■下村委員
我が国は子供にとって幸せな社会システムになっているかというと、残念ながら、時代の大きな変化の中で、例えば家族制度なんかも、核家族化、あるいはその制度そのものが崩壊しつつある中で、それに対して離婚を禁止するということはできないわけですけれども、しかし、そういう家庭においても、新たな社会的なフォローアップをしながら、子供の福祉、子供の幸せ、子供を健全に育成していくような新たな社会システムを時代の変化に対応してどうつくっていくかということがやはり問われてくるというふうに思うんですね。
ですから、養育費については確かにそれまでも履行率が大変低かったということで、平成十五年、それから十六年の民事執行法の改正によって、養育費についての強制執行の特例や間接強制制度を導入したわけです。しかし、にもかかわらず、今申し上げたように、平成十八年度において、離婚した父親から現在も養育費を受けている母子世帯の割合は一九・〇%。
これは養育費だけの問題ではなくて、単独親権、養育をするのであれば、これは同時に、やはり永遠に親子は親子ですから、子供が成人するまでの間は精神的にも父親がフォローするという意味での例えば面談、それからあとは、ほかの国がほとんど取り入れられておりますけれども、共同親権とか、そういう時代の変化に対応して、各国がそのような法改正をしているわけですね。
ですから、我が国においても、子供が健全に育つための対応として、やはり親はずっと親であってほしいという中で法律改正を考えていかなければならない、そういう時期に来ているのではないかというふうに思うんですね。
その中で、今、国際的には、非常にその部分が日本はおくれているのではないかという批判がある中で、例えばハーグ条約というのがあるわけですけれども、これは、子を不法な連れ去りにより生ずる有害な効果から保護する、面接権の保障を確保する、つまり、国際的な子の連れ去りは親の監護権あるいは面会交流の侵害になるということで、このハーグ条約について、ほかの国において締結されているのにもかかわらず、日本は締結されていないというような問題もあります。
そういう中で、ほかの国から見て、つまり、子供の問題というのは国際的な問題にも今なっているし、同時に、国内のそういう貧困の問題もあるわけですね。その国際的な問題がある中で、今、日本は、子供の連れ去りについて直近においてどんな問題があるというふうに外務省として認識されているのか、お聞きをしたいというふうに思います。
■西村外務大臣政務官
国際的な子供の親権の移動ということについてのお問い合わせでございますが、近年、国際結婚とその破綻がふえており、その中で、日本人女性が、外国からみずからの子を配偶者または元配偶者に無断で日本に連れ帰る事例が増加をしており、外国政府から問題提起をされているところでございます。また、日本から諸外国への子の連れ去りに関する事案についても、外務省に対する支援要請や問い合わせが増加しております。
欧米諸国政府のハイレベルからは、子を移動前の居住国に返還するための仕組みを定めるハーグ条約の締結について申し入れがなされており、本件問題についてはアメリカ議会の関心も非常に高く、下院で、ハーグ条約を締結していない日本を含む各国に対して、その締結を求める決議が採択をされております。
以上です。
■下村委員
今、ハーグ条約を締結している国が82カ国ですね。日本は締結をしていない。これは現在なぜ締結をしていないのか、その理由についていかがですか。
■西村大臣政務官
なぜということに対する直接的なお答えはないのでありますけれども、私ども、政権担当してまだ7カ月でございますので、今ようやく、この締結の可能性については真剣に検討してきているというところでございます。
条約の締結に当たっては、さまざま検討を十分に行わなければならない課題がありますところ、外務省としては、それに対してできるだけ早く結論が出せるように、法務省を初めとする関係省庁とともに協力をして、この作業を加速化させていきたいと考えております。
■下村委員
別に鳩山政権を責めているわけではなくて、我々の政権のときからの課題でもあって、これは我が国において不作為の作為であってはならないわけで、現実問題として、特に近年、国際結婚がふえていて、その中で破綻をしてしまったという夫婦もふえている中で、子供の連れ去り問題というのが、より国際的な大きな問題になっているというところから、早目に対応していく時期に今来ているのではないかと思うんですね。
その中で、日本においてはほとんど意識されていないんですが、子の連れ去りが犯罪とされて刑罰刑が科せられる、そういう国があるというふうに聞いておりますけれども、どんな国があるか、また具体的にどういう刑罰刑があるのか、おわかりであればお答えいただきたいと思います。
■西村大臣政務官
おっしゃるとおり、欧米諸国の中では、一方の親が他方の親に無断で子供を連れ去る行為が犯罪とされる可能性がある国があると承知をしております。
具体的にどの国かということでありますけれども、例えばアメリカ、カナダにおいては、そういった可能性のある国であると申し上げることができると思います。
そしてまた、その刑罰でありますけれども、これも各国の法制度、そしてその解釈、運用の問題でありますので、日本政府として一概にお答えをすることは困難でございます。
■下村委員
一番典型的な国の事例、おわかりになりますか。
これは外務省からいただいた、例えばカナダの事例ですけれども、領事情報として、在カナダ日本国大使館が出している資料があるんですね。この中に、
カナダや米国の国内法では、父母のいずれもが親権または監護権を有する場合に、または、離婚後も子どもの親権を共同で保有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています。
例えば、カナダに住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子どもを日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であってもカナダの刑法に違反することとなり、これらの国に再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合がありますし、実際に、逮捕されるケースが発生しています。
ということで、邦人に対してこのような領事情報を提供しているわけですね。
ですから、犯罪を犯しているつもりはないけれども、結果的には、もし、またカナダに戻った場合には、我が子を誘拐したということでそこで逮捕されてしまう、そういうことがやはりあるわけですね。
これは本人の問題というよりは、やはり国際ルールは国際ルールですから、先ほどの中国の例もそうですけれども、その国の法律が決まっているんだからそれはもうしようがないという話じゃなくて、特に邦人問題というのは、日本国政府としてどんなバックアップができるか、それが明らかに我が国から見たら不当であれば、もちろん、抗議をしながら改善を求めることは当然ですけれども、ただ、このような子供の親権については、ある意味では世界における共通コンセンサスが成り立ちつつある中で、日本だけがその部分の法的な整備がおくれているとしたら、それはそこの不幸に陥っている方々に対してどうフォローアップするかということこそが、やはり問われるのではないかというふうに思うんですね。
その中で、今、外務省と法務省との間で、このハーグ条約の締結についての検討を議論しているというふうにお聞きしておりますが、どのような議論をしているのか、どのような点が問題となっているのか、具体的にお聞きしたいと思います。
■西村大臣政務官
御指摘のとおり、今まさに外務省と法務省で議論をスタートさせているところでございますし、また、必要によって関係省庁交えての協議も必要になってくるかと思っております。
この条約の締結に当たりましては、先ほど申し上げました、本当にいろいろ検討しなければならない項目がございまして、今その項目について両省の間で論点整理から始めているところであります。恐らく最も大きな問題は、例えば、我が国の家族関係の法制度との整合性、そしてまた中央当局の指定、こういったところが主たる争点でありますけれども、そもそもこのことからして、いろいろ、解釈上どういう解釈にするのかということも作業しながらでありますので、ここは協議を密にしてやってきているところでございます。