●西村(智)委員
立憲民主党の西村智奈美です。
新潟県から日本海に流れ注いでおります阿賀野川は、栃木県、福島県を源流として、水量が大変豊富な川です。その流域は、春は新緑、秋は紅葉、そして冬は雪景色と、四季折々の景色が本当に美しいところなんです。
その阿賀野川流域で、昭和電工鹿瀬工場は、アセトアルデヒドを一九三六年から生産を開始していたと言われておりますけれども、一九五九年頃から生産量を急激に増加させており、製造工程内で副生されたメチル水銀は、処理されないまま阿賀野川に垂れ流しとなっていました。新潟水俣病の公式確認は一九六五年、同じくアセトアルデヒド生産のために副生したメチル水銀をチッソが水俣湾に垂れ流しにしてきて発生した水俣病の公式確認から九年後ということであります。
当時のことを思い、それからの時間の流れ、またその中で苦しんできた被害者の皆さんのことを思いますと、私も憤りでいっぱいですし、胸の中が、何とも言えない、本当にここで何とかしなければいけないという思いでいっぱいであります。
そんな中で、今年、水俣市で開催された関係者団体の皆さんとの意見交換会で、あろうことか、環境省が三分でマイクを切るという暴挙に出ました。あってはならないことでありまして、これは、環境省が水俣病と向き合う根本的なその姿勢が問われた、そういった事件だったというふうに私は思っております。
それで、私は、まずこの件から伺いたい。
実は、マイクを切られたのは、二回だったのではなくて三回だったのではないかということです。環境省は、マイクを切ったのは、団体三番目の水俣病被害市民の会と、それから五番目の水俣病患者連合の二回であったというふうにおっしゃっておりますけれども、本当は、水俣病不知火患者会の岩崎さんを含めて三回だったのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
●伊藤環境大臣
五月一日の水俣病関係団体との懇談会において、御発言の途中でマイクの音量を切るという不適切な運営が行われたことについては、大変遺憾であり、大変申し訳ない思いでございます。
八団体との意見交換を行う中で、そのうちお二人について、司会からお話をまとめてくださいと声がけをした後、話される間にマイクオフをしてしまったことを事務方から報告を受けております。
今回の反省の上に立って、今後、環境省として被害者の皆さんに寄り添って対話をするように取り組んでまいります。
●西村(智)委員
大臣、私は事前に大臣のところに当日の動画をお送りして、見ていただきました。同じ動画は、私たち立憲民主党が国対ヒアリングという場でみんなで見たんです。テレビにつなぎまして、マスコミの皆さんも入っておられて、そして、議員があのとき十人ぐらいはいたと思いますけれども、みんなで見たときに、やはり途中で切られているねと思ったんですよ。
大臣も、私は事前にお送りして、見ていただきました。実は、岩崎さんは、この件についてはもういい、聞かなくてもというふうにおっしゃっておられましたけれども、それでは私の気持ちが済まないので、あえて聞かせていただいているんですけれども、大臣は、音がやはり途中で切られているねというふうにお思いにはなりませんでしたか。
●伊藤国務大臣
担当していた職員に何度も確認しましたが、マイクを切ったのは二回というのが環境省が調べた結果でございます。
動画は、お送りいただく前にも私も拝見しておりますけれども、何度も見ましたけれども、岩崎会長の御発言の際に職員がマイクを切ったという確証は私は得られませんでした。何かマイクを動かしていらっしゃいましたよね、岩崎さんの声が大きいということもありますけれども。私が報告を受けているのは二人でございます。
いずれにいたしましても、懇談の際に、お話の途中でマイクオフをしたことについては、大変不適切で、申し訳ないことと考えております。
●西村(智)委員
そういうことを答弁されているから、やはり環境省が本当に水俣病と向き合っていないというふうに思われるんじゃないですか。
繰り返し言います。みんなで見ました。みんなで見たときに、やはり途中で音が切れていました。岩崎さんは確かにお声が大きいので。途中で、もうそろそろまとめてくださいと声をかけられているんですよ、司会の方から。だけれども、ちょっと待ってくれという形で、こうやって左手を動かして、その後、しゃべり続けるんですけれども、そのときに、もうマイクが、実は音がなくなっていたんです。音がなくなっていたので、岩崎さんは諦めて、マイクを置いて、そしてしゃべられたんですよ。
大臣、本当にこれはマイクが切られている、音がなくなっているというふうにはお思いになりませんでしたか。ちゃんとイヤホンをつけて聞いていただきましたか。マイクを切った、その操作していた方が二回だと言うのかもしれませんけれども、大臣としては、やはり音が絞られているね、切られているね、こういうふうにはお思いになりませんでしたか。是非それを認めていただきたいんですけれども。
●伊藤国務大臣
何度も拝見しましたけれども、マイクが切られたかどうかというのは、イヤホンというよりは、スピーカーで大きく流しましたけれども、私としては確証が得られませんでした。
●西村(智)委員
スピーカーでは分かりにくいんですよ。私もスピーカーで聞きましたけれども、それだと分かりませんでした。ですから、あえてイヤホンをつけて聞いてくださいというふうにお願いをしているにもかかわらず、それをやっていなかったということですか。本当にこれは真相を明らかにしようということすらも環境省は姿勢として持っていない、こんなことだから、こんな事件がやはり起きちゃうんですよ。徹底的に私は改めてもらいたいというふうに思います。
これ以上やっても先に進まないと思いますので、大臣、もう一回イヤホンをつけて聞いてください、本当に。確認していただきたい、後で教えてください。
それで、こういった形で、三分ずつの会というのは、やはりやり方として形骸化しているというように言われても仕方がないというふうに思うんです。これは在り方を見直すべきだというふうに思いますけれども、今、環境省ではどういうふうに取り組んでいるんでしょうか。
●伊藤国務大臣
毎年五月一日、水俣病慰霊式に環境大臣が水俣を訪問する際に、水俣病関係団体の懇談を行っております。これは、関係団体の皆様や患者、被害者の皆様の御意見、御要望を伺うための貴重な機会だというふうに考えてございます。
今回の一件は、この懇談会に臨む国の姿勢が問われる事態であります。発言される方に敬意を持ちつつ、その発言に真摯に耳を傾けるという意識が不足し、スケジュール進行を優先させたことは、厳しく反省しなければならないと考えております。
水俣での再懇談は、十分な時間を確保し、じっくり皆様からお話を伺い、充実した意見交換ができるように調整してまいりたいと考えております。
●西村(智)委員
書いてあるものを読んでいただくだけでは気持ちが全くこもっていないですね。
委員長、ちょっとお願いします。
マイク切りは三回だったんだと私は思っています。大臣は、今、答弁の中で、スピーカーからは分かりにくかったというふうにおっしゃいました。私も、確かにスピーカーから聞くと分からないんです。でも、イヤホンをつけて聞いてくださいというふうに私はお願いしました。是非この件は理事会で御協議いただいて、委員会に御回答いただけないでしょうか。
●務台委員長
ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。
●西村(智)委員
それで、タスクフォースというのが設置をされたということなんですけれども、大臣もこのことについて度々その目的を聞かれて、いろいろなことをおっしゃっているんですよね。一つには、水俣で私自身が伺った御意見、御要望を踏まえて、環境省全体でこの水俣の問題に取り組んでいく趣旨で立ち上げましたというふうにおっしゃっていたり、あるいは、問題の解決に向けて、有意義な懇談になるように設置しているというふうにおっしゃっていたり、あと、環境省の答弁ですけれども、体制の強化を行い、職員の頻繁な現地出張や懇談内容の充実に取り組むというふうに言っておられるんです。
これは、やはり何回聞いても、目的が何なのか、よく分からないんですね、タスクフォースの目的というのが。しかも、タスクフォースというのは、よくビジネス界などで使われる用語ではありますけれども、何かというと、組織の中での緊急的な課題に対応するために一時的、臨時的に構成する組織だ、組織の中に。一時的、臨時的に構成されるチームがタスクフォースだというのが一般的な捉えられ方なんですよ。
何かが達成されたら、タスクフォースは解散するということなんでしょうか。何が達成されたら、タスクフォースは解散するんでしょうか。
●伊藤国務大臣
五月一日の水俣病関係団体との懇談において、発言の途中でマイクの音量を切るという不適切な運営が行われました。このため、私自身が水俣へ出向き、謝罪するとともに、御意見、御要望を伺いました。この中で、改めて懇談の場をつくってほしいという御要望をいただき、そうした場を設けることにいたしました。
水俣病タスクフォースは、省内横断的に強化した体制の下、五月一日の懇談及び八日の面会で伺った御意見、御要望について誠実かつ真摯に検討しつつ、改めて懇談の場を開催し、損なわれた関係団体の皆様や現地との関係性の修復に取り組むことを目的としております。
●西村(智)委員
答えていませんが、何が達成できたら、タスクフォースを解散するんですか。タスクフォースは、一時的、臨時的な組織という位置づけになっています、そういう意味合いになっています。何ができたら、解散するんですか。
●伊藤国務大臣
信頼関係を回復できる懇談会を設置することがタスクでございます。
●西村(智)委員
ということは、懇談会を開催したら、タスクフォースは解散するということですね。
これは大変なミスリードだと思いますよ。被害者、団体の皆さん、原告の皆さんもそうですけれども、このタスクフォースがつくられたということは、本来であれば、今、環境省が動くべきことは、懇談会をきちんとやり遂げるということだけではなくて、その先にある本当の解決、救済、これをやるということを皆さんは求めておられるんですよ。それを何かタスクフォースは懇談会ができましたから終わりですということになると、これはやはり駄目ですね。
大臣、今まさに大臣のリーダーシップが問われているときだというふうに私は思っています。大臣もこれまでいろいろ答弁されて、今日、議事録の抜粋を持ってまいりましたけれども、我が党の川田龍平議員や渡辺創委員の質問に対して、最終解決を目指して全力で進めていきたい、最終解決に向けて全力で今回の懇談もします、全面解決に向けてなるたけ早い時間にそれを実行していくために、私も全力を挙げてまいりたいというふうにおっしゃっているんですよ。この言葉に本当に当事者の皆さんは、私も含めてですけれども、期待しているんです。
総理のリーダーシップも、それは当然必要ですよ。私は、環境省五十年史というのを今回取り寄せて読んでみたんですけれども、これまで水俣病の節目節目は、総理それから環境長官あるいは環境大臣、このリーダーシップで動いてきているんですよ。大臣が今やるべきことは、タスクフォースをつくって懇談会をうまくやり切るというだけではありません。そのために恒久的な何か取組をやるということ、そして全面解決をしていくんだということ、そのことを省内、後ろの人はいいです、やめてください、環境省に対して、大臣自身が、恒久的な取組をすることを明確に指示していただく、それが必要だと思うんですけれども、大臣、やる気はありますか。
●伊藤国務大臣
まず、タスクフォースの目的ですけれども、一回の懇談で終わるものではございません。政務三役を始め環境省の職員が、頻度多く懇談また意見交換をしていくものでございます。
そして、タスクフォースは、解散の期限はありません、期限は決めておりません。そして、水俣問題に関しては、タスクフォースだけで取り組むものではありません。やはり環境省を挙げてこの水俣問題に対して真摯に全力を挙げて取り組むということでございます。
そういう意味で、私も、どれほどあるか分かりませんけれども、リーダーシップを発揮して、環境省がこの問題解決のために前進できるように全力を挙げてまいりたい、そのように考えております。
●西村(智)委員
では、そのことをもう一回改めて省内に指示していただけますか。
私は、やはりタスクフォースというのは心配なんですよ。これは、最後は骨抜きになるんじゃないかというふうに思っているんですよ。元々が一時的な組織ですからね、タスクフォースというのは。だから、是非そこは大臣からもう一回省内に指示していただきたい。
しかも、省を挙げて取り組むためにタスクフォースをつくったんでしょう。今までは特定疾病対策室でやっていたわけですよ、水俣病というのは。今回、前田審議官を担当の審議官として任命して、二十九人体制ですか、それでタスクフォースをつくった。それが省内全体で取り組むということなんじゃないですか。
だから、是非もう一回大臣の方から指示をしていただきたい。御答弁をお願いします。
●伊藤国務大臣
御質問でございますけれども、実は、数次にわたり指示はしております。先ほど御答弁を申し上げたように、タスクフォースだけで水俣問題をやるわけではありません。このタスクフォースには、もちろん、政務三役全員、そしてまた次官を始めとする、必ずしも疾病対策室と関係ない部署の方も入っておりますけれども、いずれにいたしましても、タスクフォースは、懇談会を一回設置して終わるという性格のものではなくて、タスクフォースが設置した、私を含む政務三役あるいは環境省の職員の累次の懇談、意見交換によって更に進めるということだろうと思います。
そして、水俣問題については、環境省として全力を挙げて取り組んでいくということでございます。
●西村(智)委員
何か同じことを何回も繰り返して聞かされているだけのように私にはどうも受け止められてしまうんですね。
ちょっと時間がありませんので、個別的な課題に入っていきたいと思います。
二〇〇九年に特措法が成立いたしました。当時、私も現職の衆議院議員でありました。この特措法が成立してからもう十五年になります。特措法による申請が締め切られてから十二年になります。ところがと言うべきなんでしょう、今もなお被害の声を上げることができない方々が多くいらっしゃるというふうに言われております。
これは、やはり地域に住んでいる方々、そして今原告になって裁判を闘っておられる方々だけではなくて、私の地元である新潟県が「新潟水俣病のあらまし」という小冊子を作っておりますけれども、この中においても、現在も水俣病問題は解決していない、今なお取り組むべき重要な課題ですというふうにも、令和に入ってからも記載をされているわけです。
特措法を成立させた私自身としても、もっとこの間できることがあったのではないかというふうに考えております。そういった思いで、今、私自身は、超党派でつくっております水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会の会長を務めさせていただいておりますけれども、この特措法について幾つか伺いたい。
まず、問題の一つ目は、救済措置の開始後三年以内を目途にということで、申請期間が大変短く区切られてしまったことだというふうに思っています。
実際の申請期間は、二〇一〇年の五月から二〇一二年七月の僅か二年二か月でありました。関係団体はもとより、私の地元新潟市からも、申請期間が短いということで懸念の声が当時からも上がっていたんですけれども、現に、近畿訴訟、先日、大阪地裁の判決が出ましたが、この中で原告になっていた方の中でも、何人かは、特措法を知らなかったという方が結構いらっしゃるんですよね。
大臣自身は、特措法の申請期間が短かったというふうに認識は持っておられるでしょうか。
●伊藤国務大臣
水俣病特措法は、公害健康被害補償法に基づく認定や補償とは別に、早期に幅広い救済を行うことを目的としたものでございます。こうした趣旨を踏まえ、この法律では、早期にあたう限りの救済を果たす見地から、救済措置の開始後三年を目途に対象者を確定し、速やかに支給を行うように努めることを規定してございます。これに基づいて、国として対応を進めてきたところでございます。
環境省としては、期限内に申請いただけるよう、関係自治体等の協力をいただきながら、周知、広報を徹底し、救済に必要な対応に取り組んできたというふうには考えております。
●西村(智)委員
答弁になっていません。私は大臣自身の認識を聞いています。
大臣は、これまでも、不思議なんですけれども、大臣と一政治家としてとか、何か立場を使い分けて答弁しておられることが結構あるんですけれども、この場で私が伺いたいのは、政治家として、今現に特措法ができて、だけれども、まだ救済されていない、申し出ることができなかった人がいらっしゃるということを振り返るときに、この申請期間が私自身はやはり短かったと思います、これは反省も含めて。
やはり短かったという認識に立たないんですか、どうなんですか。
●伊藤国務大臣
法の趣旨に基づき実行したものだと思いますし、私は、当時の判断は尊重したいというふうに考えております。
●西村(智)委員
そういう認識では、最終解決という大臣がおっしゃっているその中身について、私は本当に疑いの目を向けざるを得ません。何が取り残されているのか、何が水俣病が終わっていないという中身に該当するのか、何が残されているのかということについて、私の認識と大臣の認識は違うということなんですかね。私は、そうじゃないというふうに信じたい。信じたいと思っているので、今こうやって質問をさせていただいています。
訴えられなかった人がいるんですよ。声を上げられなかったんです。それは、期間が短かったというだけではなくて、やはりいろいろなことがあるんですけれども、例えば、劇症の方であったり重症の方であったりという人が水俣病だと思っていた、今もそういう方は結構いらっしゃるんですよ、原告の中でも、それから今申請していない人の中でも。中等症とか軽症の人たちは、自分は違うと思っていた、だから、水俣病だと言われてびっくりしたと皆さんおっしゃるんですよ。当たり前だと思っている人は余りいないんですよ。なおかつ、水俣病は水俣の人だけだというふうに思っている方も実はいらっしゃいました。やはり差別や偏見を恐れて申請できなかった方もいらっしゃいます。
そういった患者さんの存在を知った以上は、やはり環境省として、この申請期限のことも含めて、もっとやるべきことがあったのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。大臣、書いてあることは私は分かっているので、大臣の政治家としての答弁をいただきたいんです、どうでしょうか。後ろの方、いいですから。
●伊藤国務大臣
繰り返しになって恐縮ですけれども、水俣病については、公害健康被害補償法の施行、二度にわたる政治解決等、多くの方々が様々な形で努力をされてきました。しかし、委員御指摘のように、現在もなお、水俣病の病状で苦しんでいる方、認定申請や訴訟を行う方、また、水俣病に起因して偏見や差別が起こり、地域の亀裂で苦しんでおられる方、大変重要な、そしてまた重い事実があって、私も胸を締めつけられる思いでございます。
こういう現状を考えますと、水俣病の問題は道半ばであり、まだ終わっていないと考えております。
水俣病については、今後、熊本、新潟で意見交換を進めるところでございます。まずお話をよくお聞きし、歴史と経緯を十分に踏まえつつ、真摯に検討してまいりたい、そのように考えております。
●西村(智)委員
私は、今日は、大臣から前向きな答弁がいただけるのではないかと期待して立たせていただきましたけれども、結局、従来からと答弁が変わっていないということで、本当に残念でなりません。
本当にちょっと信じ難い話がいろいろあって、私たちは、水俣にも新潟にも意見交換会で伺いました、立憲民主党として。そこで、とある方がこんなふうにおっしゃっていた。公健法の認定のために健康診断に行った。その方が言うには、足を筆でこすられたというふうにおっしゃっていましたけれども、要は、感覚障害があるのかどうか調べるために足を筆でこすられた。だけれども、見えるんですよね、見える状態で足をこすられている。これは分かりますかと聞かれる。見ているから、分かりますよね。触られているかどうかというのは感覚障害があるから分からないとしても、見ているから、分かりますと言ったら、それで認定されなかった。今もその方は、それが影響しているのかどうか分からないけれども、特措法でも救済されていないというような話がありました。
大臣、本当にいろいろな課題があるんですけれども、まず、この判定の問題です、認定の問題とか。まず一つは、やはり水俣病の臨床経験のあるドクターや法曹の方をこの委員会に加えるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。時間がありませんので、答弁は短くお願いします。
●伊藤国務大臣
公害健康被害補償法の公害健康被害認定審査会は、関係する都道府県又は政令市に置かれることとなっております。その委員については、都道府県知事又は市長が、医学、法律学その他公害に係る健康被害の補償に関して学識経験を有する者のうちから任命することとされてございます。
この規定に基づき、関係市町において適切に委員が任命されているというふうに承知しております。
●西村(智)委員
私は、今、具体的なことについて指摘をしましたので、是非そういったことも今後とも留意をしていただきたい、するべきだと思います。
先に進まなければいけないと思います。
救済措置の方針について伺いたいと思います。
二〇〇九年の特措法に引き続いて、救済措置の方針が閣議決定をされました。この救済措置の方針というのは、なかなか分かりにくい書き方になっていて、地域と年齢が分けられるような形で記載されているんですね。それによって、自分は該当しないんじゃないかというふうに思った方がいたかもしれない、自分は区域外だと思って申請を諦めた人がいたかもしれない、あるいはこの方針によって判定に誤りが生じたかもしれない、これは、可能性としていろいろなことが私は想定されるべきだというふうに思うんですよ。
ちょっと時間がないので二つまとめて聞きますけれども、実は、この特措法で、地域外、指定された地域の外の人たちもたくさん救済されていますよね、たくさんではないですけれども。諦めた人もいるけれども、救済された方もいる。だけれども、区域外で認められなくて、今なお裁判を闘っている方もいる。あと、原告の方に聞けば、自分の住んでいた町では、区域外だからということで取り残されている人がたくさんいるというふうにおっしゃっている方もいらっしゃいます。
私も不知火海を船で回らせていただきましたけれども、本当に穏やかな海で、みんなつながっているんですよ。あの島は指定区域だけれども、そこから裏の方は区域外ですと言われても、それはなかなか納得できる話じゃないです。
もう一つは年齢の話。四十何歳の人が原告になっているんですよね、四十代の人が。そういったことからすると、やはりこの救済措置の方針というのが、認定に至らなかった、そういう要素を逆につくっちゃっているんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
●伊藤国務大臣
水俣病特措法の対象地域は、ノーモア・ミナマタの訴訟において裁判所が示した和解所見を基本に、訴訟をしなかった患者団体との協議も踏まえて決められたものでございます。
水俣病被害者特措法の対象となるのは、通常起こり得る程度を超えるメチル水銀の暴露を受けた可能性のある方のうち、四肢末梢優位の感覚障害又はそれに準ずる感覚障害を有する方でございます。対象地域内に一定期間の居住歴のある方については、この暴露を推認することにより、個別の証明を求めることなく迅速な救済を図るものでございます。一方で、対象地域外に居住歴がある方についても、個別に暴露の有無を判断し、相当数の方が救済対象になったと承知しております。
このように、円滑に認定を行う観点からの仕組みであり、こうした仕組みが申請をしにくくしたというふうには考えてございません。
それから、水俣病被害者特措法の出生年は、ノーモア・ミナマタ訴訟において裁判所が示した和解所見を基本に、訴訟をしなかった患者団体との協議も踏まえて定められたものでございます。環境省としては、この経緯を尊重する必要があると考えてございます。
なお、昭和四十四年以降に生まれた方でも、水銀への暴露の可能性が確認されれば救済の対象とすることとされておりまして、県において、一人一人丁寧に審査されているものと承知しております。
したがって、水俣病被害者特措法の出生年における考え方が適当でなかったというふうには考えてございません。
●西村(智)委員
救済措置の方針を今丁寧にお話をくださいましたけれども、私は、あえてそれを承知の上で質問しているんですよ。
つまり、そういった認定の基準というものが、やはり被害者の皆さんへの差別とか偏見とかそういったものがある中で手を挙げにくい、挙げたとしても、疫学の考え方に基づいていない判定が行われてきたがゆえに、またそこで分断が起きてしまっている、それを私は申し上げたいと思っているんです。やはり政府は、環境省は、特措法第三十七条に基づく健康調査を、疫学的な健康調査を行うべき、行わなければいけないというふうにこれは強く申し上げたいと思います。
あえて三十七条の一項と三項で分かれているんですね。三十七条一項では、研究調査をしなさいと書かれているんですよ。条文を読み上げましょうか。読み上げなくても分かっておられますよね。政府は、途中を略しますけれども、健康調査を、ちょっと長いので読み切れないですが、済みません。健康調査をしなさい、するものとすると書いてあるわけですよ。これは何でやっていないんですか。
実際に何をやってきたのか。答えは、多分、MRIとMEGを使った手法の開発を先にやりますということですよね。大臣、そういうことですよね。ちょっと時間がないので、確認させてください、まずそれだけ。
●伊藤国務大臣
御指摘のように、水俣病被害者特措法第三十七条一項で、健康調査を行うことを規定するとともに、同条第三項で、そのための手法の開発を図るものと規定しております。これを踏まえて、環境省としては、まず第三項の手法の開発が必要であると考え、脳磁計、MRIによる手法の開発を進めてきました。
昨年、開発の成果をまとめて国際的な学術誌に論文が投稿され、専門家の査読を経て公表されるなど、手法の開発が一定の精度に達したことから、昨年度、健康調査の在り方を御検討いただく研究班を立ち上げたところでございます。
昨年度末に提出された本研究班の報告書では、調査実施に当たっての考え方や検討すべき課題についての研究の状況が報告されてございます。これを踏まえて、今年度、令和六年度は、脳磁計やMRIの研究を継続するとともに、研究班において課題と整理された点について更なる研究の深掘りが進められる予定でございます。
こうした専門家による議論も十分に踏まえながら、できるだけ早く検討を進めたいと考えております。
●西村(智)委員
MRIとMEGを使った手法は、私は、スクリーニングには全く使えないというふうに思います。本当に開発に取り組んでこられた方々は御努力をされてこられたということは分かりますけれども、MEGとMRIを組み合わせた方法で水俣病として認定された患者のうち、約八割でしか反応が検出されないんですよ。感度八割です。ほかの二割の方は、水俣病認定患者なのに反応が検出されないんです。健常者の方であっても、約一割で同様の反応を検出しているんです。本当に使えますか。
しかも、これはすごいお金がかかっている。十二億三千七百万円かかって、水俣病患者でやられた方のうち、研究に有効に組み入れられている方の人数は四十二人、健常者の方は二百八十九人、数は少ない。MEGとかMRIだって、全国でできるわけじゃありません。水俣や新潟市にあるんですかと聞いたら、分かりませんという環境省の答えで本当にびっくりしました。
私は、健康調査の方法というのは、やはり疫学的な手法であるべきではないか。それこそが患者さんたちが求めていることなんですよ。大臣の耳にも届いていると思いますけれども、そのことにはお答えいただけないんでしょうか。しかも、十五年もこれはやっていないんですよ、開発しています、開発していますと言って。十五年もやられていないということは、これは不作為のそしりを免れないんじゃないかというふうに思いますけれども、大臣、どうですか。
●伊藤国務大臣
御指摘がありましたけれども、いかなる医学的検査でありましても、特異度を一〇〇%にするということはできないと思います。一般的に、診断閾値は、感度、特異度、健常者なのに疾患と診断された偽陽性、疾患なのに健常者と診断された偽陰性、これを考慮して設定されるものでございます。
したがって、健常者が異常と診断されても、そのことをもって診断方法がふさわしくないというふうには考えられないと考えております。
●西村(智)委員
疫学的な調査を是非やってください。それについてはいかがですか。最後に一言だけ答弁ください。後ろの方はいいので、大臣、お願いします。
●伊藤国務大臣
委員の御指摘も含めて、検討を進めてまいります。
●西村(智)委員
終わります。ありがとうございました。