●西村(智)委員
立憲民主党の西村智奈美です。
この間、予算委員会に始まって、国会審議は本当に大きく揺れ動いてまいりました。まずは、厚生労働省が当時私たち民主党に提出をした裁量労働制の労働者の労働時間の比較、そして、その後、野村不動産の特別指導の事案、そしてまた、今回、森友学園の土地売却をめぐる決裁文書の改ざんと、本当に日本の民主主義が根底から揺るがされるような大きな事件が続いてまいりました。本当にこれは、立法府にいる人間一人一人が本当に真摯に重く受けとめて対応していかなければいけないことだ、これは与野党問わずのことだ、課題だというふうに思っております。
そこで、まず最初に厚生労働大臣にお伺いしたいのは、今回、森友学園の土地売却をめぐる公文書の改ざんが行われたということは、決して、他省庁のことだからということで高みの見物をしている出来事ではないということを厚生労働省としても自覚をすべきだというふうに思うのです。この後質問いたしますが、裁量労働制のデータの問題はまだ引き続き残っておりますし、野村不動産の問題も、これまた明らかになっていないところがまだたくさんあります。
冒頭、加藤厚生労働大臣の公文書についての考え方そのものをただしたいと思っております。今回、財務省で起きたとされます決裁文書の改ざん、これは明らかな犯罪ですけれども、公文書の改ざんという行為そのものを加藤厚生労働大臣はどういうふうに認識しておられますか。
●加藤国務大臣
公文書、特に決裁文書の書きかえということでの御質問というふうに思います。
私も役人を十数年間やっておりました。そのときのイメージからいっても、決裁をしたもの、決裁の過程においてはいろいろな議論がありますけれども、決裁をしたものというのは最終的に確定をしているものでありますから、それを書きかえるということは、私はそもそも、当時、そんなことはすべきではない、そしてあり得ることでもないというふうに思っておりましたが、今回こうした事態が起きた、このことは政府また厚生労働省としても大変重く受けとめていかなければならないというふうに考えております。
●西村(智)委員
この改ざんされた決裁文書は一年も前に国会に提出をされたものだったんですね。虚偽の資料をもとに、国会は一年も議論を行ってきたんです。このことについて、大臣はどういうふうに考えますか。
●加藤国務大臣
先ほど申し上げましたように、まず、そもそも書きかえをしたということ、そして、その書きかえをした文書を国会に提出をして、国会での御議論がそれをベースに行われたということでございます。そうしたことにつながったということ、これはしっかり我々も重く受けとめていかなければならないというふうに思います。
●西村(智)委員
何だかちょっと他人事みたいな感じででしてね。これは改ざんですよ、書きかえではなくて。公文書を改ざんしたという、これはもう刑法上も犯罪に問われる本当に重大な事件なんです。これは、国民、国会をまずだましていた、一年にわたってだましていたということですから、国民も欺いていたということにほかなりません。政府全体としてはとても重たい責任があると思います。
厚生労働省で仮に今回の財務省で起きたような公文書の改ざんが起きた場合に、どういうふうに大臣は対応されるでしょうか。現在、財務省は財務省で調査を行っておりますけれども、それには多少違和感があります。第三者機関がきちんと調査をすべきではないかと思いますが、いかがですか。
●加藤国務大臣
まず、そういった事態が起こらないようにしっかり取り組んでいかなきゃならないということであります。その上で、この全容解明に向けては徹底した調査を行っていかなければなりません。財務省においても今行われているという答弁がなされているというふうに承知をしているところであります。
具体的な調査方法についてはそれぞれの大臣等がしっかり御検討するということだと思いますけれども、ただ、こうしたことがなぜ起きたのか等々、国民の疑念、これにしっかりと応えていくということが何より大事だと思います。
●西村(智)委員
国民の信頼をかち取るために、まずは、厚生労働省において公文書の改ざんはないんだというふうに断言をする必要があると思います。加藤厚生労働大臣、そのことについては断言できますか。
●加藤国務大臣
残念ながら、厚生労働省において、過去においてはそうした事例もあったわけでございます。そして、それを踏まえて、そのことについては厳正な処分をし、文書管理の徹底や情報開示作業による複層的なチェック体制の導入など、再発防止が指示をされました。しかし、その後、実態としては書きかえの事案がまた発生したというようなこともございました。
いずれにしても、徹底した意識づけを行っていかなきゃならないというふうに思っておりますし、改めて、軽微な修正であっても、決裁後の行政文書については修正することができない、このことを徹底していくということと、現存する決裁文書についての保存状況についても改めて点検するよう指示をしたところでございます。
●西村(智)委員
大臣、今の答弁は当たり前のことなんですよ。私は、行政官庁の長としての大臣がきちんとやはり、責任を持って、公文書の改ざんは今は厚生労働省においてはない、そして、そのために先頭に立って調査をするというふうに自信を持って言い切っていただきたかったんですけれども、今の答弁では、何だか、ちょっと下を向いてぼそぼそと答弁書を読んでおられるような感じで。本当に私たちも、厚生労働委員会はいろんな法案が出てきますけれども、やはりエビデンスベース、事実、立法事実にしっかりと基づいて議論をしていかなければいけないところだというふうに思っておりますので、今後とも、更に強力なリーダーシップで、公文書の改ざんが決して行われることがないようにしていただきたいというふうに思います。
そこで、裁量労働制のデータ問題でございます。
この点についてはもうこれまでにもずっと議論になっておりまして、私たちも、考えてみましたら三年間だまされ続けていたんですね。だまされた方が悪いのか、だました方が悪いのか。だまされた方も、これは調査不足だったと言われればそうなのかもしれませんけれども、厚生労働省から出てきたデータで、クレジットが入っているもので、時間数も九時間三十七分ときちんと書かれていたら、私たちはやはりそれを前提に議論していくわけですよ。それがうそであった、誤りであったということが明らかになって、一体、では、これまでの審議時間って何だったのかということになるんです。
私は、この間、加藤大臣あるいは安倍総理がこの比較に基づいた答弁を撤回されたということは一歩前進だと思います。しかし、裁量労働制のデータそのものを撤回するというふうにはまだ答弁しておられません。
きのうの野党六党のヒアリングの中でも、裁量労働制で働く労働者の一日一時間以下という労働時間については明らかに誤りであったということを厚生労働省は認めました。そろそろ、どこかの時点で、この裁量労働制の労働者の労働時間に関する実態調査、労働時間等総合実態調査、これを撤回すべきだというふうに思いますけれども、大臣、そのお考えはありませんか。
●加藤国務大臣
特に、裁量労働制に関するデータを含めて、平成二十五年度の調査、労働時間等総合実態調査に関して大変、精査しなければいけないということ、また、裁量労働制に関しては本来と異なる仕方で抽出したものを比べて御説明をしたということ、それにおいて大変、国会そして国民の皆さんに御迷惑をおかけしたということ、このことは私どもしっかり反省をしていかなければならないと思っております。
その上で、裁量労働制の平均的な者で、一日の労働時間の状況が一時間以下の者が二十五件あるではないかという御指摘をいただいておりました。
一件の誤入力がありましたけれども、原票記載の時間も一時間以下であった。そして、二十五件のいずれの事業場でも、一時間より大幅に長いみなし労働時間が記載されていた。さらに、労働基準監督官が監督署にある事業場データをもとに事業場の状況を確認し、存在する事業場については直接訪問し、事業場の担当者からのヒアリングや賃金台帳等の書面を確認したところ、調査対象となった二十五件のうち三件の事業所は廃止、七件の事業場においては資料が残っておらず、当時の事業状況が確認できませんが、残り十五件の事業所全てにおいて、裁量労働制で働く労働者の労働時間の状況が一日一時間程度ということはなかったというふうに承知をしているわけであります。
このように、裁量労働制で働く平均的な者の労働時間の状況が一時間以下というデータは実態を反映したものとは確認できなかったところでございます。
したがって、裁量労働制のデータそのものについても撤回をさせていただきたいと考えております。
●西村(智)委員
撤回していただきました。
ですので、九時間三十七分も撤回していただくということでよろしいですか。
●加藤国務大臣
九時間三十七分ということも含めて、九時間三十七分でしたかね、裁量労働制のデータについては撤回させていただきます。
●西村(智)委員
では、安倍総理の答弁も、加藤大臣と同じような答弁をしておられますけれども、それも撤回していただくということでよろしいですか。
●加藤国務大臣
済みません、九時間三十七分は一般でしたので、九時間十六分、要するに裁量労働制の方ですね、済みません、ちょっとそこは訂正させていただきます。そこを訂正させていただきたいと思います。
それから、安倍総理の話は、安倍総理はそうしてお示ししたことは既にこの段階で撤回をされているということだと思います。
●西村(智)委員
異なる、不適切なデータに基づいて答弁をしたということは撤回したんですけれども、データそのものについては総理も撤回していないんですよ。九時間十六分、済みません、私、間違っていました、九時間三十七分でなくて九時間十六分ですが、それも安倍総理も撤回されるということでよろしいですか。
●加藤国務大臣
それは、安倍総理が答弁の中でそれを引用して答弁をされたということですから、そこは撤回されたということでございます。
そもそも資料は私どもが出しているわけでありますから、私どもがこうして撤回をさせていただくということによって、政府としてこのデータについて撤回をさせていただいた、こういうふうに御理解いただければと思います。
●西村(智)委員
どこかの時点で、総理からもちゃんと発言していただかなければいけないと思います。
それで、総理が、裁量労働制の労働時間について実態把握をされるというふうに予算委員会で答弁をされました。どういうふうに、いつごろ、実態把握をされますか。
●加藤国務大臣
総理からは、実態について厚生労働省においてしっかり把握し直すようにということで指示が出ているわけであります。
具体的な把握方法については検討しているところでありますけれども、平成二十五年の実態調査と同じ方法ではなく、新たな形での制度設計をして調査を実施していく、またさらに、ヒアリング等の実態把握もあわせて行いたいというふうに考えておりますが、具体的な方策については、いろいろ外部有識者等の御議論も聞きながらこれからしっかりと詰めていきたい、こういうふうに思っております。
●西村(智)委員
今回提出されると予定されておりました、いわゆる、かぎ括弧つきですが、働き方改革関連法の中から裁量労働制の部分が全面削除されました。予算案が衆議院で本会議採決された日の夜に総理が裁量労働制を法案から削除すると言ったときに、私は、裁量労働制の拡大、企画業務型の拡大のところだけ削除されるんだと思ったら、全面削除ということで、規制の強化まで削除されてしまったんですね。実態がわからないのに規制の強化までも削除するというのは、これはおかしいのではないか。規制の強化は残した上で、そして、実態把握をしていく、こういう必要があるんじゃないか。
つまり、私が言いたいのは、裁量労働制の規制強化の部分まで削除するのはおかしいんじゃなかったかというふうに思いますけれども、いかがですか。
●加藤国務大臣
裁量労働制全体について、そのデータが、国民の皆さんに今回の裁量労働制の改正について疑念を抱かせたということでございます。したがって、拡大の話もしかりでありますけれども、そうした規制でいいのかどうかということももう一度議論をしていく必要があるということで、全体について削除、裁量労働制に関するところに関しては全面的な削除ということで、今、法案の議論をしているところでございます。
●西村(智)委員
JILPTの調査の中で、アンケート項目を見ますと、確かに、裁量労働制で働いている人の中に、それを受け入れて、自分はこの仕組みでいいと言っている方もおられました。だけれども、自分が裁量労働制の労働者であることを知らなかったという労働者もいらっしゃいました。それから、やはり裁量労働制そのものはよくないというふうに答えておられる方もいらっしゃいました。だから、私は、規制強化の部分はやはり、内容はいろいろありましょうけれども、やっていくべきだというふうに思います。それを申し上げておきたい。
それで、ちょっと、時間があれなので、先に行きますが、野村不動産の特別指導案件についてです。
特別指導と聞いたときに、私も、東京労働局はすごく頑張ったんだなというふうに思ったんですけれども、後で伺いましたら、過労死された方がいらっしゃって、どうも、時系列に見ると、その自殺された方があって東京労働局なりが入っていったのではないかというふうに客観的に見える部分が大きいです。
それで、三月五日の参議院の予算委員会で、石橋議員が野村不動産に関係する質問をされておられます。当時、総理は、特別指導については報告を受けておりましたが、今の御指摘について報告を受けておりませんというふうに答弁をされました。今の御指摘というのが何だか、多分、石橋さんの質問の文脈からすると、労災認定が出た、つまり過労自殺をされた方に対して労災認定が出たということについては報告を受けておりませんというふうに答えておられる。
総理と加藤大臣の答弁は非常に巧妙なので、石橋さんの質問の最後の部分だけ切り取って答弁をしている可能性があるんじゃないかというふうに思いまして、改めて加藤大臣に伺うんですけれども、加藤大臣、その後に石橋議員から、加藤厚生労働大臣はもちろん知っておられたんでしょうねと聞かれて、加藤大臣は、それぞれ労災で亡くなった方の状況について逐一私のところに報告が上がってくるわけではございませんので、一つ一つについてそのタイミングで知っていたのかと言われれば、承知をしておりませんというふうに答弁をしておられます。そのタイミングって、どのタイミングなんですか。
●加藤国務大臣
改めてちょっと申し上げておきたいのは、こうした過労死についての申請があったとか、それぞれ支給がされたとかということについては、これはすこぶる個人情報ということでございますから、これまで、その御遺族の方あるいは代理人がこの件について具体的に言及があった場合以外については私どもの方からこの件について申し上げることはない、これが一般的な対応でございます。
その上に立った上でのお話ということで当然ということでありますし、また、一般論として、労災事案一つ一つについて認定があったという段階において総理に上がる、あるいは私に上がってくる、こういうものではないということを申し上げたところでございます。
●西村(智)委員
そのタイミングで知っていたのかと言われれば、承知をしておりませんと。確かに、過労死案件があったときに、そのタイミングでそれぞれ上がってくるということはないというふうに私も思うんですね。
問題は、野村不動産に特別指導に入るということにかかわって、恐らく大臣のところにもレクがあったと思うんです。副大臣や政務官のところにも、こういったことで特別指導というものを行いますというふうに決裁文書が上がっていったんじゃないでしょうか。そのときに、政務官、副大臣、大臣、これは何で特別指導なんだというふうにはお思いになりませんか。
特別指導というのは、厚生労働省で過去一度も行われていないものなんですよ。法的な根拠もありません。だから、特別指導って何なのか、なぜこれをやらなければいけないのか、普通はその経緯を聞くし、聞かれたら、役所の方からは、これは実はこういった案件がありましてというふうに普通だったら説明に入ると思うんですけれども、大臣、どうですか。
●加藤国務大臣
先ほど申し上げたように、この過労死の案件については、先ほど申し上げたことが前提になっておりますから、それを踏まえながら私どもは答弁をさせていただかなきゃならないということでございます。
その上で、今回の野村不動産の件については、企画業務型裁量労働制の対象とされていた労働者の大半について、同制度の対象業務に該当していない個別の営業活動等の業務につかせていた実態が全社的に認められ、法の趣旨を大きく逸脱していたことから、行政の対応を明らかにすることにより同種事案の防止を図る、こういうことで昨年十二月に東京労働局長が特別指導を行った、こういうことでございます。
●西村(智)委員
裁量労働制に係る違法な扱いが全社的に認められ、全社的に認められて特別指導に入ることになったという報告を受けたときに、大臣は、全社的に認められたというのはどういうことだというふうにお聞きにはならないんですか。
●加藤国務大臣
特別指導は最後なんですね。要するに、局長がその経営者を呼んで言うところが特別指導でありますから、そこまでは通常の調査をずっとさせていただき、そして、その調査で明らかになった状況を踏まえてどういう対応をするかということで、今回、先ほど申し上げたこと、そういうことでありましたので東京労働局長が特別指導を行った、こういうことであります。
●西村(智)委員
最後なのでという、その説明がよくわからないんですけれども。
一地方労働局長が単独で特別指導などというものに入れるのかどうか。この案件は、その日のうちだったかな、プレスにちゃんとリリースされているんですよ。野村不動産への特別指導についてということで、野村不動産という企業の名前もきちんと公表されて出ている。これは社会的には物すごく大きな影響を与えます。名の知れた不動産会社で、それこそ何百人単位かな、すごくたくさんの、組織的な、裁量労働制の違法な取扱いが行われていたということは、これは一労働局がそこまで公表するということも含めて想定してやれるのかどうか。これは必ず本省に上がってきている、そして大臣にまで上がってきているはずだ、私はそういうふうに思います。
済みません、ちょっと時間がなくなってきて、水島理事長にお越しいただいているので、年金の話についてお伺いしたいと思います。
きのうも、ヒアリングを行って、私も参加いたしました。そこでわかったことは、一月の十日に、SAY企画ですか、委託した業者が中国への再委託をしているということが判明した、これが一月の十日だったそうでございます。この時点で、私は事実を明らかにする必要があったのではないかというふうに思いますけれども、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
●加藤国務大臣
その前に、ちょっと特別指導の話でありますけれども、当然、特別指導は本省にも相談があり、また、一連の流れの中で私のところにも特別指導については報告がなされていたところでございます。
その上で、今の年金の問題でありますけれども、これは私のところにも、ちょっと済みません、今ちょっと日にちが明確でありませんが、一月の段階で私のところに上がってまいりました。私の方からは、まず実態をきちんと把握して、中国まで実際に足を運んでどうなっているか調査をしろということで、たしか一月末から二月の頭において調査が実施されたということでございました。
それについての報告、これは個々出ておりますからちょっとはしょらせていただきますけれども、しかし、それと並行して、今回は一連の契約をこの会社に委託をしておりました、そして、その会社において、今再委託した問題と並行して、既に委託をしている分についての、きちんと入力が行われていない、こういう事案も見えてきたものですから、これを一連としてきちんと把握をして対処していく必要があるということで、中で調査をし、そして、その調査の概要がわかった段階で全体を含めて公表、あるいはしっかりとした対応、そしてその取組の中身を公表するようにということで私から理事長に指示をし、それを踏まえて公表がなされた、こういうことでございます。
●西村(智)委員
ちょっと水島理事長にもお伺いしたいと思います。
一月十日に、はっきりと契約違反があったということがわかった。ところが、日本年金機構は、そこで委託業者との契約をとめずに、更にそれ以降もその委託業者にデータを新たに渡しておられますね。一月の十五日、一月の二十二日、一月の二十九日、そして二月の五日、それぞれ、済みません、これは通告しておりませんでしたが、きのうの夕方データが出てきたのでお伺いいたします。それぞれ何件のデータを、再委託という契約違反がわかったにもかかわらずその委託業者にデータを渡していたのか、そのデータの件数はそれぞれ何件か、お答えください。わかりますか。
●水島参考人
大変恐縮でございますが、一言だけおわびを申し上げさせていただきたいと思います。
このたびは、年金からの所得税の源泉徴収に当たりまして、当機構の外部委託事務の不十分さから委託業者の入力漏れ、入力誤りが発生をいたしました。多くのお客様に大変な御迷惑と御心配をおかけいたしております。まず、この点について心から深くおわびを申し上げる次第でございます。
その上で、御質問でございますが、今手元にございます数字を足しますと、十八万件がその後に委託された件数というふうに認識をいたしております。
●西村(智)委員
一月の十五日に五万四千八百九十二件、二十二日に四万七千七百四十七件、二十九日に二万五千五百三十三件、二月の五日に五万二千百三十三件、合計すると約十八万件ということでしょうか。
本当に、契約違反があった後にもかかわらず、十八万件ものデータがまた委託業者に渡されていた、これはとても大きな問題だというふうに思います。なぜ、そこでとめるという判断をしなかったんでしょうか。
●水島参考人
お答えを申し上げます。
当機構は、SAY企画が、契約上禁止されております再委託に関しまして、このことを行っているということについて、一月六日に立入検査を行いまして把握をいたしました。
一月末の現地調査におきまして、再委託された情報は源泉徴収税額には影響のない氏名部分のみであること、中国への委託は昨年十二月二十五日の引渡しを最後に行われていないことを確認いたしまして、その時点で、同行いたしましたセキュリティーの委託業者でございます、日本IBMでございますが、IBMにも監査をさせましたところ、中国の取扱いに特に大きな問題はないという報告を受けております。
一方、本年の二月の支払いに向けた入力作業は、昨年十二月十一日までに提出をされました申告書を対象といたしまして、この作業は昨年じゅうに完了いたしておりました。この部分につきまして、二月のお支払いのときには正しい源泉徴収税額を反映させることができない方が発生をいたしました。私ども、その内容につきましては、五百二十八万人の方々でございますが、職員によって点検をいたしまして、四月の支払い時に、二月にさかのぼって年金支払い額を調整させていただくことといたしております。
さらに、三月の支払い及び四月の支払いに向けて申告書の入力作業を行う必要がございます。一月九日以降、SAY企画にかわる業者を探してまいりましたが、なかなか見つからないという状況でございました。加えまして、新たな入力業者が見つかるまでの間でございますが、SAY企画の入力を行ったものにつきましては当機構の職員が全て確認をするということを前提に、委託を継続いたしました。確認をいたしました件数は、約二十六万件でございます。
二月二十三日でございますが、新規委託業者と新たな契約を締結することができましたので、SAY企画への入力データの新規の委託は、二月五日をもって停止をいたしております。
四月支払い時に向けまして、正しい源泉徴収税額を反映させるために、新たな入力業者に引き継ぐまでの間、必要な作業のフォローを行いつつSAY企画に業務を継続させるという判断を行った次第でございまして、一定の妥当性はあったのではないかというふうに考えております。
●西村(智)委員
時間ですので終わりますが、やはり、契約違反のあった業者に改めてその後もデータを渡していたというのは私は問題だと思います。
●西村(智)委員
先ほどの質疑で、一月十日に委託業者が契約違反をして再委託をしているということが確認されたということ、そして一月十日以降も十八万件ものデータがその委託業者に渡されていたということが明らかになりました。
それで、不思議なのは、一月十日に年金機構それから厚生労働省もこの事態を把握していた、要するに再委託されていたということを把握していたにもかかわらず、なぜ国民への公表が三月二十日だったのかということでございます。この点について、なぜ三月二十日の公表だったんですか、水島理事長。
●水島参考人
この契約が、いわゆる一つの契約として、二十九年度分の扶養親族の個人番号の申出書、それから三十年の公的年金受給者の扶養親族等申告書、この二つの事業について一つの契約で行っておりました。この中で起きてまいりました、まあ種々の問題が起きてまいりましたが、四つの問題が起きてまいりました。一つは……(西村(智)委員「なぜ三月二十日に公表したのかということをお答えいただきたいんです。時間がないので短くお願いします」と呼ぶ)はい。
先ほど大臣も御答弁なさいましたが、いわゆる起きてきた問題が複数の問題が起きてまいりまして、その問題の対処を順次行ってきたわけでございます。特に中国の再委託の問題に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、一月六日にわかりまして、一月の末に現地を調査いたしました。その後、全体の調査を継続いたしまして、最終的に問題が整理をされましたのが、三月の十六日に全体の整理がなされました。加えまして、源泉徴収票の誤りに関しましては、一月末に再交付をいたしておりましたが、入力漏れあるいは入力誤りに関します四月の対応に関しましては、一定のめどがついたのが三月の中旬でございました。これをあわせて御報告を申し上げまして、大臣からそれに関して公表するようにという御指示を頂戴いたしまして、公表したということでございます。
●西村(智)委員
三月の中旬に事態が、全体が把握できたと。ただ、きのうのヒアリングでも、再委託の事実がわかった、確認できたのが一月十日だという答弁があったんですよ。その時点で少なくとも国民には明らかにすべきだったのではないかと私は思います。
それと、大臣に伺いたいんですけれども、三月二十日に公表するということは大臣も了解されたんですか。三月二十日は、佐川前局長の証人喚問を行うということを与党側から発表した日だったんです。そのニュースと、言ってみれば抱き合わせのような形で、この問題を何となく国民から見えにくくしたのではないかという疑いすら持ってしまうんですけれども、何で、三月二十日の公表、これを了としたんですか。
●加藤国務大臣
一連の話は、今理事長からのお話があったというふうに思います。
そういう中で、データについて、特に入力ミスについての概括が三月二十日ごろ、三月二十日にはわかるということでありましたので、そこの段階で私の方が理事長を呼んで、それを踏まえて、全貌について、一連の委託についていろんな事案があった、その全貌について、その内容と、そしてそれに対する機構の取組、これについてしっかり説明を対外的にもしていくようにということを申し上げたということでありまして、あくまでも、その時期は全体の状況について把握ができたということでございます。
●西村(智)委員
二カ月以上も、再委託の事実を把握していながら、日本年金機構と厚生労働省はそれを国民に隠していたということです。これは大変大きな問題だと思います。引き続き質問もあると思います。
水島理事長、お伺いしたいんですけれども、最近やはり、事務処理誤り等が日本年金機構においては増加傾向であります。毎月、誤り等についてということで誤り件数が公表されていますけれども、ここ数年、非常にふえている。これを踏まえると、やはり今の外部委託業者の選定のあり方、これを見直す必要があるのではないかというふうに私は思います。
それから、外部委託していたところが本当にその業務運営できちんとやられているのかどうか、これについても、運営評議会などで、外部委託先から情報が漏れたりするんじゃないかということも懸念されているという声がある中で、日本年金機構は、安全を担保する対策をとっているというふうに答えていますけれども、今回もまた外部委託先で問題が起きているわけですよね。外部委託先で起きた事件、非常に多いです、この間。その外部委託先をきちんとチェックする体制、それができていなかったのではないかと言わざるを得ませんが、いかがですか。
●水島参考人
先ほど御質問を頂戴いたしましたので正確な数字を今手持ちで持っておりませんが、事務処理誤り全体としては減少をいたしていると思いますが、御指摘のとおり、外部委託における事務処理誤りについては増加傾向にございます。手元にございます数字で若干の検証が必要でございますが、平成二十六年度で百四十三件、平成二十七年度で百七十七件、平成二十八年度で百九十五件というふうに、この数年、増加傾向にございます。
今回の事案も踏まえまして、外部委託の事務処理のあり方について抜本的に見直すように大臣からも御指示を頂戴いたしております。
現在、私ども、機構内にプロジェクトチームをつくりまして検討を進めているところでございますが、具体的な内容といたしましては、入札仕様書に対応した体力、能力の把握の方法、入札後、履行能力の確認、立入検査のあり方、検品体制のあり方等でございますが、この中には、当然、入札の方法、契約の方法の見直しも含めて検討いたしております。
具体的には、従来から進めております総合評価落札方式、あるいはSLAの効果的な活用等を進めてまいりますが、加えまして、契約方式に関しまして、落札後、履行能力を確認した後、正式な契約を締結するという方法について現在検討を進めている状況でございます。
また、御指摘がございましたが、近年、特定個人情報等、極めて重要な個人情報を取り扱う業務が拡大をしてまいりました。このような状況の中で、果たして外部委託をこのまま続けていいのかということについては検討を要するというふうに考えております。
その中で、例えば内製化も含めて検討を進めるべきだというふうに考えておりまして、これから具体的な検討に入りたいと、今、厚生労働省とも協議を進めさせていただいているところでございます。
●西村(智)委員
また、この件については質疑の時間もあると思いますので、そのときに伺いたいと思います。
文部科学省、政務官からお越しいただいております。東北大学の雇いどめの案件について伺いたいと思います。
きょう資料で配付しておりますものは、東北大学の部局長連絡会議というところで、それぞれ、平成二十五年二月の十九日と、それから平成二十六年一月の二十一日に配付された資料とのことでございます。
まず、平成二十六年の一月二十一日の方を見ますと、一月の二十一日のところで、三ページの下の方から四ページの頭のところにかけて、このように書かれています。無期労働契約への転換の申込みが、五年を超える場合にはですね。それで、通算五年を超える有期労働契約の更新は、財政等の面で大きな負担と責任が伴うものであるので行わないことを原則にすると書かれています。
そして、その裏面を見ますと、二とページ数が打ってある方ですけれども、真ん中ごろに、改正法を踏まえ、労働契約法の改正法を踏まえ原則六カ月のクーリング期間を設けるというふうに書かれています。
これを二つ組み合わせて考えますと、無期転換をしないために何か脱法的にクーリング期間を設けるということを、財政面からもそういうふうにしなきゃいけないんだということの、裏もちゃんとこう書かれているわけですので、これは、私、労働契約法の改正の趣旨とは大きく外れるのではないかと思いますけれども、これについて厚生労働大臣の見解を伺いたい。
それから、文部科学省には、この無期転換ルールをめぐる雇いどめの問題、実は、大変多くの方がもうこの三月いっぱいで雇いどめに遭うんじゃないかということで言われておりますけれども、今の資料を見ていただいたところでいえば、無期転換を避ける意図が明確にあらわれているというふうに私は思います。なので、文科省として、この方針を撤回させて、無期転換ルールの趣旨に沿った対応をとるべきと大学の方に指導すべきと思いますが、いかがですか。
●加藤国務大臣
この委員がお示ししたやつは両方とも(案)と書いてあるものですから、これはどういうふうにとっていいかよくわからないんですが、ただ、いずれにしても、個別の事案について一つ一つ、全体の状況をしかも踏まえることなく申し上げるのは少し差し控えたいと思いますが、ただ、一般論として申し上げれば、クーリング期間は法律上定められているわけでございまして、それにのっとって対応されているということであれば、あくまでも、クーリング期間を定めること自体は法律に規定されているということであります。
ただ、例えば、契約更新上限を設けた上で形式的にクーリング期間を設定し、さらに、期間経過後に再雇用するということを約束した上で雇いどめを行うといったような場合については、労働者を長期に雇用することを前提としているにもかかわらず、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的を持ってクーリング期間を設定して雇いどめをすることは、雇用の安定を確保する観点から、必ずしも適切ではないというふうに考えております。
厚生労働省としては、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的を持って雇いどめする事案を把握した場合には、これは必要な啓発、指導ということにもなりますが、そういったことをしっかりと行っていきたいと考えております。
●宮川大臣政務官
無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的を持って雇いどめを行うことは望ましくない、この委員の御指摘の意見に関しましては、私どもも同様に考えております。
お尋ねの点について東北大学に確認いたしましたところ、平成二十五年の二月十九日に大学が示した対応方針案に、改正を踏まえ原則六カ月のクーリング期間を設けるとの記述がありましたけれども、平成二十六年一月二十一日に東北大学が改めて示しました対応方針案においては、当該記述は削除されていると既に確認をしております。
文部科学省といたしましては、東北大学とその職員との相互理解が進むことをしっかり努めていくことが重要だと考えており、東北大学に対し、職員側と適切に対話をし、労働関係法令に基づき適切な対応がなされるように伝えてまいりたいと考えております。
文部科学省は、これからも、厚生労働省と連携をして、適切な対応をしてまいりたいと考えております。
●西村(智)委員
さすがに、六カ月のクーリング期間というのを公式文書に残しておくのはまずいと思ったんでしょう。私が実際にお会いした方では、上司から、これからも働き続けてもらいたいので六カ月のクーリング期間を持つかどうかというふうに持ちかけられた人が実際にいらっしゃいます。そういう実態があるということをしっかりと把握して、これから対応に当たっていただきたいと思います。
終わります。