料として提出された道州の区域案5案が新聞紙面に掲載されました。突然のことで驚かれた方も多いのではと思います。 区域案を眺めながら、やはり私は違和感を覚えずにはいられませんでした。こうして全国をハサミで切るようにきっちりと切り分ける道州制とは何なのだろうか、この区域割を行って一体何が得られるというのだろうか。疑問はふくらむばかりです。 現在、日本の自治体は、市町村合併とは無関係に「広域行政」や「広域連携」の仕組みがとられてきています。介護保険のときには単独で保険者になることは困難との判断から、広域連携によって複数の自治体が横につながるという取り組みが、新潟県内の各地でも見られました。環境保全などは行政区画を乗り越えて対策をとらなければなりません。政策的課題や特定の問題解決の手法として、関係する自治体が、ネットワークをつくる。そういう柔軟性が自治体にはあります。またそもそも、自治体とは一口で言っても、その規模はさまざまです。東京都は人口1200万人を超えましたが、その東京都の中にも、人口数百しかない村もあります。自治体は、その存在自体が多様であり、またサイズに応じた多様な行政を行ってきました。 今、青森・岩手・秋田の3県が検討に入っている「北東北3県合体構想」が注目されています。首都圏連合などを唱える知事もいますし、北海道などは特区制度を生かす考えをもっているようです。そこには、国の指導もなければ、アメもムチもありません。自治体の主体的な考えがあるだけです。 私は道州制そのものには反対ではありません。しかし、市町村合併のように、合併特例債というアメと、小規模自治体への交付税カットというムチを、使って合併を強制することには賛成できないのです。「いっせいの、せ」で道州制への移行など、できるわけがありませんし、また政府の都合で強制することはやってはいけないと思います。「地域の自立を促し、多様な地方自治を実現するため」に合併を推進してきた以上、政府は、各地で行われている地域主権に向けた取り組みを、ケースに応じて支援する必要があります。 「三位一体改革」で省益争いに終始した今の政治に、果たしてそれができるでしょうか。与党も真剣に取り組んでこなかった様子を見ていて、できないと、私は断言します。真に生活者の声が届く地域運営のためには、主権国家ではなく、地域の住民にこそ基盤をおいたヨーロッパ地方自治憲章や世界地方自治憲章草案の精神を生かしていくことが必要であり、そのことをこれからも訴えていきたいと思います。