●西村(智)委員
西村智奈美です。
先ほど厚生労働委員会冒頭でも黙祷が行われましたけれども、東日本大震災からきょうで九年です。九年前のあの日とは打って変わって暖かな日となりましたけれども、あの日のことを思い出すと、そしてまた、それ以降起こったことを振り返りますと、本当に胸の締めつけられるような思いがいたします。
私としても、福島の再生なくして日本の復興なし、この思いをしっかりといま一度確かめ、そして、被災地の皆さんに寄り添って一日も早い復興をなし遂げていきたい、その決意を申し上げたいと思っております。
きょうは労働基準法の一部改正案についての審議ですけれども、新型コロナウイルス感染症対策も、昨夕、緊急対応策の第二弾が公表されたということもありまして、その点についても質問させていただきたいと思います。
まず、労働基準法の改正案についてですけれども、今回、賃金請求権の消滅時効期間等が見直しをされることになりました。本則五年としながらも、当分の間ということで、三年、三年、五年、三年と、こういうふうにちょっと短い期間に設定されておりますけれども、実際に、例えば平成三十年で見ますと、労働審判の中で金銭を主たる目的とする申立てがおよそ二千件、また、その平成三十年の中で訴訟に移行した件数がおよそ五百件、労働審判の中に占める割合としてはかなり高い割合になっておりますので、やはりこれは一日も早く当分の間を本則に戻していくことが必要だというふうに考えております。
しかし、審議会の議論の中で、賃金台帳等の記録の保存が負担であるという意見がかなり聞かれて、それで当分の間ということになったんだということなんですけれども、賃金台帳は一旦作成してしまえば保存の負担というのは新たに生じないというふうに考えていますが、そういった声があることに対して厚労省としてはどういうふうに対応していきますか。
●加藤国務大臣
今回の賃金請求権の消滅時効に関して、委員の御指摘の点が一つある一方で、労働者間の公平を図る観点から、改正民法ではこの四月一日以降の契約に限ってということでありますけれども、これでは労働者間でばらばらになるということで、施行日以降に支払い日が到来する全ての労働者の賃金請求権については新たな消滅時効期間を適用するということで、ここは必ずしも民法とそろえているわけではないという部分もあります。
そうしたことも踏まえながら、今委員御指摘のような、労働者の賃金、労働時間等に関する記録についての長期保存だけではなくて、事業主の残業の指揮命令や労働時間管理の方法についても当然長期にわたって保存していく、また、はっきりさせていくことがより求められていくということが使用者側からもあり、直ちに措置することは課題が多いということにされ、労使で御議論いただいた結果、当分の間は消滅時効を三年間にするというふうになったところであります。
五年に延長した場合に、例えば紙媒体の資料の保管スペースをどうするのか、あるいは、電子媒体で記録を保存している場合に労務管理システムの改修が必要になるといったことも考えられるわけであります。こうした対応について、私どもとしても、一定の補助制度、助成制度も設けておりますので、そういったものも活用しながら、そういった課題の一つ一つの解決を一緒になって図っていきたいと思っております。
●西村(智)委員
できるだけ早期に、やはり本則に戻していただきたいというふうに思います。
他方で、賃金の消滅時効期間は当分の間三年、賃金台帳の保存期間も当分の間三年となっております。ところが、賃金台帳の保存期間は現行法でも三年と既になっておりまして、これは、監督上の必要があるということから二年よりも長く設定されていたというふうに思います。今回、賃金の消滅時効と合わせて三年になったんですけれども、労基署が行う監督や指導において影響はありませんか、大丈夫ですか。
●加藤国務大臣
私の記憶では、一方で、刑事の公訴時効が三年だということも、それも含めて三年であったというふうに記憶をしておりますけれども、改正後は賃金請求権の消滅時効期間と記録の保存期間が同一となります。基本的には、消滅時効が満了するまでの間は関連する記録は保存されているため、労働基準監督署の監督指導に大きな影響はないと考えております。
なお、記録の保存期間の起算日については、これは起算日が合わないとずれが出てきますので、労働基準法施行規則において定めており、例えば、賃金台帳については最後の記入をした日、あるいは、タイムカード等の賃金その他労働関係に関する重要な書類についてはその完結の日となっております。
法案成立後は、改正法の内容や、賃金請求権の消滅時効期間が満了するまでの間は関連する記録の保存は当然必要になりますので、そこは適切に周知を図るとともに、労働基準法施行規則の改正等の具体的な措置についても、よく労使と相談をして、実効性のある対応がとれるようにしていきたいと思っています。
●西村(智)委員
災害補償請求権について最後に伺いたいと思います。
これについては現行のまま二年とされたんですけれども、そもそも審議会で十分に議論されておりましたでしょうか。
例えば、業務に起因してメンタルヘルスに係る疾患を発症した場合に、こういったケースというのはすぐに災害補償請求はできないと思います。ある程度治癒してから請求しようとした場合に、消滅時効によって請求権が消滅している場合もあると考えられます。
災害補償請求権は労災保険とあわせて見直す必要があるのではないかと考えますけれども、いかがですか。
●加藤国務大臣
災害補償請求権は、労働基準法上創設された権利であります。これまでも、民法の一般債権の消滅時効期間は十年とされた中で、労基法では二年の消滅時効期間とされております。今回の民法改正で一般債権の消滅時効期間が原則五年となった場合においても、現行の消滅時効期間である二年を維持したところであります。
災害補償の仕組みでは、労働者の負傷等の業務起因性を明らかにする必要があるわけですが、時間の経過とともにその立証は困難となり、早期に権利を確定させ、労働者の救済を図る必要があること、また、労災事故が発生した際に早期の災害補償の請求を行うことにより、企業に安全衛生措置を早期に講ずることを促すことにつながり、労働者にとっても迅速な職場復帰を果たすことが可能となるといった効果が見込まれるといった議論もあって、労政審の審議において、現行の二年を維持するということが適当とされたと承知をしております。
なお、災害補償及び労災保険給付の請求権の消滅時効については、疾病に罹患する等により実際に療養や休業等をするときから進行するものであります。メンタルヘルスのような疾病については、現実に療養等をした時点から消滅時効が進行するということになります。
●西村(智)委員
答えていただいていないんですけれども、審議会の経緯をたどってみても、十分に議論は行われていません。やはり労災保険のあり方とあわせてしっかりと今後の課題として見直していっていただきたい、そのことは強く申し上げます。
それで、昨日の夕方、新型コロナウイルス感染症対策の緊急対応策第二弾を決定をいたしました。雇用の維持と事業の継続、これを当面最優先にするという文言も見えまして、ぜひともというふうに期待をしたいところなんですけれども、これまで私たちが聞いております範囲の中で、スピード感のある、そして十分な対応がなされているとはとても言えないと思っております。
例えば、政策金融公庫に融資の依頼に相談に行った。他の条件をみんな満たしているんだけれども、例えば、返済計画はどうですかと事業主の方が聞かれたときに、新型コロナウイルスの感染症の影響がどこまで出るのかわからないということから、返済のことについてなかなか事業主の側から積極的な話ができないということで融資が受けられなかったり、それから、ほかの条件が全部満たされているのに、なぜか窓口のところで、時間がかかります、二カ月、三カ月かかりますと言われている事例、こういうのがあるんですよ。一カ月でも大変なのに、二カ月、三カ月待たされたらどういうことになりますか。もっとスピード感を持ってやってもらいたい。これは本当の、文字どおりの死活問題ですよ。
中小企業庁、どうですか。例えば、融資をすると、お金はつけると、枠で確かに第一弾、第二弾は出ていますよ。出ているけれども、実際にそれが回るかどうかというところが大事なので、もっとスピード感を持ってやるべきだと思いますけれども、いかがですか。
●奈須野政府参考人(中小企業庁事業環境部長)
お答え申し上げます。
御指摘のとおり、中小企業の事業継続に対して、資金繰りの確保というのは何よりも重要な課題でございます。そのため、日本政策金融公庫、それから全国の信用保証協会に対しては、事業者の実情に応じた柔軟な対応に全力を挙げて努めるよう要請しております。具体的には、赤字であるとか、債務超過であるとか、あるいは条件変更先である、こういった形式的な事情のみで判断するのではなくて、事業者の実情に応じて柔軟な対応を行うということを求めております。
とりわけ、現在、年度末になっております。資金繰りの重要さが一段と高まる時期であるということを踏まえまして、融資や保証の手続を一層迅速化するということが重要と考えております。このため、相談の受け付けや審査、それから実行に最大限のスピードを上げて取り組むよう求めております。
それでも遅いという御指摘がございました。確かに、全国の保証協会あるいは公庫の窓口には相談が今殺到している状況でございます。
こうしたことを踏まえまして、日本政策金融公庫では、本部の人員からの応援の派遣、支店の営業時間の延長、それから千六百名規模の定期の人事異動の凍結、こういったことをやっております。また、信用保証協会では、柔軟な人員配置による相談・審査体制の強化、それから休日の相談受け付け、平日の相談時間の延長、こういったことに取り組んでおります。
また、今後の先行き、返済の見通しがつかないという御指摘もございました。
今回、第二弾の対策の中では、特別貸付制度というのを設けております。この中では、元金の返済の据置期間を、これまでの最長三年以内から、これを最長五年以内に長期化するということによりまして、新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかわからない、こういう中におきましても、まずは事業の再建、事業の継続にじっくりと取り組むというような期間を確保することで、返済計画を立てやすくするように工夫しております。
こういったことを踏まえまして、事業者の資金繰りに支障が生ずることがないよう全力で応援してまいりたいと考えております。
●西村(智)委員
現に支障は生じています。生じているから、いろいろな声がいろいろなところで上げられています。そのことを真剣に受けとめていただいて、スピード感なんて生易しい言葉じゃない、すぐやってください。今いいことをいろいろ説明していただきましたけれども、それが本当に現場でちゃんと回るように、すぐやってください。強く要請します。
もう一つの死活問題、今度は働く人たちの生計、生活のことについて伺いたいと思います。
全国一斉の休校要請がなされました。それによって影響を受けている保護者の方は大変多いです。しんぐるまざあず・ふぉーらむといいます、一人親の方々、その当事者や支援者の方でつくっている団体のアンケートによると、十八歳以下の子供がいる一人親の四三%が、この学校休業に関連して収入が減る、三%が収入がなくなると答えています。また、どうしても仕事に行かなきゃいけないということで、低学年の子供を置いて、葛藤を抱えながら仕事に行っているという一人親の方もいらっしゃいます。
そういった中で、臨時休業による助成金制度が創設されるということなんですけれども、私が承知している限り、どういう条件の人が、どういう手続をとって、どういうことが認められればその助成金の対象になるかということがいまだに明らかになっていないんじゃないかというふうに思うんです。
何をもって、どういう条件で、新型コロナウイルス感染症による影響で休業している、学校休業の影響によって休業しているというふうに判断をされ、助成金の対象となるのか、そして、支給額はどういうふうにして決定していくことになるのか、現状で決まっていることをお話しください。もしそれが今答えられないということであれば、いつまでに示されるのか、その時期を明確に話してください。
●加藤国務大臣
まず、助成金の対象となるのは、二月二十七日から三月三十一日までの間に、新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業などをした小学校等に通う子供や、新型コロナウイルスに感染した又は風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある小学校等に通う子供の世話を行うため、保護者に休暇を取得させた事業主を助成する、これが一つの制度であります。当然、事業主から保護者の方に本来の給与が支払われるということが前提になり、それに対する、最高八千三百三十円を上限として、全額国費でその分を助成する、これが一つであります。
それからもう一つは、個人で就業する予定であり、また、業務委託契約等に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われており、発注者から一定の指定を受けるなどの場合において、先ほど申し上げたような、子供さんを世話するため、その仕事をとめなければならない、そういった方に関しては、これは個別に支給するということになります。就業できなかった日、一日当たり四千百円をお支払いする、こういう仕組みであります。
●西村(智)委員
今のは全く無回答なんですけれども。それだったら、これまで出ているペーパーを読めばわかりますよ。
私が伺いたいのは、どういう条件で、新型コロナの影響で例えば休業して所得が少なくなったとかいうことが証明されて対象になるのか、その詳細をいつ示してもらえますかということなんです。答えてください。
●加藤国務大臣
今委員がおっしゃっているのは、いわゆる雇用されている人でない場合ということでおっしゃっておられるというふうに……(西村(智)委員「雇用されている人もです」と呼ぶ)ですから、雇用されている人はもうはっきりしているのであって、引き続き雇用がなされて賃金が支払われている、そのかわり、いわばその中において休業が認められている、そうした方に対して賃金が支給されていることに対して、国として先ほど申し上げた八千三百三十円を上限として企業に対してお金を支給する、こういうスキームであります。
●西村(智)委員
結局、企業に対して助成金が支払われるわけですよ。働いている雇用者の方々は、例えば休んだときに、休むといってもいろいろな理由はありますけれども、本当にその新型コロナウイルス感染症の影響で休んだのかということをやはり企業の側は判断しますよね、そこは。そうでない理由であれば、企業の側は出さないということになりますよね。
きょう資料でおつけしている一枚目なんですけれども、これは新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金の詳細版というものです。この右下の方に驚きマークがついていて、「小学校等の臨時休業等により子どもの世話が必要となる労働者に有給の休暇を取得させましょう!」というふうに書いてあります。
つまり、有給休暇というのは企業が、例えば働き方改革で年間の日数が義務づけられましたけれども、有給休暇というのはやはり労働者にとってはなかなかとりにくいものだ、それを事業主、雇用主の側が取得させるということがあって初めて取得できるものであって、それを、本当に新型コロナウイルスの影響かどうかというところを見きわめた上でこの助成金というのは支払われるはずのものであろうから、やはりそのあたりはちょっと不明確なんだと思うんですよ、私は。
それで、やはり、本当に休んだ分だけの賃金相当額が支払われているのかどうかということは政府の責任においてきちんとチェックをする、これが必要だというふうに思うんですけれども、その点については、大臣、いかがですか。
●加藤国務大臣
通常の年次休暇の話をしているわけではなくて、それとは別途に有給で休ませていただきたいということを申し上げています。当然、有給ですから、その間に賃金が支払われていなければなりませんから、それは確認しなければ今回の新しい助成金を支給することにならない。それから、その場合の対象については、これは幅広く考えていまして、まず、学校が休業であれば、基本的に、それに伴って子供さんがいるわけですから、そういった子供さんがいる方が休まれればそのまま対象になる。
それと、もう一つの、感染したとか、風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれがあるという場合については、これは、必ずしも受診をしていなくても、企業側から、そういった事情があったね、一定休んだねという中において休業が認められていれば今回の支給の対象になるということであります。
●西村(智)委員
そこはしっかりとチェックをしていただきたいと思います。
あわせてなんですけれども、先ほど大臣もちょっと触れられましたが、フリーランスや自営業の方々、こういった方々へも助成金が、対象になるということになったようなんですけれども、一日四千百円だという話なんですね。
今、全国で最低賃金はどのくらいでしょうか。大体、全国でざっと見て四千百円というと、いいところ、最低賃金の四時間分とか五時間分とか、そのぐらいにしかならないと思います。これは低過ぎませんか。もうちょっと増額すべきではありませんか、大臣。
●加藤国務大臣
今回の臨時休業要請によって、小学校等に通う子供さんの世話を行っている、そういった中で、業務委託、要するに、雇用関係の方は、正規でも、いわゆる非正規の方についても先ほどの仕組みで対象になる、しかし、それ以外で働いている方もいらっしゃるという中において、個人で業務委託契約等で仕事をされている場合についても何か考えていく必要があるのではないか、こういう御指摘をいただきました。
ただ、具体的に、その方が一体どこまで働いているかというのはなかなか把握しづらい部分があります。そういった意味において、働き方や報酬の定め方が多種多様であるということ、それから、個々に細かく求めていけば膨大な提出資料をお願いしなければなりませんし、一方で膨大な作業が必要になって、結果として支給時期がおくれてしまうということもございます。
そういったことで、現在、上限額が一般の方は八千何がしでありますから、それを見込みながら、そして、通常四時間程度ということであれば、東京都の最低賃金、これは一千十三円でありますから、その四時間分ということで四千百円、こういったことを一つの基準として出させていただいたということであります。
●西村(智)委員
基準というふうに言われますと、何か基準から上がったり下がったりというのがありそうな口ぶりですけれども、ないんですよね、これは。四千百円と決まっているわけです。
さっき大臣はいみじくもおっしゃいました、どういうふうに働いているのか把握しづらいと。ただ、このフリーランスとかという多様な働き方、多様で柔軟な働き方をまさに推進してきたのが今の政権ではありませんか。どういう働き方をしているか把握できないままいろいろな類型をつくり、そしてそれをもてはやし、多様な、柔軟な働き方であることがすばらしいことのように喧伝して、他方で、そういった働き方の人たちに対する雇用類似の保護のあり方については何の検討もなされてこず、そして今、セーフティーネットがない状態でこういうことになった。
この流れからすると、私は、雇用と同じように、生活が成り立つという水準まで、やはり、この雇用類似、フリーランスとか自営業とか、そういった方々への補償があるべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがですか。
●加藤国務大臣
ですから、フリーランスといった中、要するに、多様な働き方を私たちは推進させていただきました。したがって、それを踏まえて、まさに多様な働き方をされている方がおられます。それを一くくりといっても、これは別途フリーランスの議論をさせていただいていますけれども、今回は、そういった中で、非常に難しい言い方なんですけれども、まさに雇用されている方と一定程度類似性で見ることができる部分、そこのところについては何がしかの手だてができないかということで、先ほど申し上げたような仕組みをつくらせていただいたということであります。
フリーランスといっても、すごく高額にお金を取っている方もおられるし、そうでない方もおられるし、いろいろなパターンがあるわけであります。したがって、今回は、そうしたフリーランスを対象にするというよりも、業務委託を受けて仕事をされている方々ということを対象にこういった仕組みをつくらせていただいたということであります。
●西村(智)委員
政府が、安倍政権が推進してきたんですよ、多様な働き方というのを。しかし、その働き方になってみたら、現に非常に不安定で、特にこのような新型コロナウイルスの影響が非常に大きいというときには、保護のあり方が何もない、こういったことはやはり私は政府の責任だというふうに思います。
ですので、この四千百円について、いろいろな方がいらっしゃるとは思うんですけれども、生活が成り立つ水準か。さっき私は申し上げました、最低賃金の大体四時間分とか五時間分、それでとても生活が成り立つんでしょうか。そういったこともよくよく考えていただいて、改めて、この水準については見直しを、あるいは助成のあり方については見直しをお願いしたいと思っております。
ちょっと時間が限られてきました。きょうは内閣府から副大臣もお越しいただいております。
新型コロナウイルス感染症対策については、昨日、新型インフルエンザ対策特措法の改正案の閣議決定がされたと承知いたしております。私は、新型インフルエンザ感染症特措法の中で、実は法改正しなくても新型コロナウイルスというのは対象にでき得るというふうに考えております。
それで、そう思って政府のこれまでの発信をいろいろ見てみたら、資料におつけしているんですけれども、三枚目、総理が二月二十九日の記者会見で、未知のウイルスとの闘いというふうに述べておられました。
二月二十九日は、総理が国民に向かって記者会見をするというので、私も非常に注目をして聞いたんですけれども、具体的なことが何もなく、プロンプターを見ながら、そして、記者とのやりとりでは紙を見ながら、でき上がった原稿を読んでいるだけのようでありました。その中で、未知のウイルスというふうに述べておられるわけです。
ところが、資料の四枚目を見ていただくと、これは内閣官房国際感染症対策調整室のツイートですけれども、この前、参議院の予算委員会でも問題になったツイートですが、その真ん中ぐらいにあります連続しているツイートの最後の方、ここに、現行の新型インフルエンザ等対策特別措置法では未知のウイルスしか対象としておらず、新型コロナウイルスはウイルスとしては未知のものではないので、今のままでは対象とならないというふうに書いております。参議院の予算委員会で問題になったのは、この連続ツイートの二つ目です。
ということは、総理は二月二十九日の時点では未知のウイルスと言っている。内閣官房は三月六日の時点で未知のウイルスではないと言っている。恐らく文脈が違うから違うんですというふうに言うんだと思うんですけれども、それだったら、なぜ、総理は二月二十九日の記者会見であえて未知のウイルスという言葉を使ったんですか。
●宮下副大臣(内閣府副大臣)
お答えをいたします。
二月二十九日の安倍総理の記者会見の引用をいただいているわけですが、実は、おつけしている前に総理が最初にコメントされている部分があります。そこに総理がどういう意図で未知という言葉を使われたのかが明確になっている部分がありますので、御紹介いたします。
そこは、今回のウイルスについては、いまだ未知の部分がたくさんあります、よく見えない、よくわからない敵との闘いは容易なものではありません、これを、次、未知の部分が多いというふうに言って、三回目には、未知のウイルスというふうに、未知を三回使われているんですけれども、一番詳しく述べられているのは、今回のウイルスについていまだ未知の部分がたくさんある、この部分だと思います。
事実関係を申し上げますと、ウイルス自体は、二月一日以前にCOVID―19というウイルスが七番目の人に感染するコロナウイルスということで特定をされておりまして、二月一日に指定感染症の指定を受けております。
事実関係としては、ウイルスとしては既知の分類で、感染症法に既に位置づけられているという状態で総理の記者会見が行われた。ツイートについては、そういったことでいえば、コロナウイルス特措法では、未知の疾病についていうと、ウイルスが特定されていないものを新感染症として対応することは可能ですけれども、既にそのときに指定感染症として、ウイルスが特定された疾病として分類されている、これについて特措法でも対応していくには法改正が必要だ、その文脈で未知のウイルスではないという表現を使ったということだと思います。
●西村(智)委員
でありますけれども、では、未知のウイルスではないけれども既にある感染症、これはどういう理屈ですか。三月四日のぶら下がり会見で、総理は、今度は既知の感染症だというふうに言っているんですね。ウイルスと感染症はやはり異なるというふうに思うんですよ。異なるんだけれども、感染症の中にはウイルスという要素、いろいろな要素も入ってくる。
未知のウイルスなんだけれども既知の感染症になるというのは、これはどういう理屈でそうなるんですか。私、今の副大臣の答弁を聞いていても、何か、新型インフル特措法を改正する理由をあえて探そうとして、無理やり感染症法の定義、解釈を変えて、そして新型インフル特措法の解釈を変えて答弁しているというふうにしか聞こえないんですね。後づけですよ、まさに。
副大臣、どうですか。既知の感染症である、これはどういう理屈でこういうふうに言えるんですか。
●宮下副大臣
法的な整理としましては、ウイルスが特定しておって指定感染症に指定をされている、この時点で既知の感染症となる、こういう法的な位置づけであります。
ただ、総理が言われた未知の感染症、その前に、未知の部分がたくさんあるウイルス、こういう面はいまだそのとおりでありまして、治療法も確立しておりませんし、検査法もまだ開発途上ということもあります。そういったことを受けているということであります。
感染症法上は疾病を指定しますので、ウイルスを指定するということではない、そういうことでも、ウイルスと感染症、疾病とウイルスの関係は法律の位置づけとしては異なっているということだと思います。
●西村(智)委員
治療法もない、ワクチンもない、副大臣もさっきそういうふうに答弁されました。これは未知の感染症そのものじゃないですか。やはり、今のような、何かとにかく言葉だけで取り繕おうとするような、また、ごまかそうとするような答弁はやめていただきたいと思います。
先週の金曜日、公明党の高木委員もこの場で、未知のウイルスとの闘いというふうにおっしゃりながら、実は、新型インフル特措法というのは、このような、新型コロナのような状況に対応できるようにも立法したはずだというふうに趣旨も述べておられました。私もそういうふうに読みますし、また、この法律は、水際対策の早い段階で国や自治体から備えてもらうためのものであるというふうにも私は承知をいたしております。ですので、やはり、この国会の中にいる人たちは、新型コロナウイルス感染症が感染症法第六条第九項の新感染症の対象とできて、そして、行動計画などをつくって備えることができるというふうに考えている人たちが多いんですよ、実際のところ。だけれども、総理が非常に法改正ということにこだわっている。
新たなカテゴリーがこれでつくられるということになります、新インフル特措法で。こうしますと、新たな感染症が全国的かつ急速な蔓延のおそれがあるとしても、その都度改正案をつくって閣議決定して、国会を通して法改正してようやくその特措法の対象とするという、非常に時間がかかる手続の前例ができてしまうことになります。
今、新たなウイルスがグローバル化した世界の中で出てくるという可能性はないとは言い切れません。大臣は、これまで新型コロナウイルスの対応に当たってこられましたけれども、特措法の対象にするのにこうやって法改正を一々しなければいけないということについてどういうふうにお考えですか。
●加藤国務大臣
これはかなり深い議論なんだと思います。
新型インフルエンザ特措法というのは、かなり私権を制限するという法律であります。新感染症だって該当だ、みんな該当だ、該当だ、該当だといったら、何でもできるようになりかねない。今回のようにウイルスがはっきりしているものすら新感染症だというような指摘がなされ、もちろん、かつてのSARSのように最初わからなければ、これはもちろん新感染症であります。
ただ、新感染症の場合の手続は非常に厳密に感染症法ではつくられておりまして、一件一件、都道府県がさまざまな措置をする場合には厚労大臣に伺いを立て、また、厚労大臣は厚生審議会に諮りという、非常に厳密な定義をつくられているというのがまさに新感染症のケースでありますから、ある意味では使い勝手が悪いです。それに比べたら、指定感染症の方がはるかにいろいろな措置が任意でとれるという部分もあります。
それから、逆な言い方をもっとすると、では政令で定めるものにすればよかったじゃないかという議論があるんだろうと思います、政令で定めれば何でもできますから。ただ、そうしなかったという当時の議論、ちょっと私はそこまでわかりませんが、多分そこは、まさにこの新型インフルエンザ特措法の持つそうしたある意味では強権性といったものをどう判断するのか、さまざまな議論があったのではないか。これは私の推測であります。
したがって、今回の措置は確かに迅速性という意味においては欠けるかもしれませんけれども、ただ、こういった本当に私権を大きく拘束するようなものに対してどう適用するのかについては、それぞれ我々も議論していかなきゃいけない部分はあるんじゃないかなと思います。
●西村(智)委員
私権を制限するがゆえに、非常に慎重な議論が必要だと私も思います。
それで、副大臣に最後に伺いたいのは、政令で定める要件に該当したときに緊急事態宣言を実施するということになっていますけれども、非常に曖昧なんですね。要件一について今具体的にどういう検討をされているのか、教えてください。
肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚労大臣が定める重篤である症例の発生頻度が季節性インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いというふうになっていますけれども、実は、我々のところへの口頭の説明では致死率の比較なんという話があったんですけれども、具体的にどういう状況、どういう基準をあらわすことになりますか。やはり、あらかじめ明らかにしておく必要があると思います。
●宮下副大臣
現在の状況をまず御報告いたしますと、この新型コロナウイルス感染症に関しまして、まず、世界保健機関、WHOが季節性インフルエンザよりも深刻な病気を引き起こすと発表したということが事実としてございます。また、専門家会議の議論を踏まえて、二月二十五日に策定されました新型コロナウイルス感染症対策の基本方針におきましても重症度についての記述がありまして、季節性インフルエンザと比べて高いリスクがある、こういうふうに現状認識はされているということであります。
ただ、一定の要件を満たせば自動的に緊急事態宣言が出るかということに関して言えば、この立法時の中川大臣の御発言等々を見ましても、ここは総合的に判断するとおっしゃっていらっしゃいます。
また、要件一を満たしているかどうかということについても、実際に、WHOのこういった判断等々、それから専門家会議での判断はあるんですけれども、改めて数値を比較する場合に、対象集団の年齢とか地域の特性などに注意を払ってしっかりそこを判断する、その上で、要件二についてもチェックをした上で、最終的に総合的に判断する、こういうプロセスをとるということを考えているところであります。
●西村(智)委員
極めて不十分な答弁ですけれども、残念ですが、時間になりました。ほかの質問も残していましたが、終わります。