●西村(智)委員
立憲民主党の西村智奈美です。
まず、今回の勝田東京労働局長の発言、本当にあるまじき発言だと断じざるを得ません。マスコミの記者さんたちを恫喝し、そして、自分の持っている権力を自分の思うがままに行使できるかのような発言、本当に行政のたがが外れているというふうに言わなくてはならないと思います。
しかし、考えてみますれば、行政のたがが外れるときというのは、単体で行政側だけが外れることはあり得ない。やはり、政治の側もがたがたになってぼろぼろになっているからこそ、行政の側もこのようにぼろぼろの状況になってきているというふうに思うんですね。
この通常国会だけ見ても、裁量労働制のデータの問題、それから年金の再委託の問題、この短期間だけでも本当にたくさんの問題がありました。政治と行政がそろってぼろぼろになっている、そういう中で発生した今回の出来事だというふうに私は思っております。
しかも、この件について、厚生労働省が昨日の理事会に提出してきたペーパーを見て、私は本当に情けなかったです。是正勧告をしたのかどうかということについて、テープ起こしをしたその一部分をこれまた恣意的に拾いつつ、同時に厚生労働省の勝手な解釈を書き加えていて、いずれの会見においても是正勧告を行ったことを認めた発言はなかったものと承知していると。とんでもない解釈をしているわけなんですね。本当に、是正勧告、東京労働局長は野村不動産に対して行わなかったんでしょうか。
●山越政府参考人
御指摘は、昨年十二月二十六日と本年三月三十日の勝田労働局長の記者会見の内容かと思いますけれども、このいずれの会見におきましても、是正勧告を行ったということを認めた発言はなかったものと承知をしているところでございます。
●西村(智)委員
昨年の十二月二十六日の夕刊から翌日の二十七日の朝刊にかけて、読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞、ここが見出し等で「野村不動産に是正勧告」というふうに記事を掲載しております。これは、じゃ、間違いだったということですか。
●山越政府参考人
私ども、この十二月二十六日、それから三月三十日の東京労働局におけます記者会見の際の音声データを確認いたしたところでございます。
それで、このいずれの会見におきましても、是正勧告を行ったと認めた発言はなかったものというふうに私ども承知をしたところでございます。
●西村(智)委員
おかしいですね。
じゃ、どうして日本を代表する全国紙の三紙が、「野村不動産に是正勧告」とわざわざ大見出しまでつけて、こういうふうに記事を出しているんでしょうか。じゃ、この記事は間違っていたということですか。間違っていたのであれば、訂正記事なりを出してもらう必要があったと思うんですけれども、そういったことを厚生労働省はやっているんでしょうか。
●山越政府参考人
お答え申し上げます。
私ども、その新聞の記事のことについて申し上げる立場ではございません。
いずれにいたしましても、いずれの会見におきましても、是正勧告を行ったと認める発言はなかったものと私ども承知をしているところでございます。
●西村(智)委員
いや、普通、間違いを記載されたら、それは何らか、訂正記事を出してくれとか、そういう働きかけはすると思うんですね。それは、今の答弁ですと一切そういうことはしなかったということですので、この記事を事実として認めているものだというふうに受けとめさせていただきます。ですので、昨日、理事会で配られたペーパーとのそごも、またより一層明らかになったということでございます。
それで、このように記事にも出ている、それから野村不動産も会社のホームページで、是正勧告・指導を厳正に踏まえて、今後適切に対処しますというようなことを述べているんですけれども、こういった客観的な事柄として是正勧告があったということが十分あった、蓋然性が極めて高いというにもかかわらず、なぜそれを厚生労働省はしていないというふうに言い張るんですか。その理由を教えてください。
●山越政府参考人
お答え申し上げます。
私ども、この十二月二十六日、三月三十日の東京労働局においての記者会見で、局長その他職員がその是正勧告をしたかどうかということについて、音声データを用いまして確認をさせていただいたところでございまして、その結果、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、是正勧告を行ったと認める発言はなかったものというふうに承知をしたところでございます。
●西村(智)委員
労働局長では、やはり責任のある答弁がいただけないようです。
やはり東京労働局長御本人からそういった発言があったのかどうかということを聞かなくてはなりませんし、また、きょうの夕刻出てくるという文字起こし、またそれも見させていただかなければいけませんが、誰もが是正勧告があったということをほぼ確信に近い形で持っているのに、厚生労働省だけは、是正勧告があったということは、したということは認めない。本当に不可解なことだというふうに思います。
それでは、ちょっと質問の角度を変えまして、これから質問します。
今まで是正勧告をしたときに、それを公表、公開、こういったことを厚生労働省としてはしてきたんでしょうか。
●山越政府参考人
お答え申し上げます。
是正勧告については、基本的には公表を行っていないところでございます。
●西村(智)委員
そうしますと、では、なぜ今回、特別指導ということを付して、野村不動産にそれをやったということを公表したのかということがなおさら大きな疑問になるわけなんです。
ちょっと、先ほど尾辻委員と初鹿委員が配られた資料の、二〇一七年の十一月十七日に対外秘として用いられた資料ということで、タイトルも黒塗りになっているものがありますね。野村不動産(株)における企画業務型裁量労働制の運用状況に関する、黒塗り、と今後の対応について、こういうタイトルになっているんですけれども、ここにちょうど、見てみますと、四文字ぐらい入りそうなんですね。ここに入るのが是正勧告という言葉なのではありませんか。
●山越政府参考人
お答え申し上げます。
御指摘の資料でございますけれども、これにつきましては、個人情報の保護でございますとか法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある場合、それから監督指導の円滑な実施に支障を来すおそれがあるという観点からマスキングを施しているものでございます。そうした資料を提出させていただいているところでございます。
●西村(智)委員
局長、内部でちゃんと答弁のすり合わせをしてきてほしいと思うんですけれども、このタイトルの部分については、個人情報、全然関係ないんですよ。全然関係ないんですよ。これは理事会に提出された資料で、ここの部分は企業情報、監督指導の実施に支障があるからということでマスキングされているので、個人情報というのは全く関係ないんです。
私、やはりここに入るのは是正勧告だったと思います。是正勧告をして、だから、それがどのタイミングで行われたのか、これはわかりませんけれども、それと今後の対応についてということで、経緯があって、調査結果があって、指導方針があって、特別指導を行いますと。実施時期についても、先ほどの質疑にもありましたけれども、実施時期も大体二〇一七年の十二月二十六日前後などというふうに恐らく入って、ペーパーが出てきたと思うんですよ。
私はこういうふうに考えました。是正勧告であれば、ほかの例に照らして、野村不動産がこのような裁量労働制の違法の取扱いをしていたということは公表できない。そして、国会では、働き方改革関連法案を提出する、その目前の時期にある。そして、野党から、裁量労働制の拡大について、あるいは高度プロフェッショナル制度の導入について反発があるのが必至であろう。それに対して、しかし、きちんと労基署が、あるいは地方労働局が指導監督をしていますということを言いたいがために、是正勧告ではなくて何か別の取扱いをする必要があって、それで、特別指導という前代未聞の、厚生労働省始まって以来の、初めての対応をとったのではないか。こういうふうに考えているんですけれども、これについて何か反論はありますか。
●山越政府参考人
お答え申し上げます。
今回の労働局長による特別指導でございますけれども、事案の態様が法の趣旨を大きく逸脱しておりまして、これを放置することが全国的な遵法状況に重大な悪影響を及ぼす、そうしたものと認められるものについて、労働局長が企業幹部に対して特別に行いまして、そして、行政の対応を明らかにするため、そして同種事案の防止を図る観点から、その事案を明らかにしたものというふうに考えているところでございます。
●西村(智)委員
特別指導をやる根拠条文、根拠法は何ですか。
●山越政府参考人
厚生労働省設置法だというふうに考えております。
●西村(智)委員
それは何条の、どういう条文ですか。
●山越政府参考人
厚生労働省設置法四条四十一号だというふうに承知をしております。
●西村(智)委員
どういう条文ですか。だって、私たちが野党ヒアリングしたときに、法的根拠はないというふうに聞きましたよ。
●山越政府参考人
この特別指導でございますけれども、厚生労働省設置法四十一条に、労働契約、賃金の支払い、最低賃金、労働時間、休息、労災補償その他の労働条件に関することとございまして、これにのっとりまして、また行政手続法も踏まえまして実施しているところでございます。
●西村(智)委員
どこをどうやって読んだら特別指導ができるというふうに解釈できるんですか。
●山越政府参考人
今申し上げました条文は厚生労働省の所掌事務でございますので、これに基づいて行うことができるというふうに考えているところでございます。
●西村(智)委員
つまり、今の局長の答弁は、厚生労働省設置法の四条の第四十一か、これをもっていけば、厚生労働省は、では何でもできるということですか。恣意的に何でもできるということを今おっしゃったんですか。
●山越政府参考人
私どもの、行政でございますので、これは恣意的に行うことはできないわけでございますが、それから、所掌事務が定められているところでございますので、その範囲内で指導をできるというふうに考えているところでございます。
●西村(智)委員
世の中には罪刑法定主義という言葉もあるように、やはり、関係者、事業主、労働者は、労働法制のあらゆる条文をもって、それを読んで、何をやったら適法で、何をやったら違法なのかということを踏まえた上で、それぞれの労務管理であったり労働というのをやるわけですよ。この条文だったら結局何でもできるということになるし、これは全く予見可能性がないということになりませんか。
私、やはり特別指導というのはかなり恣意的に行われてしまったというふうに思います。そして、これをもって裁量労働制の拡大を正当化しようとした、私は、そういう意図があったんじゃないかというふうに思っております。
これに対する反論は、もしあるのであれば聞かせていただきたいと思いますけれども、しかし、それには、特別指導がどういう法的根拠で、どういう根拠できちんとこういうふうに公表されているのか。企業の名前も公表されるという、本当に社会的には影響の大きいことだったわけです。そういったことまでやる根拠、まさに、さっき黒塗りにする根拠で、何か企業の個別情報だとか今後の競争力の何とかと言っていましたけれども、まさにそこにかかわってくるじゃないですか。
どういう権利があって、野村不動産の、企業の競争力を損なうということができたのか、それを教えてください。
●高鳥委員長
西村委員に申し上げます。
申合せの時間が経過いたしておりますので、御協力をお願いいたします。
●加藤国務大臣
委員、特別指導のみをおっしゃいましたけれども、先ほどおっしゃった是正勧告も、先ほど申し上げた設置法に基づいてやっているということでございます。
したがって、そしてその根拠については、それぞれ、労働基準法、それぞれさまざまな法律がありますから、それをベースに、そして、行政手続をやるときには、行政手続法にのっとって、ここに書いてありますけれども、指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しない、そういったことを適宜、法律にのっとりやらせていただいている、こういうことでございまして、別に恣意的にやらせていただいているわけでもありません。
それから、今回の事案については、先ほど山越局長からおっしゃった、こうした事案の重大性に鑑みて、今回、法人のトップを呼んで直接指導し、そしてその上で公表した、こういうことでございます。
●西村(智)委員
政府にとって都合のいいことは公にするんだけれども、それ以外のことについてはマスキングをする、こういう政府であるということを厳しく指摘して、質問を終わります。