●西村(智)委員
西村です。
私も、今回の地域共生社会に関する社会福祉法、それから今回の新型コロナウイルスに関するPCR検査等について質問を用意し、通告もいたしておりました。しかし、昨日から急遽情勢が変わりましたので、私も小川委員の後を引き継いで、今回の検察庁改正法案について質問をさせていただきます。
先ほど総理は、今回の法案を廃案にするという可能性も排除しないような答弁をされながら、官が走り過ぎるのではないかという懸念がある、そういう声があるという御指摘をされました。しかし、本当にそうでしょうか。
実は、定年の延長については、もう既に国民年金法の一部を改正する法律案が成立をしておりまして、令和七年度にかけて、六十歳から六十五歳に段階的に公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられるということになっております。また、平成十六年には、定年を六十五歳未満としている民間企業において、平成十八年四月一日から定年の引上げ、継続雇用制度の導入、又は定年の廃止のいずれかの措置を講じなければいけないということになっております。
こういう背景から、平成二十年に国家公務員制度改革基本法が成立いたしまして、ここで国家公務員の定年を段階的に六十五歳まで引き上げることについて政府で検討するということになっているわけでありまして、官が先走っているわけではないんですよ。逆に、今回の法律案が、仮にこの国家公務員法の改正案がこの国会で成立いたしたとしても、六十五歳への定年の引上げは令和の十二年度に完成することになっております。
ところが、民間労働法制では、厚労大臣、御存じですよね、既に七十歳までの就業機会の確保に向けて動き出しておりますので、この法律による定年引上げの完成までの期間中に民間との格差が広がっているという可能性が実はあるわけなんです。ですから、私は、この国家公務員法の一部を改正する法律案から検察庁法案を引き離して、削除して、そして改めて議論すべきだというふうに思います。
ところが、この間の総理の御発言等を聞いていますと、例えば、検察庁法改正案に実は批判が集まっているのに、国家公務員法改正案に国民の批判が集まっている、そういうふうにすりかえをしているわけです。どうしてそういう理解になっているんでしょうか。教えてください。
●安倍内閣総理大臣
既に先ほども答弁をさせていただきましたが、民間においては、公務員と違いまして、選択的に定年の延長をということも書かれているわけでございまして、これは全て定年延長ということではないということは申し上げておかなければならない。一方、公務員の場合は全て定年延長になっていくということで、ここは違うんだということは御理解をいただきたい、こう思う次第でございます。
また、先ほども答弁をさせていただきましたが、検察庁法の中において、この改正案に対する批判については、私もそれは受けとめなければいけないということは先ほども答弁をさせていただきました。定年の特例延長のところについての御批判というものもあるということは受けとめなければいけないということも申し上げているわけであります。
その上において、今、我々も、人生百年時代において、こうした形で能力、経験がある方がそういうものを生かしながら働き続けることができる社会をつくっていかなければならないという中において、年金に対する考え方についても別途お示しもさせていただいているところでございますし、制度の改革も進めているわけでございますが、ただ、同時に、この議論を行っていたときと、それは、非常に労働市場もタイトであった状況の中と、今、このコロナウイルスが拡大している中において、大変民間の方々も苦しんでいる中においてこのまま議論を進めるべきかどうかという御指摘があるのは事実でありますから、そこで基本的によく考えてみる必要があるということを申し上げているわけでございます。
●西村(智)委員
それはやはり議論のすりかえであるというふうに私は思うんですね。
この国会できちんと提出されている法案ですし、国民が批判しているのは検察庁法改正案であるということ、これははっきりと総理から受けとめてもらわないと困ります。そこは改めて申し上げたい。
それから、先ほど小川委員との質疑の中でいろいろ出てきたんですけれども、これまでも、私はいろいろ内閣委員会ですとか法務委員会ですとかの議論を聞いていて、あるいは総理の答弁を聞いていて、なぜ黒川さんを定年延長をするのかということの理由として、余人をもってかえがたいんだ、この人でなければ捜査に重大な支障が生じるんだというふうにずっと言われてきたんです。それは、例のゴーンさんの事件について、それを継続してやるためにということが巷間言われていたわけですけれども、しかし、このゴーンさんの事件、後任の検事長では解決できないという特別な理由が本当にあるのかどうか。私は疑わしいというふうに思っておりますが、よくこれは引き合いに出されるわけです。
そして、余人をもってかえがたいという、その余人が今回いなくなりました。捜査に重大な支障を来すから黒川さんの定年延長なんだと言われていたその重大な支障という事態が、今まさに、現にやってきてしまったわけであります。重大な支障を来すという状況になって、これから先、そのリスクをどうやって回避していけるのでしょうか。
●安倍内閣総理大臣
私が今まで答弁をしていたのは一貫をしておりまして、これから答弁させていただくとおりでありますが、検察官も一般職の国家公務員であり、国家公務員法の勤務延長に関する規定が検察官に適用されるとの今回の解釈については、検察庁法を所管する法務省において適切に行ったものと承知をしている、その上で、黒川検事長については、検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定され、引き続き勤務させることとしたものであり、これを撤回する必要はない、こういうことでございますが、こう答えている。
これ以外に私は答えてはいないわけでありまして、今いろいろとおっしゃったことは私の答弁ではないんだろう、こう思うところでございますが、いずれにいたしましても、今後、後任等につきましては検察庁、法務省において適切に判断をされるもの、このように考えております。
●西村(智)委員
いや、答えになってはおりません。法務大臣からの請議をきちんと閣議決定されているわけであります。このリスクは一体どうやって回避されるのか。これはやはり今後も問題、疑問として残ってくるというふうに思います。
更に具体的にお伺いしたいと思います。
黒川さんは、昨年、東京高検の検事長に就任した際の記者会見で、検事の魂を失ったことはないというふうに述べておられました。これは本当にそうだったのか。記事によれば、あるいは記者の証言によれば、話によれば、三年ぐらい、毎月二回から三回行ってきたということであります。ところが、きょうの午前中の法務委員会でも常習性があったのかということが議論になっておりましたけれども、常習性があったかどうか、どうも調査も行われていないようです。
依存症であったとすれば本当に大変なことだったというふうに思うし、いろいろなプログラムということも考えていかなければいけませんが、この事件、ここまで政府それから国会がもてあそばれた、翻弄されたわけでありますから、黒川さん御本人から、国会に来ていただいて、事実関係を話していただく必要があるというふうに思いますけれども、総理のお考えはいかがでしょうか。
●安倍内閣総理大臣
この厚労委員会の予定の法案に対する質問を我々は六問いただいておりますので、その答弁を我々は相当時間をかけて用意させていただいているところでございますが、それに関する質問が全くないのは残念でございますが、今おっしゃっている質問については、これはそもそも国会でそれぞれお決めになるということは十分承知の上で御質問されているんだろう、こう思いますが、これはまさに国会でお決めになることでございます。
●西村(智)委員
いや、総理が閣議で決め、まさに脱法的な閣議決定で黒川さんの定年延長を閣議で決め、そして、それを後づけで正当化するために今回出されている検察庁法改正案というのがあるわけですから、まさにこれは政府の責任、そのトップである総理の責任以外の何物でもない、私はそういうふうに申し上げたい。
ですから、総理には、もちろん任命責任もありますけれども、なぜ黒川さんの定年延長を決めたのかということについてきちんと説明をする義務、責任があると思います。その点について、総理はいかがお考えですか。
●安倍内閣総理大臣
まさに、私はここには行政府の長として立っておりますので、その意味ではまさに三権分立でございますが、国会の運営については国会がお決めになることだということを、先ほど申し上げさせていただいたとおりでございます。
その上で、人事につきましては、先ほど来答弁をしているとおりでございまして、黒川氏については、検察庁の業務遂行上の必要性に基づいて、検察庁が、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定されるという適正なプロセスを経て引き続き勤務させることとしたものであり、脱法的なものではございません。検事総長にするために勤務延長させたものでももちろんないのでございますが、その上において、黒川氏については、法務省において確認した事実に基づいて昨日必要な処分を行うとともに、本日、辞職を承認する閣議決定を行ったところであります。
また、法務省、検察庁の人事案を最終的に内閣として認めたものであり、その責任については私にあるということは申し上げているとおりでございまして、御批判は真摯に受けとめたい、こう思っております。
●西村(智)委員
訓告についても、先ほど小川議員もおっしゃっていましたけれども、行政処分上の注意でしかないということで、懲戒免職については退職金の全部又は一部を支給しないという規定はありますけれども、それ以外について退職金の規定はありません。ですので、この訓告という処分とあえて言いましょう、訓告をされたことによって、退職金には恐らくほとんど影響は出てこないんじゃないかというふうに思うんです。これは国民感情からしてとても受け入れがたい。
やはり、政府としてきちんとした処分をするために、例えば官房付にして処分の沙汰を待つとか、あるいは懲戒免職にするとか、私は定年延長の閣議決定そのものが脱法だというふうに思っていますので、それをそもそも取り消すべきだというふうな立場でありますから違和感はありますけれども、しかし、やはりそういう重い処分というものが必要ではないかと思います。
総理、いかがですか。
●安倍内閣総理大臣
これも先ほど答弁をさせていただきましたが、これは検事総長が事案の内容等諸般の事情を考慮して処分を行ったものであると承知をしております。いわば、まさに、検事総長がこの内容等、また法務省において事実確認等々を行いながら、その上で検事総長が適切に、適正に処分を行ったものと承知をしているわけでございまして、その上において、その報告が法務大臣からなされ、そして本人が辞意を表明したということでございまして、それを了としたということでございますので、私も了解をした、こういうことでございます。
●西村(智)委員
閣議で了とされた、承認をされてしまったということなんですけれども、そもそものところにさかのぼると、ことしの二月の定年延長の閣議決定、これがやはり私はそもそもの問題の発端だったというふうに思います。
これを、総理、事態も事態ですが、取り消すお考えはありませんか。ここから全てが始まっていて、そして、この検察庁法という後づけの、まさに正当化するための法律が出てきていて、そして国民的な世論が巻き起こって、検察庁法改正案に抗議しますというあのリツイートが大変多くなされたわけであります。ここをやはり閣議決定にまでさかのぼって私はやり直すべきだ、これを撤回すべきだというふうに思います。いかがですか。
●安倍内閣総理大臣
黒川氏については、検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定されるといった適正なプロセスを経て引き続き勤務させることとしたものであり、もちろんこれは脱法的なものではないし、検事総長にするために勤務延長させたものでもございません。
黒川氏については、法務省において確認した事実に基づき昨日必要な処分を行うとともに、本日、辞職を了承する閣議決定を行ったところでございます。既に辞職を承認する閣議決定が行われた中において、勤務延長の閣議決定自体を撤回する必要はない、このように認識をしております。
●西村(智)委員
よく事情がわかっていないのに、なぜ閣議で黒川さんからの辞意を了としたのか、そこも不明なんですね。調査もされていないんですよ。午前中の法務委員会でも本当にいろいろな議論がありましたけれども、全く調査されていない。
本人からの申出があったのでそれを受け取った、そしてそれを閣議で決定したということなんですけれども、なぜ閣議で黒川さんの辞表を受理する、了とするということにしたんですか。その理由を教えてください。
●安倍内閣総理大臣
これは、法務委員会で法務省側に、事実確認を行った法務省側に聞いていただかなければいけないのでございますが、まさに先ほどから答弁をさせていただいておりますように、法務省において事実の確認を行ったということでございまして、その上において、先ほど申し上げましたように、検事総長が事実、事案の内容等諸般の事情を考慮して処分を行ったわけでございまして、検事総長がこのように処分をしていくということについて、この判断をしたということについて森法務大臣もそれを了承したということについて私に報告があったわけでございまして、その判断について、これはもう既に検事総長が判断をしていることでもございますから、私も了としたということでございます。
●西村(智)委員
森法務大臣の慰留の理由も明らかにされない、森法務大臣に対する新たな指示もない、そういった無責任な閣議がこれだけ積み重ねられているということに、私は心の底から恐怖を感じ、私の質問を終わります。