●西村(智)委員
立憲民主党・市民クラブの西村智奈美です。
安倍総理は、安倍政権になって経済状況がよくなった、そして相対的貧困率も下がったというふうにおっしゃいます。しかし、生活実感を伴っていない経済成長は何ら意味を持ちません。
一人親世帯の子供の貧困率は相変わらず五〇%超え、大変深刻な状況です。一人親の、特に女性の一人親の世帯では、非正規雇用にしかつくことができず、ダブルケア、トリプルケア、こういったことを強いられて、そして体を壊してしまう人たちも少なくありません。こういったところに目を向けることが政治に求められている、私はそう思います。
そして、一人一人の実質賃金指数、これは厚生労働省からいただいた数字ですが、総理は、総雇用者総数でしょうか……(安倍内閣総理大臣「所得」と呼ぶ)総雇用者所得ですね、数年前から突如として新たな定義で新たなデータを出すようになってまいりましたけれども、そうではなくて、一人一人の働いている人たちがどのくらいの賃金を受け取っているかという実質賃金指数で見ますと、二〇一三年以降つるべ落としに下落し、それ以降、五、六ポイントも低いという状況がずっと今も続いています。こういったことに目を向けることが、私は今政治に求められていると思う。
さてそこで、今回は、働き方改革について、そして幼児教育の無償化等について質問したいと思っております。
二〇一三年、日本再興戦略、ここで、いわゆる裁量労働制、これの拡大をするということが盛り込まれました。翌年の日本再興戦略、バージョンアップしたものには、高度プロフェッショナル制度の追加が盛り込まれました。このときに初めて、労働の対価は賃金ではなくて成果で評価される制度へと転換するのだ、こういうふうに、いわゆる脱時間給制度ですね、これが初めて盛り込まれたわけでございます。
その後、労政審を経て、二〇一五年に労働基準法の改正が提出をされました。ここには、高度プロフェッショナル制度、そして裁量労働制の拡大、これが盛り込まれましたけれども、さすがに、国会にこれを出して、大変問題の多い法案でありましたから、審議がされるというふうに霞が関の方も思わなかったのでしょう、審議されることなく、廃案になったり、通常国会、そのまま閉じたりということが続いてまいりました。
そして、今回、長時間労働を是正するというふうに旗を振って、働き方改革というものが出てきたわけでございます。柔軟な働き方を可能にするということが言われておりますけれども、果たして本当にそうでしょうか。柔軟な働き方で、労働者がこれで喜ぶような制度なのでしょうか。大変疑問です。
そこで、まず最初にお伺いします。
高度プロフェッショナル制度、裁量労働制度の拡大、こういったものを導入したら、働き方はどういうふうに変わっていくというふうに考えておられるでしょうか。あるいは、どういう人たちがこの制度の対象となるというふうにお考えでしょうか。
●加藤国務大臣
今、高度プロフェッショナル制度と裁量制の拡大、一緒にお話をされましたので、一緒にお話をさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、今回の改革、一人一人の事情に応じた多様な働き方が選択できるようにする、そういう社会を実現していく、そういったことで取組をさせていただいております。
当然、働く方の健康を確保していくということは大前提でありますけれども、それぞれの皆さんが、特に高度プロフェッショナルであれば、プロフェッショナルとして仕事をされている方が、余り時間について言われない中で自分の力を存分に発揮をしていきたい、こういう思いを持っておられる。私も直接聞かせていただいた方もおられますけれども、そういった、働く方の健康は確保しつつでありますけれども、その方の能力を思う存分発揮をしていただく、創造性を発揮をしていただくということにつながっていくというふうに思います。
また、裁量労働制においても、同じように、自分の裁量で働く時間を変更することによってより効率的に働いていくことができる、あるいは、自分の事情が何かあれば、その時間以外のところで働いていく。実際、現在も裁量労働制を使っているある企業でお話を聞かせていただきましたけれども、そういった形で時間をつくり出して自分の時間を確保する、あるいは診療に行く時間を確保する、そういったこと、さらには、めり張りを使った働き方ができるようになった、こういう指摘もあるわけであります。
もちろん、現行でもきちんと裁量労働制が適用されていない事例もあることは事実でありますから、そういったことはしっかりと厳正に、我々、監督指導をしながら、今申し上げたそうした働き方を希望する方、そういった方々がその力を十二分に、また、さまざまな制約条件がある中でも働くことができる、こういう環境をしっかりつくっていきたい。こういうことで、今回、高度プロフェッショナル制度の創設、裁量労働制の対象の拡大について、今検討をさせていただいているところであります。
●西村(智)委員
お答えになっていらっしゃらないので、私、ちょっと先に進めなければいけないんですが、高度プロフェッショナル制度の対象業務について、先ほど大臣、年収が大体平均の三倍以上と言われる方、俗に一千七十五万円の年収の方であったりとか、それからディーラーの方であるとか、それから研究開発をされている方が恐らくその対象になるであろうということでありました。
では、そういった方々は、高度プロフェッショナル制度が導入されたときに、よりハッピーな働き方に本当になっていくんでしょうか。
高度プロフェッショナル制度というのは、今働いているその現状で、仕事量が実はそんなに多くなくて、そして時間内できちんと仕事が終わって、時間がたつまで家に帰れないという人たちに対して適用されるのであれば、高度プロフェッショナル制度というのはとても意味のある制度だと思います。
しかし、そのディーラーの方、研究開発をしている方、今現在どういう働き方をしておられるでしょうか。しかも、年収が一千七十五万円以上という方、これも私はトリックがあると思う。残業代を含めれば、一千七十五万円という年収レベルは、そんなに皆さんが思っているより高くない、低いものだというふうに思います。
一体どういう人たちがこの高度プロフェッショナル制度になるのか、今現在どういう働き方をしている人たちがこの高度プロフェッショナル制度の対象になるのか、そこを聞かせてください。
●加藤国務大臣
年収の方ですが、多分、先ほどの国税庁の調査、これは全体の給与所得でありますから、当然それには残業代も含まれているんだろうというふうに思います。それで計算して、先ほど三%ということを申し上げたところでございます。
それから、今どういう働き方をされている方が対象になってくるのか。ここにおいては、一つは対象業務ということ、これは先ほど申し上げましたけれども、それを法律に書くことを原則として、具体的な中身は労働政策審議会で最終的には決めていく。その具体例として、平成二十七年の労働政策審議会の建議において、先ほどお話がありました金融ディーラーとかコンサルティングとか、こういったことが指摘をされているわけであります。実際、そうした立場になっていく、やはりプロとして仕事をしたい、しているんだ、こういう自負を持っている方もたくさんおられるわけでありまして、そこは自分の裁量に任せてやらせてほしいんだ、そして、自由にやらせていただく中で自分の能力を発揮していきたい、創造性を発揮していきたい、そう思っている方々が対象になっていくんだろうと思います。
この制度は、先ほど申し上げたように、労使それぞれ半分ずつ、半数ずつの労使委員会において五分の四の決議、かつ、こうした働き方をするに当たっては本人が書面で同意をする、こういった手続も入っているわけでありますから、あくまでも、そうした思いを持って、そうした制度がその会社の中で労使で合意できて、そしてみずからやりたいということでそれに挑戦をしていく、こういうことになるんだと思います。
●西村(智)委員
労使委員会は誰が指名するんですか。これはどういう選び方になるのか。法律案要綱の中には、労働者側から選ぶということは一言も書いてありませんよね。
それから、書面でサインをする、あるいは本人が希望しなければそういう制度の対象にはならないんだということなんですけれども、使用者と働く人の関係において、やはり立場は使用者の方が上です。使用者の人から、あんた、次から高度プロフェッショナル制になってくれとか、裁量労働制の拡大の範囲に入ってくれと言われたら、これはなかなか断ることができないのではないでしょうか。
私は、本来であれば、この高度プロフェッショナル制と裁量労働制の拡大を分けて議論しなければいけないんですけれども、大臣もまとめてお答えになっているので私もまとめての質問になってしまうんですが、これは、長時間労働を既に今している人たちに、更に合法的に、残業代を支払わないで長時間労働を強いる、そういう制度になっていくおそれが非常に強いというふうに思います。
今でさえ、サービス残業という言葉があり、そして労基署が摘発しているさまざまな事例を見れば、そのほとんどの多くは賃金の不払いですよね。そういったところで、労基署の人員、新年度予算で確保するというふうに言っていましたけれども、わずか五十人です。全国に散らばったら、本当にスズメの涙ほどにしかならない。
私は、この高度プロフェッショナル制度そして裁量労働制の拡大、これは、過労死、過労自死、これを更にふやしていく大変危険な法律だというふうに思っています。
しかも、時間によって賃金を支払うというのではなく、成果によって賃金を支払うということになっている。しかし、成果をどういうふうに評価するのか、法律の中に、あるいは法律案要綱の中に、どこにも書いていないですよね。職務評価をするんですか。大臣、お聞かせください。
●加藤国務大臣
今申し上げた点は、労使委員会における決議の中において、どうした対象業務にしていくのか、どういった対象の働き手にしていくのか、そういったことを決めるということになっているところでございまして、そこの労使の間の中で最終的、同じことになりますけれども、そこで決めていく、こういうことになります。
●西村(智)委員
何も答えてくださっていないので、このままですと、本当にこの高度プロフェッショナル制度、裁量労働制の拡大、過労死促進ということを、大臣、反論できないということになりますよ。
労使委員会も使用者が指名することができる可能性がありますよね。今まだ法律案要綱の段階ですけれども、どういうふうにこれから書かれていくのかわからないけれども、もし本当に労働者の中から労使委員会を指名できるというのであれば、法律案にきちっと書けばいいんだというふうに思うんです。
それから、長時間労働の、今現在行われているという状況の中で、更にこれを合法的にできるということになる。成果によって賃金を支払うという新たな制度です、これは。今までの労働法制には、こんなことはありませんでした。
これまでの労働法制は、時間に対して賃金を支払うという考え方だった。それは、いいも悪いも、今まで七十年間ずっと続いてきた考え方だったんです。だけれども、今回、成果によって評価して賃金を支払うということであれば、必ずどこかで、その成果の評価、職務評価、こういったものが必要になってくるはずなんです。それがどこにありますか。どこで行われるんですか。
●加藤国務大臣
まず一つは、労使委員会でありますけれども、過半数代表者の選出方法については、使用者の意向による選出は手続違反に当たる、これを省令にしっかりと規定をしていくということでありますから、それに違反していれば、当然その決議は無効になる、こういうことになるわけであります。
それから、今お話があった評価云々でありますけれども、どういう仕事を対象にしていくのかとか、そういったことはきちんと明確にして、決議の中においてそこをしっかりと明確にしていく、こういう中身になっているところでございます。
●西村(智)委員
いや、今何をお答えになったのかわからなかったんですけれども。
つまり、その職務評価は、どこかではやるということになるということですか。どういうことなんですか、今の答弁。
●加藤国務大臣
もちろん、当然、職務評価をする前に、どういう仕事がその人に与えられるかということをはっきりしなければ職務評価はできないわけでありますので、そういったところは、先ほど申し上げた労使委員会の決議、そういったところでやり方を決め、そして、あとは個々の、それぞれの相対の中で、この人間に対してどういう仕事をしていくのかということを提示していく。そして、結果においてそれはもちろん評価をされるということになるわけでありますけれども、それはこういうことをするということを前提に、当然、その年は、一年間なら一年間、そうした形で働く、そして、その結果として、また翌年どうするかというのはまたその中で決めていく、こういうことになるんだろうと思います。
●西村(智)委員
成果に対して賃金を支払うわけですよ。これは日本再興戦略の中でも、時間ではなく成果で評価される制度へと変えるのだということだから、成果が出るものに対して対価が支払われるし、そうでなければ対価は支払われないということになりますよね。それは、毎年毎年の更新のことを言っているのではなくて、どうやって評価をされるのかということを私は聞いたんですけれども、今のだと全く答弁になっていないです。これだと、労働法制の大転換に大変理屈の上で大きな欠陥を含んだままということにもなりますので、そういった意味からも、私はこれは賛成できません。
裁量労働制についてちょっと一点伺いたいんです。
裁量労働制、現在も問題がある、これは大臣もお認めになりました。たしか年末に、大手の不動産会社が裁量労働制を悪用していて、営業している人たちを大勢、裁量労働制の枠に入れていたということでした。
これは厚生労働省からのデータでも明らかになっていますけれども、年収三百万未満の人たちも、現在、裁量労働制の対象に既になっております、年収三百万未満の人たちも。
高度プロフェッショナル制は、まあ、曲がりなりにも一千七十五万という年収の区切りがあるようです。しかし、裁量労働制の拡大は、これは年収三百万未満の人たちもなっている。こちらは年収要件はないんですか。
●加藤国務大臣
裁量労働制については、年収については特に要件はございません。ただし、現在で、そうした勤続年数については三年以上ということで指針で示しているということでございます。
●西村(智)委員 年収三百万未満ですから、恐らく相当数の方が入ってくるというふうに思うんですね。しかも、今の裁量労働制は企画業務型など大変業務が限られているわけですけれども、今度はそこに二つの類型が新たに加わってくるということになると、私は、相当数の方がこの裁量労働制の枠に入ってくると思います。
つまり、みなし時間、労働時間に何時間かの残業時間をみなして労働時間として、それに対して対価を支払うということになっているわけですけれども、実際には、皆さん、みなしの労働時間は大体平均すると八時間ぐらいなんです。だけれども、実労働時間は大体九時間を超えています。最長の者の平均でいうと十二時間です。もう四時間も、いわゆるサービス残業的な残業を既に今の裁量労働制の中でやっているというのがこの制度の問題で、それをまた拡大するというのは、私は、サービス残業を更にふやす、長時間労働を更に促進することになりかねない、こういうふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。
●加藤国務大臣
先ほど西村委員御指摘の件は、ある不動産会社の件でありますけれども、これは、明らかに裁量労働制の適用できない業種に適用していたということで、監督指導を行ったところでございます。
それから、今の御指摘でありますけれども、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合には、労働基準監督署がその適正に向けた指導を行っているところでございますし、また、みなし労働時間を決めるというのも、先ほど申し上げた、半数以上を労働者で構成する労使委員会の五分の四以上の多数で決議をする、こういうことにもなっております。
またさらに、今回、今我々議論している法改正においては、裁量労働制の適正化に関する指針について、労働基準法に指導のための根拠規定を設けていく、そして、これにより労使に対し指導助言を行うということでありますから、みなし労働時間と実労働時間に乖離がある場合については、法に基づいた厳正な監督指導を行っていく、こういうことになります。
●西村(智)委員
今現在、もう既にそういう乖離があるわけですね。これに対して、大臣は、それは聞かれればちゃんと是正指導はしていきますというふうにおっしゃるんでしょうけれども、今の体制でそれはできていないじゃないですか。
これでまた対象を拡大すれば、指導すべき事業所数がもっともっとふえますよ。そして、残業時間がどんどんふえる。サービス残業として今は違法なものというふうに位置づけられているけれども、今度、裁量労働制の枠の中に入ったら、それは合法的なサービス残業なんだ、誰もチェックができなくなります。労基署も一生懸命頑張っているのは、それはわかる。だけれども、私は、今のこの現状の中で裁量労働制の拡大をやったら、本当にアリの一穴になって、高度プロフェッショナル制も同様です、どんどんどんどん対象者が広がってくることになる。
労働者派遣法を思い出してください。対象業務は最初十三でした。だけれども、経済界からの求めに応じて二十六業務にまで拡大をしました。常に、こういうふうに、穴があいたらそこからどんどん広がってきて、働く人たちの権利が脅かされるというのがこれまで何度も繰り返されてきたじゃないですか。
しかも、この長時間労働は、日本においては、過労死、過労自死と大変密接に絡んでいる本当に深刻な問題です。何人亡くなっているんですか、過労死で、過労自死で。何人亡くなっているか、大臣、御存じですよね。労災の認定件数もふえ続けています。精神障害で過労自死をした人の件数、それから過労死をした人たちの認定件数も決して減ってはおりません。
こういったケースをもうふやしたくない、一人でもこういう人たちをもうつくりたくない、そういう思いが大臣にはないんですか。
●加藤国務大臣
まさに、過労死で亡くなった方々、これまで、それぞれおられるわけでありますけれども、そうした方々に対して、二度とそうしたことを起こさせない、そういうことで我々は取り組んできたわけでありまして、そういった意味で、長時間労働についても、これまで労働政策審議会で議論されてきたけれども答えが出なかった。
それに対して、今回は、上限規制を入れるということで労使の合意も図ってきたわけでありまして、そうした意味で、私たちは、これまで以上に長時間労働を是正して、日本において、まさに過労死という言葉、これは英語にもフランス語にもないというふうに聞かしていただいておりますけれども、それが、それぞれの国で日本語の過労死という言葉が使われている、こういった状況をなくしていく、そのために全力で取り組んでいきたい、こう思っております。
●西村(智)委員
今回の働き方改革の中には、確かにいい項目もあります。中小企業の割増し賃金をちゃんと払うようにするとか、有給休暇をちゃんととらせるようにするとか、そういうところは私たちも賛成したいんです。だけれども、高度プロフェッショナル制度、それから裁量労働制の拡大、こういった、言ってみれば大変おかしな、邪悪な仕組みが一緒になっているものを、私たちはとても審議はできません。抱き合わせでどっちも通してくれ、これはもう、とても虫のいい話だというふうに私は思います。
それから、今回の法案の中で、同一労働同一賃金について大変評価する声も聞かれるようでありますけれども、我が国のジェンダーギャップ指数、皆さん御存じのとおり、大変低いです。百四十四カ国中百十四位。特に政治分野、そして経済分野、ここでの順位が非常に低いことが問題になっております。
今回の働き方改革は、どの程度女性の働き方に着目をして行われたものになっているんでしょうか。私は、今回の改革で男女間の賃金格差が是正されていくというふうにはなかなか思えないんですけれども、女性の働き方についてどの程度着目をして今回の働き方改革は話し合われてこられましたか。
●加藤国務大臣
一つは、先ほど申し上げた長時間労働の是正を図ることによってワーク・ライフ・バランスを保っていく、バランスをとっていくようにしていく。そうした中で、特に高齢者あるいは女性の方、さまざまな条件もあって、例えばフルタイムプラス今のような残業が前提になっているのではフルタイムでは働けない、それで結果的にパートタイムで働いている方もいらっしゃるわけでありますから。
そういった意味でも、長時間労働を是正していくということによって、女性の方、あるいはそうした多少の制約条件があってもフルタイムで働ける、そういった可能性もつくっていくことになり、また、それはその方の働く機会をふやしていく、あるいは働くことを通じてその方の思いを実現していける、こういうことにもつながっていくんだろうと思っております。
それから、同一労働同一賃金の背景にあるのは、非正規で働く方の処遇の改善であります。
そして、今、日本全体の非正規で働く方は働いている方の全体の四割でありますけれども、特に三十代後半の女性は半分以上が非正規で働いておられます。そういった皆さんも、不本意ながら、本当は正規で働きたいけれどもという方は決して多くなく、約一割少々ということで、残りの方は、さまざまな制約条件がある中でパートタイム等の働き方を選択されている。
しかし、今現状を見ると、あるいはヨーロッパと比べると、一概に、単純には比較はできませんけれども、ヨーロッパでは、フルタイムで働く方を一〇〇とするとパートタイム等の方は約八〇に対して、日本は六〇、こういったことにもなっているわけで、そういった形での処遇を改善していく。
そのために、もちろんパートタイムの方の給与の引上げ等を今図っているわけでありますけれども、あわせて、不合理な待遇差の改善、これを図ることによって、そうした形での働き方の処遇の改善、あるいはそういう形で、働くことに対するやる気とか誇りとかそういったことも高まっていく、このように考えております。
●西村(智)委員
その不合理な待遇の判断のときに、実は私は、日本型の雇用慣行の中でずうっと問題になってきた女性に対する差別的な雇用慣行、これは実は問題になっていなかったというふうに思っているんです。
例えば、転勤ができるかどうか聞かれることがあります。それによって雇用管理区分が分かれるということは往々にしてあります。これは生活者にとっては大変厳しい話です。
転勤を強いられる、そうすると、女性の方などはやはり特に、転勤できませんというふうに言う。そして、それでもうコースが違ってしまって、コースが違うから、あなたはもう低い賃金体系でいいんですということになってしまう。
ところが他方、転勤できますよというふうに言われて、高いコースに行った男性はどういう賃金体系になっているか。もちろん転勤していく人もいるんでしょうけれども、何と、場合によっては、コースだけ変えた後に、転勤させないでずっと同じ勤務地にいるなんというケースがあるんですよ、大臣。
こういう差別的な慣行を直していかないと、本当に正規と非正規の壁はなくなっていかない。そこに男女間の賃金格差という目線を入れていかないと、そして、仕事と生活の両立をできるように、合理的な配慮を必要としているんですよというその法規範を入れていかないと、私はここはやはり直っていかないというふうに思っているんです。
大臣、これをやるつもりはありませんか。
●加藤国務大臣
今回の同一労働同一賃金については、現行のパートタイム労働法とか有期契約法の中にありますけれども、職務の内容あるいは変更あるいはその他の事情、これらを踏まえて、その合理性があるかないかということを判断していくということになるわけであります。
今お話がありますように、全国で転勤する人と、その地域だけで残る方、そこをどう評価していくのかということはあるんだろうと思います。
ただ、今おっしゃるように、そういうことになっているけれども、見ていると実態はその方はずっとそこにいるということであれば、それはそういった体系になっていないんだろうということにもなっていく、そこはよく見ていかなければならないのかなというふうに思います。
また一方で、常に転勤が必要なのかどうか、そういった議論というのはもちろんされていくべきところはあるんだろうと思いますが、今回の議論においては、先ほど申し上げた処遇やあるいは配置転換、そういったものについて、現在の法律を前提にしながら、さらに、一つ一つの処遇、基本給において、賞与において、通勤手当において、それぞれがどういうことになっているのか、一個一個見ながら、不合理さがあればそれを是正していこう、こういうことになるわけであります。
●西村(智)委員
大変長くお答えをいただいたんですけれども、結論としてはやる気がないということがよくわかりました。
私たちは、男女間の賃金格差を是正するためのILO条約、これに沿った形で改正案を提出したいというふうに考えています。
総理は、よく対案を出せというふうに、この場でも何度も何度もおっしゃいました。私たち、対案は出してきたんです。だけれども、提出しているのにそれを国会で審議されないままつるされる、与党の、特に自民党国対の方から、審議しないということをもう最初から言われることがたびたびありました。
せっかく出す対案です。ぜひ審議をしようと、自民党総裁である総理の方から党の方にも言っていただけませんでしょうか。
●安倍内閣総理大臣
ここに私は自由民主党の総裁ではなくて総理大臣として、いわば今般提出した予算あるいは行政、外交等について答弁をする義務を負っているわけでございますが、国会については国会がお決めになることだと思います。
●西村(智)委員
また逃げられた。そうであれば、すぐ対案を出せとか言わないでいただきたいというふうに思うんですね。
次に、幼児教育の無償化について伺いたいと思います。
きょうが二月の二日。一月の末から二月にかけては、多くの自治体や多くの施設で、幼稚園、保育園、こういったところへの入園の許可、不許可、これが通知される時期であります。多くのママさん、パパさんたちは、この時期を本当に複雑な思いで迎えておられます。
私も、うちも、昨年、保育園に落ちました。途方に暮れました、本当にどうしようかと。幸いなことに多くの方々から人の手をかりることができて、今に至っております。
しかし、本当に、この時期、途方に暮れている人たちがまだまだたくさんいらっしゃる。待機児童が今なお何万人といる。そして、これから恐らく、女性活躍促進と言われていますから、働く女性がふえてくれば、もっともっとふえてくる。それから、幼児教育の無償化をやって、その対象園が限られるということになれば、その無償化の対象になる園に入りたいということで、希望が殺到することも予想されます。そうしたら、ますます待機児童がふえてくるというふうに思います。
私は、幼児教育の無償化、お金が無尽蔵にあったら、ぜひやっていただきたいと思います。だけれども、今、限られた予算の中で、そして、この消費税という国民の皆さんからお預かりをする大事な大事な税金、二兆円というお金、これを本当にどこに効率的に使っていかなければいけないかということを考えたときに、優先度、あるいはその使い道、その額、範囲、これについて本当に十分議論がなされたのかというふうに大変疑問に思うんです。
総理、この幼児教育の無償化については、昨年の総選挙のときに突如として総理が言い出されたことでありました。聞きましたら、自民党の中でもほとんど議論されないまま総理が発言をしたんだということであります。その後、議論をする部会長の方は大変お困りになったというふうにも新聞報道などで読みました。
この総選挙、大義なき解散というふうにも言われておりました。その大義なき解散を正当化するために、あえて消費税の使い道を変えるという大きな大きな玉を出して、あえてそのスローガンとして使った、こういうことだったのではありませんか。
●安倍内閣総理大臣
いわば大きな玉を出したということはもうおっしゃったわけでありまして、大きな玉であるということは認められたんだろう、こう思います。
つまり、二兆円規模の恒久的な財源を得るというのは、一気にですね、これは大変なことであります。それをやる上においては、やはり国民の声を聞く必要があるというのは当然のことであろう、こう思ったわけであります。
解散についてお話をされたんですが、解散というのは、解散したからには、我々は政権を失うリスクをとるわけであります。解散したら、自動的にもう一回我々が過半数をとれるような甘いものではないんだろうと思います。そういう中で私たちはあえて、政権を失うリスクはあるけれども、消費税の使い道を変える以上、我々は解散をするべきだ、こう考えたところであります。
そして、委員もお認めになったように、これは大きなまさに政策であるということでございます。そのことは申し上げておきたいと思います。
●西村(智)委員
この消費税は、社会保障と税の一体改革で大変長い時間をかけて議論して、その使い道を決めました。しかし、今回はわずか二カ月です。大変拙速なやり方だったと思う。その使い方、これまでの経過については、私はやはり問題視しなければいけないというふうに思います。
それから、今回の幼児教育無償化、全ての園が対象になるというふうに一瞬私も思わされました。何の注意書きもなかったので、認可外の園も含まれるんだというふうに一瞬思った。だけれども、認可外の園はどうも含まれない。そうしますと、認可外から、先ほども申し上げましたように、認可園を目指して競争率が激化して、そして待機児童が更に増してくるということが予想されます。
ママたち、パパたちの思いは、まずはこの待機児童の問題を先にやってほしいということなんです。そして、そこで働く皆さんの処遇を改善して、いわゆる保育の質、これを改善してほしい、維持してほしいということなんです。それをまずはやるべきではないか。
総理は、平成二十九年度の末までに待機児童をゼロにすると約束をしました。だけれども、それができないといって、直前になってその約束をほごにして、そして新たなパッケージを出すというふうに言った。こんな、約束をしてできなかったということを見せつけられますと、本当に、子供たちを抱えて、どうやったら仕事と生活を両立できるかというふうに考えているママたち、パパたちの気持ちには決して応えたことにはなりません。
まずは待機児童対策、そして働く保育士の処遇改善、人件費、ここにしっかりとお金をつけてもらいたい、そこが最優先課題だと思いますが、いかがでしょうか。
●茂木国務大臣
西村委員おっしゃるように、待機児童の解消、待ったなしの課題だと捉えておりまして、最優先で取り組んでいきたいと思っております。
新しい政策パッケージにもあるとおり、幼児教育の無償化につきましては、来年、二〇一九年度から段階的に進めて、二〇二〇年にフルパッケージで実施をしたいと考えておりますが、喫緊の課題であります待機児童対策につきましては、今般の補正予算案に盛り込みました施策を含めて、今年度からスピード感を持って取り組んでいきたい、こんなふうに考えております。
三十二万人分の受皿整備をきちんと前倒しをして、二〇二〇年度末までに進める、そのために、もし細かく必要でしたらまた御説明を申し上げますが、こういった受皿の整備を進め、同時に人材の確保、これが保育の分野は極めて重要でありますから、保育士さんの処遇改善、こういったことも進めてまいりたい。
どちらをとるかという問題より、待機児童の解消、そして子育て世代の負担を軽減するこういった幼児教育の無償化、同時に進めていきますが、若干、スピード感としますと、待機児童の解消、こういったことに最優先で取り組みたいと思っております。
●安倍内閣総理大臣 一言だけ加えておきますと、認可外の保育所を対象外にするということは、これは誰も言っていませんし、そんなことは決めていません。認可外の保育所をどうするかということは、まさにこれから議論していくことでございます。
そして、待機児童の解消につきましては補正予算と来年度予算で直ちに措置をしていくわけでございますが、無償化については一九年から徐々に始めまして、二〇年度にということでお約束をしているところでございます。
●西村(智)委員
待機児童対策というのは、達成時期がなかなか見込めないものです。総合的にやっていかないと、本当に、同時に幼児教育無償化でやっていくというのでは、これはとても時間が間に合いません。
幼児教育の無償化は、極論を言えば、財源があればすぐできるんです。すぐできるんです。制度設計さえできてしまえば、そして財源があればすぐできる。しかし、待機児童対策というのは、園をつくったり、あるいは保育士の処遇を改善したり、また土地を探したりということで、時間が非常にかかりますから、まず最優先でここに最大限の力を傾注してほしいということなんです。
保育士の皆さんの処遇、今、まだ非常に低いです。全産業平均と比べても恐らく十万円近い開きがあります。これまでの待遇改善で一体どのくらいの待遇が改善されましたか。そして、これからどのくらいの待遇改善が見込まれますか。
●加藤国務大臣
これまでも、待機児童の解消ということをしっかりやっていく、そのために、今委員御指摘のように、受皿そのもの、ハードをつくると同時に、そこで働く保育士の方々をしっかり確保していく、そして、そのためにも、そうした方々のさまざまな負担の軽減、労働負担の軽減も図りながら処遇の改善をしていくということで取り組んでまいりました。平成二十九年までにおいて合計で一〇%の改善、加えて、技能、経験に応じて月額最大四万円の改善を行ったところであります。
こうした形で取り組む中で、賃金構造基本統計調査、これは厚生労働省の調査でございますけれども、実は保育士の給与は平成二十五年まで減少しているんですね。二十六年から上昇を始めました。そして、この間、ボトムであります平成二十五年が三百九・八万円、それが平成二十八年では三百二十六・八万円ということでありますから、約十七万円ぐらい上がっているということになるわけであります。
●西村(智)委員
しかし、全産業平均と比べればまだまだ大きな乖離があります。何もやっていなかった、何も取り組んでいなかった、そういうふうには申し上げません。だけれども、もっともっと加速する必要があるということは強く申し上げたいというふうに思います。
最後に、今、このように、働いている皆さん、それから働きながら子育てをしている皆さん、大変な状況です。みんなが払っている税金が適切に使われているのか、そういう意味で、この国会審議、大変注目をされていると思います。その中で、私はやはり、佐川国税庁長官、しっかりと国会に出てきていただいて、今疑惑と言われているものについて長官自身の口から明確に話をしてもらう必要があると思う。
総理は、適材適所だと佐川長官のことをおっしゃいました。適所にいる適材であれば、しっかりとこの場に出て話すことは可能なはずです。なぜ隠すんですか。国会にしっかりと出てきていただいて、証人喚問を行ってもらうように強く要望して、私の質問を終わります。