■西村智奈美委員
おはようございます。西村智奈美です。
いわゆる日韓図書協定、ようやくきょうから審議ということになりまして、私たちとしても、この協定について、しっかりと審議はさせていただきながら、早期にこれは何とか承認をさせたいというふうに考えております。賛否いろいろな声があるというふうには聞いておりますけれども、これから、大臣また副大臣からの答弁の中で、そうしたいろいろな声にこたえていただければというふうに思っております。
最近、世界は大変急激に目まぐるしく変化をしているということ、これは私が申し上げるまでもありません。長く続いた冷戦構造が崩壊して以降、世界は多極化の方向に入り、そして最近は、新興国の台頭など含めて、極がなくなる無極化になっているのではないかというふうにも言われる中で、この東アジア地域を見ましても、大変目まぐるしい変化があると思っております。
日本がこの中でどういうふうに外交の方向性を定めていくか、これは大変難しいところだと思っておりますけれども、私は、いろいろな周りの状況を見ますと、日韓関係というのはこの中でもやはり重要だというふうに思うんです。よく言われるように、政治体制が近いということ、同じということ、また、いろいろ会合などをやったりしますと、ビジネスの習慣とでも申しましょうか、人間関係の感触が、時間に対する感覚も含めて考えると、なかなか近いなというふうに思いまして、そういう意味では、やはりパートナーとして日本はこれからやっていけるんだろうというふうに思っております。
北朝鮮などを含めての安全保障環境もありますし、これから経済社会面での地域統合もあり得る、こういう流れの中で、今後、大臣はこの日韓関係をどういうふうにお考えになっていられるか、そこを伺いたいと思います。
■松本剛明外務大臣
おっしゃったように、この協定の議論に当たりましても、日韓関係の重要性というのが大きな前提としてあるという御指摘であったかと思いますが、そのとおりではないかというふうに思っております。
今も御指摘ありましたように、多様で大変流動的な国際情勢の中であるからこそ、日韓両国はいわば、人に例えていけば、近くて近い国であり続けるというふうに私どもも努力をしていきたいというふうに思っております。民主主義や自由、市場経済という価値観が共有をされているということ、また、幅広く地域と世界の平和と安定のために協力をする、そういうパートナーとしての関係にもあるということが大変大きなポイントであろうというふうに思います。
とりわけ、東アジアの安全保障環境、北朝鮮の拉致、核、ミサイルの問題を含めて厳しい状況にあります。また、東アジアでは経済統合というテーマもある中で、日韓両国においては重層的な協力、連携ということを一層強化することが大事だというふうに思っています。
このような中で、未来志向の日韓関係を構築するということが大きな課題となっておりまして、経済の面ではEPAの締結を含む経済関係、また人的交流の一層の促進、さらにはアジア地域の平和、安定の確保や世界経済の成長、発展、核軍縮、気候変動などのグローバルなテーマ、もちろん貧困や平和構築といったものも含めて、こういったものにも積極的にパートナーとして取り組んでいく、そういう関係をつくっていきたい、こういうふうに考えております。
既に御案内のとおり、アフガンやハイチなどでも協力が行われているところでもありますし、さまざまな場面での協力する場面というのも安全保障でもふえてまいりました。経済の面でもさらに深めていくようにしていきたい、このように考えているところであり、また、このような基本的な考え方が、今回の協定にも関連をする昨年八月の総理談話にも反映されているというふうに考えているところでございます。
■西村(智)委員
非常に近くて近い国という大臣のお言葉、そのとおりだと私も思います。
話はかわりますけれども、日本が今回被災した東日本大震災で、本当にたくさんの国や地域や国際機関からお見舞いをいただいているというふうに伺っております。国会に対してもいろいろなお見舞いもいただいている、外務委員長にもお見舞いが届いているというふうに聞いておりますけれども、本当に今回は多くの国から支援をいただいた。
その中でも、やはり韓国からも支援をいただいているというふうに私は承知しております。例えば緊急援助隊ですね。今回は、初めて新興国が緊急援助隊を日本に対して送ったという国が幾つかあると聞いています。また、近いだけに、例えば韓国とかシンガポールなどからの緊急援助隊は比較的早く日本国内に到着していて、遠くから来られる国はやはり少し時間がかかっているというふうに思うんですけれども、そういった支援、これは大変ありがたい、感謝すべきことだと思っております。
今回の大震災に当たって、隣国である韓国からはどういう支援をいただいているか、そこを伺いたいと思います。
■伴野豊外務副大臣
韓国の皆様方からは、とりわけ被災をいたしました翌日に、他国に先駆けてまず救助犬のチームの派遣がされまして、続きまして14日に102名の第二次救助隊が派遣され、主に宮城県で救助活動をいたしました。伺うところによりますと、帰国途中の新潟でも西村智奈美議員の方からもお礼を言っていただいた由というふうに伺っております。
また、韓国政府を通じまして、水や食料、毛布など多岐にわたる、非常に被災地が必要としているものが届けられました。また、このほか、政府を通じた支援にとどまらず、ソウルなど主要都市で日本を応援する横断幕が掲げられるなど、多くの韓国人の方々から募金活動に参加していただくなど、韓国全土、国内を挙げて日本を支援しようという動きが見られました。
このように韓国政府のみならず多くの韓国国民の方々から多大な御支援をいただくことにつきまして、我が国の国民の皆さん方も、韓国の皆様方は本当に困ったときに駆けつけてくれる真の友人と感じられた方も多いのではないか、そのように感じております。
政府といたしましても、日本国民を代表して御礼を申し上げたいところでございますが、松本大臣からも金星煥通商長官や駐日大使に機会をとらえて、その節に当たり御礼を申し上げている次第でございます。
■西村(智)委員
副大臣おっしゃったように、私ちょうど新潟で、福島などからの避難の方を受け入れている地域があるんですけれども、ちょうどDMATが展開しているところに行きましたら、そこに韓国の緊急援助隊の方がちょうど帰国途中で待機しておられるところでした。差し出がましいんですけれども、団長にお会いしてお礼を申し上げましたら、自分たちが来て本当に役に立ったかどうかわからないけれども、また呼んでもらえればいつでも来るというふうにおっしゃってくださって、大変胸を熱くしました。
そういった支援、協力、これは大変ありがたい。しかし、そういった韓国との関係でいいますと、やはり近いだけにいろいろな問題も生じます。例えば竹島の問題でありますけれども、最近、韓国側から竹島に関してさまざまな動きが見られるということ、率直に申し上げまして懸念しております。
これについて、私はやはり、竹島は紛れもなく日本の領土でありますし、ここは政府としては毅然とした態度で臨むべきであるというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。
■松本(剛)国務大臣
御指摘ありましたように、竹島の問題というのはしっかり取り組まなければいけない大変重要な問題である、このように思っております。
今お話がありました韓国側の竹島に係る一連の措置については、我が国としては受け入れられないものであり、我が国の立場は一貫をしております。これまで私どもとしても、累次の機会に韓国側に強く申し入れをしてまいりました。私自身も日韓の外相でお会いする際には申し上げてまいりましたし、直近では、5日の日に、当省の佐々江次官から権哲賢駐日韓国大使に対して抗議をいたしているところであります。
領土問題は、申し上げるまでもなく、我が国の主権にかかわる極めて重要な問題でありまして、国を挙げてあらゆる情報や知恵を集めて、そして問題解決に当たっていくという姿勢で臨んでまいりたいと思っております。
政府としては、真剣な懸念を韓国政府に伝えるべくあらゆる手だてをとってまいります。この問題の平和的な解決を図るために粘り強く外交交渉を行っていきたいと思っておりまして、どのような方法をとっていくのか、引き続きしっかり検討して取り組んでまいりたい、このように思っております。
■西村(智)委員
次に、日韓図書協定でありますけれども、これは確認だけさせていただきたいと思いますが、韓国では、この日韓図書協定で引き渡しをされる合計で1205冊ですか、この図書以外でも、さらにその他の文化財の引き渡しを希望する声があるというふうに聞いております。
今回の協定は、昨年8月に発出されました総理大臣談話、これに基づいて幾つかの項目といいますか条件、これによって精査した結果、この1205冊が引き渡されることになったというふうに承知しておりますけれども、今後も図書引き渡しの希望の声があった場合、このほかにも引き渡しをするということになるのでしょうか。私はならないのではないかというふうに思うんですけれども、確認したいと思います。
■松本(剛)国務大臣
既に御理解をいただいていますように、今回の図書の引き渡しは、日本政府として、日韓間の歴史を踏まえて、未来志向の日韓関係を構築するという観点から、日韓関係のさらなる強化に資するものとして、日本側の自発的措置として行うというものであります。
その内容は、お話がありましたように、総理談話の考え方に示されているところでありますが、2010年8月10日の談話の考え方に合致する図書については、今回すべて韓国側に引き渡すことになります。ということで、現時点でそれ以上のことは考えていないと御答弁したいと思います。
■西村(智)委員
そこで、今回引き渡されることになった千二百五冊の図書でありますけれども、この協定の附属書にもその具体的な図書名というんでしょうか、それが一覧で示されております。これはどういった図書であるのか、ちょっとこの委員会の中で大臣の方から御説明をいただきたいと思います。
実は、一昨日、外務委員長のもとで、委員会の理事メンバーと一緒に宮内庁の書陵部に参りまして見させていただきました。大臣は、この図書をごらんになられたでしょうか。
■松本(剛)国務大臣
私自身も、この協定の署名をされたことを受けて、昨年の11月18日の日に宮内庁の書陵部を訪問して、朝鮮王朝儀軌など、協定の附属書に掲げられている図書の代表的なものを拝見してまいりました。
図書の内容は、大別して、朝鮮王朝儀軌167冊、そのほか1038冊というふうに私どもとしては分類をしております。
内容については、よく御案内だと思いますが、簡単に申し上げれば、朝鮮王朝儀軌は、朝鮮王朝時代に挙行された主要行事を文章と絵で記録した冊子の総称であります。また、その他の図書1038冊は、内容別に区分をすると、詩文集等文学関係の図書、政治、法律、制度関係の図書などがその中に含まれているというふうに承知をいたしております。
■西村(智)委員
ごらんになられたということでありまして、きっと同じ感想を持っておられるというふうに思いますけれども、非常にきれいなといいますか、儀式の模様なども非常に繊細な線遣いと色遣いでかかれているもの、また活字の技術を使って印刷されているものがありましたり、非常に文化的価値また学術的価値の高いものであるというふうに思いました。
しかし、これは、韓国の方々に見ていただくことの方がより価値が高まるのではないかなというふうに思っておりますけれども、一方で、日本側でも研究しておられる方々がいらっしゃるのではないかというふうにも思うのであります。
今回、これらの図書を韓国側に引き渡すに当たって、日本側の研究者の方々にはどういう手当てとでも申しましょうか、今後研究していく上でのサポートを考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
■伴野副大臣
3月中旬に、私が複数の専門家の方々と意見交換を行わせていただきました。そうした中で、三点の御指摘、御提案をいただきました。一つ目が、対象図書は日本国内よりも韓国国内で学術的に高く評価されている。二つ目としまして、2010年に決定された本件引き渡しには、日韓間の歴史及び文化交流の一層の促進という観点から象徴的な意味があるという御意見をいただきました。三点目といたしまして、韓国国内では引き渡しが肯定的に評価されている等の理由を挙げ、本協定に基づく引き渡しを肯定的に評価する意見が多く出されたということでございます。
また、専門家の方々からは、引き渡しの後、日本国内の研究者等のアクセスのために、引き渡しに先立ち、対象図書のマイクロフィルム化及びデジタル化、最低限の書誌学的データの整理を実施してほしいとの要請が出されました。
専門家の方々のこれらの意見を踏まえまして、政府といたしましては、引き渡しに先立ち、日本側において、対象図書のマイクロフィルム化、デジタル化及び最低限の書誌学的データの整理を行うとともに、韓国側に対しまして、引き渡し後に日本国内の研究者等に対しまして良好なアクセスが確保されるよう要請していく所存でございます。
■西村(智)委員
アクセスを可能にするということを伺いまして、大変望ましいことだと思っております。文化とか文化財といいますと、どちらかというと所有することに重きが置かれて、みんなで共有してそれを活用するとか、ともに研究の対象にするというようなことが今まで余り世界の中ではできてこなかった一時期があるのではないかなと思っています。
この協定とは少し話は外れますけれども、大英博物館などを見ますとたくさんの返還要求のされているような文化財も見られますし、また、私が時々訪ねていた東南アジアの国では、非常に織物がきれいで有名なところがあるんですけれども、海外の愛好家が古くてよいものを安く買い求めて、そして、そういった伝統的な染めの技術や織りの技術、こういったものがもう流出してしまってなかなかもとに戻せないというようなこともありました。
こういったことをいろいろ考えていったときに、やはり文化という窓口を使って、いろいろな交流とか協力、これが今回の日韓図書協定の発効とそして図書の引き渡しをもとに進んでいければいいなというふうに思っているんですけれども、その点については、大臣、どうお考えになりますか。
■松本(剛)国務大臣
おっしゃったように、文化財というのはそれそのものに価値がありますので、財としての部分をとらえられるところももちろんあると思いますけれども、文化という観点からいけば、これはやはり人の営みの積み重ねの中からはぐくまれたものだというふうに思いますので、まさに文化財においても、これが人の営み、人の交流につながるものであってほしいと思いますし、またそうなり得るものだというふうに私自身も思っております。
今回の図書協定も、その趣旨として、協定の中にも、相互の理解に基づく文化交流及び文化協力が、両国及び両国民間の友好関係の発展に資することを希望するというようなことが書いてありますし、また、あわせて両国間、両国政府はそのように努めるという趣旨も記載をさせていただいております。
実際に、今お話がありましたように、今回の図書協定を通じて、交流そして協力がさらに深まるということを期待しておりますし、その契機となるものだと思っていますし、私どもとしても、またそれをしっかり進めるいわば努力をしなければいけないという責務を負っている、こう考えております。
■西村(智)委員
さて、今回の東日本大震災の関係で大臣にあと一点だけ伺いたいと思います。
今回の大震災で、本当にたくさんのお見舞いとお悔やみ、そして、私たちの気持ちは日本とともにある、日本の復興と復旧を確信しているというお言葉、本当にたくさんの外交官や政治家の方々からいただいております。本当に胸が熱くなる、涙が出そうになる思いで伺っております。
さて、こういった中で、しかし、やはり復旧や復興に向けて財源の捻出というのは避けられないことだと思っております。けさの閣議で第一次補正予算の概算が決定されたと思いますけれども、そこをまず確認させていただきたいのと、その中に我が国のODAの予算が500億円削減されているということも含まれていると思います。その内容について伺いたいと思います。
■松本(剛)国務大臣
御指摘のとおり、けさの閣議で第一次補正予算の概算ということが決定をいたしました。この中で、ODA関連予算の削減額は501億円でございます。外務省所管分が276億円、225億円が財務省所管のJICA有償資金協力部門出資金という構成になっております。
今回のODA関連の予算の削減に当たっては、二国間援助が各国との関係に与える影響に最大限配慮をしたい、こういうふうに考えて行ってまいりました。また、いわばODAの現場への影響というのも極力避けたいという思いもございました。同時に、これまでの我が国の信頼に直結をする我が国の国際的なコミットメントへの影響というのも極力避けたい、こういう考え方で行ってまいりまして、今回は、JICAの有償資金協力というのも、外務省ももちろん深くかかわってくる案件でありますが、これも出資金であります。また、276億円の外務省の所管予算分も、基金などの拠出金を中心に削減を、今検討を行っているところでございます。
その趣旨は、いずれも出資金、拠出金といったいわば現場とはワンクッションある性格のお金でありまして、当然、基金なり有償資金協力部門のいわば資金繰りにかかわってくることでありますけれども、その辺はよく見ながら、ワンクッションあるところで削減をするところで今回の東日本大震災の対応を進めていきたい、このように考えております。また、あわせて、国際的なコミットメントについては引き続き誠実に実行していく、そういう決意で臨んでまいりたい、このように思っております。
今回、ODA予算、昨年度、昨年中に今年度予算ということでいろいろ御検討いただいた上で戦略的に組んでいただいた本予算であるだけに、私どもも、わずかでも削減をすること自身には率直に申し上げて大変残念な思いがあるわけでありますが、未曾有の大震災の発災ということで、ぎりぎりの決断として、繰り返しになりますけれども、現場からはワンクッションある範囲で何とかとどめる、そして、国際的なコミットについては誠実に実行していくということを国際社会にもしっかり伝えるようにメッセージを出していきたい、このように考えております。
■西村(智)委員
海外からの多くのお見舞いをいただく中で、やはりこういうふうに言われることが多いんですね。つまり、日本は自分たちの国が困っているときに助けてくれたんだ、だから日本が困っているときに自分たちが助けないでどうするんだ、こういうような言葉をかけていただくことは大変多いわけであります。
いみじくもというか、くしくも総理が先般各国の新聞に掲載されたお見舞いあるいは支援に対する謝意広告、この冒頭は「絆」という言葉で始まり、そしてそのお見舞いの最後には、ア・フレンド・イン・ニード・イズ・ア・フレンド・インディード、まさかの友は真の友というふうに結ばれておりまして、これこそが、私は、今回日本がこの未曾有の災害にあっても世界に示していくべきメッセージだろうと思っております。
ことしは2011年。2015年にはMDGs、国連ミレニアム開発目標の達成年度を迎えます。MDGsでいいますと、ゴールの三とか四とか五とか、このあたりを中心にまだまだ達成が大きくおくれておりますし、日本がやはりこの分野に貢献していくということは世界からも求められている、そして、この時期にあって、日本がどういうふうに行動するかということを恐らく世界は注視していると思います。
そこで、適切なメッセージを、ぜひ大臣からは適切に発していただきたい、そのことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。