■西村(智)委員
民主党の西村智奈美です。
大臣、冒頭、通告しておりませんけれども、ここ数日来の水害の対応について一言伺いたいと思っています。
北関東でこれまでにない大量の雨が降ったことによって川が越水して、それから決壊をしたということで、常総市では市の三分の一くらいの面積が濁流にのまれたか水につかったかということで、本当に大変な状況だというふうに思います。
先ほども御指摘がありましたけれども、公衆衛生、それから水道、こういったこともありましょうし、今後、恐らく水が引くまでにはかなりの時間がかかるのではないか、また、普通の生活に戻るまでにも時間がかかるのではないかというふうに思いますので、就業の継続、それからいろいろなメンタル的な問題、こういったことについても万全を期してもらいたい。
私は、災害対策基本法も、昨今のこのようなゲリラ豪雨、ゲリラ豪雨と言ったらいいのか、停滞前線による豪雨が頻繁に日本国内で起きている状況では、そういう意味ではまさにこれこそ状況が、地球温暖化という状況の中で大きく災害の様子も変わってきていると思いますので、ここはやはり現存する法律を、今のままでいいのかということも、見直すことも含めて、厚生労働省としては今回の災害、水害について万全の対応をしていただきたいというふうに思いますけれども、この点についてまず伺います。
■塩崎国務大臣
先生がおっしゃるように、昨年の広島での土砂災害も類を見ないような集中豪雨に基づいて起きてしまったということでございまして、今回も、これまでにない、何十年ぶりというような集中豪雨が起きたという中で、その原因はいろいろあろうかと思いますが、いずれにしても、そういうことが頻発をするようになっているということは先生御指摘のとおりだと思います。
今、私どもは、先ほど申し上げたとおりの対応をして、昨日の未明から対応をしているわけでございますけれども、とりわけ今回のような前代未聞のような被害の状況でありますので、これに対する対策はまず万全を期す、つまり、被害状況をまず把握した上で、しかるべき、やるべきことを厚労省としては直ちに、迅速にやるということが大事だと思います。
こういう異常気象が頻発することを受けてどうするのかという先生の今の問題意識は私どももひとしく持つところでありますが、法的に今の体制が可能かどうかということについても検討せいということでありますが、そのような考え方で私たちは絶えず見直しをしないといけないというふうに思いますし、昨今の状況を見れば、かなり私どもは備えを万全なものにさらにしていくために何ができるのかということを考えていかなきゃいけないと思いますので、そういう面で、今の先生の問題意識をしっかりと受けたいというふうに思います。
■西村(智)委員
これはぜひ政府全体で対応していただきたいと思います。私は今、厚生労働省に関するところだけの問題提起をいたしましたけれども、ぜひ政府全体で再検討していただきたい。地球上の環境が変わってきているというまさに状況の変化がありますので、対応を迅速にとっていただけるように要望いたします。
それで、きょうは、戦没者の遺骨収集を推進する法案を委員長が起草されることを想定しての質問ということですので、その質問に入っていきたいと思いますけれども、私、資料を何枚か用意いたしました。
皆様のお手元にありますA3の大きい資料、これは、ことし戦後七十年の節目の年に、戦地と戦没者、それぞれどういった動きで日本軍が移動したのか、また、それによって日本軍においてどのような犠牲が生まれてきたのかというようなことを図示したものなんですけれども、大変広範にわたる地域で、悲惨な、もう本当に言葉に尽くせない犠牲がここに記されているわけなんです。
これまで遺骨収容は、戦争が終わってからは、最初は仲間の方が、あるいは民間の方が御家族や友人の遺骨を持って帰られたりして、そういった形で始まったものだというふうに承知をしております。最初はそういう形で始まった遺骨の収容が、国として、政策として実行するようになったのは一九五二年からということなんですけれども、それ以降も、時々、少しその動きが中断したり、また民間の要望があって始めたりというような、こういうアップダウンと申しましょうか、波を少し繰り返して今に至っているのではないかというふうに思っています。
ここは、やはり戦後七十年の節目の年でもあります。私は、遺骨の収集は国の責任としてやり切る、やるというその決意を改めて大臣には持っていただきたいと思いますし、この法案が起草されて、そして施行されたときにおいても、国の責務であるということは変わりがないか、むしろ国の責務であるということを強化する内容だということ、そういうふうに理解してよろしいか、大臣に伺います。
■塩崎国務大臣
これまでこの遺骨収集の法的根拠は何かといいますと、これは、厚生労働省設置法の第四条の百五というところに「旧陸海軍の残務の整理に関すること。」というのがございました。それに基づくというか、それを敷衍してできた政令がございまして、ここに、事業課というところが「戦没者の遺骨の収集、墓参及びこれらに類する事業に関すること。」というのを所掌するということが政令で定められたわけでございます。
今回は、委員長提案で今御審議をいただいておりますこの法律によって、これはまさに国の責務ということに法律で定められるということになっているわけでございます。
さきの大戦による戦没者の遺骨収集帰還について、もちろんこれまでも、今申し上げたように国の責務として推進をしてまいったわけでありますけれども、それはあくまでも設置法、加えて政令という形でありましたが、今度は法律の中に国の責務だということを書き込むということで、むしろ、今先生御質問にもございましたけれども、国の責務としての位置づけは強化をされたというふうに理解をしております。
■西村(智)委員
そこで、厚生労働省が責任を持ってといいましょうか、国が責任を持って遺骨の収集を進めるということになるわけですが、今回の法案では、指定法人というものを置きまして、厚生労働省がその指定法人を指定する。
では、厚生労働省と指定法人の役割分担についてはどういうことになるのかというふうに考えましたら、整理したところ、大体こういうことかということが何となくわかってきたんです。
厚労省が、まずは遺骨収集に関する全体計画を企画立案する、事業全体の統括もし、相手国との調整もし、情報収集もして、その分析もやる、それで、指定法人が遺骨を収容したり送還するのに同行したり、また戦没者遺骨のDNA鑑定や遺骨の遺族への引き渡し等を行う、こういうこと。つまり、指定法人を指定して、指定法人が収集した情報も厚労省に上げて、そこで分析をしつつ、そこから指定法人に対して指針を提示して、指定法人から事業計画を厚労省の方に上げて、そういった形で事業が行われる。こういう理解でよろしいのかということを伺いたいのが一点。
それから、時間の都合でもう一点伺いたいんですけれども、この指定法人は、十年間の集中期間を置くという中で指定されることになっています。十年たったら、その活動状況をそのときになって検討して、そしてその後のあり方を改めてそのときに検討する、このような理解でよろしいか、伺います。
■塩崎国務大臣
基本的には先生がおっしゃるとおりだと思いますが、厚生労働大臣は、戦没者の遺骨収集に関する活動を行う法人を指定することができるとこの法律ではされておりまして、法案成立後は、指定法人に遺骨収集のために必要な情報の収集や遺骨収集帰還事業を実施させる予定でございます。
この場合、指定法人は海外における遺骨情報の収集や実際の遺骨収集を担う一方で、厚生労働省としては、遺骨収集のために必要な情報の整理、分析や遺骨収集帰還に係る全体計画等の企画立案を担うことを想定しておりまして、今先生御説明いただきましたとおり、国と民間団体との間で役割を分担するということによって、より効率的に遺骨収集帰還を推進していくことができると考えているわけでございます。
それから、十年間の集中実施期間についてのお話がございましたが、法案が成立した場合には、十年間の集中実施期間において、効率的に遺骨収集帰還を実施するために、戦没者の遺骨収集に関する活動を行う法人を指定する、そして、遺骨収集のために必要な情報の収集や、遺骨収集帰還事業を実施させる予定でございます。
集中実施期間終了後には、遺骨収集帰還事業の体制のあり方を見直すということになるわけでございまして、当然、この十年が終わったらどうなんだという話が出てくると思いますので、そうなると、そこで、十年たったところであり方を見直すということが考えられまして、その一環として、指定法人のあり方についても当然検討をするということになるのではないかというふうに考えるわけでありますが、いずれにしても、今先生からお話を頂戴した考え方が、そのとおりだということでございます。
■西村(智)委員
この集中期間で、まだ世界じゅう、日本も含めてですが、残っておられる概数で百十二万七千柱の御遺骨を全て日本にお戻しできるように、ぜひ集中して取り組んでいただきたいと思います。
それで、私も、先日の委員会の視察で、委員長を初め皆さんと一緒に硫黄島に参りました。現在の空港の滑走路を、今、土曜日、日曜日、飛行機の離発着をとめて探査したところで、三センチ以上の固形物があると思われるところは、飛行機をとめているその時間に掘り返して、探査をして、確認をして、もう一回埋めて平らにするという作業を今年度中には終えるという御報告だったんですけれども、もう少し早く硫黄島で遺骨収集が始められていたら、私は、もう少し作業がスムーズにいったんじゃないかというふうに現地に行って思いました。
実は、民主党政権のときに、当時菅総理が、硫黄島からの遺骨収集を促進しようということで、特命チームを置いたんです。当初は硫黄島における遺骨収集のための特命チームということで、これは平成二十二年の八月十日ですから二〇一〇年になりましょうか、二〇一〇年の八月十日にこのチームを設置して、後にそのチームは、硫黄島からの遺骨帰還のための特命チームというふうに名前を変えて、そこで、硫黄島からの遺骨帰還プランというのを設けまして、それに基づいて、これまた集中実施期間の取り組み方針、それから当面その年度中にやる取り組み方針ということで、プランをつくって集中的にやるということになったわけなんです。
配付しております資料の二枚目にその一枚目だけ掲載をしておりますけれども、ここで、このように書かれています。「はじめに」のところの丸の一番目ですが、「戦没者の遺骨帰還は「国の責務」であり、悲惨な歴史を繰り返さないためにも、全ての戦域で進めることが必要である。とりわけ、硫黄島は日本の領土であり、自衛隊が駐屯しているにもかかわらず、戦後六十六年」、当時六十六年、「経過した現在でも約六割の約一万二千柱の御遺骨が未帰還で、これは国内最多数である。」ということでした。
私も、日本の領土である硫黄島でもう少し早く進めることができなかったものか、何でおくれてきたんだろうか、こういうふうに考えるわけなんです。
実際、硫黄島での遺骨収集は、皆さんで一緒に拝見してきたように、今は着実に進んでいて、滑走路のところは今年度中に終わるということなんですけれども、日本領土ですらこういうことですから、まして他国の領土における遺骨収集は恐らく、先ほど審議官が、いや、いろいろな理由があってと自民党の田畑さんの質問にも答えておられましたけれども、やはりそれぞれ外交問題等々もいろいろあって難しいところはあるわけなんですけれども、なぜ国内領土で進められなかったかという、その反省というか教訓、これをまずしっかりと確認した上で他国の領土における遺骨の収集というものを加速化していくことができるのではないかというふうに思いますけれども、この点、大臣はどうお考えになりますか。
■塩崎国務大臣
硫黄島で部隊が、ほぼ全員に近い方々が玉砕をされておるわけでございます。遺骨の埋葬地点等の情報が少ない中で、必ずしも積極的な情報収集を行わずに遺骨収集が進んでいなかったということがあったと思います。
しかし、平成二十一年の、今先生お話ございましたけれども、米国の公文書館の調査によって、硫黄島の集団埋葬地の特定に至って、千四百十六柱の御遺骨の収容につながったわけでございます。
こうしたことを踏まえて、他の地域についても、平成二十七年度から、本年度からですね、三年間を集中実施期間として設定して、諸外国の国立公文書館等が保有をいたします埋葬地等に関する資料を調査することによって、情報収集の強化を図ることとしておりまして、厚生労働省からも、こういった海外の国立公文書館で資料を今精査させていただいているところでございます。
一方で、今、実施が困難な国についてのお話もございましたが、遺骨収集帰還や慰霊巡拝の実施がなかなかかなわないという国につきましては、外務省の協力を得て、相手国の事情に応じて、でき得る限りの遺骨収集等が実施できるように交渉を行ってまいりたいというふうに思っているところでございます。
■西村(智)委員
やはり日本国内に戦没者あるいは戦域に関する情報がほとんど残っていないということが、今回の遺骨収集をより難しくしている理由だと私は思うんです。
なぜ国内にそうした資料が残っていなかったのか。いろいろなことを言われています。廃棄されてしまった、なぜ廃棄されてしまったのか等々、理由は歴史的にいろいろな分析はなされていますけれども、とにかく国内に残っていないわけだから、これはやはりいろいろな海外の公文書館なり、またいろいろな経験者の方々の手記ですとかそういったものを聞き取りをしたり、そういった中から情報を得ていかなければいけないと思うんです。
そこで、外務省の協力を得ながらということがありましたので、外務省、きょう政務官にお越しいただいています。ぜひここは協力をしていっていただきたい。そして、外務省の方では同行という形がメーンになろうかと思いますけれども、やはりいろいろな交渉になってくる場面はあると思いますので、情報収集、それから慰霊、こういったことについて、ぜひ、万全の体制で協力をすると明言をいただきたいんです。
■薗浦大臣政務官
お答え申し上げます。
これまでも、外国でそうしたものが必要になった場合には、関係当局間の覚書を作成してきております。これは、パラオ、インドネシアとは既にやっておりますし、今フィリピンと交渉中でございます。
こうした外交的観点からの支援を厚生労働省と連携をしながらやってきたところでございまして、これからもそうした最大限の協力を行ってまいりたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
次の資料で、ミャンマーの少数民族が紛争している地域で遺骨調査が可能になったという記事、これは二〇一三年の一月一日の新聞記事なんですが、こういうものがありました。
やはり、民間団体、それからいろいろなその地域の研究者、こういった方々もさまざまな情報を持っておられると思うんです。
ここはもう時間がないので大臣に確認だけしたいと思いますけれども、やはり、指定法人に入るか入らないかに限らずに、広く、そのほかの民間団体や研究者、あるいは個人の方々のお知恵であったり協力といったものを私は仰いでいくべきではないかと思いますけれども、その点について簡単に答弁をお願いします。
■塩崎国務大臣
指定法人については、遺骨収集に関する豊富な経験とか知見を有する関係団体と連携をして遺骨収集帰還事業をより効率的、効果的に実施するということを先ほど申し上げたわけでございます。
法人を指定することの方が望ましいとは考えておりますけれども、一方で、仮に、今先生お話あったように、指定法人に参加をしない団体、あるいは研究者の個人の方、こういう方々にあっても、まず団体にあっては、指定法人が遺骨収集する場合の人的な協力も可能でありましょうし、それから研究者の皆様方には、海外の公文書館等にある資料を分析するとかさまざまな手だてをお持ちで、埋葬地情報の特定に貢献ができるのではないかというふうに考えるわけでございまして、遺骨収集帰還事業の促進につながる御協力をいただける場合も大いに想定されるというふうに考えます。
厚生労働省としても、先生今御指摘のとおり、幅広くそういった方々とも協力をしてまいりたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
資料の最後のページは、慰霊碑の状況についてのものでございます。
ちょっと国内のものは今回は質問せず、海外における民間建立の慰霊碑の状況、それから政府における海外の慰霊碑の状況等々だけを見ますと、民間建立の慰霊碑が総数で七百十二基あると確認をされています。
私もいろいろなところで拝見をしてきまして、ミャンマーでは、民間団体の方が依頼をして、現地の人に管理をしていただいているという碑、そこは本当にきれいに管理をされていました。あと、ロシアの沿海地方のアルチョムというところ、これはシベリア抑留の方々でしたけれども、ここの地域には、政府がつくった慰霊碑もあるんですけれども、民間の方がつくった慰霊碑もあって、そこは、現地の市が管理をしていて、時々外務省が様子を見に行くというようなものだそうでございます。それから、ガダルカナルでは、これは政府建立の碑がないんです。民間の方がつくった碑があって、現地の日本の民間企業の方が管理をしておられるというものでして、率直に言ってなかなか大変な状況だというふうにお見受けをしました。
管理状況はどうなっているのかということをぜひ厚生労働省には把握していただきたいと思っていますし、また、民間団体の方がつくられたものについては管理がやはりかなり厳しくなっているというところもある。これは実際、管理状況が不良なもの二百七十基、うち埋設六十八基というような状況ですから、今後、政府がどういうふうにそういったものを見ていくのか、対応方針を検討すべき時期に私は来ているんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点について大臣はどうお考えか伺って、終わります。
■塩崎国務大臣
特に民間の建立慰霊碑については、建立者あるいは管理者が維持管理を行うことが原則だということで、一方で、海外では、維持管理状況が不良な慰霊碑が放置をされているということがあるということが今先生お話のあったところで、そういうのはやはり国際的にも好ましくないわけでありますけれども、これまでやはり民間団体に委託をして移設等を実施してきているわけでございますので、これにつきましては、私どもも、民間団体と連携を深める中で、この管理がきちっとされるように、さらに目配りをしていかなければならないんじゃないかというふうに考えております。
■西村(智)委員
終わります。