■西村智奈美
立憲民主党幹事長の西村智奈美です。
今回、党の代表選挙に立候補し、理不尽を許さない、そして多様性を力にとの思いを訴えさせていただきました。そうした思いも込めて、質問をさせていただきます。(拍手)
岸田総理から最初に新しい資本主義という言葉をお聞きしたとき、もしかしたら私たちが主張してきた分配重視の政策へとかじを切るのではないか、そんな期待をしました。残念ながら、今回の所信をお聞きし、その期待は失望に変わっています。
分配という言葉は入りましたが、具体策が全く見えません。何より、これまで格差と差別を生んできた、何でも自己責任、競争至上主義、いわゆる新自由主義の構造そのものには全くメスを入れようとしておりません。さらには、これまで新自由主義路線の象徴のお一人であった竹中平蔵氏を官邸会議のメンバーとして起用するなど、本当に新自由主義と決別する気があるのか、大きな疑問です。
新しい資本主義は、大きな格差を生んだ新自由主義と明確に決別するものなのか、総理のお考えをお聞かせください。
泉代表から、我々の新型コロナウイルス対策についての提案をさせていただきました。これからの国会論戦を通して、実現に向けてしっかり議論をしていきたいと考えます。
私から、医療体制の確保について改めて質問します。
今年、新型コロナウイルスに感染した多くの方が入院できないまま十分な医療を受けられずに亡くなったという、まさに理不尽の極みのようなことがこの日本で起こりました。昨年の1月から今年の10月末までで自宅等でお亡くなりになった方は、警察庁が把握しているだけでも845名にも上ります。医療先進国と言われたはずの日本で、どうしてこのようなことが起きてしまったのでしょうか。本当に悔しくてなりません。感染症の流行直後であれば様々な言い訳もあり得るかもしれませんが、新型コロナウイルス感染発生から一年経過した後の出来事です。
岸田総理も、新型ウイルス禍の昨年、9か月程度、与党で要職を担われていました。やはり政治の責任は免れないと思います。今後の対策は当然重要ですが、まずは反省、そして謝罪をすべきと考えます。明確な答弁を求めます。
所信表明で、約3万7千人が入院できる体制を確保しましたと総理は述べられましたが、どのような形で確保したのでしょうか。また、病床だけでは当然医療はできません。看護師などの人材の確保はできているのか、お答えください。
医療政策全般についてお尋ねします。
政府が検討中の436六の公立・公的病院の統廃合についてです。新型コロナ危機が続く中、例えば私の地元では、クラスターが発生した際などに患者さんを率先して引き受けたのは公立・公的病院でした。不採算だからといって単純に統廃合させるなどは、新型コロナウイルス感染禍を経験した今、到底許されません。新型コロナ禍の今、抜本的に見直すお考えはないか、お尋ねします。
保健所と地方衛生研究所は、感染症などの際に、地域で公衆衛生の最前線の役割を担う組織です。自民党政権は保健所数の削減を進めてきました。今でも正しい政策だったとお考えですか。反省し、方針転換すべきと考えますが、いかがでしょうか。地方衛生研究所の体制も地域で大きな差が生じており、感染症が拡大している中では対応が難しかった、そんな地域もあるようです。地方衛生研究所の体制を強化すべきと考えますが、併せて所見を求めます。
保健所の例でも分かるように、公的サービスは、私たちの命と暮らしを守るため、特に災害や感染症などの危機対応に不可欠であります。事件や火災が少ないからといって、警察や消防の縮小を望む方はいないと思います。
しかし、悲惨な児童虐待が相次ぎ、時には亡くなるお子さんもいる現実がある一方、対応に当たる児童相談所の人員や予算は十分ではないと指摘されています。総理は、児童相談所の現状の体制が十分だとお考えですか。私は増強すべきだと考えますが、いかがですか。
長時間労働による過労死、自殺などもなくなりません。監督すべき労働基準監督署の人員、体制は現状で十分だと総理はお考えでしょうか。お答えください。
また、裁量労働制の拡大については、2018年の働き方改革関連法の際に統計データの不備などで一度は見送られたものの、現在は、学識経験者から成る検討会で対象業務の範囲の見直しも含めて議論がされていると承知しています。残業代が未払いになっている実態がある中で、残業代込みで定額働かせ放題を許す裁量労働制の範囲拡大を認めるべきではないと考えますが、いかがでしょうか。
総理の所信をお聞きし、格差と貧困の拡大を明確にお認めになったことは、これらの言葉を使うことさえ避け続けてきた安倍政権、菅政権と比べて、評価したいと思います。
問題は、どう解決するかです。私たち立憲民主党は、働く皆さんの給料を上げることがその第一歩だと考えています。
今回、総理の所信表明の中で、最低賃金についての言及がないのはなぜですか。私たち立憲民主党は、引上げの際に中小零細企業を中心に公的助成を行いながら、時給1500円を将来的な目標に、最低賃金を段階的に引き上げるべきと考えています。分配を掲げる岸田総理は、最低賃金の引上げを考えていないということでしょうか。
また、総理が掲げる賃上げ企業への減税は本当に効果的なのでしょうか。同様の目的で進められた安倍政権以降の法人税減税は、賃上げに寄与しましたか。明確にお答えください。
また、賃上げ額の算定については、時間外、休日出勤手当などは除外すべきと考えますが、いかがでしょうか。
我々が主張し続けてきた、今の社会にとって必要不可欠なケアワーカーでありながら低い待遇のままであった介護分野、保育分野などでの賃上げについて、取り組んでいただけることは評価します。
しかし、所信表明をお聞きすると、介護、保育、幼児教育について、年間11万円程度というまだまだ不十分な引上げ額で、全産業の平均的な賃金水準には及びません。あくまで今回の引上げは第一歩で、更なる引上げを目指すのか、お尋ねします。
また、看護職については、年間14万円程度引き上げるとしていますが、一定の条件を満たす医療機関で勤務する方、段階的になど、他の職種と比べ、限定条件が付されています。他の職種と同様に一律の引上げを目指すべきと考えますが、いかがでしょうか。
格差と貧困の存在をようやく認めた岸田総理には、その解決に取り組む義務があります。国連が定めた持続可能な開発目標、SDGsでは、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある全ての年齢の男性、女性、子供の割合を2030年までに半減するとの目標が掲げられています。この目標を日本政府も共有しているとの理解でよろしいでしょうか。残念ながら先進国の中でも高いレベルにある相対的貧困率の削減に数値目標を掲げて取り組むべきと考えますが、いかがですか。
今や労働者の約四割を占める非正規労働の皆さん、その非正規雇用における女性の割合は約七割です。非正規雇用の賃金格差、不安定雇用の放置は、事実上の男女差別を放置するということです。職務評価に基づく待遇の改善ができるような、また、望む方は正規雇用として働ける法改正が必要だと考えますが、いかがでしょうか。総理の所信では、非正規雇用の正社員化と述べられていますが、具体策が不明です。労働者派遣法の見直しなどに踏み込むつもりがあるのか、明確にお答えください。
女性の就労の制約となっている制度の見直しについても、総理は所信で触れられました。これは、女性が働けば働くほど不利になる配偶者控除制度や基礎年金第三号被保険者制度などを指すということでよろしいでしょうか。お尋ねします。
これらの課題は、何度も議論の俎上にのりながら、見直しが先送りされてきた経緯があります。こうした経緯を踏まえながら、今回所信で見直しを表明された総理の決意のほどをお聞かせください。
子ども・子育て関連予算についてお尋ねします。
我が国の家族関係政府支出は、先進国の中でも最低水準であり、欧州諸国に比べると半分程度です。泉代表が先ほど質問したとおり、私たちは、出産育児一時金を引き上げ、出産に関する費用の無償化、児童手当の所得制限を撤廃し、大幅に予算を拡充すべきと考えます。子ども庁の在り方を検討する前に、まずは大幅な予算の拡充を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
教育予算の割合、対GDP比においても、OECD加盟国中、アイルランドに次いで下から2番目であるということに、私は強い危機感を感じています。総理はこの現状をどうお考えでしょうか。
義務教育の学校給食を無償化すること、高校授業料無償化の所得制限を撤廃すること、中学校の35人以下学級を実現し、将来的には小学校から高校まで30人以下学級を目指すために、教育予算を大幅に拡充すべきと考えますが、いかがでしょうか。
また、家庭などの経済状況によって進学できない、こんな理不尽をなくすため、国公立大学の授業料を大幅に引き下げ、独り暮らし学生への家賃補助制度を創設すべきと考えますが、総理はどうお考えですか。
日本の競争力低下を招いている大学での科学技術研究環境の劣化、これも深刻な課題です。ノーベル賞を受賞した大隅良典さんが、かつて、日本の大学の状況は危機的で、このままいくと十年後、二十年後にはノーベル賞受賞者が出なくなると述べていた言葉を思い出します。引用される学術論文の数などの国際順位も低下してきています。中国に対抗せよと経済安全保障に取り組むことも重要かもしれませんが、まず、我が国の深刻な研究、科学分野の地盤沈下を食い止めるべきです。
政府は、短期的、ビジネス面で有用なものに焦点が当たりがちな十兆円規模の大学ファンドを創設し、今年度中に運用を開始するとしています。しかし、基礎研究どころか、まさに喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症治療薬の研究者の雇用さえ不安定な現状がある。これを改善するために、国立大学運営費交付金を大幅に増額すべきと考えますが、いかがでしょうか。そうした基盤整備なくして、日本の科学技術研究分野での地盤沈下を食い止めることはできないと考えますが、いかがでしょうか。
今年3月に入管施設の中で適切な医療を受けることなく亡くなったスリランカ人女性ウィシュマさんの事件は、まさに、日本社会の理不尽を象徴しています。
ウィシュマさんの御遺族は、10月に、事件の真相究明と死亡前のビデオ等を提供してほしいという趣旨の手紙を岸田総理に発送していますが、まだ返事をいただけていないようです。岸田総理、手紙を読まれましたか。返事を出すか、直接お会いしてお話を聞くつもりはありませんか。そして、御遺族の思いを受け止めて、ビデオ映像のデータや司法解剖の結果に関する書類などを御遺族に提供するべきだと考えますが、いかがですか。
そもそも、ウィシュマさんが飢餓状態であることを示す数値を入管が認識していたのに、なぜ放置したのですか。明確にお答えください。名古屋地方検察庁は殺人罪の被疑事実で捜査をしているのに、入管庁の最終報告書では名古屋入管局長らの責任を認めず、国家公務員法上の懲戒処分も見送られたのはなぜでしょうか。もはや内部調査では真相究明は不可能です。総理自らが主導し、法務省とは無関係な第三者による真相究明を行うべきと考えますが、いかがですか。
入管施設では、過去にも、医療放置に起因すると見られる死亡事案を始め、人権侵害事案が続発しています。当事者である法務省、入管庁任せにせず、総理主導で、現状把握、改革に取り組むべきと考えます。総理の思いをお聞かせください。
私たち立憲民主党が、そして私が大切にする多様性を認め合う課題についてもお伺いします。
総理も、言葉だけでは多様性の尊重を言われますが、政策面では全く内容が伴っていません。
様々な課題がありますが、最初の一歩として訴え続けてきた選択的夫婦別姓制度の導入さえ、自民党の反対で実現できません。この課題について、前国会で岸田総理は、国民の間に様々な意見があるところであり、引き続きしっかりと議論すべき問題であると思っておりますと極めて不誠実な答弁をされました。法制審議会の答申からでも既に25年も議論してきています。更に何をいつまでに議論するのか、明確にお答えください。
同性婚制度の導入についても、「我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものであると考えます。 また、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えます。 多様性が尊重され、全ての人々が互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、関係大臣が連携して、しっかりと取り組んでまいります。」と岸田総理御自身が第205国会で答弁されておられますが、おっしゃっていることが支離滅裂です。青森県でこの問題に取り組んでこられた方は、同性パートナーが制度として認められるように、地方でも性的少数者が暮らしていけるようにと、闘病中ながら声を上げ続け、今年9月30日にお亡くなりになりました。性的指向によって結婚を認めないことは不当な差別ではないのか、明確にお答えください。
外交・安保政策について二点お聞きします。
岸田総理は、被爆地出身の総理大臣として私が目指すのは核兵器のない世界ですと表明されました。外務大臣当時、オバマ氏の米国大統領として初の広島訪問にも尽力されました。核軍縮、核兵器廃絶に向けて、世界の先頭に立たれることを強く希望します。
この度、ドイツでは、政権交代の結果、核兵器禁止条約にオブザーバー参加することが新政権で合意されました。ドイツは米国との同盟関係にあります。ノルウェーに続き、NATO加盟国であっても、米国との関係を維持しつつ、国際的な核廃絶の動きに一歩踏み込もうとしています。唯一の戦争被爆国として、日本こそが核兵器禁止条約にオブザーバーとして参加すべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。
沖縄県辺野古新基地移設についてお尋ねします。
沖縄の民意に反するのみならず、海底で軟弱地盤が見つかり、工事費、工期も大幅に膨張することが明らかになっています。当初の見込みから工事費、工期がどれだけ延びているか、現状での政府の試算をお示しください。
専門家によれば、どれだけ工事費、工期をかけたとしても、技術的に本当に完成は可能なのか、疑問視する声さえあります。自民党議員の中や米国政府、議会の中からもこうした声が聞こえてきます。
米中対立の中、米国の戦略が部隊の小型化、分散化にシフトする中、米国海兵隊の運用の実績などから考えても、大規模な新基地建設によらずとも、抑止力を維持することが十分可能になるのではないでしょうか。唯一の解決策などとかたくなな答弁を繰り返すのではなく、現実的検討、米国との協議の開始を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
安定的な皇位継承について、政府有識者会議の報告書骨子案によれば、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる案と、養子縁組による皇統に属する男系男子の皇族復帰の二案を軸とすると報道されております。岸田総理は、この点をどう受け止めていますか。また、国会が附帯決議で求めた女性宮家の創設につながるとお考えですか。さらに、女性・女系天皇の在り方も含めた検討を行うべきと考えますが、岸田総理の御見解を伺います。
政治と金の問題も後を絶ちません。
私の地元新潟では、衆議院議員が、県議会議員から選挙に関連して裏金を要求されたとの告発をされています。事実であれば、広島における選挙違反の反省はないのでしょうか。自民党総裁として、事実関係を調査し、国民に明らかにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
最後に一言申し上げます。
岸田総理、憲法改正に随分前向きな御発言が目立ちます。久しぶりの自民党内リベラル派、宏池会総理として、御自分の本意なのか、安倍元総理など党内の改憲に前向きな勢力への御配慮なのか、明確にお答えください。
立憲民主党は、憲法議論を否定しませんが、法律で十分可能なことを憲法で行おうとするなど、改正のための改正にはくみしません。
そもそも、憲法の議論をしたいのなら、まず憲法をしっかりと守ってからにしてください。憲法五十三条には、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」とあります。自民党の過去の政権がこの条項を無視してきたことは、御存じのとおりです。岸田内閣は今後この五十三条に従うおつもりかどうか、明確な答弁を求め、私の質問を終わります。
御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)
■岸田文雄 内閣総理大臣
西村智奈美議員の御質問にお答えいたします。
まず、新しい資本主義についてお尋ねがありました。
1980年代以降、世界の主流となった、市場や競争に任せれば全てうまくいくという新自由主義的な考えは、世界経済の成長の原動力となった反面、格差や貧困の拡大など多くの弊害も生み出しました。
こうした弊害を是正しながら、更に力強く成長するため、成長も分配も実現する新しい資本主義を実現していきたいと思っています。
まずは、この新しい資本主義を起動させるための分配戦略として、今回の経済政策においては、人への投資を抜本的に強化する、三年間で4千億円の施策パッケージを創設し、民間部門における賃上げの議論に先んじて、看護、介護、保育、幼稚園などの現場で働く方々の収入の継続的な引上げなどを盛り込みました。
人への分配は、コストでなく、未来への投資です。官と民が役割を果たすことで成長の果実をしっかりと分配し、消費を喚起することで次の成長につなげ、成長と分配の好循環を実現してまいります。
医療提供体制の確保についてお尋ねがありました。
スピード感を持って進めてきたワクチン接種の効果もあり、足下では我が国の新型コロナの感染状況は落ち着いていますが、決して楽観視せず、次なる感染拡大への備えを固めることが私の務めです。
このため、先般取りまとめた全体像に基づき、今後、感染力が二倍となった場合にも、必要な方が確実に入院できる体制整備を進めてきました。具体的には、公立・公的病院に法律に基づく要請を行い、新型コロナの専用病床化を進め、都道府県が個別の病院名を明らかにして新たな病院の確保を計画的に行うとともに、都道府県と医療機関が書面で緊急時に確実に入院を受け入れることを明確化しています。これらの取組により、既に、この夏に比べて3割、1万人増の約3万7千人が入院できる体制を確保いたしました。
医療人材につきましても、都道府県において、病床確保と併せて、応援派遣を調整し、結果、全国で約2千の医療機関から医師約3千人、看護師約3千人の派遣に協力いただけることとなっています。
また、公立・公的病院の在り方につきましては、病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の実情を十分に踏まえつつ、地方自治体等と連携して検討を進めてまいります。
また、厚生労働行政に関する組織体制についてお尋ねがありました。
保健所数の減少については、住民に身近な保健サービスの市町村への移譲や、保健所の機能強化を図るため、施設設備の拡充を図りつつ、集約化が進んだものと認識をしています。
その上で、今般の新型コロナ対応を踏まえ、感染症対応業務に従事する保健師の増員などを図っており、引き続き、新型コロナ対応の中心となる保健所と地域における科学的、技術的中核となる地方衛生研究所の体制強化に努めてまいります。
また、児童相談所については、児童虐待防止対策体制総合強化プランにより、2019年度からの四年間で児童福祉司を約5千人とすることとし、今年度は、計画を一年前倒しし、5260人の児童福祉司を確保できるよう、体制強化に取り組んでおります。
さらに、労働基準監督署についても、長時間労働をなくし、働く方の健康と安全を守るため、必要となる労働基準監督官の人員、体制確保をしっかりと進めてまいります。
そして、裁量労働制についてお尋ねがありました。
裁量労働制の在り方については、現在、厚生労働省の学識者による検討会で、実態調査の結果や労使の現場での運用状況等を踏まえた検討が行われていると承知をしています。
裁量労働制が制度の趣旨に沿って労使双方に有益な制度として活用されるよう、今後とも丁寧に検討を進めてまいります。
また、最低賃金及び賃上げ税制についてお尋ねがありました。
最低賃金については、既に、骨太の方針において、感染拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000円とすることを目指すこととしており、その方針に基づいて、今後も着実にその引上げに取り組んでまいります。
賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものです。税制の効果だけを取り出して経営者の賃上げ判断への影響を測ることは難しいものの、アベノミクスの取組の中で2%程度の賃上げを達成しており、税制もその一助となったものと考えます。
そして、今般、民間企業の賃上げを支援するための税制を抜本的に強化し、企業の税額控除率を大胆に引き上げることにより、企業の実務面を踏まえて、具体的な制度設計を進めてまいります。
ケアワーカーの賃上げについてお尋ねがありました。
今般、新しい資本主義を起動するための分配戦略の柱の一つとして、まずは、国が率先して、介護、保育、幼児教育の現場で働く方や、地域で新型コロナ医療対応などを行う医療機関で勤務する看護職の方々の給与の引上げを行います。
その後、更なる引上げにつきましては、安定財源の確保と併せた道筋を含めて、公的価格評価検討委員会において議論をしていただいております。年末までに取りまとめていただく中間整理を踏まえて、取組を進めてまいりたいと思います。
そして、貧困に関する数値目標についてお尋ねがありました。
SDGsは世界全体の普遍的な目標であり、日本政府も当然その目標を共有しています。その上で、各国の置かれた状況を念頭に、各国政府が具体的な政策等に反映していくものとされています。
そして、御指摘の相対的貧困率ですが、相対的貧困率は、高齢化が進めば、年金暮らし等で相対的に所得の低い高齢者層が増えることで高まることになります。このため、貧困を表す指標として、我が国の数値目標とすることにはなじまないと考えています。
成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現していく観点から、未来を担う若者世代、子育て家庭にターゲットを置いて、男女が希望どおり働ける社会を目指してまいります。このため、女性の就労制約となっている制度の見直し、仕事と子育ての両立支援、家庭における老親介護の負担軽減などに取り組むこととし、全世代型社会保障構築会議を中心に、広く検討してまいります。
あわせて、最低賃金の全国的な引上げや同一労働同一賃金、不合理な待遇等の禁止などの取組に加え、生活にお困りの方を含む全ての方の就労や社会参加を促進できるよう、教育訓練の充実あるいは正社員化の支援に取り組んでまいります。
なお、御指摘の配偶者控除については、配偶者の収入増による税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることはない仕組みとなっております。
いずれにせよ、社会保険や税制の在り方を含め、女性の就労の制約となっている制度を幅広く検討し、その見直しを進めてまいります。
子ども・子育て関連予算についてお尋ねがありました。
子ども・子育て関連予算については、少子化の中で、これまでも、安定財源を確保しつつ、ライフステージに応じた様々な支援を充実させてきたところです。
今後も、費用実態を踏まえた出産育児一時金の支給額の検討や、本年5月に成立した改正児童手当法の円滑な施行を行ってまいります。
さらに、子供中心の行政を確立するための新しい行政組織を設立し、妊娠、出産、子育てしやすい環境整備や、子育て、教育に係る経済的負担の軽減など、子供をめぐる様々な課題に適切に対処するため、安定財源の確保を図りつつ、必要な子ども・子育て支援策を促進してまいりたいと思います。
そして、教育予算についてお尋ねがありました。
子供たちの誰もが、家庭の経済事情にかかわらず、質の高い教育を受けられるチャンスが平等に与えられ、個性や能力を最大限伸ばせるようにすることが必要です。このため、少子化の中、それぞれの学校段階に応じて、必要な予算を措置してきたところです。
具体的には、教育環境の整備に向けて、小学校35人学級やGIGAスクール構想を推進するとともに、教育費の負担軽減に向けて、安定財源を確保しつつ、幼児教育、保育の無償化や、住居費などの生活費への支援も含む高等教育の無償化を着実に実施してきました。
人への分配は、コストではなく、未来への投資です。こうした観点から、今後とも、大学卒業後の所得に応じて出世払いを行う仕組みを含め、教育費などの支援を強化するなど、必要な教育予算をしっかりと確保してまいります。
我が国の科学技術分野の基盤整備についてお尋ねがありました。
科学技術立国を目指す政府として、今後もノーベル賞につながるような基礎研究力を確保していくため、若手研究者等がじっくり腰を据えて研究に打ち込める環境をつくることが何よりも重要だと考えております。
具体的には、国立大学の運営費交付金などの基盤的経費や科研費の確保に加えて、10兆円の大学ファンドを年度内に実現するとともに、博士課程学生への経済的支援、若手研究者の自由な発想による挑戦的な研究への支援、これらを実施してまいります。
これらの取組を通じ、科学技術予算を充実させ、我が国の研究力が世界と伍するよう強化してまいります。
名古屋出入国在留管理局における被収容者の死亡事案についてお尋ねがありました。
まず、亡くなられた方の御冥福を心からお祈り申し上げるとともに、御遺族に対しお悔やみを申し上げる次第です。
御指摘の手紙は拝読させていただきました。御遺族の気持ちはしっかりと受け止めさせていただきました。
今般の事案を受け、法務省において、可能な限り客観的な資料に基づき、外部有識者からの意見もいただきつつ、調査を行い、その結果を踏まえた必要な人事上の処分も行った上で、改善策を着実に進めているものであると承知をしております。
また、御指摘のビデオ映像や関連する文書の提供については、法務省において、法令にのっとり対応しており、ビデオ映像の一部については、御遺族に御覧いただいたものと承知をしています。
いずれにせよ、このような事案が二度と起こらないよう、法務省においてしっかりと取り組んでもらいたいと考えております。そして、私としても、法務省からしっかり報告を受けていきたいと考えております。
選択的夫婦別氏制度及び同性婚についてお尋ねがありました。
選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、子供の氏の在り方についてしっかり議論をし、より幅広い国民の理解を得る必要があると考えています。
また、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはなりませんが、同性婚制度の導入については、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものであると考えております。
いずれにせよ、全ての人々が、お互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を送ることができる、多様性が尊重される社会を実現すべく、しっかり取り組んでまいりたいと考えます。
核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。
我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて、しっかり取り組んでまいります。
核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約です。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加をしておりません。
御指摘のような対応よりも、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしていかなければなりません。そのためには、まずは、核兵器のない世界の実現に向けて、唯一の同盟国である米国と信頼関係構築に努めていきたいと考えております。
普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。
御指摘の地盤改良工事については、沖縄防衛局において、有識者の助言を得つつ検討を行った結果、十分に安定した護岸等の施工が可能であることが確認されていると承知をしています。
工事費については、平成21年に、約3500億円以上との見積りをお示しし、令和元年に、約9300億円との見積りをお示ししています。
工期については、平成25年の沖縄統合計画において、工事に5年を要する旨お示しをいたしました。その後、令和元年には、変更後の計画に基づく工事に着手してから工事完了までに9年3か月、提供手続完了までは12年との見積りをお示ししています。
安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に、優れた機動性と即応性により幅広い任務に対応可能な米海兵隊が駐留し、そのプレゼンスを維持することは、日米同盟の抑止力を構成する重要な要素となっています。
また、住宅や学校に囲まれた普天間飛行場の危険性を除去するため、普天間の三つの機能のうち、二つを県外へ、残る一つを辺野古に移設して、普天間飛行場を廃止する。これが危険性除去の基本です。
日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策です。米国とは、閣僚間を含め様々なレベルにおいて、この方針について累次にわたり確認をしてきているところです。
この方針に基づき着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。
安定的な皇位継承等についてお尋ねがありました。
御指摘の附帯決議に示された課題について、有識者会議において議論が続けられており、これまでしっかりとした議論が丁寧に重ねられてきているものと受け止めています。
ただ、具体的な内容について私の考えを述べることは控えたいと思います。引き続き、この会議の議論を見守ってまいります。
また、政治と金の問題に関して、沖縄県の事案についてお尋ねがありました。
この事案については、当事者間のやり取りについて双方の主張の食い違いが生じています。まずは、当事者において説明される必要があるものと考えております。
また、憲法改正についてお尋ねがありました。
憲法改正について、我々国会議員は、大きく時代が変化する中にあって、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、その在り方に真剣に向き合っていく責務があります。憲法改正に取り組むことは、まさに私の本意であります。
また、憲法五十三条の解釈については、これまで法制局長官が度々答弁してきたとおりであると考えております。岸田内閣においても、その解釈に基づき、憲法の規定を遵守してまいります。(拍手)
■海江田万里 副議長
岸田内閣総理大臣から発言を求められております。
■岸田文雄 内閣総理大臣
済みません、一つ、答弁の中で言い間違いをいたしました。
政治と金の問題について答弁させていただいた際に、新潟県の事案と言うべきところ、沖縄県の事案と申し上げてしまったようであります。
訂正をし、おわびを申し上げます。(拍手)