■牧原委員
自民党の牧原でございます。
きょうは、私、本来は法務委員会のメンバーではないんですが、特に御指名を受けて、こうした大切な法律についての質疑の機会をいただきましたことに、まず感謝を申し上げます。
この法律は、非常に重いということでございます。多くの皆様の人生や、あるいは権利や、あるいは人権や、こうしたことに物すごくかかわる、大変重くて、しかしながら大変重要な法律であるということをかみしめております。両案の作成者の皆様におかれましては、この大変重要な、大変重いテーマについて、法律の作成という形で御尽力をいただいておりますことに、まず心から敬意を表させていただきたいと思います。
トップバッターでありますので、まず最初に、改めて議論の前提として、平成十一年、そして十六年に続いて法改正を行うということについての理由をお聞きしたいと思います。
今、提案理由説明の中で、それぞれに、平成十六年までの法律ではまだまだ足りない、さらに厳しい規制を設けて、そしてそのことが児童の権利の擁護に資するんだということがともに述べられたような気がしております。このような理解、つまり今回の法案というのは、基本的には、今までの法案でまだ足りなくて、より規制を厳しくして、そして、もって児童の擁護に資するようにしたいんだ、こういうことでよろしいでしょうか。まず、民主党案の提出者の皆様にお伺いしたいと思います。
■西村(智)委員
お答え申し上げます。
冒頭、これは全員の共通の思いだと思いますけれども、児童ポルノは児童に対する性的虐待以外の何物でもないということであります。被写体となった児童は、撮影されたことのみならず、これが広く流通し、拡散していくことによってさらに被害を受け続けるものであります。児童ポルノによる被害を受けている子供たちのことを考えますと、私どもはしっかりとした法改正を一刻も早く行わなければならないと考えていたところでありまして、そういう思いで、平成十一年の法律制定時、また平成十六年の改正時と取り組んでまいりました。
他方、刑罰法規であります児童ポルノの定義規定について、抽象的であいまいな主観的要件を中心とする規定のもとで捜査権力が不当でないものまで処罰するようなことがあってはならないし、また逆に、運用する当局にとっても、あいまいな規定のもとでは腰が引けたような運用になってしまって処罰すべき行為が処罰されないということにもなりかねません。こうしたあいまいさが、例えば小学生や中学生の水着姿の写真集が広く流通しているような現状にも影響していると思われます。
加えて、いわゆる単純所持を処罰することについては、気づかないうちにメールで送りつけられていたなど、何らかの悪意で知らない間に持っていた場合なども不当に逮捕される事態が起こりかねないということであります。
与党案では、目的犯という形で限定を加えておりますが、定義規定のあいまいさを残したままで所持を処罰し、さらに、自己の性的好奇心を満たす目的という主観的要件を課すことになれば捜査機関の運用に対する不信感はぬぐい去れないし、また、これを避けようとすれば過度に抑制的な運用に陥ることにもなりかねません。真に悪質なものについては処罰されるようにしながら濫用の危険性を排除するものでなければならないと考えておりまして、こうした考え方のもとで初めて、過度に抑制的な運用に陥ることなく処罰すべき事例が適切に処罰されることになると考えております。
そういった背景で民主党案を提出しておりまして、具体的な全体の考え方については、また御質問いただければ答弁をいたします。
■丸谷委員
公明党の丸谷佳織でございます。
今回、民主党案では、法律の「児童ポルノ」という名前を「児童性行為等姿態描写物」という変更をされました。私は、これは国内外ともに誤った政治的なメッセージを与えてしまうのではないかということを懸念しております。
国際会議の場におきまして、今、現在法の公定訳というのは、チャイルドポルノグラフィーというものが使われています。最近、国際社会の中では、チャイルドポルノグラフィーにスラッシュ、そしてセクシュアル・アビューズ・イメージという形の表現になっておりますけれども、例えば、児童性行為等姿態描写物、これを国際社会で議論する際に、日本はこういった法律になりましたということで、タイトルをどのように英訳されるかわかりませんけれども、全く今まで使っていた児童ポルノというところからかけ離れてしまって、日本は何をやっているのか、後退してしまっているのではないかというイメージを与えることになるかと思いますが、いかがでしょうか。
■西村(智)委員
児童ポルノの名称の変更でございますけれども、児童ポルノに係る犯罪が被害児童に対する性的虐待行為であると冒頭申し上げました。これは委員共通の思いだと思いますが、そういう認識のもとで、児童ポルノがなぜ悪質な犯罪なのかという根拠を明らかにするために行うものであります。むしろ、児童への権利侵害行為である児童ポルノへの取り組みの必要性を強調するためのものであって、この点は強調をさせていただきたいと考えております。
個別の児童の権利擁護だけではなく、全体としての児童とか風潮といった趣旨を盛り込んで考えていこうという方向もあるようではありますが、民主党としては、あくまでも実在の児童の保護のための政策を充実させていこうという考え方でありまして、児童ポルノの名称の変更、既存の罰則の引き上げ、そして、ここは重要なところだと思いますが、被害児童の保護の充実など、すべてこのような考え方に基づいて改正案を提出しているところであります。
また、国際的にも、先ほど委員おっしゃったように、セクシュアル・アビューズ・イメージズ、チャイルド・アビューズ・イメージズなどという児童虐待画像という言葉が用いられるようになってきております。この言葉は、児童ポルノが児童に対する犯罪行為を記録したものであるという現象の深刻さを反映しておりまして、また、そのことを強調するために使われる言葉です。
民主党案においては、このような国際的動向も踏まえて、定義規定の内容を正確に反映する趣旨を含めて、用語の改正、見直しを行ったものでございます。