●西村(智)委員
立憲民主党の西村智奈美です。
先ほど渡辺委員からもありましたとおり、二〇〇二年に五名の拉致被害者が御帰国なされてからもう二十二年、どなたもお帰りになっておられません。進展が見られない。本当に、関係者の皆さんは、一ミリも動いていないというこの状況に大変ないら立ちを持っておられることだと思います。
政府におかれては、私はやはり、この間の取組について検討し、検証し、そして再評価すべきではないかというふうに考えておりまして、その考えから二点質問したいと思っております。
一つは、昨年の五月に私が予算委員会で岸田総理に質問した、田中実さんと金田龍光さんについて伺いたいと思います。
繰り返しになりますけれども、このお二人が北朝鮮に入国していたというふうに、北朝鮮から日本に対して二〇一四年の時点で伝えたというような報道が、二〇一八年に共同通信でなされたわけであります。ところが、このときに二人の生存情報を非公表にするという判断を政府はいたしまして、このことについては当時の安倍総理も了承していたということが記事に記載はされておりました。
しかし、その後、二〇二一年八月、当時の拉致問題担当大臣であった古屋圭司議員、それから二〇二二年九月、斎木元外務次官がそれぞれインタビューに答えられて、そういった報告書が実際に北朝鮮から伝えられたんだけれども、それを受け取らなかった旨のことをインタビューで述べておられます。
私は、昨年の予算委員会で、このお二人がインタビューで話した内容は、政府として、事実ですかというふうに質問したんですけれども、岸田総理は、今後の北朝鮮との交渉に影響を与えるため答弁を控えるというふうに五回繰り返されました。
この答弁から確認をしたいと思います。総理は、このときに、ストックホルム合意以降、北朝鮮の特別委員会による調査などについて、北朝鮮側から調査報告の通報はなく、報告書も提出されていないと答弁しておられたんですけれども、報告書が存在していたという事実はありますか。
●上川外務大臣
ただいま委員からの御指摘にありました田中さんや金田さんを含みます北朝鮮による拉致被害者、また拉致の可能性を排除できない方につきましては、平素から情報収集に努めているところでございますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その具体的内容や報道の一つ一つにつきましてお答えすることは差し控えさせていただいておりまして、この立場は引き続き維持すべきものと考えているところであります。
その上で申し上げるところでございますが、ストックホルム合意以降、北朝鮮の特別委員会による調査につきまして、北朝鮮から調査結果の通報はなく、報告書も提出されていないものと承知をしております。
●西村(智)委員
私の質問にはお答えいただいておりません。提出をしていないということは一旦ちょっと受け止めつつも、報告書が存在していたのかということについては、大臣も、また上川大臣もすり替えの答弁をされておられますし、肝腎のことになりますとやはり答弁を控えるということですね。
であるとすれば、この二〇二一年と二〇二二年の古屋議員及び斎木元外務次官は本当に悪影響を与えるような発言をしたのかどうかということなんです。お二人はその後の交渉に悪影響がないと思ったから、このような発言をされたのではありませんか。
●上川国務大臣
繰り返しになって大変恐縮でございますが、田中さんや金田さんを含みます北朝鮮による拉致被害者、また拉致の可能性を排除できない方につきましては、平素から情報収集に努めているところでございますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その具体的内容や報道の一つ一つについてお答えをすることは差し控えてきておりまして、この立場は引き続き維持すべきものというふうに考えております。
その上で、日朝間のやり取りの詳細につきまして明らかにすることは、今後の対応に支障を来すおそれがあるということから、お答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
●西村(智)委員
もう一度だけ伺います。
古屋議員それから斎木元外務次官の発言は、その後の北朝鮮との交渉に悪影響になっているのでしょうか。
●上川国務大臣
北朝鮮に対しましては水面下を含めまして様々な働きかけを行ってきているところでございます。こうした取組を進めるに当たりましては、具体的なやり取りの詳細を明らかにいたしますと、例えば北朝鮮側が今後の日本側とのやり取りをちゅうちょするなど、意図しない影響が出る可能性は排除されないものであります。
全ての拉致被害者の安全確保また即時帰国、真相究明を目指すとの政府としての考え方の下、今後の北朝鮮とのやり取りに支障を来すおそれがあることから、その詳細についてのお答えを差し控えてきているところでございます。
●西村(智)委員
もちろん、北朝鮮が例えば交渉においてうそをつく可能性や謀略を謀るなどの可能性は十分考えられますし、それを踏まえた上で、今後、日本政府は、これからも、やってもらっていると思いますけれども、対応されているというふうに思います。
しかし、金田さんそれから田中実さん、この二人、実は日本国内に身寄りがいらっしゃらないというふうにも報道されているんですね。であるというこの背景、お二人の背景が、報告書を日本政府が受け取らなかったということにあるのであれば、これは私は本当に大変な問題だというふうに思います。
同時に、お二人あるいはお一人に一時帰国の意思もあるというふうに伝えられたということでもありまして、本当に、当時の政治判断だけでそういったお二人のお気持ちなどが一方的に封じられたということであれば、余りにも非人道的、冷酷な判断であるというふうに私は申し上げざるを得ません。
客観的に見て、お二人を日本政府は見捨てたのではないかというふうに見えるんですけれども、どうでしょうか。
●上川国務大臣
田中さんや金田さんを含めまして、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保そして即時帰国、真相究明を目指すというのが政府の考えでありまして、田中さんや金田さんを見捨てるという御指摘は当たらないと考えております。
政府といたしましては、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでまいる所存でございます。
●西村(智)委員
仮に田中さんや金田さんが御帰国なされたからといって、日本政府あるいは日本国民がそれで北朝鮮の拉致問題を幕引きにするなどということは誰も考えないですよ。私も新潟一区選出の議員です。横田めぐみさんが拉致された現場は選挙区です。そういった中で、同級生の皆さんも、本当に、一日千秋の思いで待っておられるわけです。仮にこれで幕引きされるなんということは絶対にないというふうに私は確信を持って申し上げることができます。
なおかつ、二十二年帰ってこられていない。外から見ると、やはり交渉が全く進んでいないという膠着状態がずっと続いているわけです。何か交渉の端緒を、糸口をつかむためにも、私はこのお二人に関する報告書をきちんと確認して、お二人の生存確認や意思確認などを是非していただきたいと思います。もうこれ以上答弁は求めませんけれども、是非お願いしたいと思います。
次に、これも私の、新潟県の話になりますけれども、大澤孝司さんの件について伺いたいと思います。
先日、お兄様の大澤昭一様、新潟県内の選出国会議員のところを全員回るんだというふうにおっしゃって、何とか拉致被害者として認定していただきたいという切なる御要請をお受けいたしました。お兄様も御高齢になっておられるんですけれども、当時二十七歳で行方不明になった大澤孝司さんも、もう既に七十七歳ということでございます。
林大臣は、認定の有無にかかわらず、先ほど上川外務大臣もおっしゃいましたけれども、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けて、全力で果断に取り組むと所信を述べておられます。第二次安倍政権以降、全ての拉致担当大臣が同じような文言で所信を述べておられますけれども、この間、認定の有無にかかわらず、どのように拉致問題に取り組んでこられたのか、伺います。
●林拉内閣府致問題担当務大臣
平成二十五年一月に、拉致問題対策本部で拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策というのを決めております。この方針におきまして、「拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くす。」と明記をしておりまして、その上で、二に列挙された八つの具体的施策というのがございますが、この方針の下で実施をされるものとされております。
この具体的なやり取りについて申し上げることは差し控えますが、政府としては、拉致被害者として認定された十七名の方以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するとの認識の下で、拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策に基づきまして、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のため、全力を尽くしております。拉致に関する真相究明及び拉致実行犯の引渡しを追求し続けております。
私も、この職に就任直後の昨年十二月でございますが、大澤孝司さんのお兄様である大澤昭一さんを含めて、拉致の可能性を排除できない行方不明者の御家族ともお会いして、切実な思いを伺ったところでございます。
今後とも、御家族の気持ちに寄り添って、情報提供そして要望の聴取などなど、丁寧な対応に努めてまいりたいと思っております。
●西村(智)委員
認定ということに関して申し上げれば、田中実さんが拉致被害者として認定されたのが二〇〇五年、松本京子さんが認定されたのが二〇〇六年、それ以降、もう二十年近く、どなたも、一人の新たな認定もなされておりません。
そういう前提で、今大臣からどういうふうに取り組んできたかをお答えいただけなかったのは本当に残念ですけれども、これから具体的に交渉するという場合に、どういう交渉のやり方になるのか、大澤孝司さんの名前の入った名簿が交渉のテーブルの上に一緒にのって、対象ということになるのかどうか、教えてください。
●上川国務大臣
政府といたしましては、拉致被害者として認定された十七名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するとの認識の下、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くしていく考えでございます。
それ以上の詳細につきましては、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあることから、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと思っております。
●西村(智)委員
差し控える答弁ばかりですと、本当にこの拉致問題対策特別委員会の意義というものにも関わってまいりますので、是非、お話しいただけるところは御答弁いただきたい。
今日は本当に残念でしたけれども、果敢な、まさに果敢な取組を強く求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。