●西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。
まず冒頭、厚生労働委員会が再開し、私たち野党もきょうから質疑をさせていただきますが、委員長、この間の委員会開催経過について、私たちは強く抗議したいと思っております。
政府・与党が大変不誠実に、私たちの問題点解明に向けて何ら努力をすることなく委員会開会を強行し、そして質疑時間を十時間五十分も空回しをして、その上、一般質疑までも一時間五十六分空回しした。あり得ないことです。
柳瀬元秘書官の参考人招致、予算委員会での出席がようやく認められるということで、今週から私たちも復帰いたしますけれども、ぜひ今後はこのようなことが決してないように、そして、私たちの質問時間が……(発言する者あり)
●高鳥委員長 御静粛にお願いいたします。
●西村(智)委員 大切な質問時間が削られてしまいましたので、生活困窮者自立支援法と生活保護法に関する補充質疑もしっかりとやっていただきたい……(発言する者あり)
●高鳥委員長 発言中ですから、御静粛にお願いします。
●西村(智)委員 そのことを強く要望いたします。委員長、いかがですか。
●高鳥委員長 この際、一言申し上げます。
四月十八日以降、委員会の運営が円満にならなかったことにつきましては、まことに遺憾に存じます。
当委員会は国民生活に直結をした重要な課題が数多くございますので、充実した審議が行われるよう、委員長としても引き続き努力をしてまいります。理事、委員の皆様の御協力をよろしくお願いいたします。
●西村(智)委員 今回のことは、厚生労働委員会は確かに、それ以外にも野村不動産の特別指導のことですとかいろいろありました。しかし、全委員会がとまっている中で、厚生労働委員会だけが単独で開催されて、しかも空回しです。これは本当におかしい。厚生労働委員会の質疑時間がこんな形で浪費されるということは、あってはならないことだと思います。
改めて強く抗議をし、そして補充質疑も時間をしっかりとっていただきますように、改めて、重ねてお願いをいたします。
それでは、質問に入ります。
働き方改革ということですが、閣法に入る前に、やはり野村不動産の特別指導に関する件についてはしっかりと確認をしなければならない。政府・与党がこの働き方改革に関連する法案を提出する資格があるのかどうか、そこのところが問われる問題であるというふうに思うからでございます。
私、きょう、資料で、新聞の切り抜きを配付させていただいております。この後質問する我が党の委員、それから他党の委員からも同じような質問があると思いますが、厚生労働省は、野村不動産の社員の方が過労死をしていたということを労災認定する方針を、既に昨年の十月三日に固めていたということでありました。
なおかつ、この十月三日に労災認定をするという方針を固めたというその件については、調査復命書というものが作成されている。その調査復命書は、朝日新聞の情報公開請求によれば、ほぼ黒塗りだったということなんですけれども、それが十月三日だったということで、これが厚生労働省関係者への取材でわかったということでございました。
そして、その後、記事にもこういうふうに書かれています。通常であれば、復命年月日から遅くても二週間ほどで労災認定がされるはずであると。しかし、この件、野村不動産の特別指導については三カ月近くもかかっているわけですね。十月三日から、なされたのが十二月の二十六日でありますので、こんなに長くかかるのは異例で、聞いたことがないということでありました。
加藤大臣、加藤大臣は、十一月の十七日から十二月の二十二日にかけて、特別指導について厚労省から説明を受けておられます、三回。この中で、既に過労死の認定がされるということを大臣は知っていたのではないですか。
●加藤国務大臣 今の御質問は、要するに、その三回にわたる資料の中に過労死に関する記述があったのかどうか、こういう御質問なんだろうというふうに思います。
これについては、従前から申し上げておりますように、こうした端緒等あるいは経過等については、監督指導、あるいは、更にそこから特別指導につながるわけでありますけれども、それについては控えさせていただくということを申し上げてきました。
それからもう一つは、やはり、この本件の、ある意味では、この過労死ということについて、御遺族からそれは認めてくださいというお話がありましたけれども、具体的にどういう、内容については、これまでの私どもの知っている例では、御遺族ないしその代理人の方がこうこうこういうことがありましたということを公表され、それをベースに私どもも対応させていただいておりますが、今回はこちらの方から、厚労省の方から、認めてくださいということでいろいろお話があり、委員御承知のようにいろいろなやりとりをした結果において、労災認定をしたということ、そして平成二十九年十二月二十六日であるといったことに限ってお話を、御本人の同意、そして個人情報保護法等の考えで私どもはさせていただいている。
そういうことから、それを超える情報については、やはり私どもとしては、個人情報保護という観点から守っていかなきゃいけない、そういった観点で、それぞれ既に三回の、日にちも明示しておりますから、そこで具体的にということになれば、申請がいつになったか等々にもつながるわけでありますから、それは答弁は差し控えさせていただいているということで一貫してお話をさせていただいているところでございます。
●西村(智)委員 この間、理事会、理事懇談会でも資料の要求を厚生労働省にさせていただいております。
過労死という言葉だけでもマスキングが外せないのか。私たちはそれは可能だと思っています。御家族の方が過労死であるということをお認めになっておられるわけだし、過労死があったときには全てのケースにおいて厚生労働省は管理監督に入るということは、これはもう既に公にしておられるわけですね。だから、過労死があったということを認めたとしても何ら問題はないはずだというふうに思うんですけれども、なぜいまだに隠しているんですか。
●加藤国務大臣 先ほどから申し上げていますように、特に先ほどの答弁の後半で申し上げた、本件について申し上げる範囲は非常に限定をされているわけでありまして、じゃ、具体的にいつ労災申請をしたかということについては、これは申し上げないということになっているわけでありますから、それにかかわるような話、この答弁は差し控えていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。
●西村(智)委員 いつ労災申請をしたかということを教えてくださいとは私は申し上げておりません。
あの報告文書の中に過労死という言葉があったということを認める、それはそんなに、今後の厚生労働省の指導や監督に影響を何ら与えるものではありません。なぜならば、過労死があったら管理監督にしっかり入りますよということを厚生労働省自身がおっしゃっているからなんです。
もう一回伺います。なぜ明らかにできないんですか。
●加藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、一般論として、過労死事案があればそれに対してしっかり監督指導を行う、これは従前から申し上げてきているとおりであります。
ただ、本件は、先ほど申し上げたように、申請の話って、それはだって、この時点において知っていたとなれば、その時点より少なくとも以前において申請がなされていたということを明示することになるわけですから、そこは慎重に避けているわけでありますが、ただ、申し上げているように、今前段で申し上げたように、過労死があればそれに対して監督指導をしっかりやっていくというのは、これは当然の姿勢であります。
ただ、何が端緒であるか等々、あるいはその経緯においてどういうことがあったか等々、これをつまびらかにするということは、今後の監督指導あるいは企業等の協力、こういったことにも支障があるということで、その点については開示あるいは答弁等を差し控えさせていただいている、こういうことであります。
●西村(智)委員 大臣、私は、端緒が何だったんですかということも聞いておりません。はぐらかさないでください。端緒は聞いておりません。あの経過の説明の中に過労死という言葉があったのではないか、それを外すことには、今後の調査についても何ら問題はないのではないかというふうに申し上げております。
この記事によりますと、調査復命書は十月の三日付であったということであります。この記事が、私もけさ見たばかりですので、その調査復命書そのものも見ておりません。
昨日から、我が党それから国民民主党の委員から、この復命書について資料として提出をしてほしいという要求をいたしておりますけれども、それはそろそろ出てくるでしょうか。この後の委員の質疑についても必要な書類だと思いますので、速やかに提出をお願いしたいと思いますが。それは役所の方に聞いたらいいのかな、大臣、聞いておられますでしょうか。
●加藤国務大臣 理事会でお諮りになっているというふうに承知をしておりますので、理事会からの御指示があれば、これはもう既に開示をしている資料でございますので、対応させていただきたいと思っております。
●西村(智)委員 私の質問までには間に合わないということは大変残念ですけれども、この後、初鹿委員からの質問でも同じことを質問されると思いますので……(発言する者あり)
●高鳥委員長 御静粛にお願いします。
●西村(智)委員 ぜひ提出をお願いしたいと思います。
その上で、三カ月もかかっているというのは極めて異例だということであります。やはりこれは、言い方は悪いですけれども、この野村不動産に関する特別指導は、かなり政治的に行われたのではないか、政治的な意図を持って行われたのではないかというふうに、臆測といいますか、推測が更に強まったということだと思っております。このことについては、またその復命書の提出を待って他の委員からの質問をしていただきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
さて、次に、裁量労働制のデータ問題について改めてもう一回伺いたいと思います。
私がこの厚生労働委員会で質問をしたときに、加藤厚生労働大臣は、裁量労働制のデータの比較が不適切であったので、あのデータそのものを撤回するというふうに答弁をされました。私も、撤回をされたということがあったので、いっときはそれで、この問題、一つの区切りかなというふうには思ったんですけれども、しかし、その後、やはりいろいろ経過を見てきますと、政府の中で、あるいは省内で、恣意的に捏造された疑いが非常に強いというふうに思うに至りました。
それで、それをもってでも、私はこの委員会で質問するのはどうしようかなというふうに思っていたんですけれども、当時の厚生労働大臣政務官であった橋本岳委員が、御自身のフェイスブックで、野党からの執拗な要求があったので、役所の方が無理やりつくったデータがあれだったのであって、言ってみれば、厚生労働省の人たちが、寝ないで、眠い目をこすりながら、非常につくり方はまずかったけれども頑張ってつくったデータであるということで、何か私たちがすごく強力に要請して、出せ出せと言ったから無理やりデータをつくって出しましたというふうな、そういう書かれ方をしているのを見てしまったんですね。
私、それを見て、それは違うだろうというふうに思いました。
ちょっと確認をさせていただきたいことがあります。
あのデータが一番最初に出てきたのは、二〇一五年の、当時民主党の部門会議であります。二月か三月かだったでしょうか。実はその前に、二〇一四年の段階で、JILPTが裁量労働制の労働時間等について調査を行っておられますね。この調査は、厚生労働省の要請によって行われたものでしょうか。
●加藤国務大臣 御指摘の調査は、厚生労働省からの要請に基づいて、JILPTにおいて行われたというふうに承知をしております。
●西村(智)委員 そういたしますと、当然、言わずもがなのことだと思いますけれども、独立行政法人JILPTが調査した結果というのは厚生労働省も承知をしているはずなんです。
その厚生労働省が要請した調査でJILPTがどういう結果を出してきたかといいますと、もうこれは既に何回も出ておりますが、私もきょう資料に配付しております図表二というもので、一カ月の実労働時間、専門業務型裁量制と企画業務型裁量制と通常の労働時間制ということで、この三者の労働時間を、適用労働時間を比較をしていて、これを見ると一目瞭然なんですよ。専門業務型裁量制、企画業務型裁量制、これらは、比べると通常の労働時間制よりも労働時間が長い傾向が、これはもう一目瞭然ですよね。
なぜこれを、では民主党の当時の部門会議に資料として出さなかったのですか。
私たち、その当時、想像すると、質問していたのは、何か一般の労働者とそれから裁量労働者と比べて労働時間の比較がどうなっているのかということを恐らく聞いていたと思うんですよ。であれば、これを出していただければ十分その答えになったと思うんですけれども、なぜこれを出さずに、無理やりつくった九時間十七分、そして九時間三十七分、こちらのデータの方を出してきたのか。大臣はどういうふうに思いますか。
●加藤国務大臣 当時、私はその部門会議に出ていたわけではないので、ちょっとその辺の具体的なやりとり等々、実際に承知しているわけではありませんが、当時の担当者等から聞いている範囲でお答えをさせていただきたいというふうに思います。
一つは、その部門会議には、私どもが二十五年のときに出した、二十五年のときの総合実態調査の結果であります、裁量労働制、専門型と企画型の、今の委員御指摘の資料ではこの上の二つに近いようなデータを出させていただいた。ただ、そのときに、たまたまその場におられた労政審のメンバーの方から、労政審に出した資料と違うではないか、数字は違わないんですけれども、強調の仕方とか区分の仕方が違ったんだろうと思いますが、という話があって、もう一回出すようにという話があり、その作業をしてきたという結果としてあの資料が出ていった。
今委員御指摘のように、その場において、例えば、平均時間について、一般の労働者、通常の労働者と裁量労働者について示してくれというような具体的な指示がその部門会議であったわけではないということは、私は聞かせていただいているところであります。
●西村(智)委員 そうしたら、橋本岳委員は、何か、資料を執拗に要求したのは野党で、繰り返し問い詰められて、厚生労働省がやむを得ず作成したというふうに書いてあるんですよ。じゃ、一体どういう経緯で作成されたのでしょうかね。
それで、この資料、民主党の部門会議には出ていないんですね。この資料、出ていないんですよ。これが意図的に隠されて、そして、まあ確かに労政審の委員の方がその場にいらっしゃったかもしれません。それで、労政審でも役所のつくったデータが紹介されたんでしょう。それとはちょっと違うから、改めて出せという話が出てきたのであれを出したということなのだとしても、一般労働者と裁量労働者のデータの比較を出せというふうに言われたって橋本岳現在の厚労部会長がおっしゃっているわけですから。
大臣、このデータの作成の経過、もう一回調べていただけませんか。
●加藤国務大臣 先ほど申し上げたことが、私が答弁させていただいた内容が、私が当時の関係者からお聞きをしたということでございます。
今、橋本委員がブログでどういうことをお流しになっているか、ちょっと私、つまびらかに承知をしておりませんので、委員の御指摘もございますから、改めてもう一度、その点も含めて確認をさせていただきます。
●西村(智)委員 このデータ、要するに、民主党の部門会議で出したものだからということで、その後、塩崎大臣も、歴代の厚生労働大臣も繰り返し繰り返し答弁に使っているんですよ。なので、ここが出発点なんです。
だから、なぜ、どういう経過であのデータがつくられたのかということをやはりもう一回調査してもらいたい。そうでなければ、やはり捏造したんじゃないかという疑いを払拭することはできませんよ、大臣。だって、JILPTの調査がそれより一年近く前にちゃんと出ているんですから。何でこっちを出さないで、九時間十七分と九時間三十七分かな、三十九分、あれを出したのかということでありますので、ぜひ一回調査していただきたい。
大臣、これは大臣が聞き取ったというだけでは不十分です。きちんとしかるべき体制をとって調査していただきたい、そういうふうに思いますが、いかがですか。
●加藤国務大臣 しかるべき体制というのは、ちょっとどういうことをイメージされているのかわかりませんけれども、本件は、私の責任で確認をさせていただいて、また後日報告をさせていただきたいと思いますけれども、これまでの確認をした範囲は、もう改めて答弁いたしませんけれども、これまで答弁をさせていただいているところであります。
●西村(智)委員 調査の体制というのは大事なんです。この間、さまざまな、いろいろ公文書の改ざんとか、不祥事を隠蔽することとか、この政府の中でありました。省庁を超えてありました。財務省の福田前事務次官のセクシュアルハラスメントについても、何だか大変内々の調査方法であったがゆえに批判を受けて、それで二次被害までも生んだという指摘を受けているわけです。
ですから、大臣が聞き取ったというだけではなくて、外から見て、客観的に、ああ、ちゃんと第三者的な目で調査を行ったんだなということが明らかにならないと、これは大事な大事なデータの問題ですので、私はこれからちょっと高プロの話も質問しようと思っておりますけれども、そういったときのことも含めて、やはり厚生労働省から出てくるデータというのは信頼できるんだということが確信が持てないと、私たちも何を根拠に議論していったらいいのかわからなくなってしまうんですよ。
なので、大臣が聞き取った、それは、与党の皆さんは大臣を信頼されて、一〇〇%信頼されておられるからそれはそれでいいということかもしれませんけれども、しかし、客観的な目で、誰の目から見ても、ちゃんとこれは調査したんだということで、捏造ではないのであれば、捏造ではないということを、払拭できるような調査をしていただきたい。
これは委員長、理事会でも諮っていただきたいと思いますが、いかがですか。
●高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。
●西村(智)委員 ぜひやっていただきたいというふうに思います。作成されたプロセス、それからそれが使用されてきたプロセス、この二つについてぜひ検証をしていただきたいと思っています。
加藤大臣、これは加藤大臣自身の問題なんですよ。予算委員会で黒岩委員に聞かれて、この比較、おかしなやり方だったと御自身で認めていらっしゃるじゃないですか。認めていらっしゃいますよね。そこでスルーしちゃいけないんですよ。スルーしないで、何でこんなおかしなデータを出したのかというのを、きちんと、大臣として、もう二度と繰り返さないようにということであれば、やはり調査しないといけないと思う。それで明らかにしなければいけないというふうに私は思います。
ですので、ぜひ調査をやっていただきたい、それがこの働き方改革の法案審議をやる最低限の前提であるということを申し上げたいというふうに思っております。
それでは、高プロの質問に移りたいと思います。
私たち立憲民主党は、今回、高度プロフェッショナル制度は削除すべきだという考え方でございます。理由は、言えば切りがありませんけれども、とにかく、今回の高プロというのは筋が悪過ぎます。
安倍総理が、日本一企業が活動しやすい国にするというふうにおっしゃった。あるいは、ドリルの刃、自分がドリルの刃となって岩盤規制に穴をあけるというふうにもおっしゃった。それと大体気脈を通じる形で日本再興戦略で裁量労働制の拡大、それから高プロの創設、こういったものが提言をされてきて、労政審に乗っかってきたのは、その日本再興戦略での議論が詰まりに詰まって、大体こういう中身ですよということが明らかになった後で、最後の最後で、労政審にちょこんと、結論のところだけ乗っかってきているわけですよね。労政審の皆さん、これじゃ反発するのは当然だというふうに思います。
裁量労働制の拡大は削除をされましたけれども、高プロは残ってしまった。一般的には、脱時間給などというふうに呼ばれまして、時間ではなく成果で評価される制度だということで、何かちょっと、もてはやされそうな雰囲気があるんですけれども、そもそも、大臣、この高度プロフェッショナル制度を導入する狙いは何なんでしょうか。
●加藤国務大臣 やはり、働き方あるいは仕事の中身が随分違ってきておりまして、現在、第四次産業革命と言われている状況が出現をしている、あるいは、我が国においては高い付加価値を生み出す経済を追求していく必要があるとされているわけでありまして、また、新しい産業は幅広い職種をつくり出していく、こういう雇用、就業機会の拡大ということも期待できるわけであります。
こうした付加価値の高い財・サービスを生み出す革新的な分野において、どういう仕事の仕方なのか、特に、それを生み出すイノベーションや高付加価値を担う高度専門職の方々が仕事の進め方や働く時間帯をみずから決定し、その意欲や能力を有効発揮する、そういった働き方が求められているわけであります。
ただ、もちろん、前提としては、健康確保がしっかりされている、そして、もちろん、そうした方々が希望する中でやっていく、これが前提でありますけれども、そうした既存の時間のさまざまな制約、一定のものは引き続き維持をしていくわけでありますけれども、それを超えて、自律的に、自分の能力を一番発揮しやすいときに、しかも、対象とする仕事自体が時間と成果が必ずしもつながっていかない。ある意味では、製造業等々でいえば時間とつながるかもしれませんけれども、今さまざまな分野において、むしろ時間ではなくて、どううまく成果を出していくのか、そういうことが求められているわけでありますから、そうした求められることをより発揮しやすい、また、そういう状況にある方が、希望する中で、発揮しやすい状況をつくっていくということが、また新たな産業が発展し、日本の成長にもつながっていく。こういったことを背景に、高度プロフェッショナル制度について、今、導入を我々は法案の中に盛り込ませていただいた、こういうことであります。
●西村(智)委員 今の御答弁は、厚生労働省の答弁というよりは、経済産業省のどなたかが言っているかのように聞こえました。
この法律は、本当に労働者のためになるんでしょうか。労働者が望んでいるのは、恐らく、自分で納得できる仕事があって、それをすることによって十分な収入を得ることができて、そして、自分の時間、休息時間や生活時間、余暇のための時間やボランティア活動をする時間、地域でのいろいろな、町内会の仕事もする時間、こういったものをしっかりとれるということが、やはり私は労働者の望みであるというふうに思うんですよ、ほかの人と職場で協力しながらですね。
それで、大臣、私、導入の狙いは何ですかというふうに聞きましたけれども、労働者からの視点が全く今ありませんでした。この高度プロフェッショナル制度というのは、本当に労働者のためになりますか。
●加藤国務大臣 ですから、先ほど、そういった方々、イノベーションや高付加価値等を担う高度専門職の方においては、むしろ、さまざまな規制ではなくて、今おっしゃるように、時間を自分なりに管理をして、そして成果を出し、それがきちんと評価をされていく、そういったことを望んでおられる、それに対応していく。
そして、そのことは、ひいては、そうした方々が核となりながら、さまざまな新たな、特に付加価値をつくる、そうした産業を我が国において根づかせていく、拡大をしていく、雇用の確保につながっていく、こういったことを我々は想定をしているわけであります。
●西村(智)委員 相変わらず、何だか厚生労働大臣として労働者保護をどういうふうに考えているのか疑わしい答弁だったと私は思います。
では、ちょっと違う聞き方をしますけれども、労働者がこれで時間管理をしやすくなって、適正な評価を受けられて、それが自身の待遇にもつながっていくということなんですけれども、この高度プロフェッショナル制度を導入することによって、労働者の賃金は上昇するんでしょうか。
●加藤国務大臣 その前に、労働者を守るという意味においては、労働条件を確保するということもありますけれども、あわせて雇用を確保するということも非常に大事だということを申し添えておきたいというふうに思います。
その上で、これが直ちに、賃金水準がどうなるかというのは、これは一概に言えないというふうに思います。
●西村(智)委員 成果主義賃金制度で賃金が上昇するというデータは、私は寡聞にして知らないんですね。
それで、次に伺いますけれども、労働者が自分自身で時間管理をできるようになるというふうに大臣おっしゃいました。目標を設定して、目標管理制度によっていくということなんですけれども、これで長時間労働は抑制できるのでしょうか。
●加藤国務大臣 まず、この対象となる仕事は、高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない、そういうふうに認められる業務だ、ここをちょっと押さえていただかないと、ある意味、仕事によってはもちろん時間と成果がかなり比例するものもあると思いますけれども、本件はそういうつながりが高くないということでありますから、今委員御指摘のように、じゃ、長時間すればいい成果が出るというものでも必ずしもないんだろうというふうに思います。
そこは、むしろ高度専門職の御自身が、一番成果が高いやり方がどういうことになるのか、それぞれ御自身が判断をされて、そして答えを出していくということであります。ただ、一定以上になってはならないということで、委員も御承知のように、健康確保措置等はしっかり盛り込ませていただいているところでございます。
●西村(智)委員 私が伺ったのは、健康確保措置は、それは、あれかこれかそれかというメニューの中に、選択ですけれどもあるということは承知しております。ただ、それは労働している形がいかなるものであってもやらなければいけない健康確保措置であって、長時間労働そのものがこの高度プロフェッショナル制度によってどういうふうになっていくのかということが、やはり私は大きな問題だというふうに思うんですよ。
長時間労働は、国会が、過労死を撲滅するための法律を超党派でつくりました。本当に、もうこれ以上過労死で亡くなる命を私も見たくないといいますか、そういったことがあってはいけないというふうに思いますし、そのために厚生労働省がこの働き方改革を捉えてくださっているというのであれば、それはいいと思うんですね。
ですから、それ以外の、例えば、今回のいろいろな規制の強化の部分について、私は、政府案の中でも評価したいところはあります、もちろん質問はいろいろしたいと思うけれども。だけれども、この高プロに関しては、やはりだめだと思う。労働時間を管理しないんですよ。裁量労働制の更に上を行くスーパー裁量労働制ですよね。スーパー裁量労働制です。労働時間を管理しないカテゴリーを新たにつくってしまうということは、これはやはりアリの一穴になりかねないし、私は、歯どめはかなり不安定、不十分だというふうに思っています。
ですから、ぜひ法案の中からこの高プロは削除してもらいたいというふうに思っているんですけれども、では、もうちょっと具体的に聞きたいというふうに思います。
労基法第四章、これは、労働時間、休憩、休日及び深夜割増し賃金に関する規定を定めております。
大臣、確認ですけれども、管理監督者、管理監督者ですから通常の労働者とは違うという位置づけではあるんですけれども、管理監督者であっても、この労基法の第四章で書かれている深夜割増し賃金、これは適用されていますよね。どうですか、大臣。
●加藤国務大臣 管理監督者が何かということは大事なことでありますけれども、この定義で言う管理監督者であれば、深夜の割増し料金の規定は適用されます。
●西村(智)委員 では、閣法の中において、高度プロフェッショナル制度のもとで働く労働者には深夜割増し賃金は適用されますか、されませんか。
●加藤国務大臣 その規定も、要件を満たす場合には適用除外する、こういう形になっています。
●西村(智)委員 その根拠は何でしょうか。
つまり、管理監督者というのはいろいろなものが適用除外になっているんですよ。きょう、どなたかの資料にも添付をされておりますけれども、休日とか、あるいは労働時間に関してですとか、いろいろなものが適用除外になっている中で、しかし、深夜割増し賃金だけは、これはやはり健康に与える影響が大きいという趣旨なんでしょう、管理監督者にも適用されるということになっているわけなんです。
これは高度プロフェッショナル制度で適用除外にするという、その根拠は何なんでしょうか。
●加藤国務大臣 高度プロフェッショナル制度において除外をするということについては、先ほど申し上げましたけれども、その御本人の一番成果が出やすい、例えば、夜型の方もいらっしゃいます、昼型の方も、朝型の方もいらっしゃると思いますけれども、それぞれの自分のスタイルに対応して働くことができるようにしていく、そうすることによって一番パフォーマンスを上げていくということであります。
そういった中で、労働時間、休日、休憩あるいは今言った深夜等々の規制があれば、当然、企業側から労務管理がなされていくわけでありまして、そうすると、割増しが適用されるということになれば、では夜は遠慮してくれ、こういうことにもなるわけでありますけれども、むしろそういったものを適用除外することによって、しかし、そのかわりさまざまな要件を課すわけでありますけれども、それによってその方に合った働き方をしていただいて、それによってより高い付加価値あるいは成果を出していただく、こういう趣旨であります。
●西村(智)委員 先ほど、議場からもやじがありますけれども、働く人たちの命はどんな働き方をしていても同じですよね。管理監督者であっても、高度プロフェッショナル制度の対象者になる人であっても、一般労働者であっても、やはり働く人たちの命は守らなければいけないわけです。命の重さに何ら変わりはありません。
高度プロフェッショナル制度の対象者から深夜割増しを除くことは、これはやはり長時間労働につながっていくのではないですか。
●加藤国務大臣 もちろん、深夜割増し料金の仕組みというのは、それによって、割増しを課すことによって、そうした時間帯での働き方を抑制していく、こういう趣旨は当然あるんだろうというふうに思います。
ただ、先ほどから申し上げておりますように、高度プロフェッショナルと呼ばれるいわゆる高度専門な方々については、むしろ、先ほど申し上げたように、どういう形で働くという働き方というよりは、どう成果を出していくか。そして、それぞれのスタイルがあるわけでありますから、それを尊重し、その中でより高いものを出していく。
そして、やはり大事なことは、そういった方々は、自律的に自分たちのプランをつくって、いかに成果を上げていくのか、そういうことを当然考えていただくということになるわけでありますから、そういった意味で、さまざまな、時間外については適用を除外する、他方で、休日等については、そのかわりこれはしっかり守ってほしい、これは労使協定では除外できません、こういう規定も一方で置かせていただいているところであります。
●西村(智)委員 甚だ疑問です。
割増し賃金がどういう効果を持っているかということは、大臣、今、くしくもお認めになりました。割増し賃金、深夜割増し賃金があるということで労働時間を適正に管理する、抑制していく、そういう効果があるということは、大臣自身もお認めになったわけです。では、なぜ高度プロフェッショナル制度の対象者だけをそこから外してしまうのか。
私は、この間、過労死された御家族の方からもいろいろお話を伺いました。皆さん、本当に、亡くなる直前まで、外から見ればきちんと自律的に働いていらっしゃるというふうに見えるわけですよ。ある日突然、過労死あるいは過労自死ということになってしまうんです。
外から見れば自発的に、自律的にやっているというふうに見えるかもしれないことでも、やはり御本人、働いている人、その人にとっては、実はかなり体に負荷をかけてしまうということがある。そういうことを、私たちも本当にこの間いろいろな方々からお話を聞きながら感じてまいりまして、高度プロフェッショナル制度でこのいろいろな規則を適用除外にするというのは、これは大変問題だと。そもそも、この高度プロフェッショナル制度は法案の中から削除してもらわなければいけないというふうに考えております。
大臣、この法案の中で、よくよく見ますと、労使委員会における五分の四以上の同意、議決ですか、決議と、それから労働者の書面による同意、これが言ってみれば縛りとしてかけられているということでありますけれども、それも、労使委員会の五分の四以上の決議というので、本当に割増し賃金と同じぐらいの、同じ程度の効果をもたらすことができるというふうには、私にはとても、残念ながら思えないです、今の状況では。
裁量労働制についてすら、今、いろいろな問題が言われているわけです。
これはJILPTの調査ですけれども、そこにおいて、自由記述欄で、裁量労働制のもとで働いている労働者の人たち自身がこういうふうに意見を寄せています。結局、労働時間が長くなるので、できたら裁量労働制はなくした方がよい、低賃金を招くのではないか。あるいは、出勤したことを明確にできる法整備が必要であるということですとか、私のように人の三倍量の仕事を与えられているような人材もいるので、本当に重要な問題の解決策にはならないとか。
やはり、現在行われている裁量労働制でも、実は、満足している人もいらっしゃるかもしれません。だけれども、やはりこういうふうに長時間労働につながっている。何か、重い仕事だけ与えられて、そしてそれを仕上げるまでは自分で労働時間を管理して出てきたり帰ったりしてくださいというようなやり方になっている。
そういうことがあるという実態がJILPTの調査においても明らかになっているわけですから、まさにスーパー裁量労働制と言われる高度プロフェッショナル制度などというものが創設されたら、もっとこれ以上のことが起きてしまうのではないか、あるいは、それを合法的に認めてしまうことになるのではないかというふうに思いますが、大臣はいかがお考えですか。
●加藤国務大臣 先ほど一つ申し上げたんですけれども、健康確保ということにおいて、健康管理時間をしっかり把握をするということ、そして、健康時間が、これは省令で決めることになっておりますけれども、例えば百時間等を超えた場合には、これは一般は本人の申出によりますが、申出にかかわらず、産業医等の医師の面談を受ける、こういう規定になっているわけでありますから、そういった意味での、本人が自律的にといっても、やはり行き過ぎれば誰かがブレーキをかけていくということは当然必要になってくると思います。
他方で、企業側からこれ以上やれとか何時間以上やれとか、こういったことは本来この高度プロフェッショナル制度の対象になるわけではありませんので、そういったことについては、これから業務について省令を決めることになっておりますけれども、そういった省令の中においても、その旨をはっきりとさせていきたいというふうに考えております。
●西村(智)委員 私は、やはりこの高度プロフェッショナル制、導入すべきではないというふうに思います。
業務で要件を課すというふうに大臣はおっしゃいましたので、では、ちょっと要件のことについて伺いたいと思います。
条文によって、この高プロの対象業務はこういうふうに書かれております。高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務ということなんですけれども、何だか読んでも全く不明なんですね、この要件。
まず、そもそも、高度の専門知識等を必要とすることというのは、どういう高度な専門的知識をどういう形で必要とするということを言っているんですか。
●加藤国務大臣 今の法案では、高度プロフェッショナル制度の対象業務の要件は、高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと。そして、具体的には省令。ただ、その前には労働政策審議会で御議論いただくということであります。
委員も御承知のとおり、平成二十七年二月の労働政策審議会の建議では、想定される具体的な対象業務として、金融商品の開発業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務などなどが例示をされているところでございますので、こうしたことも踏まえながら、この法案成立後、今申し上げた、省令をどう規定するかについて労働政策審議会で議論をさせていただきたいと思っております。
●西村(智)委員 ここは極めて重要なところでもありますので、委員会の中である程度はやはり明らかにしてもらわなくてはなりません。労政審の議論でも当然やっていただくんですけれども、国会の場で明らかにしてもらいたい。
高度の専門知識等を必要とすること、必要とするという要件、結局、何だかよく説明がありませんでした。いきなり何かこういう業務ですという例示があったんですけれども、では、どういう高度な知識なのかということについては全く説明がありませんでした。
それから、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性というふうに書かれているんですけれども、これは具体的にどういうことをいうんですか。時間と成果との関連性。
●加藤国務大臣 端的に申し上げれば、長く働いたからといって、より多い成果が生まれるという関係が通常高くないと認められるもの。したがって、いろいろな意味で、付加価値を出すとかアイデアを出すとか、そういったものが対象になってくるんだろうというふうに思いますので、どういうものがということになれば具体的な議論をしていかなきゃいけませんので、それについて、先ほど申し上げた労政審の建議では、金融商品の開発業務等々が挙げられているということを申し上げたところであります。
●西村(智)委員 何か、付加価値とかアイデアとか随分、なかなかこれははかれないですよね。非常に曖昧模糊としている要件だと思います。
それから、関連性が通常高くないというのはどういうことですか。従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないというのは、一体どういう意味ですか。
●加藤国務大臣 ですから、時間と成果が要するに比例的である、まあ、常にと言ってもいいかもしれませんけれども、比例的であるということではないということであります。
●西村(智)委員 時間と成果が比例的でない。じゃ、一体どういう形でその成果というのが評価されることになるんでしょうか。
●加藤国務大臣 ですから、それは、それぞれの業務の中で、成果というものはどうやって確認するかというのは違ってくるんだろうというふうに思います。
例えば、一定時間に何個のものをつくればいいというものであれば割と見やすい、わかりやすいわけでありますけれども、じゃ、どういうアイデアなのか、それがどういう価値を持っているのかということになれば、これはなかなか一義的には言えないんだろう。それは、その会社の中において、最終的にはその成果というものをその会社の方針等々の中でどう評価していくのかということにつながっていくんだろうと思います。
●西村(智)委員 そういう曖昧なものを私はやはりこの労働基準法の中に入れるのは筋が違うというふうに思うんですよ。それは会社の、その企業の中で裁量的に行われるべきものであって、厚生労働省がつくるこの労働基準法の改正案の中に、そういった高プロの対象業務で、こういう要件ですよ、成果と時間は比例していいですよとか、付加価値やアイデアを出してもらって、その評価というのはそれぞれの会社ごとですよというようなものというのは、会社の独自の判断になるというふうに思うんですよ。全く縛りになっていないというふうに思うんですね。
仮にこれをこの法案の中に入れたとしても、じゃ、AさんとBさんでそれぞれアイデアを持ってきました、Aさんの方がすぐれているからこの人は目標を達成して成果を出しました、Bさんの方はそうではありませんという判断、それを厚生労働省としてはどっちでもいいですよということになるんでしょうけれども、なるわけですよね、今の言い方ですと。比例的じゃないというふうに言っているわけですから。
比例的ではないという時間と成果との関連性の中で、じゃ、成果を出していない人なども高プロの対象にする、成果を出す人も対象にするということになるわけですけれども、労働者の側からすれば、その目標を達成するために、あるいは成果を出すために、どうなんでしょう、やはり、言ってみればノルマ的な発想として、それを得るために長時間労働になるということになるんじゃありませんか。裁量労働制の、これはスーパー裁量労働制ですよ、この条文、要件をもってしても、何の縛りにもなっていないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
●加藤国務大臣 このベースとして、最終的にはどういう業務を対象にするかは省令で規定するということになっているわけでありますから、それについては、先ほど申し上げておりますように、労働政策審議会で御議論をいただくということになるわけであります。
それから、先ほど委員がおっしゃったように、確かに評価というのがあるわけでありますが、それぞれ企業ごとにおいてそれは評価をする。ただ、大事なことは、やはり評価基準等々は、それはわかりやすくしていくということが非常に大事なことなんだろうというふうに思いますけれども、そうしたことも含めて、最終的には、個々の労働者がこの高度プロフェッショナルを選ぶかどうか、これは御本人の意思によって決められるということになっているわけであります。
●西村(智)委員 御本人の意思というふうに政府はおっしゃいますけれども、既に現の裁量労働制の中でも本人の意思と反しているものがいっぱいあるということが明らかになっているわけですから、そのような説明の仕方は通用しないということを申し上げて、きょうの質問は終わります。