■西村(智)委員
民主党の西村智奈美です。
一昨年の臨時国会で被災者生活再建支援法が改正をされ、かなり支援対象の幅も広がって、使い勝手もよくなった。加えて言えば、その年に発災をした地震についても遡及をするということで、大変効果のあった改正だというふうに感じております。
しかし一方で、被災者生活再建支援法の運用については、被害認定基準運用指針というものにのっとって被災自治体などが被害認定を行っているわけでありまして、被災者生活再建支援法の見直しとあわせて、この被害認定基準運用指針、これをもあわせて見直していかなければならないのではないかということは、この委員会の中でも多くの委員から指摘があったことだと思います。
その後、約一年半過ぎました。私も昨年の四月の二十二日にこの災害特で質問をさせていただきましたときに、実は、前回の法改正のときに附帯決議がついておりまして、その第二番目の項目でこういうふうに書かれています。浸水被害及び地震被害の特性にかんがみ、適切な運用が確保されるよう検討を加えるというふうに記載をされておりまして、当時の泉防災担当大臣は、より実態に近くすべきだという認識を述べてくださった上で、本格的な運用指針の見直しについてはもう少し時間をいただきたいというふうに答弁をいただいておりました。その後、検討会が設置されたようでありまして、この運用指針の見直しについては検討が進んでいる、これは大変結構なことだと歓迎をいたします。
さてそこで、その中身といいますか、その方向性についてきょうは幾つかお伺いをしたいと思っておりますけれども、まずその前提といたしまして、今回のこの検討会のスケジュール、これはどんなふうになっているのか、今後どういうスケジュールでこの見直しがまとめられていこうとしているのか、その点からまず伺いたいと思います。
■大森政府参考人(内閣府政策統括官)
先ほど先生御指摘になりました附帯決議の内容であるとか、また、さまざまな委員会等で御指摘をいただいております。これらの御指摘を踏まえまして、昨年の十月に学識経験者等により構成する検討会を設置し、検討を進めてまいりました。本年の三月には第二回の検討会を開催し、被害認定の調査、また判定方法の見直しについて御議論をいただいたところでございます。
現在、引き続き検討を進めているところでございますが、検討結果についてパブリックコメントも実施した上で、本年の六月ごろに第三回の検討会を開催し、議論の取りまとめを行いたいというように考えているところでございます。
■西村(智)委員
そこで、具体的な内容といいますか方向について伺いたいと思います。
私も、何度か地元の県で災害がありまして、現場を見るたびに、被災された皆さんの混乱、そして、それに対応しなければならない窓口の方の混乱を見てまいりました。この罹災証明を発行するための手続が、もう少し簡略化といいますか、応急危険度判定から罹災証明の発行までが一連の流れとして行われる、しかしそのときには、迅速性はもちろんなんだけれども的確性もきちんと考慮しなければならない、そういう仕組みを検討すべきではないかという質問をしたことがありますけれども、この点についてはこの検討会でどういうふうに検討されておられるのでしょうか。この点を伺います。
■大森政府参考人
先ほど申し上げましたように、まだこれは検討中の事項でございまして、今後、最終的な六月までにはいろいろな紆余曲折があるのではないかと思いますけれども、現在の検討している状況を申し上げますと、先ほど先生御指摘の応急危険度判定との連携でございます。これも一つの項目に挙げさせていただいておりまして、我々の被害認定調査の方針を決める際に応急危険度判定の判定結果を参考にすることができる旨を明記するなど、そういった連携についてより明確にあらわしていければというように考えているところでございます。
■西村(智)委員
続いてもう二点、今度はちょっと時間の関係もありますので、ぱっぱと伺っていきたいと思いますけれども、やはり、一度認定を受けた後で新たな被害の実態が明らかになる場合というのがあります。そこで、住民の方からは再調査を希望する声があったかと思いますけれども、今回の検討会では、この再調査の実施については、検討項目として盛り込まれているのでしょうか。また、再調査が行われるというときには、その必要、不必要を判断する基準というようなものを明確にすべきだというふうに考えますけれども、この点、いかがでしょうか。
■大森政府参考人
まず、再調査の実施についても、検討会の中では検討対象とさせていただいております。具体的な調査の実施の後、被災者から判定結果に不服があった場合には、市町村は、当該被災者の不服の内容を精査し、再調査が必要と認められる点があれば、その点について再調査を行い、これに基づく結果を理由とともに被災者に示すというような形で、今考えさせていただいているところでございます。
■西村(智)委員
次に、個人の宅地が被害を受けたときなんですけれども、個人の宅地に公共的な支援を行うということについては、中越沖地震のときにもかなり、問題は生じている、被害は生じているんだけれども、なかなか被災者生活再建支援法の枠の中では難しいということで、これはたしか国土交通省の基盤整備事業の一種を使って支援を行っていただいたと記憶をしておるんです。今回の検討会では、こうした個人の宅地における地盤被害への対応、これも可能になる方向で検討されているのでしょうか。
■大森政府参考人
さまざまな指摘の中に地盤被害に対する指摘が多く見られたのは事実でございます。したがいまして、我々、公共団体のアンケートなどにもそういう地盤被害の問題点もまたあわせて出てきているというようなこともあって、この地盤被害についてどのように対応するかというのは大きな課題の一つとして検討会で取り上げてまいりました。
そういう意味では、全壊と判定できるような場合、今までは一定の制約をもって、一定の条件でもってやっておりましたけれども、それ以外にも一見して全壊と認められるような例があるのではないか、そのような基準がつくれないだろうかというようなことを今考えておりますし、また、その他の地盤の損傷について、適宜この基準の中に盛り込めないであろうかというようなことで議論をさせていただいているところでございます。
■西村(智)委員
そこはぜひ期待したい点の一つでございます。
もう一つ、今回の運用指針の見直しに当たってぜひ盛り込んでいただきたいと申しますか、泉大臣も当時、本当に認識を深めていただいていたと思いますけれども、水害についての被害認定の件です。
これは、我が党の寺田学議員が災害特、この委員会でも指摘をしておりましたけれども、水害についての被害認定は、各部位ごとの構成割合を全部足し合わせても七〇%にしかなっておらず、しかも、損傷程度の数字も地震と比べると非常に低いということで、この点についても実態に合わせた見直しが必要ではないかというふうに主張がありました。私たちもしてまいりました。今回の検討会では、この水害の被害認定についてはどういう見直し方向になっておりますか。
■大森政府参考人
従来、水害の場合には、今御指摘のように浸水で七〇%、そして、水圧がかかった場合は、そちらを地震の方で見ていただいてトータル一〇〇%まであり得るというようなことでございましたけれども、そこは非常にわかりづらいというようなこともありまして、地震に対して非常に厳しくこの基準ができているのではないかというようなことが多く議論をされました。
我々も、そういう御指摘を踏まえまして、現在のところ、水害によって柱また基礎についても損傷が生じた場合、部位別構成比の合計は地震と同じ一〇〇%とするというような形で、水害という項目を設け、部位別構成比を合わせるとトータル一〇〇%になるように、そういったカテゴリーを設けて整理をするというような方向で議論させていただいているところでございます。
■西村(智)委員
水圧と浸水と今まで分かれていて、水圧の方は地震と同じ基準を適用していたので、言ってみれば、今のカテゴリーでいうところの水害でも、例えば全壊というようなこともあり得たという今の御説明だったと思います。
実際に私も、また地元の県の話で恐縮ですけれども、二〇〇四年に三条市というところで水害が発生して、川が決壊して、本当に多くの世帯が水浸しになったときに、あのとき、たしか全壊世帯という認定を受けたところはなかったんです。しかし、私が聞いているところでは、もうとても住めない、泥が床にまで入ってきて、床を全部はがしてしまった、壁も柱も損傷が大変ひどくて建て直した、結果としてそういうことになっているお宅が大変多いというふうに承知をしています。
そうしますと、今回の検討会の結果によって、今参考人から答弁いただいた方向で進んでいくとすれば、今まででいうと水圧と浸水とあったわけですけれども、浸水被害しか受けなかったところも今後は全壊となる可能性が高まる、全壊とか大規模半壊とかありますけれども、要するに、被災者生活再建支援法の適用対象となる可能性は今までと比べると高まる、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
■大森政府参考人
お答えをいたします。
先ほど申し上げたものにつきましては、従来から水害に関しても、浸水で七〇%、そして水圧で崩壊した場合には三〇%見られるということで、トータル一〇〇%というのは変わらない。それをわかりやすく、地震、水害という形でカテゴリーを分けたということでございます。
しかしながら、もう一つ申し上げたいと思いますが、水害の場合、よくある被災内容の一つとして、先ほどおっしゃられました悪臭であるとかカビであるとか、そういう問題がございます。その悪臭であるとかカビであるというのが今まで必ずしも明確ではなかったということがございまして、今回、この悪臭、カビの点についても検討項目の中に入れております。浸水した住家の悪臭、カビの原因となるような被害を損害割合として算定するということで、例えば、申し上げますと、基礎に汚泥が堆積する被害が生じた場合には基礎及び床の損傷として取り扱う。基礎に汚泥が堆積するとそれが悪臭の原因になったりしますから、そういう意味で、基礎、床の損傷として取り扱うというのが一つございます。
それから、壁の内部に浸水する被害が生じた場合、これも悪臭、カビの要因となるわけですが、そういった被害が生じた場合には内壁及び耐力壁の損傷として取り扱うというようなことで、悪臭、カビの大きな要因を損傷割合として見ることによって、より適切な被害認定ができるのではないかというように考えているところでございます。
■西村(智)委員
悪臭なども検討項目に入っているということでしたら、ぜひその検討会のスムーズな議論を期待したいと思っております。
大臣にお伺いをいたします。
先日お伺いした所信の中でも、この運用指針の適切な見直しと申しますか、取り組んでいきたい、そういう所信がありましたけれども、大臣としては、この検討会での議論を含めて、被災者生活再建支援法の運用についてどういう方向で取り組んでいこうと決意されておられるのか、そこを伺いたいと思います。
■佐藤国務大臣(防災担当)
被害者認定を実施したことのある市町村を対象としたアンケート等を実施いたしまして、住宅被害認定に関する課題を抽出したり、水害等の被害実態を適切に反映でき、より的確な調査が可能となるような被害認定の調査、判定方法の検討を行っているところでございまして、被害の実態に即した適切な認定が可能になるよう、検討会の議論を踏まえまして、先ほど統括官がいろいろ細かいお話をしたところ等々も、よく先生方の御意見を反映できるような、住宅被害認定に関する課題をできるだけ改善していきたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
ぜひよろしくお願いをいたします。ありがとうございます。
それでは続きまして、先ほど黄川田委員からも少し触れられました防災行政無線のことについて、少しばかり伺いたいと思います。
今の住民に対する災害についての情報の伝達というのは、国で設置している仕組みでいうと中央防災無線があって、そして都道府県の防災行政無線があって、市町村の防災行政無線がある、こういう仕組みというかつくりになっているというふうに承知をいたしますけれども、この防災行政無線について、実は、市町村防災行政無線ですが、この間、整備が余り進んでいないという実態があるようでございます。あるようでございますと申し上げるのは、その実態が、実はかなり市町村任せになっているといいますか、市町村で独自に判断していただくということなどもあったりして、実態が非常にわかりにくいということもあるんです。
まず一点伺いたいのは、この市町村防災行政無線は、平成二十年三月三十一日現在で、各都道府県別で見たとき、全国の整備率が七五・五%というふうに防災白書にあります。この整備率なんですけれども、まず、そもそものところから伺いたいんですが、この整備率というものの定義は何でしょうか。もっと細かく言いますと、整備率は全市町村数分の整備市町村数ということになっております。整備市町村というものの定義は何なのか、まずそこから教えていただきたいと思います。
■幸田政府参考人(消防庁国民保護・防災部長)
整備率は市町村の数ではかっております。全国の市町村の数の中で、防災行政無線を整備している市町村の割合が七五・五%ということでございます。
■西村(智)委員
いや、整備市町村というのはどういう市町村のことを言うんですか。
■幸田政府参考人
市町村が防災行政無線を整備する場合には、全域に整備している場合と、場合によっては一部の地域だけ整備している場合がございます。
整備している市町村というのは、その市町村の中で一部のみ整備している場合も、整備の市町村としてカウントをしているところでございます。
■西村(智)委員
つまり、例えば同報系のスピーカーが一本立っている、それも大きな町の中で一本立っているというのも、町として設置していますということであれば、それは整備市町村に含まれるということでよろしいですね。うなずいていらっしゃいますので、そういうことです。
それが本当に整備市町村と言えるのかどうか。そして、それをベースにして全国の整備率が七五・五%ですとおっしゃっておられるわけでありますけれども、これは非常にアバウトなデータのとり方だなと思います。こちらの委員席の方からは失笑が漏れておりましたけれども。
そこで、次に伺いたいのは、新潟県中越地震のときに、電源が入っていないということで防災行政無線が使えなかったということがありました。そのときに私も質問しましたが、当時、二〇〇四年の十一月でしたけれども、そのときに市町村防災行政無線の整備率、この整備率の整備が、先ほどお聞きいただいたように大変怪しいものなんですけれども、いずれにしても、その整備率があるとすれば、それは六七・八%であった。現在は七五・五%ということなんですけれども、これはなぜふえていかないんですか。この間、いろいろな災害がありましたね。もう本当に、地震に、台風に、水害に、竜巻にといろいろありましたけれども、この整備率がふえていない理由について伺います。
■幸田政府参考人
防災行政無線につきましては、総務省消防庁といたしましても、防災基盤整備事業と位置づけて財政支援措置を講じているところでございますけれども、市町村におきましては、防災行政無線を整備するに際して財政的な費用がかかるということ等から、その整備がおくれているところがあるということでございます。
今委員御指摘のように、現在七五・五%、これは先ほどお話ございましたように市町村単位でございますけれども、市町村の方で現在そういう数字になっておりますが、一層その整備が進みますよう、取り組んでまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
ちょっと確認したいんですけれども、二〇〇四年に質問したときに、市町村の防災行政無線の整備については補助金対象だという答弁をいただいておりますけれども、これは現在もそうですか。補助金制度は続いているか、それとも、もう交付税措置だけになってしまっているのか、伺います。
■幸田政府参考人
現在は、防災行政無線につきましては、先ほど申し上げましたように、地方債と普通交付税措置を組み合わせました防災基盤整備事業による財政支援措置を行っているところでございまして、補助金の対象とはなっておりません。
■西村(智)委員
市町村防災行政無線ですけれども、広がっていかない、なかなか整備率、「整備」とかぎ括弧をつけたいくらいなんですけれども、整備率がふえていかないことの理由は、市町村にとってかなりこれが高額なのではないかという指摘があります。システムの整備とその運営に割と高額がかかるということで進んでいかないのではないかというふうにとらえられているんです。
私は、自治体の住民に対する情報の伝達というのは、先ほども議論で出てまいりましたけれども、やはり市町村が独自の、例えば地形の状況ですとか、住民の密集度の状況ですとか、そういったものを判断して、それぞれに適切な、合ったやり方で進めていくのがやり方であろうと。国が、一律これでいきなさいというふうにはなかなか言えないわけであります。しかし、こうやって、助成対象として市町村の防災行政無線の整備を促進してくださいというふうに制度を設けていながら、この災害が多かった数年間においても整備率がほとんど上昇していないということは、やはり情報伝達手段についてはここで見直しをすべきではないかというふうに考えているんです。
ほかの制度で代替してやられているというのであれば、それはそれで大変結構なことだと思いますけれども、きのうも伺いましたが、役所の方ではそれは把握をしていないというようなことでありましたし、国としては市町村防災行政無線の設置をただ一生懸命市町村に働きかけをしていくという答弁があっただけでして、しかし、進んでいないという現状をどうとらえて、今後どう進めていこうとしているのか、その点について、やはりここはしっかりと考え直すべき時期ではないかというふうに思うんですけれども、この点についての見解を伺います。
■幸田政府参考人
今委員お話ございましたように、いろいろ活用できる方法、手段があるのではないかということで、財政的な理由により防災行政無線の早期な整備が困難な場合につきまして、自治体の方が、安価な代替手段として、MCAの陸上移動通信システムを活用するということもできるわけでございまして、こちらを活用する場合につきましても、防災基盤整備事業の対象として財政支援措置を講じているところでございます。
また、インターネットあるいはケーブルテレビ等についても、地域住民に伝達する手段の一つとして活用できるものだというふうに考えております。この点につきましては、総務省として、地方公共団体が行いますインターネットあるいはケーブルテレビ等の整備について、地域情報通信基盤整備推進交付金という形で支援を行っているところでございます。
■西村(智)委員
直接的な答弁はいただけなかったかと思いますけれども、私は、やはり市町村がもっと選択の幅を持って、より確実で、より双方向な情報の収集と伝達ができる、そういう仕組みに、国としても少し頭の中を切りかえていくべきではないかというふうに考えます。
そのことを指摘して、時間になりましたので、質問を終わります。