●西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。
昨年の七月八日以降、我が国は、旧統一教会の被害がこれほどまでに長く、そして深く根づいていたということを改めて思い知らされることになりました。私たち立憲民主党は、七月に既に旧統一教会被害対策本部を設置いたしまして、救済法案を作成し、十月に提出いたしております。
その間、大変後ろ向きだった政府・与党の方も、少し同じ方向を向いてくださるようになって、悪質寄附規制法ですね、現行の法案が閣法として提出をされた。議員修正も行われまして、私たち、内容としては極めて不十分だ、救済のためには不十分だという思いは強く持ちながらも、これが救済の第一歩になればという思いで成立に至ったわけであります。
成立は本当に終盤国会のぎりぎりでして、参議院での質疑は土曜日にも行われたという極めて異例のことでありましたけれども、その質疑が、これはいかに大事であったかということを、やはり国会にいる全員があれで理解したのではないかなと思っております。
今回成立した法律に基づいて、行政処分の基準案が作成をされているということでございます。パブコメが三月二日まで行われて、私たちもその案を拝見して、この内容では、その間の国会での質疑を十分踏まえたものとは言えない、成立した法律よりもむしろ後退している部分があるのではないか、そのおそれが非常に強いということで、三月三日に消費者庁に緊急要請を行いました。
今日はその点を中心に質問をしたいと思っておりますけれども、まず、大臣、先ほども質疑がありましたけれども、法の行政処分の部分に関して、四月一日に完全施行するということでよろしいのか、確認をさせてください。
また、併せてなんですけれども、処分基準の案について、昨年十二月の質疑のときには、公表するかどうか、公開するかどうかということについては、明確に大臣はお答えになっておられなかったんですけれども、これは処分基準を公開するということで確認させていただいてよろしいかどうか。
二点、お願いいたします。
●河野国務大臣 行政処分及び罰則の施行に関してでございますが、三月の二十四日に、不当寄附勧誘防止法の行政措置及び罰則等に関する規定の施行日を令和五年四月一日とする政令を閣議決定したところでございます。
その十二月の八日の答弁の中で、法案、成立させていただいた場合におきましては、施行期日までの間に、実効的な行政措置等を行うことができるよう、しっかり基準を定めてまいりたいというふうに申し上げておりまして、今申し上げましたように、四月一日を施行日というふうにしたところでございます。
処分基準等につきましては、これが策定されていないことをもって行政上の措置の実施が妨げられるものではありませんが、寄附の勧誘を行う法人等の予見可能性や行政上の措置の基準の明確化の観点から、できるだけ早期に策定することが望ましいと考えておりまして、パブリックコメントでいただいた御意見の内容を整理、検討し、可能な限り速やかに処分基準の策定、公表を行うように指示をしております。制定した暁には、これは公表をするということでございます。
●西村(智)委員 次にしようと思っていた質問も全部一緒に答えていただきました。
私、十二月八日に質問したときには、行政処分の基準について、施行期日までの間に、実効的な行政措置等を行うことができるよう、しっかり基準を定めてまいりたいというふうに大臣は答弁されていたんですけれども、四月一日に施行される。行政処分基準については、今急いで作業していただいているというふうに私もお聞きしておりますので、できるだけ早期に策定をして公表されるということで確認ができたというふうに思っております。
それで、処分基準案についてなんですけれども、私たち、三月三日の緊急要請で、五点について緊急に要請をいたしました。一つずつ伺っていきたいと思います。
一つ目は第六条についてなんですけれども、配慮義務の遵守に係る勧告について、こういうふうに書かれております。「個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる場合」に行うとされているんですけれども、いわゆるマインドコントロールによる勧誘行為が行われた場合には、必ずしも外形的に自由な意思の抑圧の程度ですとか期間の長さが著しいとは言えないということは、国会質疑の中での参考人質疑でも全国弁連の先生もおっしゃっていたことでありますし、被害当事者の皆さんもそういうふうに、私たちも何回も何回も、何人もの方からもヒアリングをしましたけれども、そういうふうにおっしゃっておられました。
問題は、自らの意思で活動しているように見えるということでありますので、この個人の権利の保護に著しい支障が生じているという言葉については、抑圧状態の形成過程で違法、不当な方法が用いられた場合なども例示していただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
●河野国務大臣 不当寄附勧誘防止法の第六条第一項に関することのお尋ねと思いますが、衆議院における修正でこれは追加されたものでございまして、この第一項の「個人の権利の保護に著しい支障が生じている」との記載の部分の考え方につきまして、参議院での修正案の提出者の御答弁では、特定の法人等による寄附の勧誘を受けている者が自由な意思を抑圧されているという場合においては、その抑圧の程度や期間が著しい場合や、抑圧状態に置かれている者が多数に及んでいる場合とされておりまして、この内容を処分基準案に記載をしております。
御指摘いただきました、抑圧状態の形成過程で違法、不当な方法が用いられた場合ということは、その内容が必ずしも明確ではなく、さらに、勧誘によってもたらされる結果としての個人側の状態を示している配慮義務の規定、つまり、配慮義務の規定は寄附する側、個人側に着目をしているわけですが、抑圧状態の形成過程で違法、不当な方法が用いられた場合というのは事業者側の話でございますので、個人側の状態を示している配慮義務の規定と必ずしも整合的でないことから、処分基準等に記載することは適切でないというふうに認識をしているところでございます。
●西村(智)委員 先ほどの黒田参考人の答弁と全く一緒なので、本当にちょっとがっかりいたしました。これで本当に救済ができるのだろうかということであります。
外形的に、例えば程度、それから期間の長さ、それは外から見て客観的に分かりにくいんだと。旧統一教会の勧誘の仕方というのはどれだけ特徴的かということも、参考人質疑の中でも本当に多くの方が語っておられるわけです。それにしっかりと着目をすれば、私はもう少し、例示というのは、もっと主体的な主観的なこと、客観的なことだけではなくて、まさにカルト団体によるマインドコントロールなんだから、それが分かるように書かないと、これは、せっかく法律を作っても行政処分が行われない、勧告も報告徴収も行われないということに私はなりかねないというふうに思うんですね。
二つ目と関連もしますので、伺いたいと思います。
著しい支障が生じていると明らかに認められる場合については、著しい支障が生じていることを客観的に認めることができる場合のことであって、例えば、法人等の勧誘行為について、配慮義務違反を認定して不法行為責任を認めた判決が存在する場合が考えられるというふうに書いてあるんですけれども、これはどういう意味ですか。これは本当に、裁判例がないと勧告できないということですか。答弁をお願いします。
●河野国務大臣 御指摘の著しい支障が生じていると明らかに認められる場合の考え方につきましては、参議院での修正案の提出者の御答弁で、明らかに認められる場合というのは、要件を客観的に認めることができる場合を指すと考えており、例えば、当該法人等の勧誘行為について、配慮義務違反を認定して不法行為の成立を認めた裁判例が存在する場合がこれに該当すると考えているとされております。あるいはまた、例えば、寄附の勧誘を受ける個人の権利が侵害されたことを認定した判決があるなど、著しい支障が生じていることが客観的に明らかになっている場合などを念頭に置いているとされておりまして、この内容を処分基準案に記載をしているところでございます。
文字どおり、著しい支障が生じていると明らかに認められる場合につきまして、著しい支障が生じていることを客観的に認める、それができる場合のことであって、その判断に当たっては、例えば、法人等の勧誘行為について、配慮義務違反を認定して不法行為責任を認めた判決が存在する場合が考えられるという意味と取っていただいてよろしいと思います。
●西村(智)委員 ですので、御説明はそのとおりだと思います。
私が伺っているのは、不法行為認定、不法行為責任を認めた判決が存在する場合に勧告が行われるということですよね。ということは、判決と同じ内容の事件あるいは不法行為、こういったものがないと勧告は行われないということですか。ちょっとおかしいんじゃないですか。
●河野国務大臣 この修正条項の提出者の御答弁は、客観的に認められる場合として、必ずしも確定判決である必要はないものの、配慮義務違反を認定して不法行為を認めた判決が存在するとの例を示されたものと承知をしておりますので、これまでも答弁しましたけれども、第六条の配慮義務に係る行政措置については謙抑的、慎重に行政権限の行使がされるのが適当とされていたことも踏まえ、修正案の提出者より明示的に示された例は尊重すべきものと考えております。
●西村(智)委員 判決というのは、多分、どれ一つ、同じ判決ってないと思うんですよ。どれ一つ、同じ事件だってないと思うんですよ。どれ一つ、同じ不法行為責任だって私はないと思うんですよ。それぞれのケース、ケースがあって、だから、みんな、それぞれの判決が出てくる。その判決が存在する場合でないと勧告が行われないということって、これは本当に被害防止になるんですか、大臣。
大臣、去年の十二月、私が行政処分について質問したときに、ジャパンライフのことを私はお話をさせていただいて、質問しました。ジャパンライフは、特定商取引法でこれは明確に禁止規定があるわけです。だけれども、それでも行政指導が行われるまで、問題が発覚してから約三十年かかっている。行政指導も一回では終わらない。二回、三回、四回行われて、それで最後に詐欺容疑ということで元幹部が逮捕されて、それで終わっている。こんなに時間がかかっているんですよと私が申し上げて質問したときに、大臣は、これまでの対応にじくじたるものがございます、この法案に関しまして、成立させていただいた場合には、きっちりと、実効性のあるしっかりとした早い対応ができるようにやってまいりたいというふうに答弁されているんですよ。これで本当に行政措置が行われますかね。
マインドコントロールによる寄附について、総理は、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、途中、略しますけれども、取消権の対象とは明確に言えない場合についても、今回措置する配慮義務規定に抵触し、民法上の不法行為認定に基づく損害賠償請求により、被害救済に対応できるというふうに答弁しています。配慮義務規定は、禁止行為には組み込めなかったんだけれども、いわゆるマインドコントロールによる勧誘行為に対する救済規定であるというふうにはしたわけなんです。
だから、例示というのは判決に限定するのではなくて、例えば全国の消費生活センターとか法テラス、消費者庁など、行政に多数の相談が寄せられている場合などについても、これは例示として書くべきではないか、限定しないために。判決と同じものじゃないと勧告は出せません、報告徴収できませんというのは、それはちょっと違うと思うんですけれども、大臣、どうですか。
●河野国務大臣 総理の、御指摘いただきました答弁は、配慮義務規定があることによって、これに違反した行為に対する民事上の不法行為責任が認められやすくなるということを説明したものだと思います。他方、処分基準につきましては、配慮義務や禁止行為違反に対して行政措置を行う場合の基準でございますから、これは両者違うもの、異なるものだと思います。
今御提起いただきました全国の消費生活センターなどに多数の相談が寄せられている場合ということでございますが、その多数の相談の基準というのが必ずしも明確ではありません。何をもって多数というのか。
それから、第六条の趣旨を踏まえると、相談の件数の多い少ないのみでは必ずしも要件を満たさない場合があり得るというのは、先ほど答弁がありましたように、特定の法人をおとしめようという目的で、インターネットで呼びかけて当該法人に関する相談を集中的に行おうという、これは容易に想定できることでございます。個人、法人に対して特定の嫌がらせをインターネットで呼びかけるというのは、現にあるわけでございます。
そういうことを考えると、これを処分基準などに記載することは適切ではないのではないでしょうか。
●西村(智)委員 いずれにしても、まずは報告徴収するわけですよね。確かに、多数と言われたら、百件なのか千件なのか一万件なのか、いろいろあるとは思いますけれども、現に今、例えば消費者庁に、あるいは法テラスに相談件数がたくさん寄せられているじゃないですか。関係省庁連絡会議でつくった相談電話、ここのところでも多数電話は来ているし、消費者庁の方でも把握しておられますよね。私、資料をいただきましたよ。
現にそういうふうにあるわけだから、ここは例示くらいはしないと、このままだと本当に、判決で、それは確定判決じゃないかもしれないけれども、判決が出たものしか、ここで言うと勧告ができないというのは、これは被害防止にならない、逆に消費者庁が司法の後を追っかけていくということにしかならないんですよ。
ちょっと済みません。時間がすごくなくなってきてしまって、次に移ります。
次はこの文言です。「なお、過去に著しい支障が生じていたが、既に勧誘の在り方が見直されて今後は改善が見込まれる場合には、この要件を満たさないと考えられる。」これは何で入ったんですか、すごく不思議なんですけれども。
●河野国務大臣 御指摘の不当寄附勧誘防止法第六条第一項の、更に同様の支障が生じるおそれが著しいとの記載の部分の考え方につきましては、参議院での修正案の提出者の御答弁で、過去にその支障が生じていたが、既に勧誘の在り方が見直されて今後は改善が見込まれるような場合ではなく、今後も配慮義務違反の状態が改善される見込みは薄くて、このまま放置をすると同様の支障が生じ続けるような場合とされておりました。この内容を処分基準案に記載をしたところでございます。
なお、過去に著しい支障が生じていたが、既に勧誘の在り方が見直されて今後は改善が見込まれる場合には、この要件を満たさないと考える、この部分について、これは、修正で盛り込まれた第六条の趣旨について、修正案提出者の御答弁が、原則としては、その不遵守があったとしても、謙抑的、慎重に行政権限の行使がされるのが相当とされていたということを踏まえると、既に勧誘の在り方が見直されて改善が見込まれる場合には同条の行政措置の対象とすべきではないということから、この点を盛り込んだというふうに認識をしております。
●西村(智)委員 大臣、もう一回よく処分基準案を御自身の目で見ていただきたいと思うんですよ。本当にこれで大臣が意図されていたような被害救済ができるのか。
もう一回私は聞きます。
では、ちょっともう時間もなくなってきたので、ジャパンライフのことを引き合いに出させていただきましたけれども、ジャパンライフは、本当に、一回目の行政指導が行われるまで問題発覚から大体三十年。実に、二〇二〇年ですから、四十年ぐらいですかね、ジャパンライフの事件が一つ終わるまで時間がかかってしまっているんですよ。こういったことがないように、行政指導についてはジャパンライフほどには時間をかけません、行政処分案ができたら、適時適切というか、時間をかけない、本当にスピーディーにやっていくと、十二月八日の私に対する大臣の答弁と同じことをもう一回言っていただけませんか。
●河野国務大臣 著しい支障が生じていると明らかに認める場合という、この法の第六条第一項の条項にしっかりのっとって運用してまいります。
●西村(智)委員 残念ながら、大臣の答弁も後退してしまいました。また続いて質問したいと思います。
ありがとうございました。