○西村智奈美君
立憲民主党の西村智奈美です。
私は、立憲民主党・無所属を代表して、ただいま議題となりました立憲民主党、国民民主党、有志の会提出の政治資金規正法等の一部を改正する法律案、立憲民主党提出の企業・団体献金禁止法案、パーティー開催禁止法案に賛成、自民党が提出し、公明党と日本維新の会が賛成して修正された政治資金規正法の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行います。(拍手)
討論に先立ちまして、あえて申し上げます。
岸田総理、どちらにいらっしゃるのでしょうか。裏金問題が発覚した当時、火の玉になって国民の信頼を回復すると高らかに宣言をされた岸田総理が、今、この議場にお姿が見えないようであります。採決の際にはいらっしゃるのかも分かりませんが、やはり、しっかりと討論を聞いていただいた上で採決に臨むべきだったのではないでしょうか。あえて申し上げます。
まず、今回、法改正の議論のきっかけとなりました自民党議員の裏金問題は、全貌がいまだ明らかになっておりません。実態を明らかにした上で、再発を防ぐための法改正を考えるというのが本来の道筋です。
衆議院政治倫理審査会は、五月十四日、自民党の裏金問題を受け立憲民主党など野党が八日に申し立てた、二階俊博元幹事長、萩生田光一前政調会長を含む自民党議員四十四人の政倫審での審査を自民党を含む全会一致で議決したにもかかわらず、いまだ音沙汰がありません。裏金問題の説明責任が全く果たされていないのです。さらに、裏金を自分の政党支部に寄附して税控除を受けるなど、新たに悪質な事実が明らかになりました。こうした実態の調査も説明も行われないまま、本日、本法案の採決が行われることに、強く抗議をいたします。
改めて、国民を代弁して自民党に申し上げたい。裏金議員は、洗いざらい裏金の使い道を明らかにしてほしい、領収書がないのなら税務署に行って税金を払ってほしい。それが世間の常識です。
自民党案の欠陥を改めて指摘します。
第一の欠陥は、政治をゆがめる企業・団体献金について、野党がそろって禁止を求めたにもかかわらず、全くのゼロ回答であった点です。
企業献金はそれ自体が利益誘導的な性格を持っている、これは、三十年前、政治改革議論をリードしていた民間政治臨調会長の亀井正夫住友電工会長の言葉です。
これまでも、多額の企業・団体献金が腐敗や癒着構造の温床となってきました。国民のための政策を実行するためには、特定の企業、団体によって政治、政策決定がゆがめられることのないようにすべきです。
リクルート事件後の一九九三年、細川連立政権が誕生しましたが、連立政権樹立に関して、公費助成等と一体となった企業・団体献金の廃止等の抜本的政治改革関連法案を本年中に成立させると合意し、その後、一九九四年の関連法案の改正で政党助成制度が導入されるとともに、まず政治家個人に対する企業・団体献金が禁止され、二〇〇〇年には政治家の資金管理団体に対するものも禁止されました。
しかし、政党への企業・団体献金の五年後の見直し規定が盛り込まれましたが、手つかずのままどころか、今も政党支部経由の献金がまかり通っています。政党助成金と引換えに企業・団体献金を禁止するとの約束はほごにされ、いまだ、二重取りだとの批判が絶えません。時間がたてば国民の関心も薄れると思っているのではないでしょうか。
企業などによるパーティー券の購入も規制せず、政治家個人や政治団体に献金する抜け道を残すのが自民党案です。
政権与党に多額の献金をした企業や団体に有利な政策が決まり、与党は金の力を駆使し、また選挙に勝利するという悪循環。事実上賄賂のような役目を果たしてきた企業・団体献金こそが、政策をゆがめ、政治献金をすることが難しい多くの中間層の皆さん、さらに、弱い立場の皆さんの声や思いを封殺してきたのではありませんか。少子化対策がこんなに遅れたのも、教育予算、研究予算がこんなに低く抑えられてきたのも、非正規雇用や男女賃金の格差是正が軽視されてきたのも、パーティー券も買えず、政治献金もできない方々の声や思いが後回しにされてきたからではありませんか。
私たちは、今度こそ、圧倒的な資金力のある企業・団体献金を禁止することが重要であると考えます。私たちが目指すのは、真に必要なところに予算や法律の手当てがなされる政治です。それが、真っ当な政治であります。
第二の欠陥は、政策活動費の公開が全く不十分な点です。
政策活動費は使途を明確にしないお金であることから、野党一致して、廃止するか領収書を全面公開することを求めてまいりましたが、迷走に次ぐ迷走の挙げ句、十年後に領収書を公開することとなりました。
十年後に問題のある支出が判明したとしても、十年後に議員でなくなってしまったら、どう責任を問うのでしょうか。また、不記載や虚偽記載も、また所得税法違反も、公訴時効は五年であり、十年後に公開されたところで罪には問われません。十年後に公開された領収書が黒塗りされる可能性について、自民党の提出者は否定しませんでした。これのどこが領収書公開と言えるのでしょうか。
また、政策活動費の年間上限額については検討規定が置かれましたが、いつまでに検討するかすら明らかにされておりません。第三者機関の設置について検討する規定は置かれましたが、その具体的な権限については何ら明らかにならず、歯止めになっていません。具体的な制度設計が本当に検討され、本当に導入されるかすらも分からないのです。
第三の欠陥は、連座制など、政治家本人の責任の取り方が徹底されていない点です。
自民党案は確認書方式を導入していますが、会計責任者の説明に問題があった、確認したが気づかなかったなどと、これまで同様、言い逃れの余地を残しています。
自民党案の欠陥、第四は、裏金づくりの原点となっていた政治資金パーティーについての規制が全く不十分で、裏金づくりの再発防止策に全くなっていない点です。
パーティー券購入者の公開基準を五万円に引き下げても、五万円以下なら政治資金収支報告書に明記する必要がなく、裏金に回る余地が残ります。また、パーティー券の公開対象は、寄附のように年間の合計でなく、一回ごとの購入額です。年間のパーティー開催回数を増やすことで、従来どおりの額を非公開のまま集める道は残ります。公開基準額を下げても、同じ社内で複数人で購入するなどすれば、結局同じことになってしまいます。
これらの抜け道を防ぐ方法がない以上、我々立憲民主党は、パーティー券収入の全面公開若しくはパーティー開催自体の禁止が不可欠だと考えます。抜け道だらけの自民党案では、政治資金パーティーを温床とした裏金づくりの根絶には全くつながりません。
議場の皆さん、是非、こうした欠陥のない立憲民主党の法案に賛同していただきたい。今度こそ、本当に、政治と金をめぐる問題を解決しましょう。
政治改革に関する議論は全議員に関わるものであるがゆえに、前例では、党首会談などを経て決定するべきものです。しかし、自民党は、野党四党一会派の要求にも全くのゼロ回答でした。なぜ今回の法改正議論が起こったのか、自覚しているとは思えません。
政治にとって最もかけがえのないものは何か。それは、国民からの信頼です。そして、今、その信頼は地に落ちたままです。国会の多数派がいいかげんな法案を採決するのなら、本当に多数派が正しいのか、国民に聞いてみようではありませんか。永田町の常識が国民の非常識ならば、永田町を変えなければなりません。その力は、国民の皆様一人一人にあります。
私たちは、決して諦めることなく闘い続けます。
御清聴ありがとうございました。