■西村(智)委員
今週の月曜日に、熊本地震に関連する補正予算7780億円に関する衆議院予算委員会での質疑がありました。その中で、我が党の山尾志桜里政調会長が、保育士の処遇改善のことについて質問をされました。
私ども、3月の24日に保育士処遇改善法案を既に提出し、この厚生労働委員会に付託されたのが3月の30日でございます。既に2カ月近くたっているのに、いまだに趣旨説明すら、させてもらっていない。これはもう甚だしい与党側の審議拒否であると私どもは何度となく抗議をし、そして、その審議を進めてほしいという要求をしてまいりました。いまだにそれがなされていないということは今日は指摘にとどめさせていただき、そのときの塩崎大臣の答弁が私もどうしても気になりますので、きょうは、その点から質問をさせていただきたいと思っております。
資料にお付けしている二枚目のところが、その日の速記録になっております。
山尾政調会長が、一億総活躍国民会議で保育士の給与を2%上げる、その内容について、民主党政権で決めたことを、全く同じことを新たにと言いかえているのではないかという質問に対して、塩崎大臣はいろいろお答えになっているわけですけれども、その中で、途中このように述べておられます。
保育士としての技能、経験を積んだ職員について、下線を引いてあるところですが、全産業の女性労働者との差が月額4万円程度あることも踏まえて、賃金差がなくなるようさらに処遇改善を行っていくと。
言うまでもなく、保育士の平均賃金は、全産業平均賃金と比較しておよそ10万円の差があります。
確かに、女性労働者との差で見れば、4万円というのが数字としてはあるのかもしれません。しかし、なぜ保育士の処遇改善について議論をしているときにあえて全産業の女性労働者の平均給与の数字を比較対象として持ち出してきたのか、改めてその理由について大臣にお伺いいたします。
■塩崎国務大臣
保育人材の確保のための総合的な対策を講じる中で、これまでも処遇改善について、公務員の給与改定に準拠した改善として、平成26年度2%、そして平成27年度1.9%の改善を行って、さらに、平成27年度には消費税財源を活用して3%相当の改善を行ってまいりました。この結果、保育士の賃金も、平成25年を底に上昇に転じて、着実に上昇してまいっております。
さらなる処遇改善についても、月内に閣議決定予定のニッポン一億総活躍プランに基づいて、財源を確保しつつ取り組むこととしております。
その内容は、従来からの課題でございました2%相当の処遇改善を行うとともに、保育士として技能、経験を積んだ職員について、まずは競合他産業との賃金差がなくなるように追加的に処遇改善を行っていくこととしているところでございます。
この他産業との賃金差をなくしていく際に、目安として全産業の女性労働者との差を用いているのは、これまで保育士の女性比率が一貫して95%程度であることなどを踏まえているわけで、このことについては予算委員会でも申し上げたところでございます。もちろん、保育士が女性の仕事であるという固定的な考え方は解消していくことが重要でありますから、少なくともまずは4万円程度の差をなくしていこうとするものでございます。
その際、大前提として、男女の賃金格差をこのままにしてよいとは考えていないわけでありまして、我が国の男女間の賃金格差については、縮小傾向にございますけれども、いまだ格差があります。しっかりと取り組んでいかなければならない課題であると私どもも認識をしておりますからこそ、女性活躍推進法や同一労働同一賃金に向けた取り組みを進める中で、今後、保育士も含めて、全体として男女の賃金差が縮まるように取り組む所存であって、同一労働同一賃金の発想は、もともとヨーロッパでも男女の賃金格差の解消から出てきたと理解をしているところでございます。
■西村(智)委員
大臣がどういうふうに述べたとしても、この説明はやはりおかしいと思うんですよ。
何がおかしいかというと、つまり、今回、大臣がさっきおっしゃった説明は、全産業の男性労働者の平均賃金と全産業の女性労働者の平均賃金の間に差があるということを所与のものとして、当然のものとして前提としているということ、その上にしかこの説明はやはり成り立たないんだと私は思うんですね。
この説明を大臣が委員会でされました。聞いていた人はどう思ったでしょうか。どういうふうに思ったでしょうか、視聴者の方は。女性の全産業の平均と差が4万円であるからという説明をした瞬間に、恐らく聞いている方は、ああ、男女で平均賃金で差があるということはある意味厚生労働大臣も認めていることだよね、当然のことと認めているんだよねというふうに私はやはり受けとめるんだと思いますよ。それを大臣は、いともあっさり答弁をしてしまった。しかも、撤回もされず、総理がその後、その答弁をさらに上書きされるようなことも言っておられるわけなんですよ。
そういう自覚が大臣御自身にありましたか。
■塩崎国務大臣
先ほど申し上げたように、男女間の賃金格差については縮小傾向にあるといえどもまだまだあるわけでありますし、これは、先ほど申し上げたとおり、女性活躍推進法とか同一労働同一賃金についても同じことで、趣旨はもともと、さっき申し上げたとおり、男女間の賃金格差の問題で議論がヨーロッパでもスタートした同一労働同一賃金でもございますし、そういうことを当然私たちは安倍内閣として最優先課題として女性活躍推進法も取り組んできたわけでありまして、それも、大企業に対して義務化をするという計画を立てるということまでやって法律で縛っているわけでありますから、当然、男女の賃金格差を解消していくということは私どもの政策としてのど真ん中にあることは、もう言うまでもないわけであります。
したがって、先ほどお話があったとおり、私が説明したとおり、まずは競合他産業との賃金差をなくすようにということで、追加的に処遇改善を行うということを申し上げているわけでありますので、何ら矛盾する話ではないというふうに思っております。
■西村(智)委員
相変わらず強弁を続けられるわけですね。
私は、あのとき山尾さんが、つまり野党の側が反論しなければ、あの大臣の答弁を聞いている人は男性と女性の労働者で賃金格差があることが普通だというふうに受けとめたのではないですかということなんです。
これは答弁の前後を読んでみますと、女性労働者との差が月額4万円程度あることも踏まえて、賃金差がなくなるようにというふうに答弁されているわけですから、全産業の男女も含めての労働者との比較でということは何一つ語っていないわけなんですよ。
私は、これはやはり大臣の責任として本当に重大だというふうに思います。いかに大臣が女性活躍推進だとか一億総活躍だとかいうふうに言ったとしても、この答弁が全てを台なしにした、ひっくり返した、私はそういうふうに断固抗議をさせていただきます。撤回をしていただきたいというふうに思っております。
そもそも、大臣、これは何との比較で賃金差がなくなるようにしていくというふうに答弁をされているんですか、ここの中で。賃金差がなくなるようにさらなる処遇改善を行っていくと。女性労働者との賃金差ですか、それとも全産業の労働者との賃金差ですか、どちらですか。
■塩崎国務大臣
先ほど来申し上げているように、安倍内閣は働き方改革がこれから3年間の最大の挑戦だ、こう申し上げているわけで、そういう中で同一労働同一賃金に踏み込んで、特に非正規、正規の賃金格差を解消するというのは、まさに評価をきちっとする、この評価は男女間であっていいはずがないわけであって、当然のことながら、男女間の格差、あるいは正規、非正規の間の格差、これを解消していくということが私たちのこれから大きく挑戦をしていかなければいけない働き方改革の大きな柱の一つだというふうに思っています。
したがって、今申し上げたのが最終的に解消しなければいけない格差であって、それは男女間と、それから非正規、正規の間の格差そのもの、いずれも全てにわたって解消をしていくということが私たちの最終的な到達地であることは、総理の随所での発言からも明らかだというふうに私たちは思っております。
■西村(智)委員
いや、違うんですよ。ここで言っている賃金差というのは、何と何を比較して差をなくしていくようにというふうに大臣は答弁をされたんですか。
■塩崎国務大臣
先ほどもおっしゃったように、約10万円ぐらいの格差が保育士と他の全産業についてあるということは私たちもよくわかっているわけで、しかし、この賃金を引き上げるのには財源も要るわけであります。
したがって、できるところからきちっとやっていこうというときに、まずは、先ほど申し上げたように、競合他産業との賃金差がなくなるように上げていくということを申し上げているわけであって、そこで終わりというわけでは全くないわけですけれども、しかし、財源なしの無責任な賃金引き上げ論だけ言ってみても余り意味のあることでは政治的にはないというふうに思っております。
■西村(智)委員
つまり、10万円上げられないから4万円をとりあえず目指すということの中での文脈で、ここで言っている賃金差というのは、今の大臣の答弁から推察すると、全産業の女性労働者との賃金差をなくすようにというふうに、大臣はやはりそういう趣旨で答弁されたんですよ。
ここに明らかに男女の賃金格差を大臣は認めているじゃないですか。おかしくないですか。女性活躍推進と一方で言いながら、答弁の中では男女の賃金格差を認める。そして、ここの賃金差は、全産業の女性労働者との賃金差をなくしていくようにするということなんですよ。大臣、それを否定されませんでしたよね。これは断固私は抗議をさせていただきます。このような認識の中でこれから一億総活躍プランとか実現、本当にちゃんちゃらおかしいというふうに申し上げざるを得ないですね。
ちょっとその前に確認をさせていただきたいんですが、資料で一枚目にお付けしているのは、平成22年に厚生労働省が作成した男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドラインというものです。
ここで、男女の賃金格差をもたらす要因として、その直接的な要因としては、男女の平均勤続年数や管理職比率の差異が挙げられているというふうに書いてあるんです。
このペーパーの下の方に1、2と書いてありますけれども、要は、なぜ平均勤続年数や管理職比率の差異が出てくるのかということの実態として、そもそも基準が曖昧であるために、例えば性別役割分担意識をもって制度が運用されているということ、それから、家庭的な責任を持つ労働者にとって困難な働き方を前提とした制度となっているということ。それから2では、採用、配置、仕事配分、育成方法の決定、人事評価や業務評価などの側面で、男女労働間に偏りが生じているということ、そして、それが男女間の経験や能力差になっているということ、こういったことが明確に指摘をされています。
私、このガイドライン、非常によくできていると思う。
その後に引き続いて、こういうふうに書かれているんですね、アンダーラインを引いています。「男女間賃金格差は男女の働き方全体のいわば結果として現れてきているものである」と。いわば結果としてあらわれてきているものであるということなんです。
大臣、私はこの前の予算委員会の答弁は全く間違いだというふうに思いますけれども、さっきから女性の活躍促進と言ってくださっていますから、この考え方には当然賛成してくださると思いますけれども、その確認をお願いします。
■塩崎国務大臣
女性活躍推進法案を私どもが提出して、皆さん方にも賛成をいただいて成立をするわけでありますし、何よりも、先ほどお話がありました勤続年数の男女差とかあるいは管理職の女性比率、これが、言ってみれば、今の男女の格差の大きな原因だということで今もお話がありましたが、そのとおりであって、だからこそ、先ほど申し上げたように、全事業主に対して、大企業に関しては、数値目標を含めた行動計画を策定するということを義務づけたわけです。義務づけたわけであります。
民主党政権時代に、「なでしこ」大作戦というのがありましたが、これは義務づけではなくて、働きかけでいこうというアプローチを民主党政権はされたようでありますけれども、我々は断固として義務づけるということを提案いたしました。
したがって、今のお尋ねでございますけれども、このガイドラインにおける考え方自体に私は全く賛同をいたすところでございます。
■西村(智)委員
私が強調したかったのは何かというと、勤続年数の違い、それから管理職比率、これはある意味、働き方の違いによる結果として表出されているものであって、本当の構造的な問題はもっと奥の方にあって、それがここに書かれている1、2なんですよ。基準等が曖昧である、性別役割分担意識をもって運用されている制度、それから、そもそもいろいろな人事評価、訓練を与える与えない、こういったところで男女労働者間で偏りが出ている、結果として経験や能力に差が出てくる。
こういったところを解消していかなければいけないということについて、大臣、そのとおりですよね。
■塩崎国務大臣
例えば、なぜ管理職の女性比率が低いのかといった問題の背後に、今御指摘をいただいたような1とか2とか、言ってみれば、男女間賃金格差は男女の働き方全体のいわば結果としてあらわれているということがありますが、確かに結果として出てくるわけで、そのひとつ手前に勤続年数の男女差とか管理職の女性比率があって、特に管理職の女性比率などにこの考え方の言ってみれば一番大きな問題があらわれてきていたということであり、また、現在もあらわれているという問題があるからこそ、私たちは、こういった数値も明らかにした、数値目標を含めた行動計画を策定することを義務づけたということでございます。
■西村(智)委員
確認をさせていただきましたが、5月16日の予算委員会で、総理は、ここのガイドラインの、私が今議論した、そして大臣が今お答えになった認識とは違う認識に基づいて答弁をされているということを、きょうは指摘だけにとどめたいと思います。
といいますのは、総理は、我が国におけるフルタイムの男女労働者間の賃金格差の要因について、管理職比率と勤続年数の差異であるというふうに答弁をしつつ、したがって、その処方箋として、女性の管理職への登用が進み、出産と子育てと仕事を両立しやすくすることなどにより、女性の勤続年数が伸びれば男女間の賃金格差は相当程度解消されることになると、何だか機械的に、今の労働条件を変えないまま、女性の勤続年数が機械的に伸びていけば男女間の賃金格差は相当程度解消されるというふうに総理は答弁されているんですけれども、これは私、間違いだと思いますよ。今大臣が答弁されたとおりです。
だから、それはよくよく、大臣から総理にレクをしてください。認識が間違っているということは、私、指摘と、これもまた機会があれば総理にも伺っていきたいというふうに思っております。つまり、浅薄な答弁だということですね。
それで、一億総活躍プランについて伺いたいと思います。
5月の18日に発表されました。資料も含めると大変大部になっていて、なかなか読むのは大変ですけれども、一億総活躍プランの中で私が特に注目をしていたのは、同一労働同一賃金がどういう記述になるかということです。私、これは本当に期待をしておりまして、5月中旬に出てくるということで、待っていたんですけれども、結論から申し上げると、期待外れ。名前だけつまみ食いされてしまったなという印象が非常に強いです。
そこで、具体的にお伺いします。
一億総活躍プランの7ページから8ページぐらいにかけて同一労働同一賃金についての記述がありますけれども、パートタイム労働者の賃金水準について、「欧州諸国においては正規労働者に比べ2割低い状況であるが、我が国では4割低くなっている。」というふうに書かれつつ、ちょっと間があきますけれども、「正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す。」というふうに書かれています。
この文脈からすると、これは、正規と非正規の賃金差について2割差以内を目指すということを意味しているのでしょうか。大臣に伺います。
■塩崎国務大臣
パートタイム労働者の賃金水準というのを見てみますと、我が国ではフルタイム労働者に比べて約57%となっているのはもうこの一連の議論の中で認識は広まっていると思いますが、一方で、例えば、イギリスを見ますと約71%、ドイツでは約79%、フランスはやや高くて約89%というふうになっておりまして、欧州というだけでは国柄は見ることができずに、やはり賃金差にかなり幅が、イギリスの七一とフランスの八九でありますと、ドーバー海峡を挟んでもこんなに違うということであります。
今回のニッポン一億総活躍プランにおきまして、正規労働者と非正規労働者の賃金差については欧州諸国に遜色のない水準を目指すということでありますけれども、これについては、個々の非正規雇用で働く方の不合理な待遇差の改善を図るということを意図しておりまして、数量的な目標を設定することを意図するということではないというふうに私どもは考えておりまして、不合理、説明がつかない格差というのは解消しようよ、こういうことが一億総活躍プランの中での同一労働同一賃金の肝ではないかというふうに私は考えております。
■西村(智)委員
だとすれば、何か、正規と非正規の差を2割以内を目指すという報道が幾つか出ているようでありますので、厚生労働省としては、それに対してきちんと、そうじゃないということは打ち返しをされますか。
■塩崎国務大臣
これは、一億総活躍の担当は加藤大臣なものですから、加藤大臣におかれて適切に対処をするべきものでなかろうかというふうに思いますが、もちろん、事賃金の問題であり、また働き方の問題でありますので、私どもも、考え方はしっかり、今申し上げたようなことだということを努めて説明をしてまいりたいというふうに思います。
■西村(智)委員
ちょっと時間が来ちゃいましたので、最後、指摘だけにしますが、これはただ「賃金差」と書いてあるんですね。正規と非正規の賃金差について、「欧州諸国に遜色のない水準を目指す。」というふうに書いてありますから、これは明確な数値目標ということになるんだと思うんですよ。なおかつ、不合理な差ということであれば、今まで言っていた均衡待遇、ないしは部分的な均等待遇と中身的にはそんなに変わらないと思いますよ。
私は、やはり同一労働同一賃金にとどまらず、ILO100条約に即して同一価値労働同一賃金、きちんと職務評価を入れていかないと、男女間の賃金格差は埋まっていかないと思います。
特に、冒頭言わせていただいた、厚生労働大臣それから総理の答弁、男女間の賃金格差の背景や原因、その解消方法について全く認識のないもとでこのプランが進められるとすればなおのことです。そのことを指摘して、終わります。