■西村智奈美君
西村智奈美です。ただいまの経済に関する発言について、民主・維新・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)
衆議院本会議における経済演説からわずか六日、予算委員会における本格質疑が始まるやさき、もはや言い逃れができないことを悟ったかのように、UR、都市再生機構と民間事業者の補償交渉への口きき疑惑をめぐり、甘利前経済再生担当大臣が辞任しました。
その前日、総理は、参議院本会議における郡司彰参議院議員からの質問に対して、重要な職務に引き続き邁進してもらいたいと答え、必死にかばっているさなかの出来事でもありました。
大臣の職を辞すればそれで済むのか。全くそんなことはありません。
記者会見で、甘利前大臣は、事もあろうに大臣室で現金を民間事業者から受け取ったことを認めました。しかし、会見では、みずからの言いわけに終始するばかりで、口ききを行ったかという重大かつ深刻な疑惑については、何ら明らかにしませんでした。実態解明に向けた道筋も全く示されていないのです。
この疑惑は、一政治家の問題にとどまりません。甘利前大臣は、大臣室でお金を平然と受け取って、さも日常茶飯事のように処理方法を指示しています。そして、記者会見では、「いい人だけつき合っているだけでは選挙は落ちてしまうのです」とのたまった。
びっくりしました。政治と金の問題が再三指摘されてきたにもかかわらず、その体質は旧態依然のままであり、あきれるばかりです。
甘利大臣側とUR側は十二回も面談しており、昨日、その面談記録が部分的に公開されました。少し色をつけてといった甘利事務所側からの発言、これ以上、甘利先生のところが深入りするのはよくないとのUR側からの発言。これは口ききそのものではありませんか。昨日のヒアリングでは、UR側は、初めて東京地検特捜部から事情を聞きたいと要請があったことも明らかにしました。
引き続き、甘利前大臣には説明責任があります。逃げは許されません。当然、安倍総理にも重たい任命責任があります。まさか、わなにはめられた大臣とのレッテルを張って逃れさせるようなことはしないんでしょうね。安倍総理は自分自身の任命責任についてどう考えているのか、総理の認識を伺います。
あっせん利得の疑惑を明らかにするために、民主党は、他の野党とともに、甘利前大臣や関係者の国会招致を求めていきます。みずからの任命責任に鑑み、党総裁として、重要閣僚であった甘利前大臣に招致に応ずるように促すことが当然と考えますが、どうでしょうか。
さて、甘利前大臣の辞任記者会見が行われた数時間後、石原新大臣が任命されました。石原新大臣の政治家としての資質について評価する声は、残念ながら聞かれません。なぜか。
石原大臣は、自民党幹事長在任中の二〇一二年、懸命の努力が続く福島第一原発をオウム真理教の施設に複数回なぞらえたり、環境大臣だった二〇一四年当時には、中間貯蔵施設建設をめぐり難航している福島県との交渉について、最後は金目でしょうなど、極めて下品で失礼きわまりない発言をしたり、ほかにも、公務中のスキューバダイビングや大臣室での飲酒など、その問題発言や問題行動は枚挙にいとまがなく、余りにも軽い言動で人の心を逆なでしてきたからです。二〇一四年には、野党各党は一致して環境大臣不信任決議案を衆議院に提出しています。
今国会で予定されているTPP協定の国会承認の議論は、我が国の未来を見据えた極めて重大な議論です。そのような議論を担うことになるのは石原大臣でしょうが、石原大臣、本当にその役割を担えるのですか。先週末に行われた世論調査では、まだ何もしていないにもかかわらず、既に半数の回答者が石原大臣の起用を評価しておりません。
さらに石原大臣の資質に関連して言わなければならないのは、二〇一二年、自民党総裁選に立候補した際の政策です。皆さんも覚えておいでだと思います。当時幹事長だった石原大臣は、為替政策がデフレにきくというとんちんかんな発言をし、また、関税自主権を完全に放棄するようなTPPは反対とも述べていました。これからTPPを担当することになる石原大臣が、幹事長当時は、前提つきとはいえ反対と言っているのですから、これは看過できません。
しかも、関税自主権という植民地時代かと錯覚するような言葉がここで出てくることは、おかしくありませんか。現代の通商ルールは、当たり前ですが、関税は交渉で決定するというもので、小村寿太郎が交渉する前の日本のように、一方的に関税を押しつけられるなどという時代は、もう百年以上も前に過ぎ去っています。もし、あのときの総裁選で石原幹事長が党総裁に選出されていたら、今ごろTPPは交渉にも入っていなかったし、大筋合意もしていなかったということなんでしょうか。だとしたら、有権者をまるっきりだましていることになります。
いずれにしても、重要閣僚とされる経済再生担当大臣を、軽率な言動を行ってきた石原大臣にどうして任せることになったのか。巷間言われているように、適任者はほかにいたが、石原大臣が安倍総理のお友達だから選ばれたのか。不思議でなりませんが、石原大臣、今後どのように国会審議に臨むおつもりですか。交渉の過程など、TPPに通じているとは言えない御自身が対応できるとお考えですか。御自身の言葉でお答えください。
他方、麻生財務大臣は、ある意味正直に、余り得意分野ではないかもしれないが頑張ってもらえると期待していると語っておられました。盟友の麻生財務大臣の言葉ですが、安倍総理は何を期待して石原大臣を任命したのか、具体的な内容を伺います。
最後に、金銭スキャンダルで何人もの大臣が辞任している安倍自公政権に、これ以上、私たちの国のかじ取りは任せられません。無理を通せば道理が引っ込むとばかり、安倍総理は都合のよい数字だけ取り上げて成果を強調しようとしますが、そのごまかしに国民はとっくに気がついています。私たちこそが次の世代、若者たち、女性たちの声に真っ正面から応えていき、一人一人を大切にする国を取り戻すという決意を改めて訴えて、質問を終わります。(拍手)
■内閣総理大臣(安倍晋三君)
西村議員にお答えをいたします。
任命責任についてお尋ねがありました。
政治活動については、内閣、与党、野党にかかわらず、一人一人の政治家が、国民の信頼が得られるよう、みずから襟を正し、説明責任を果たすべきものであります。その上で、閣僚の任命責任は内閣総理大臣たる私にあります。私が任命した閣僚が交代する事態を招いたことについては、国民の皆様に対して大変申しわけなく感じております。
経済の再生は、引き続き安倍内閣の最重要課題であります。正念場にあるアベノミクスを前進させ、デフレ脱却を確かなものとすることにより、国民への責任をしっかりと果たしていく考えであります。内外の課題が山積する中、今後さらに緊張感を持って政権運営に当たっていく決意であります。
甘利前大臣の国会招致についてお尋ねがありました。
国会の運営については、国会がお決めになることであると考えます。その上で、政治活動については、内閣、与党、野党にかかわらず、一人一人の政治家が、国民の信頼が得られるよう、みずから襟を正し、説明責任を果たすべきものであります。甘利前大臣自身も、先般の記者会見において、引き続き調査を進め、公表すると語っており、今後ともしっかりと説明責任を果たしていかれるものと考えております。
石原大臣への期待についてお尋ねがありました。
石原大臣は、多士済々の自由民主党の中にあって、幹事長、政調会長などの要職を歴任するとともに、中小・小規模事業政策や農業政策の責任ある立場にあって、経済の現場で頑張っておられる中小・小規模事業者、農業者の皆さんの声に真摯に耳を傾けてきた方であります。また、閣僚経験も豊富であり、小泉政権時代には、行政改革・規制改革の担当大臣として強い突破力を示した方であります。適材適所の人事を行うことができたと考えております。
経済の再生は安倍内閣の最重要の課題であり、一刻たりとも停滞は許されません。正念場にあるアベノミクスを前進させ、デフレ脱却を確かなものとするため、石原大臣とともに、改革の推進、成長戦略の実行に全力を尽くしていく決意であります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。
■国務大臣(石原伸晃君)
西村委員から御質問がございました。
TPPの国会審議にどのように臨むか。TPPに関しましては、昨年十月の大筋合意の後、私ども自由民主党は、地方や関係団体の意見を丁寧に聞かせていただきながら、必要な政策対応に向けた提言を取りまとめてまいりました。
私は、党の中小企業・小規模零細事業調査会の会長、また、農林水産戦略調査会の顧問といたしまして、TPPを契機とした新輸出大国、農政新時代の実現に向けた提言の取りまとめにみずから積極的に関与してまいりました。そうした中で、中小企業、小規模事業者や農業者の声に真摯に耳を傾けさせていただいてまいりました。
これからは、TPPに関する責任者として、国民の皆様、特に農家の方々の不安を払拭していくとともに、TPPは中小企業の皆さんにとりましては大きなチャンスになるんだということを国会の場を通じて丁寧に説明してまいります。そして、現場に寄り添った政策を主導して実現していくため、しっかりと役割を果たしてまいりたい、このように考えております