■西村(智)委員
民主党の西村智奈美です。
きょうは、公文書管理法案の修正案を中心に質問をしたいと考えております。
多くの方々の御協力やら思いやらがいろいろ詰まったこの公文書管理法とその修正案でありますけれども、私は、率直に言って、この修正案はかなりの程度評価できるところまで来たのではないかというふうに考えております。当然のこと、積み残しの課題もいろいろあるわけですけれども、しかし、この法案ができたからといって公文書管理の課題がすべて解決するわけではなく、これからも不断の見直しが必要、不断のチェックが必要なものでありますので、そういった意味では、ようやくきょうスタートラインに立てるのかなという思いがしております。
修正案のポイントについて、それぞれ確認的にお伺いをしていきたいと思います。
まず、第一条の修正でありますけれども、「主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ」、このように文言が追加をされました。かねてより私たちは、いわゆる知る権利を情報公開及び公文書管理の中にはきちんと打ち出すべきだと主張してまいっておりますけれども、この部分については、いわゆる知る権利のことであるというふうに理解してよろしいでしょうか。
■枝野委員
御指摘の規定は、直接的には公文書の有している性格について規定をしているものでありますが、公文書に対して主権者が、国民が主体的に利用し得ると言っているということは、裏返せば、それを権利と呼ぶかどうかは立場によって、場合によっては提案者の中でも意見が違うかもしれませんが、国民の側は公の文書に対してアクセスできるものなのであるということの裏返しになっているわけですから、ある意味で知る権利を前提としているという理解をしていただいていいと私は認識をしています。
■西村(智)委員
次に、第四条でありますけれども、ここのところはいわゆる文書の作成の項目でありまして、修正の中でも非常に議論のあったところだと承知をしております。
この第四条の第一号から第五号まで項目が具体的に追加をされております。この第一号から第五号については具体的事項として列記しているものであり、そのほかの項目についても、この第四条で定めているとおり、「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう」にその他の項目についても作成しなければならないということを定めているというふうに理解してよろしいでしょうか。
■枝野委員
委員も御理解のとおり、実はここのところはなかなか難しく、つまり、すべてを列挙することは、行政の広範さ、それから多様性を考えると多分不可能であるけれども、実際に文書を作成する公務員の皆さんにとっても、あるいはそれをちゃんと記録してもらいたいという国民の立場からとっても、ある程度こういったものはちゃんと文書をつくるんですよということをできるだけ明確にしたいという中で一号から五号までを列挙いたしましたが、条文にもございますとおり、「次に掲げる事項その他の事項について」となっておりますので、この一から五の各号の規定に準じて、しっかりと必要なものは文書を作成していただく、そういう内容になっております。
■西村(智)委員
さらに、これはこの委員会の質疑の中でも論点として出てきた項目でありましたけれども、政府が何か政策決定をする際に、基礎的な調査を外部委託するケースが多々あると思います。その外部委託された調査結果は、最終報告は出てくるでしょうけれども、その本当に大もとのもととなるもとデータを取得することができずに、例えば道路計画の合理性を判断するときには、もとデータがないので問題になることが多々あったりいたしましたが、今回の法案では、この外部委託されたもとデータの取得については行政文書の定義あるいは整理でも規定をされておりません。しかし、今回の公文書管理法及び修正案の趣旨に照らせば、政府はその取得に努めるべきであるというふうに考えますが、この点、提案者はいかがお考えですか。
■枝野委員
御指摘のとおり、今回の規定の中は、修正案も含めて、取得ということについての規定はしておりません。しかしながら、外部委託して得られたデータや結論についても、それが官公庁に提出をされればそこの保持する文書になりますから、それぞれの内容に応じて管理をしていくということの中に当然入ってまいります。
そうしたときに、例えば先ほど御質問もありました四条の各号で、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程云々かんぬんを合理的に跡づけ、または検証できるように文書を作成してくださいという明文の規定がございますので、直接は適用になるわけではありませんけれども、それが重要な意思決定にかかわるデータの部分であるならば、当然役所の方に提出されるであろうし、提出された時点でしっかりと保存すべき文書の範囲に入るということが、こうした規定などから、当然に各行政官庁はしていただけるものだというふうに理解をしております。
■西村(智)委員
続いて、第六条の第二項であります。「当該行政文書ファイル等の集中管理の推進に努めなければならない。」という条文が新たにつけ加わりました。これはいわゆる中間書庫のことを指していると理解してよろしいのでしょうか。
■枝野委員
このこと自体が中間書庫をつくらなければならないというようなことを規定しているものではございません。実際に中間書庫をつくるとすれば、どこに、どういう形で、どういうルールでという詳細を決めなければなりませんが、しかしながら、中間書庫を必要とするということの物の考え方のベースとこの規定の物の考え方のベース、つまり、ファイル等の集中管理をしていかないと、それらをさらに廃棄するのか、公文書館に移すのかとか、そういう整理を含めて、いろいろなことの管理がうまくいかないだろう、だから、できるだけ一カ所に集めて集中管理した方がいいという物の考え方の中からは、それが物理的にも一カ所に集めた方が機能的、効率的であるし、その場所が十分に確保される等ということがあれば、この規定の中からでも、その運用において中間書庫をつくることは排除していないというふうに思いますし、なおかつ、可能であるならば、そういう方向に進んでいくことを期待している規定であるというふうに思っております。
これこそまさに、実際に運用を始めて、そうしたことの中で中間書庫という段階にどういうふうに進んでいけるのか、いくとすれば、それを改めて近い将来の法改正で行うのか、運用で行っていくのかということが、運用開始後の早い段階で多分議論をせざるを得ないというか、すべきテーマであろうというふうに理解をしております。
■西村(智)委員
続いて、第七条であります。第七条の第二項及び第十一条の第三項。
ここで、行政文書ファイル管理簿をいろいろな方法により公表しなければならないということになったわけで、この点はとかく、行政文書ファイル管理簿などがわかりにくいとか扱いにくいという指摘が多々あったところでありますので、この点については、修正は大変評価できるのではないかと考えております。
ただ、その際、やはりファイル名のわかりやすさについては同時に配慮していかなければ、せっかく管理簿を公表しても役に立つとは言えないのではないかと思っておりまして、ファイル名のわかりやすさについて配慮すべきといういろいろな方面からの指摘について、提案者のお考えはいかがでしょうか。
■枝野委員
従来の政府案でも「名称を付する」ということにはなっておりましたが、今回の修正で、そのファイル管理簿を一般の閲覧に供し、公表するということになって、一般の皆さんがそれを見て参考にするといいますか、その情報を得るということになりますから、役所の内側の人たちがその名称を見てわかりますということだけでは、この条文が入ったことによっての意味がないということになっている。つまり、情報公開等に資するために、その管理簿をごらんになる一般国民の皆さんがわかるような名称を付するんだということが、私は必然的に、この修正が入ったことによって、内閣には、各行政官庁には付されていると。
問題は、具体的にその付し方というのは、なかなかそれぞれ、いろいろな行政の種類によって、文書の種類によって、一律に決めることはできませんが、わかりやすく最大限、例えばキーワードを幾つか並べたような名称にするというような努力をするということは、これによって法的に裏づけられているというふうに理解しています。
■西村(智)委員
次に、この公文書管理全体についての課題でありますけれども、例えば、第六条について中間書庫についての検討が進むことを期待されており、また、行政文書ファイル管理簿の公表などについても取り組むなどということになりますと、全部ではありませんが一部から、公文書管理をすることは、逆に面倒だし、行政の仕事をかえって煩雑にするし、また、費用もかかっちゃうんじゃないか、こういう批判があるようであります。
しかし、本来の公文書管理というのは、それを適切に行うことで究極の行政改革にもなるわけですし、ある意味、国民の皆さんにわかりやすく政策、事務事業などの形成過程をお知らせする、見ていただくという点でいえば、まさに必要な民主主義のコストであるというふうにも考えますけれども、この点について提案者はどういう御見解でしょうか。
■上川委員
今回の公文書管理法が制定されますと、文書が作成されたところから移管、廃棄の長い時間のプロセスの中で、それぞれ、作成者から、整理をしたり、また、保存や保管をしていくというさまざまなかかわりが生じます。それを統一的、一体的に進めるという制度になっておりますので、そのことを進めることによって、逆に、行政のある意味では非効率さというものを是正する、大変大事な財産になるというふうに思います。
先ほど他の委員からの御指摘がありました、現在の体制というのは、人員面でも、また予算面でも、施設面でも、他国と比べても大変貧しい状況であるということでありますので、この文書管理の法律がしっかりと対応していくべく、そのための基盤を整備していくということをしっかりやっていけば、逆に、初期投資は高いとは思いますけれども、うまく進むことによって、その後のメンテナンスはコストがむしろ削減するというような効果も期待できるというふうに思っておりまして、そのことをこの法案が後押ししていくということにつながるというふうに思っております。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
続いて、第三十三条でありますけれども、これは、行政機関ないし独立行政法人等が組織の見直しを行う場合の行政文書等の管理についての規定であるわけですけれども、第二項で、独立行政法人等も適正な文書管理を行いなさいという対象に加わっております。
そこで、お伺いなんですけれども、第二項で言うところの、独立行政法人等が民営化等される場合の、記載されておりますところの「この法律の規定に準じた適正な管理」が行われなければならない、この「適正な管理」というのは具体的にどういうことを指しているのでしょうか。
■枝野委員
独立行政法人等が民営化等される場合にはいろいろなケースがありまして、例えば、既存の組織が廃止をされて、新組織が民間でつくられて、そこに引き継がれるというようなケースもあり得ます。
例えば、こういった場合に、組織がなくなっちゃうんだからということで、その独立行政法人が持っていた文書を全部破棄されるということでは困ります。あるいは、民営化をされますと、この法律による公文書としての管理の対象ではなくなってしまいます。そこから先、もうどう捨ててもいいんだとか、そういうことになってしまったのでは、少なくとも行政の一翼を担っていた時代の記録がそこで途切れてしまうということになっては困ります。
したがいまして、廃止をする場合であっても、そうではなくて組織引き継ぎで民営化される場合であっても、これはもう民間になるんだからということで、一たん関係する省庁にその文書を移していただくとか、あるいは、引き継ぎ民間団体においてこれはちゃんと管理をしてくださいということを決めて、そのことを引き継ぐとか、もちろん、それぞれの文書の種類と民営化の性質等によって、組織変更の形態によって、具体的なものはケース・バイ・ケースで違ってきていますが、それまで独立行政法人としてしっかりと管理をしなければいけなかったということの趣旨に照らして、必要なものはしっかりとしかるべきところに残すということをやっていただかないといけない。
この規定がないと、最初に申し上げましたとおり、組織がなくなるんだから全部捨てちゃうということは、さすがに現実にはされないとは思いますけれども、そういうことが間違ってもないようにきちっとやってくださいという規定を置いたということでございます。
■西村(智)委員
続いて、ちょっと一つ抜かしてしまいました、第八条の第二項と第四項でありますけれども、これは、廃棄について内閣総理大臣の同意を必要とするという条文であります。結果として、行政機関の長の、言ってみれば恣意性が排除されるので、大変評価できる項目だと思いますが、この立法趣旨について伺いたいと思います。
公文書管理は、当面はやはり政治のリーダーシップで行われるべきことでありますけれども、将来的に、人材育成がきちんと行われ、公文書館の位置づけももっと明確になったときには、政治的中立性に配慮してこれは行われるべき性格のものであろうと考えます。この点について提案者に伺います。
■枝野委員
御指摘のとおり、本来、公文書の管理については、専門家が専門的、中立的な観点から行うのが望ましいというふうに思います。ただ、現状では、日本の国内においてそうした専門家の方が必ずしも多くない。ですから、そこをしっかりと育てようという規定も置いております。
それと同時に、もう一つは、日本の行政システムが、現行憲法の現行解釈上、各省庁の分担管理ということで、役所ごとにルール、基準が全然違うという中で進んできておりますので、これをしっかりとどの役所においても、もちろん、行政の性質上、いろいろな違いはあるとしても、基本的な基準や考え方、ルール、ベースは一緒ですよということで、おかしな捨て方はしないでくださいねということをやるに当たっては、これは内閣総理大臣という内閣の長、首相たる内閣総理大臣のところで強い政治的リーダーシップを持って行いませんと、各役所の横並びで官の役所をつくっても指揮命令監督権がございませんから、現状までの歴史的な経緯というもの、それを、基準をしっかりと横並びさせていくという段階、そして、それが専門家が育っていくプロセスとちょうど重なってくるということで、現状においてはこういう形をとった。
できるだけ早い段階で、より中立的、専門的な機関で判断をしていくというところに進んでいければいい、これは個人的に思っております。
■西村(智)委員
続いて、附則について、二点ほど伺いたいと思います。
附則の第十三条第一項において、「行政文書及び法人文書の範囲その他の事項について検討を加え、」というふうに記載をされております。公文書管理法は行政情報公開法とやはり車の両輪であると言われますし、行政文書の定義については不断の見直しが必要と思いますけれども、ここで言うところの「行政文書及び法人文書の範囲その他の事項」は、そういったものを含むというふうに理解してよろしいでしょうか。
■枝野委員
これはもう端的、率直に申し上げますが、ここは政党間の協議の中でも、行政文書の定義の余計な限定は要らないのではないかということで、議論、意見が分かれました。
これは、私どもとしては、組織的に用いるというような限定は要らないのではないかというふうに考えておりますが、ただ、従来の情報公開法と横並びであるべきだろう、あるいは、もしこの限定を外すとしたときに、では、外すだけでいいのかとかという議論が、必ずしも各政党間で一致した結論を出せる状況ではなかったということの中で、きちっとこういうことも含めて、範囲という以上は定義も含んでいる、定義より広い概念だと思いますので、そうしたこともこれからも議論の対象として、何が行政文書としての定義、範囲としてふさわしいのかを検討していこうということで、こういう規定を置いていただいたということでございます。
■西村(智)委員
最後に一点、附則の第十三条第二項でありますけれども、いわゆる有識者最終報告で言うところの国立公文書館を特別の法人とするということに向けて、提案者はどのような形でこの検討が行われるべきであるというふうに考えていますか。
■枝野委員
国立公文書館には、行政文書だけではなくて、司法関係の文書や立法関係の文書もしっかりと保存していくということが本来の姿であるというふうに思います。
そうした場合においては、行政文書については、行政の内閣提出法案で、行政の一機関としての独立行政法人として国立公文書館が管理をするということで全然問題はないわけですけれども、これが立法関係や司法関係の文書に関与するということになると、まさに三権分立の観点から、行政の一機関が最高裁判所や国会に対して何らかの権限行使ということはできません。
そうすると、では、行政文書だけではない、司法や国会の文書をどうするのかということについての、先ほど上川提案者からもありました議論と並行しながら、そうした文書も包括して公文書の全体管理をする機関というのは、私自身は、特別の機関ということは現行憲法上も可能である、講学上は、よく中学や高校の憲法の教科書では三権分立と書いてありますけれども、大学レベルの憲法の教科書は三権分立だなんてどこにも書いていなくて、権力分立としか書いてありませんので、三権である必要はない、特別な機関として、現行憲法上も国立公文書館を置いて、そこが司法や立法についても一種中立的に文書管理をできるようなことを将来的に議論の中で合意形成ができていけばいいな、こんなふうに思っております。
■西村(智)委員
ありがとうございました。 時間ですので、終わります。