■西村(智)委員
民主党の西村智奈美です。
きょうから委員会での審議が始まりました医療保険制度改革、先ほどありましたように、非常に論点の多い重要な法案であります。一見いたしますと、いいものもあれば悪いところもあったり、また不十分なところがあったり、懸念するところがあったりと、一概にはなかなか評価のしにくい法案だと思っておりますけれども、きょうは、時間の中で、できる限り多くの論点について大臣の意向を伺いたいというふうに思います。
まず、基本的な考え方について伺いたいと思うんですけれども、そもそも、国民皆保険と持続可能で納得のいく医療保険制度の確立、これは、質のよい働き方の確保とあわせて、国民生活のまさに基盤と言えるものだと思います。
今、高齢化が急速に進行するとともに、医療の高度化なども加わりまして、医療費は毎年約一兆円規模で増加している、これはもう皆さん御存じのとおりです。特に、後期高齢者医療の給付費は約十四・四兆円、これは昨年度予算ベースでありますけれども、こんなふうに前年比で約四・三%増加をして、同様に、前期高齢者医療の給付費は六・五兆円と、これまた前年比で約六・六%の増加というふうに見込まれております。
こんな中、被用者保険におきましては、高齢者医療への支援金、納付金が保険料収入の約五割を占めているという非常に大きな問題、保険者の財政にとっては硬直化が進んでいるというふうに言わなければならないと思います。そのために、保険者機能の発揮が困難になっているということも指摘をしなければなりません。
今求められていることは、やはり、私たちは、高齢者医療制度の抜本改革であるというふうに思っています。被用者保険と地域保険の二本立て、これによる国民皆保険を堅持しながら、保険者機能を積極的に発揮できる持続可能な医療保険制度を確立すること、これも必要な点でございます。
しかし、今回の法改正では、午前中も、また午後も、我が党の議員からもさまざま指摘がありましたとおり、高齢者医療のあり方には全く切り込むことなく、被用者保険を初めとして取りやすいところから取る、まずは取る、そういう医療保険財政のつじつま合わせが非常に目立ったものとなっております。大変問題が多いものと考えております。
そこで、最初にお伺いをしたいのは、全面総報酬割で生じる国費を国保に優先活用することについてでございます。私は、これはやはり非常に問題が大きい。
今回、全面総報酬割ということで、被用者保険における後期高齢者支援金の負担については、総報酬割部分を現行の三分の一から段階的に拡大していく、二〇一七年度からは全面総報酬割にするということ、また、市町村国保については、二〇一五年度から保険者支援制度の拡充を実施し、二〇一七年度には、高齢者医療における後期高齢者支援金の全面総報酬割の実施に伴って生じる国費を優先的に活用して、これは千七百億円を投入するということなんですけれども、これはやはり議論の過程も不十分だったと私は思うんです。この中身もさることながら、合意形成の努力が決定的に欠落をしているのではないか。
それは、社会保障審議会の医療保険部会では、二〇一四年の十一月十四日、ちょうどこのころ衆議院の解散風が吹き始めていた、もう十四日ですから相当強く吹いていたと思いますけれども、それ以降に予定されていた意見取りまとめの議論が急遽中止されてしまっております。その後、しばらく開催されていなかったこの部会が、年明けの一月九日に再開されまして、そこで医療保険制度改革骨子案なるものが示されて、わずか三時間、三時間の部会でこの議論は打ち切られてしまっているわけであります。それで、その数日後の一月十三日に、医療保険制度改革骨子が閣議決定されている。非常に速いスピードなんです。
医療保険制度の持続可能性が問われている中で、保険者機能をしっかり発揮してもらいながら、医療保険財政の厳しい状況を乗り越えていってもらうためには、やはり当事者、保険者、事業主、被保険者の理解とか納得、こういったものが必要不可欠だと思うんですけれども、果たして、こういう経過で本当に適切だったのかどうかということは伺いたい。
特に、全面総報酬割で生じる国費を国保に優先活用することについて、これはもう先ほど大西委員からも指摘がありましたけれども、被用者保険関係五団体からは、一貫して強い反対が訴えられているわけであります。それにもかかわらず、今回は、結論ありきのような乱暴な議論を強行したのではないかというふうに言わざるを得ませんが、こういうようなやり方で本当に納得してもらえるのか、どういうふうに関係者に納得をしてもらおうというおつもりなのか、大臣の考えを伺います。
■塩崎国務大臣
私、昨年の九月から厚生労働大臣を務めさせていただいておりますけれども、最初からこの問題が議題になって、法律をつくらないといけないということはよくわかっておりまして、おっしゃるように、かなり大きな改革であることは間違いないので、正直、私自身も、本当にどういうことになるのかなと心配を当初はいたしたところでございます。
今回の与党内の審議のプロセスを見ても、全体としては、そういった、今、乱暴なというお話でありましたけれども、乱暴さを感じるような対立、対決のお話し合いが、そう激しかったというふうには聞いていないわけでありまして、特に全面総報酬割の導入については、昨年の四月以降、被用者保険者の代表を含む社会保障審議会医療保険部会において、全面総報酬割の導入に伴う被用者保険者の負担軽減策を含めて、議論を行ってきておるわけでございます。これは四月の二十一日から五月の十九日までずっとやっておりまして、決して急にやって一気に通したみたいなことではないということを申し上げておかなきゃいけないと思います。
それから、厚生労働大臣が被用者保険者の代表の方々と直接面会をするという機会も実はありまして、私自身、ことしの一月十三日に、健保連の大塚会長と意見交換をさせていただきました。それから、事務方も、被用者保険者の主催する会合へ出席するなど、丁寧に説明を行ってきたところでございまして、私どもとしては、さまざまな機会を捉えて、被用者保険の関係者とできる限り丁寧に議論を行ってきたところでございます。
■西村(智)委員
大臣は、丁寧にやってきたというふうに胸を張っておっしゃるかもしれませんけれども、しかし、ことしの二月の二十日にこの五団体が意見書を出していて、ここに大変強い言葉で、容認できないですとか、いろいろなことを言われているということでございますので、ここの議論に参加していた方の受けとめと大臣の受けとめでは、やはりそこは大きな差があると言わなければならないと思います。
私は、ここは、関係者の皆さんの思いはしっかりと受けとめて大臣にはやっていってもらいたい。そういう意味では、やはりこれまでの議論の経過は不十分なものだったというふうなことは指摘をしておきたいと思います。
当事者の皆さん、特に被用者保険の関係の皆さんが一番容認できない、納得できないと言っていることについてですけれども、やはり、高齢者医療への支援金や納付金が保険料収入の約五割を占めているということだと私は受けとめています。
何せ、保険者に集められた保険料の半分が、自分たちへの給付とは全く異なるところに、言ってみれば強制的に転用されてしまっているわけでありますから、これはやはり納得や理解というものはなかなかできるものではない、しろと言う方がちょっと難しいんじゃないかと思います。
しかも、今後高齢者の数がますます増加していくことから、強制的に転用される割合は今後ますます高まっていくことになるということなんですけれども、こういう状況の中で、ふえていく高齢者の費用に対する手だてといったものはやはり不十分であって、かつ、医療費の適正化、それから市町村国保自身の努力、こういったものもさらに求められている中で、今回の改正によって被用者保険が市町村国保のためにさらに負担を負わせられようとしているということは、大臣、よくこれは肝に銘じていただきたいと思うんです。
このような、保険者や被保険者、それから事業主が納得していないままで今回のように強行的な手段をとる、対応をとるということでは、いよいよ医療保険に対する信頼が損なわれることになるんじゃないか、こういうふうに懸念をしているから、私たちとしては質問をしているわけでございます。
そこで、ちょっと基本的なことを伺いたいと思うんですけれども、そもそも、大臣、医療保険はどうして強制加入とされているのでしょうか。
■塩崎国務大臣
なぜ強制加入をしているかということでありますけれども、これは、国会で法律でもって決めた、国民の助け合いという仕組みの中で医療を提供していく仕組みを、保険というものを通してやろうと。
つまり、イギリスだと、税方式でやって全国民に医療を提供するけれども、いろいろな問題があった。我が国は、いろいろな問題をこれまで経験をしてきたけれども、一九六一年から、皆保険という形で強制加入をして、所得再分配をしながらリスクをプールして、保険という形で全国民の健康を守っていこうということにしたということを、国民の代表たる国会が選んだものだというふうに思います。
■西村(智)委員
税と保険料とそこは違うところだと思うんですけれども、やはり基本的にはリスク分散を、連帯というか支え合い、支え合いとさっきたしかおっしゃったかと思うんですけれども、そういった仕組みの中でやっていこうということなんですが、そういった支え合いの仕組みが成立していくためには、同質性のある者の方々で連帯をしていくということの方が支え合いはやりやすい、同質性の高い層のグループで連帯をしていく方がやりやすいというふうに考えられております。
医療保険の被保険者は、所得に応じた保険料を支払っておられます。他方で、給付は所得に応じて増額をされるわけではありません。では、どうして被保険者は応能負担の保険料で納得をしておられるのか。それはやはり同質性のある者同士で連帯をしているからだというふうに思うわけですけれども、その点について、大臣、同意してくださいますでしょうか。
■塩崎国務大臣
医療というのは現物給付でやっている医療保険であって、その保険料負担をどうするかということは、国民健康保険それから被用者保険ではとり方が少し違うところがあるわけでありますが、基本的には所得に応じて保険料を払うということで、同じように、必要な医療サービスを現物で受け取るという形を国民は選んでいるんだというふうに思います。
■西村(智)委員
やはり支え合いとか助け合いとか、そういった仕組みの中で医療保険制度というのは私は成立をしているというふうに思うんですね、基本的には。そうでなければ、また別の仕組みというのを考えられるわけなんだけれども、そうではない今の仕組みですから、助け合いの仕組みだと。
そういった中で被用者保険というものは存在をしているわけであります。この被用者保険が、他の保険制度に保険料収入の約半分を支出するということになっているというか、なるわけであります。これはやはり、私は、医療保険制度の、ある意味限界を超えているんじゃないか。どこかでキャップをかけるという話も先ほどありましたけれども、今回の法改正は、やはり連帯の限度だけではなくて保険制度の限度を超えているのではないか、このように思うんですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。
■塩崎国務大臣
さっきも申し上げたんですが、後期高齢者医療制度をつくるときに、どういうことがあり得るのかというのは幾つかパターンがあったと思うんです。いわゆる突き抜け方式で、それぞれ、今おっしゃった均一性のあるグループがそのまま先輩たちをお世話するという仕組みもあるよねということもありました。それ以外にもあと二つ三つ選択肢があって、最終的にこういう形で、保険という形であるけれども、かなり公費も入れてやるという制度が、後期高齢者医療制度についてはでき上がったわけであります。
それがために、被用者保険者から高齢者医療への拠出金を出していただくということで、それが限界を超えているじゃないかということを今繰り返し御指摘いただいているわけでございますけれども、確かに、これは平均で見ると、高齢者医療への拠出金の負担割合は、それぞれ、健保組合と協会けんぽ、四八・二と四一・四ですから、かなり高いということは事実だろうと思います。
さりとて、ではどうするのかというのが、先ほど申し上げた突き抜けでいくのかどうかということなので、それも、しかし、かなりいろいろな問題を解決しないと突き抜け方式も成り立たないということになります。
高齢化の進展によって、今後とも拠出金の負担が増加していくことは可能性としてあるわけでございますので、支援金などの拠出金について、社会連帯の精神に基づいて、国民全体でできる限りフェアに負担をするという必要があって、先ほども、限度を設けたらどうだというお話でありましたが、なかなか限度を設けるということにはなりにくいかなというふうに考えているわけでございまして、だからこそ、被用者保険者に対する七百億円の追加的な財政支援を行って、高齢者医療の拠出金負担の重い保険者の負担軽減を図るということにしたということであります。
なかなか、壮大な、高齢化の中での医療保険の支え合いの仕組みをつくるというのはそう簡単なことではないので、今回、いろいろ考えた末に、このような形で今提案を申し上げているということでございます。
■西村(智)委員
では、逆に私の方から伺いたいのは、被用者保険における高齢者医療への拠出率、キャップをかけるのも難しいというようなお話でしたが、高齢者医療がだんだん増大していく中で、今、非常に難しい中でのこういう選択をしたということなんですけれども、では一体どの程度の拠出率が限度だというふうにお考えでしょうか。今のお話ですと、何かだんだんだんだんまたこれからも拠出率が上がっていくような、そんな懸念を持つわけなんですけれども、大臣、この点についてはどうお考えですか。
■塩崎国務大臣
先ほど資料が配られましたけれども、今回の、被用者保険に対する百億円と六百億円の支援があるわけでありますけれども、そのうちの百億円の方で、大体五〇%までのところをカバーすることを想定して百億まで広げているわけでございまして、今回新たにつくった仕組みでいくことで、おおむね、大体五割ぐらいをカバーするという拠出率を、そこのところに支援を出すということが、我々としては当面考えていくべきことかなというふうに思っているところでございます。
■西村(智)委員
何だか余りはっきりしないような答弁で、かなり不安になるわけなんですけれども。
今回、このような被用者保険の納得性というところから考えていきますと、私は、やはり抜本的な解決策というのは、そもそもが年齢で区切った別制度としている高齢者医療制度の抜本改革を実現するほかないんじゃないかというふうに思います。
私たち民主党は、一昨年の社会保障制度改革プログラム法のときに、高齢者医療制度それから年金制度の抜本改革、これが盛り込まれていないということで反対をしたわけですが、今回の法案でもこの高齢者医療制度の抜本改革が見当たらないということなんです。
今回、審議会の段階で、高齢者医療制度の抜本改革を求める意見がなかったのかどうか。意見は恐らくあったんじゃないかと思うんですけれども、では、なぜこれを検討しなかったのか、それについて大臣の見解を伺います。
■塩崎国務大臣
この間の議論で、先ほどの医療保険部会の審議においても、特に、被用者保険者の代表の方からも含めて、この後期高齢者医療制度について、これはちょうど創設から七年たっているわけでありますが、これについて、抜本改正をどうしてもやれというような御意見が強く出されたというふうには聞いておりませんで、我々の認識は、確かに、導入時は私も随分地元で怒られました、全国で怒られました。怒られましたが、今はかなり安定、定着をして、制度的にも、特にどこが問題だということはなかった。導入当時は本当に毎週帰るたびに怒られて、ここを直せ、あそこを直せ、こんな不都合をしているというようなことを言われたわけでございます。
今回は、保険制度の改革に当たって、現行制度を基本としながら、後期高齢者医療制度についても、実施状況等を踏まえて必要な改革は行っていくけれども、抜本改革という話にはなっていなかったかなというふうに思っておりまして、この後期高齢者医療制度をさらに安定的に運営をしていくために、後期高齢者支援金について負担能力に応じた負担として、被用者保険者の支え合いを強化する観点から、全面総報酬割の導入というのを盛り込んだというところでございます。
■西村(智)委員
やはり、私は、先ほどもずっと指摘があるとおり、高齢者の医療制度の方に納付金あるいは支援金として被用者保険のお金を転用していく、保険料収入の約五割をつぎ込むというような話は、とても納得の得られるような話ではないと思います。
また同時に、懸念がありますのは、医療保険制度を支えていると言われる被用者保険の中の中所得者あるいは高所得者層の動向であります。
厚生労働省の会議でもそういう意見が出されたというふうには聞いておりますが、中所得者あるいは高所得層の被保険者が公的医療保険への加入を今後はボイコットして、これからは自己責任で民間保険で医療をカバーする、そういう行動に移るということのないようにしなければいけないというふうに思っています。
だけれども、今回国がやろうとしていることは、これは言ってみれば真逆の方向ですね。全面総報酬割で生じる国費を国保に優先活用するということは、やはり、私は、これは撤回をすべきではないか、持続可能な医療保険制度を維持するという点からもこれは撤回すべきではないかと思いますが、いかがですか。
■塩崎国務大臣
議論が始まったばかりで撤回せいと言われても、なかなか厳しいものがあるわけでございますけれども。
今回、何度も申し上げておりますけれども、もともと、今の形になる以外に突き抜け方式とかいろいろなことがあるわけで、なかなか悩ましい選択で今日のベースができているわけでありまして、ぜひ民主党の皆さん方には、抜本改革というならば、その抜本改革案を示していただいて一緒に議論をしていくということをやっていただくと、年金も含めてですね、ありがたいなというふうに思って、みんなそれぞれ、一〇〇%満足をしているというのはなかなかないものですから。
今回は、特に制度改革における全面総報酬割の導入について今御指摘が繰り返しございまして、拠出金の半分を持っていかれるんじゃ意味がないじゃないかということでございますけれども、やはり、先ほど申し上げたように、全面総報酬割の導入に伴っても、被用者保険者の負担軽減策もあわせて議論をして導入もしてきているわけでもございますし、さっき申し上げたように、医療保険部会も含めていろいろ議論をしてまいりました。
それから、先ほどの五団体の要望の中でも、この中で、特に後期高齢者医療制度を撤回せいという話にはなっていなくて、「高齢者医療制度の負担構造の改革をはじめとして、医療保険制度全体のさらなる改革に取り組むべく、議論を継続させ、積極的に進められることを強く要望する。」これは連合の高橋さんのお名前もございますけれども、こういうことでございまして、今、大変厳しい御指摘をいただいておりますけれども、ぜひ御議論を賜って、何とか御理解をいただければというふうに思うところでございます。
■西村(智)委員
予算編成権があるのは政府・与党でありますので、そこは、今後の高齢者医療制度、年金制度、いかにあるべきかということは、まずは政府の責任で私は考えるべきだというふうに思いますし、また、この意見書については、明確に、「被用者保険にさらなる負担を求める財源捻出策は容認できない。」というふうに書かれているわけです。そこのところはぜひ重く受けとめてもらいたい、このように思います。
次に、医療費の伸びを抑える努力ないしは市町村国保の問題に移りたいというふうに思います。
医療保険財政は、被用者保険も国保もともに厳しい状況にあるということです。そのために、健康維持の取り組み推進だけではなくて、毎年医療費が大きく伸びている状況に何らかの手だてを講じる必要もあるというふうには思います。
ここから先はエビデンスを積んでいかなければならない部分だと思いますけれども、午前中も、また先ほども我が党の阿部委員からの質問もありましたけれども、病床数と、それから平均在院日数と一人当たりの医療費の関係ですね。これについては、ベッド数が多いところはやはり平均在院日数も長くて、一人当たりの医療費も高いという傾向があるということは長年指摘をされてきたことなんですけれども、では、これをもうちょっと細かく、市町村単位で見るとどうなのかというようなお話も、先ほどの御指摘の中でありました。
政府の方は、二〇〇六年の法改正から、二〇〇八年より平均在院日数を減少させる取り組みを行ってこられたというふうに承知していますけれども、それがどれだけ医療費の適正化につながってきたのかということはまだ明確になっていないんじゃないかというふうに思います。
そこで、伺いたいんですけれども、政府としては、この病床数と医療費の相関関係についてどういうふうに捉えていらっしゃるでしょうか。
■塩崎国務大臣
先ほど阿部先生から、必ずしも、供給が多いから、ベッドが多いから医療費が高くなっているとは限らないというお話もございました。
現在の医療費適正化計画では、医療費の地域差の大きな原因となっている入院医療費の適正化を図るために、これと高い相関関係があることが指摘をされるいわゆる平均在院日数の短縮を目標として掲げているわけでございまして、ベッドの数だけと入院医療費とのリンクを言っているわけではございませんが、平成二十年度から二十四年度までの第一期医療費適正化計画について、その実績を見てみますと、平均在院日数は当初の目標よりも短縮され、それから医療費も計画で立てた水準よりも少なくなっております。
具体的な数字を見ますと、在院日数でいきますと、目標が二十九・八というのが、若干下回って二十九・七ということで、ポツ一だけ下がっております。医療費の方は、見通しが三十八・六兆円が、実際の実績が三十八・四兆円ということで、微減ということで、少し少なくなっているわけでございます。
平均在院日数の短縮というのが医療費にどの程度寄与しているかまでは、必ずしも数値的にその相関を述べるのはなかなか容易ではないわけでありますけれども、一定の効果はあったのかなというふうに考えているところでございます。
■西村(智)委員
まあ微減ですね、わずかな。
私、もうちょっとここは分析をしてみる必要があるのではないかと思います。きょうの議論をずっと聞いていましても、そのように感じたんです、医療費の地域差を生んでいる要因がもっとほかにあるのかどうかということも含めて。
ですから、ベッド数、平均在院日数、これ以外の何かほかの要因があるのかどうかということについても、やはりもう少し科学的に分析をしてもらいたいと思いますし、今後も、市町村国保にはいろいろな意味で努力はしていってもらいたいというふうに思うんですけれども、やはり国がここはきちんとリーダーシップをとって、医療費の適正化について、地方にお任せをするだけではなく、やるべきではないかというふうに私は思いますけれども、大臣、いかがですか。
■塩崎国務大臣
おっしゃるように、国が大きな目標、方向性はやはりきちっと示した上で、今回、都道府県化をする国民健康保険、そしてこれは都道府県と一緒に保険者機能を発揮しなきゃいけない市町村に、今の医療費の適正化をしっかりやっていただくようにしなければいけないんだというふうに思っているわけであります。
昨年、医療介護総合確保推進法が成立しましたけれども、そのときに、都道府県が地域医療構想を策定する、質が高い、効率的な医療供給体制を構築するということであります。
この地域医療構想を、都道府県が地域ごとに医療機能別の医療需要と病床数の必要量を推計することとしておりまして、その推計方法を含めて、厚労省は、地域医療構想策定ガイドラインというのをことしの三月に出したところでございまして、都道府県にはそれを示した上で、この四月から三年かけて構想、ビジョンをつくってくれということになっています。ただ、三年かけるといっても、そんなにゆっくりかけてもらっては困るので、我々は、実質的にはもっと早くしろということをお願いしているところでございます。
さらに、今後、都道府県の担当者に対しては、策定のための研修というもの、三日間の研修というものを、既に第一回目は、予定を、六月の十六日から十八日まで三日間缶詰でやってもらう。それから第二回目も、これは二日間でありますけれども、七月。第三回目は十月。十月はまた三日間缶詰で、都道府県から来てもらってやってもらう。
心を一つにしてこのガイドラインをつくっていくことによって、その哲学に、言ってみれば整合性を持った形で、それぞれの地域のまた特徴というのがあるわけですから、都道府県で構想をつくってもらって、医療費の抑制策もそこなりのやり方というものがそれぞれまたおありでしょうから、やってもらう。そのときに当然、市町村も御一緒にやっていただく、そして地元の関係者、医師会を初め、一緒にやっていただくことになるということでございます。
■西村(智)委員
次に、先ほども問題になっておりました法定外繰り入れのことについて伺いたいと思います。
何度も繰り返しになりますけれども、やはり全面総報酬割の導入ということは、市町村国保財政の赤字を補填するために、被用者保険が国保を肩がわりすることになっているんじゃないか、そういうふうに見ざるを得ないという思いがあります。
しかし、東京を中心とする一部大都市の市町村国保では、保険給付を賄うには不十分な低水準の保険料設定でありながら、一般会計から決算補填を目的に法定外繰り入れが行われているというふうに指摘をされている実態がございます。
こういう事態が起きる背景、一般会計から決算補填を目的に法定外繰り入れが行われているという事態が起きる背景については、大臣はどうお考えでしょうか。
■塩崎国務大臣
先ほど、法定外繰り入れについて、三千五百億円全体のうち、一位から六位までで二千四百億円ということで、かなりの部分がそういった六都府県によって占められているということでございます。
そういうところは、それぞれみずからの財政が許すような格好なものですから、こういうことになっていますけれども、では、それが医療費の抑制につながっているかというと、そうなっているとは必ずしも言えないので、我々としては、先ほど申し上げたように、国民健康保険が厳しい財政状況にあるために一般繰り入れをやってはいますけれども、これは計画的、段階的に赤字を解消せいということをずっとお願いしてきたところでございます。
今回の、国保の厳しい財政状況に鑑みて、毎年約三千四百億円の追加公費を投入して、予期せぬ給付増とかあるいは保険料収納不足により財源不足になったときに備えて、都道府県に財政安定化基金というのを設置することなどによって、一般会計繰り入れの必要性は相当程度解消するものというふうに考えております。
自治体においても、今後とも収納率の向上とか、それから医療費適正化というのは、先ほど申し上げたようにビジョンをつくり、そして保険者機能が必ずしも今まで市町村国保は、先ほどこれは大西議員から、健保連からはいろいろ、データヘルス的な分析に基づく医療費の抑制策というのは蓄積があるんだという話がありましたが、まさにそのとおりなんですけれども、そういうものを、今度都道府県が責任を持つ国保にもやってもらいたいというふうに思っておりますし、それは当然、市町村と組んでやってもらわなきゃいけない、保険事業などは市町村でやってもらうものですから。
そういうことで、保険料の適正な設定も含めて、赤字の解消に取り組んでいただきたいというふうに思いますし、先生もおっしゃったように、これは大西議員もそうでしたが、やはり被用者保険者に協力を願うならば、みずからもきちっとやるべきことをやっていかなきゃいけないというのは事実だというふうに思います。
■西村(智)委員
この先二つ質問しようと思っていたことを全て先回りして答弁してくださったので、もう質問はしませんけれども、やはり努力をちゃんとしてもらうということを大臣がきちんと踏まえた上で、これまで健保組合が本当に努力してきたということからすれば、国保のこういう状況というのはとても容認しがたいことだと思うんです。そこのところはやはり見過ごせない問題として、関係者の気持ちを踏まえてちゃんとやっていってもらいたいというふうに思うんですよ。
私は、そもそもこういったことについては余りよくないというふうに思いますけれども、そこは引き続き、問題としては指摘をしたいというふうに思います。
続いて、協会けんぽへの国庫補助について伺いたいと思います。
当分の間、国庫補助率が一六・四%、本則では下限を一三%にする、引き下げるということになっています。また、準備金残高が法定準備金を超えて積み上がっていく場合には、新たな超過分の国庫補助相当額を翌年度減額する特例措置を講ずるということであります。
まず、この一三%への引き下げなんですけれども、これはどうして引き下げるんでしょうか。
中小や零細企業が協会けんぽの主たる加入者で、所得水準はやはりまだ低いままである。アベノミクスといって浮かれているのは、ほんの一部である。財政基盤が脆弱であるために、協会けんぽは、これまで、平均保険料率一〇%という高い保険料率を維持して頑張ってこられたわけです。その結果、一時的に法定を超過する準備金が積み上がった状態となっているわけですけれども、だけれども赤字構造というのは変わらないわけですね。
今回、国庫補助率の本則の下限を何でわざわざ一三%に引き下げなければならないのか、明確な理由をお答えいただきたいと思います。
■塩崎国務大臣
今出ました協会けんぽの国庫補助率につきましては、現行の制度では、本則に、一六・四%から二〇%までの範囲内で政令で定める割合、こう書いてありまして、実際には、附則において、当分の間一三%というふうに規定をされておって、平成四年度以降、この附則が実質的な効力をずっと持ってきたわけでございます。
今回、約二十年間にわたって国庫補助率が一三%とされた経緯を踏まえて、本則においては一三%から二〇%までの範囲内と規定することといたしますけれども、実質的な国庫補助率の効力を持ちます附則規定については、当分の間一六・四%と規定をいたすことで、協会の国庫補助率を安定化させることとしたいと考えているところでございます。
■西村(智)委員
要は、これまで附則が一三%だったから、そのまま持ってきて本則の下限にしましたというだけの話なのかなと思うんですけれども、何かこれで本当に合理的な理由と言えるのかどうか、私は甚だ疑問に思います。逆に言うと、では、何でこれまで本則の下限が一六・四%だったのかなということも疑問になってくるわけであります。
それは一つの問題といたしまして、次に特例措置について伺いたいと思うんですけれども、そもそも、保険制度は単年度収支の均衡を図りながら運営されるべきものであると思います。法定を超えて準備金が積み上がった場合には、本来は、保険料率を引き下げて被保険者に還元すべきではないかと思うわけです。
しかし、今回は、高い保険料率を維持させておく一方で、国庫補助を削減しようとしています。これは、保険給付を推計して必要な保険料を設定するという保険者機能の発揮を阻害させるものではないかというふうに思います。
こういった経過をずっと見ていきますと、国は、協会けんぽの保険料率最低ラインを将来にわたって一〇%の水準で固定化するつもりなのかというふうに思えてしまうわけなんですけれども、大臣は、協会けんぽの保険料率についてはどう考えておられるんですか。
■塩崎国務大臣
今、協会けんぽの保険料率のお話が出ましたが、現在、平均保険料率が一〇%という水準は被用者保険の中でもどちらかというと高い方でありまして、これ以上の引き上げは厳しいという御意見があることを承知しているわけでございます。
今回の制度改革において、協会の国庫補助率を当分の間一六・四%と規定をするわけでありますけれども、そのことによって国庫補助の安定化というものをまず図ることとした上で、現下の財政状況や経済情勢などを踏まえてみると、協会の準備金が法定準備金を超えて積み上がる場合に限って、新たに積み上がる分の一部を翌年度の国庫補助から減額するという特例措置を講ずることとしたものでありまして、言ってみれば、法定準備金を超えて積み上がった場合の税金で積み上がった部分はお返しをいただくということにしたわけであります。
今、保険料の将来の水準についてお話がありましたが、それは、私が今答えるようなことではないんじゃないかなというふうに思います。
■西村(智)委員
いや、そうでしょうかね。私は、国の基本的な考え方は、やはり一〇%で固定化するつもりなのかなと。大臣が今お答えにならなかったことも含めて考えますと、この先のことについては非常に大きな不安を持ちます、懸念を持つところであります。
ちょっと時間もあれですので、国保組合への国庫補助について、一、二点伺いたいというふうに思います。
私たち民主党政権のとき、行政刷新会議の事業仕分けで、国保組合については、定率補助を五段階として、被保険者の所得水準の一番高い国保組合の国庫補助はゼロにするということも含めるということで結論を出させていただいておりました。
その後も、社会保障制度改革国民会議報告書において、そういった方向での取り組みを進める必要があるというふうにも指摘をされているところ、今回の法改正では、所得水準に応じて一三から三二%の補助率とするということについては、一部評価はしたいというふうに思います。
ただ、性格そのもの、この所得水準の高い国保組合への国庫補助の性格については、ちょっとやはり明確にしておくべきではないかというふうに思いまして伺うんですけれども、所得水準の高い国保組合にどういう構造的問題が存在して、そして国庫補助を投入しなければならないというふうに判断をしているのか、その点を伺いたいと思います。
■塩崎国務大臣
国保組合は、本来、市町村国保の被保険者となるべき方のうちで、同種の事業とか業務に従事をする自営業者などを組合員として組織されておりまして、加入者の健康保持増進に取り組んできておりまして、今、百六十四組合、大体三百万人おられるというふうに聞いております。
国保組合には事業主負担がないこともありまして、国保制度の一環として、同じく事業主負担がなく、国庫補助がなされている市町村国保とのバランスを踏まえて、一定の補助を行っているものでございます。
■西村(智)委員
バランスということのお答えなんですけれども、やはり私は、国庫補助というのは、保険者の努力ではどうしても解決できない、そういう構造的な問題があるときに、その解消に活用されるべきものだというふうに思うんです。ですので、国保組合への国庫補助については、ここはやはりいささか問題のあるところだというふうに思います。
加えてなんですけれども、国保組合については、私たちも、正直なところ、いろいろなことを議論していく上で前提となる数字がなかなか手に入らないということがあります。
例えば、所得水準が高いと思われる国保の中で、例えば医師国保とかですね、そういったところの保険料率、また、被保険者一人当たり総報酬の最高値、最低値、平均値、中央値、こういったものがあれば、ぜひ明らかにしていただきたい。
その上で、保険料負担率で見ると、医師国保などの国保組合は、協会けんぽや健保組合、そして市町村国保との比較でどういう位置関係にあるのか、それを明らかにしていただいた上で、この国庫補助の、言ってみれば正当性というか必要性というか、そういうものを議論したいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
■塩崎国務大臣
さっき申し上げたように、国保組合もなかなか幅がいろいろございまして、同種同業者の人たちでありますけれども、幅が非常にあるということであります。
こうした国民健康保険組合の運営状況につきましては、先生、今、保険料率等々についていろいろデータをということでございましたけれども、厚労省は毎年、国民健康保険事業年報というのを出しておって、今も確認をいたしましたら、保険料率がどうかというようなことについても所得についても載っているということでございましたので、それで十分かどうかを御確認いただけたらと思うんですけれども、収支状況などのデータを取りまとめて公表しておるところでございます。
いずれにしても、わかりづらいということでもありますから、国保組合の運営状況をわかりやすくするような努力は引き続きやってまいりたいというふうに思います。
■西村(智)委員
時間になりましたので、終わります。また次の機会をいただきたいと思います。