■西村(智)委員
民主党の西村智奈美です。どうぞよろしくお願いいたします。
中国の四川省の大地震とミャンマーでのサイクロン被害には本当に心を痛めておりまして、民主党の中でも災害対策本部を設置いたしました。また、私は、民主党の党内のNGO海外活動推進議員連盟というところの事務局長を務めておりまして、この災害対策本部とその議連と二つでヒアリングをしてくる中で、やはり人道的な問題であるので、この二つの災害についてはNGOの方から積極的に支援を行っていきたい、そういう強い要望がございました。
外務省の方でも、ここのところNGOとのパートナーシップという言葉が非常に頻繁に聞かれるようになってまいりまして、喜ばしいことだとは思うのですが、しかし、日本の中では、例えばアメリカのようなNGO、NPOに対する寄附文化というのはなかなか醸成されておりません。また、欧米諸国などでは、政府からNGOに対して財政支援を非常に大きな額、大きな割合で行っているんですけれども、それに比べて、日本政府からのNGOに対する支援は本当にわずかなものだと。(発言する者あり)ありがとうございます。結果として、スタッフの数も非常に少ない。
いろいろな方々のお話を伺うと、日本のNGOは海外で非常にいい活動をしていると聞いています。欧米のNGOなどは、大きな財政力と人員をもってどんと現地に出ていって、それで打ち上げ花火もちゃんと上げるんですけれども、日本というのは、そういうやり方というよりは、むしろじっくりとその地域社会に入っていって、地域の人たちとの信頼関係を得ながら、こつこつと持続的な活動を行っているということなんです。
私も、こういった話を聞きながら、やはり日本政府として、もちろん、民間資金の流入というのはNPO法の改正などでもっともっと促していかなければならないことだと思っておりますけれども、現時点では、やはりNGOに対する政府からの資金協力、これは大変必要なのではないかというふうに考えております。
今回、私もいろいろ調べまして、このNGO連携無償資金協力ですか、これの中で、緊急人道支援という項目がありました。この枠組みに沿って多くのNGOは政府からの資金協力を要請してくると思われますけれども、かなり要件が厳しいのです。限度額は一億円とし、そして二千万円を超えるものは、事業費総額の八〇%か二千万円のいずれか高い方の金額を上限としますということですから、これは結局二千万円が上限ということなんですかね。そしてまた、事業期間も六カ月以内であるということでありました。
今回は、非常に大きな災害でございます。前回のインド洋のスマトラ沖の津波のときも、それからパキスタンの大地震のときも、民主党の災害対策本部から政府に、この件について中長期的な支援ができるように改善すべきだというふうに要請をしてまいりましたけれども、この点、なかなか改善をされていないようであります。今回は、非常に大きな災害である、しかも人道支援が求められるというところから、この限度額の枠を取り除いたり、あるいは期間を延長したりするなどして、中長期的に活動が行えるように支援をしていくことが必要だと考えますが、見解を伺います。
■別所政府参考人(外務省国際協力局長)
お答え申し上げます。
日本のNGOについて、非常にいい仕事をしているのではないかというお話でございますが、私どももそのように思っておりますし、さらに力をつけていただきたいと思っております。
私どもの日本NGO連携無償資金協力の予算規模とかそういうことにつきましては、まだまだ限られているわけでございまして、その中でどういうことができるかということはあるわけでございますけれども、許容上限額の緩和とか、中長期的な支援を可能にするとか、そういったことはぜひ今後とも進めていくように努力してまいりたいと思っております。
特定の災害に際してどうだというだけではなくて、より中長期的な視野を持って、より柔軟な、積極的な活動をしていただけるように、また、より力をつけていただけるように、私どもとしても支援、協力、連携していきたいと思っております。
■西村(智)委員
ちょっと大臣の見解を伺いたいと思います。
今の局長の答弁、中長期的にできるように努力をしていきたいということなんですけれども、大臣のお考えはいかがですか。
■高村国務大臣
日本NGO連携無償資金協力では、緊急人道支援や保健分野などの人間の安全保障の理念が強く反映されている分野においては、一億円までを限度として供与することが可能となっているわけであります。
また、予算については単年度主義が原則ですが、まさに事業を複数年にわたり切れ目なく行うような仕組みに、本年度、改善をしたところでございます。
日本NGO連携無償資金協力の制度については、NGO・外務省定期協議会などの場を通じて、NGOからの提案も踏まえて改善の努力を行ってきているところでございますが、今後ともそうした努力を継続していきたい、こう思っております。先ほど政府参考人が述べたような方向で努力をしていきたいと思っております。
■西村(智)委員
ぜひ大臣もそうしたNGOの方々と直接意見交換をしていただいて、一体この政府の資金協力の要件でどこが厳しいのか、そして、中長期的なプランの中で活動していくことがどれだけ必要なのかということをぜひ御理解いただきたいと思います。
今回のことでも懸念をされるのは、例えば、子供たちだけではないんですが、被災者の方々の精神的なトラブル、トラウマなどの問題です。短期的に六カ月だけでこの緊急人道支援が終わるわけはないと思っておりますので、ぜひその点は改善をしてくださるように強く要請をいたします。
続いて、ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、これは他国政府のことになるんですが、ミャンマー政府が先ごろ、緊急支援の時期は過ぎた、これからは復旧復興の時期に入ったのだという声明を出しているようです。日本の政府の枠組みの中では緊急人道支援、またJICAの草の根パートナー型の枠組みということで支援を行っていくことになるのでしょうか。
この緊急という言葉の認識について伺いたいと思うんですけれども、ミャンマー政府の緊急支援の時期を過ぎたという宣言を受けて、日本政府の、日本のNGOに対する緊急支援の資金協力、これも考え方が変わっていくのでしょうか。それとも、そうではないということなのでしょうか。確認をさせてください。
■高村国務大臣
五月二十五日にヤンゴンにおきまして開催されたサイクロン被害に関する支援国会合において、おっしゃるように、テイン・セイン・ミャンマー首相が、現在、緊急支援の第一フェーズから復旧復興の第二フェーズへ移行したと述べた、それはそのとおりでございます。
他方で、ミャンマー政府は、同会合の後においても、食料や医療等といった緊急性の高い分野における国際社会からの支援を受け入れております。我が国の国際緊急援助隊医療チームも、現在被災地で活動をしております。今後とも引き続き、人道上緊急性の高いと思われる分野への支援については、現地のニーズに応じて検討してまいる所存でございます。
緊急人道支援の実績を多く持つ多くのNGOがジャパン・プラットフォームに加入しており、ODA資金を活用してサイクロン被害に関する支援事業を現在も実施しているわけであります。また、ジャパン・プラットフォームに参加していない団体でも、日本NGO連携無償を活用することが可能であります。
ミャンマー政府が復旧復興の第二フェーズへ移行したと述べたことと、日本が緊急支援をするということと、そこは必ずしもミャンマー政府の考え方に拘束されるわけではないし、それからミャンマー政府自体も、そう言いつつ、やはり緊急支援として受け入れている、こういうことに理解をしております。
■西村(智)委員
日本政府の主体的な判断によってNGOに対する緊急人道支援の資金協力はこれからも行っていくということを確認させていただきました。
しかし、冒頭も申し上げたんですけれども、この日本のNGOと申しますか、市民社会と申しますか、そこをどう育てていくのかという発想に立ったときに、やはり私は、今の外務省のサポート体制はいろいろ改善すべき点があるのではないかというふうに考えております。
一つ、中身のことで、これは政府参考人の方からお答えをいただきたいんですけれども、JICAの草の根パートナー型資金協力の枠組みですね。これは実績や経験のあるところが対象になっていると伺っております。私は、例えば、一つの団体が長らく政府の資金協力に依存し続けるのも、それはまたそれで問題があって、やはり呼び水として最初のころの資金協力は必要だろう、しかし、その後は自立していってほしいというふうに思います。
この草の根パートナー型というのは、もともと実績や経験があるところを対象にしておりますので、一団体が繰り返しこの枠組みで資金協力を得ていくことは妨げられるものではないと思いますけれども、そこは確認をさせていただいてよろしいでしょうか。
もう一つ、大臣の見解を伺いたいと思うんですけれども、やはりNGOとのパートナーシップというのは、これは日本だけではなくて国際的に言われていることであります。今は大体どこの国際会議に行っても、政府とNGOが互いに連携をし合いながら会議への参加協力をしているということなんですね。先日横浜で開かれましたTICADでも、NGOとの連携というのが一つ課題ではあったわけなんですけれども、そうしたパートナーシップについての認識は外務省の中でも深まっているというふうに考えるんです。
この後、この連携をもっと進めていくために資金協力の仕組みというのがどうあるべきだと、どう進めていくべきだというふうに大臣がお考えになっているのか、この二点を伺います。
■別所政府参考人
JICAの具体的な制度についての御質問がございましたけれども、もちろん、税金を使っていただく以上、それなりのしっかりした団体で、きちんとした仕事をしていただくように私どもとしてはお願いしたいと思っているわけでございまして、そういうことからも過去の経験といったことも言うわけではございますけれども、今の具体的な御質問で、繰り返しというのはいいのかということについては、それは大丈夫でございます。
私ども、そういったNGOの方々がしっかりとした、例えば会計処理ができるかとか、案件形成ができるかといったことについていろいろ経験を積んでいただく、あるいはそのやり方、例えばほかの国際NGOから学んでいただくといったことについても支援をするという形で、ここ何年間か努力しているところでございます。
■高村国務大臣
NGOによる国際協力活動は、現地の状況に応じたきめの細かい援助や、迅速かつ柔軟な緊急人道支援活動の実施という観点から、極めて重要だと考えているところでございます。
このような考え方に基づいて、外務省は従来から、我が国NGOとの連携を推進すべく、我が国NGOが途上国で実施する事業への資金提供、また我が国NGOの能力強化策を実施してきたところでございます。
また外務省は、我が国NGOを国際競争力を有するNGOに育成するとの観点から、平成十八年にNGOとの連携強化に向けた五カ年計画を策定し、その一環として、平成十九年からNGOスタッフの海外実務者研修などを新たな事業として実施しているところでございます。
これらの施策の推進により、我が国NGOが競争力を培い、国際協力の重要なパートナーとして一層活躍することを期待しているわけであります。これからも重要なパートナーとしてやっていきたいと考えているところでございます。
■西村(智)委員
次の質問に移ります。
子どもの権利条約の第三回政府報告がようやくこの四月に出されました。今回の第三回政府報告、提出が非常におくれたのではないかと思っております。
この政府報告は、子どもの権利委員会からも、提出の際にはNGOとの連携をきちんととって、その上で提出しなさいということになっているわけなんですけれども、今回の政府報告がこれほどおくれた理由は一体何でしょうか。
■梅本政府参考人(外務省大臣官房審議官)
お答え申し上げます。
本件政府報告の作成の過程におきましては、関係する府省庁が多数にわたっております。また、報告内容も広範な分野にわたっておりまして、包括的で、作業に時間を要したということがございます。
また、項目ごとに関係省庁と和文及び英文について調整する必要があったということで、時間を要した次第でございます。
また、特に今回は、本条約の報告に加えまして、第二回報告提出以降に我が国が締結をいたしました同条約に係る二つの選択議定書、つまり、武力紛争選択議定書及び児童の売買選択議定書についての第一回政府報告を同時に提出すべく作業を進めたということで、作業が増大した結果、提出期限を遅延する結果となりました。
若干言いわけがましいようなことになろうかと思いますが、実は、ドイツ、イタリア、カナダ、イギリス、フランス等の主要国においても、報告の提出というのが何年か遅延をしております。これは、児童の権利条約を含めまして主要国際人権条約がそれぞれ定期的な報告の提出を義務づけているということで、恒常的な作業がある。そこで、この作業負担をどうするかということが締約国各国の共通の課題となっておりまして、この合理化についてもいろいろな議論が行われているということで、私どもとしては、このような報告をできるだけ早く提出するということを努力するとともに、報告及び審査の合理化についても、国際的な議論に積極的に参加をしていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
■西村(智)委員
言いわけがましいとおっしゃいましたけれども、まさしく言いわけですよ。それは、他の人も遅刻しているから自分も遅刻していいんだというのと同じ理屈ですよね。そういうのは、あってはならない言いわけだと思います。
今回の政府報告の提出がおくれたことですけれども、先ほどいろいろおっしゃったのは、率直に言って、理由になっていないと私は思います。本当に作業が膨大で大変だというんだったら、NGOとの意見交換会が終わってから二年間も時間がたつなんていうことはないわけじゃないですか。NGOとの意見交換会をやって、二年も待たされたというのは、これは別の事情があったというふうに見なければならないと思っております。
次の質問は、子どもの権利委員会からの勧告に対しての政府報告ということになっているわけなんですけれども、いろいろな勧告が出されております。勧告といいますか、いろいろな懸念を表明されたりしているものですね。これについては、きちんと答えたものになっているというふうに外務省は認識しておられるんですか。簡潔に答弁ください。
■小野寺副大臣
政府報告の作成に当たりましては、外務省から関係各省に対して、児童の権利委員会から提出された最終見解を十分に踏まえて、また、その後の進展を含めて記載するように依頼をしております。
御指摘の最終見解はさまざまな項目にわたっており、我が国がとってきた個々の施策についてお答えすることは困難ですが、前回の審査以降、例えば児童虐待防止に資する法改正や施策等、進展があった部分が反映されたものとなっていると理解をしております。
■西村(智)委員
前回より前進をした部分は、確かに児童虐待の部分などあると思います。しかし、やはり基本的な子供の市民的な権利、社会的な権利、そこをどう守るかということについては、残念ながら、これはほとんど前進が見られない。
例えば婚外子に対する差別でございます。これは子どもの権利委員会からも法改正そのものを求められている。その中身も、婚外子という差別用語を何とかしろというふうに勧告をされているわけですね。
念のために申し上げておきますけれども、私自身は法律婚を尊重する立場です。ですけれども、生まれた子供一人一人には何の差別もあってはならないというふうに思うわけでして、今回、前進をした点もあったということなんですけれども、この婚外子差別については今後どういうことで政府の方は対応していこうとされるのか、特にこの点は法務省に伺いたいと思います。
一昨日、国籍法の違憲判決も出されて、昨日午前中、参議院の委員会で国籍法の見直しを言明されましたけれども、しかし、問題は国籍法に限ったことではなくて、これは婚外子差別全体に関してのことであります。その点で答弁をお願いします。
■倉吉政府参考人(法務省民事局長)
最高裁の大法廷判決、国籍法三条一項が違憲であるという判決を受けまして、厳粛に受けとめております。
その点に関しては、今御指摘のとおり、国籍法の改正を含めて検討しなければならないということで、国籍法の改正を念頭に置いて検討を進めているところでございます。
それで、今の御指摘の点は、嫡出でない子についての、むしろ民法の規定についての取り扱いということであろうかと思います。
御指摘の点、よくわかりまして、特に民法の関係、法務省の民事局が所管しております民法の関係では、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分に対して二分の一になっているというところが問題にされているところでございます。
その点がいろいろな御指摘を受けているということはよく承知しているところでございますが、実は平成十八年にこの相続分について世論調査の結果が出ました。それによりますと、相続できる金額を嫡出である子と同じにすべきであるという意見が全体の二四・五%であったのに対し、現在の制度を変えない方がよいとする意見が全体の四一・一%を占めている、こういう結果も出たところでございます。
相続分の見直しについて、現在、委員の御指摘はよくわかるわけでありますけれども、大方の国民の御理解を得ることができるような状況には今はないのかなと言わざるを得ない。そこで、法務省としては、引き続き国民の意見の動向、それから各界の意見等を注視していきながら見守っていきたい、こう思っているところでございます。
■西村(智)委員
法務省が時々引用される国民に対する世論調査の結果ですけれども、今この場で聞いた方々は、ああ、そうかと思うんですよ。ところが、データの分析の仕方によっては違う結果が出ることもあるということを、私はここで強く申し上げておきます。
別の点、選択的夫婦別姓の問題で同様のことがありましたので、今の数字を私はそのまま受けることはできないということだけ申し上げて、ここは外務委員会ですので、外務省の方にもう一回、この点について伺いたいと思うんです。
今回の政府報告には、前進した部分も少しはあった。だけれども、まだ未到達の部分が多い。やはり今後この条約をどうやって実施していくかということにもっと傾注をしていただきたい、力を注いでいただきたいと思うんです。そのために、これまで熱心に取り組んできたNGOなど、いろいろな団体があります。そうしたNGOときちんとした話し合いの場をつくっていくべきではないかと考えますが、この点、いかがでしょうか。
■梅本政府参考人
児童の権利条約の実施に当たりましては、児童をめぐる問題に関心を有する現場の方々の声を聞くことが重要であるというふうに私どもも思っております。また、人権分野に関心を有するNGO関係者によるさまざまな活動の重要性というのも、私どもは十分認識をしているつもりでございます。
このような観点から、条約の履行に当たりましては、NGOを初めとする各方面の御意見をいかに生かしていくことができるのかということで、よく検討して工夫をしていきたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
ぜひやってください。お願いいたします。
最後に、障害のある人の権利に関する条約について伺いたいと思います。
二〇〇六年の年末に国連総会で採択されて、日本政府も二〇〇七年、去年の九月二十八日にこれは署名をしているわけです。今後、国内法の整備をして締結ということになるわけですが、特に注意をしていただきたいのは、条約上の法的義務の最低限の部分だけを形式的に履行して、その必要な限りで国内法令を変更するというのではなくて、積極的にここは国内法の整備を図っていただきたいという思いでいるんです。
これは主にほかの省庁にゆだねられる部分が多いとは思うんですけれども、その前提となるのがこの障害のある人の権利に関する条約でありまして、また、この実践ということになると、もともとこれは英文ですので、日本語にして、広くみんなから見てもらって、今後、国内法の整備にみんなで取り組んでいこうということになってくるわけです。
ところが、その政府仮訳が、これはどうかな、おかしいんじゃないかなと、条約の訳文などは余りやったことがない私などが見ても思うことがありますので、ざっと伺っていきたいと思います。
まず一つ目なんですが、タイトルです。パーソンズ・ウイズ・ディスアビリティーズが「障害者」と訳されていますが、後に出てくる文言で、ウイメン・アンド・ガールズ・ウイズ・ディスアビリティーズとチルドレン・ウイズ・ディスアビリティーズがそれぞれ「障害のある女子」「障害のある児童」と訳されていますので、このタイトルは、障害のある人の権利に関する条約とすべきだと思います。
第二点目、パーソンズ・ウイズ・インペアメンツというのが前文で出てきます。これも「障害者」と訳されています。パーソンズ・ウイズ・ディスアビリティーズも「障害者」と訳されていて、つまり、障害者に対応する英語が二つあるわけですね。これはどっちなんでしょうか。インペアメンツの方は機能障害のある人というふうに訳すべきだと思います。
三つ目、インクルージョンについてです。「受け入れられること」となっていますけれども、これは違うと思います。インクルージョンというのは、差別の禁止に加えてポジティブアクションを措置することだと思いますので、これはそういうふうに書くべきだと思います。
四つ目、インテグリティー、第十七条です。これは不可侵性なんですけれども、「健全であること」などというへんてこな訳になっています。ここのところは全く逆に解釈されるおそれがありますので、改めるべきだと思います。
こういうふうに訳語はなっておりますけれども、これはやはりホームページに出ているものを改めてほしいと思うんです。改めるべき必要な手続をとってほしいと思うんですけれども、まず政府参考人の答弁を伺って、その後、大臣にこのことについての見解を伺いたいと思います。
■梅本政府参考人
ただいまこの条約の仮訳文につきまして、いろいろと御意見を賜りました。
この条約の仮訳文につきましては、本条約が障害者の人権及び基本的自由の完全な実現を確保し、促進する上で重要な意義を有していることを十分に踏まえまして、昨年九月の署名に際し、正文テキスト、これは国連の言語ということで英語等でございますが、正文テキストの文言の意味を正確に反映するように、また、我が国が既に締結しておりますほかの条約、また国内法令における用語との整合性等を勘案し、関係省庁とも協議をしつつ慎重に作成したものでございます。
御指摘の、例えばパーソンズ・ウイズ・ディスアビリティーズの仮訳につきましては、今申し上げたような観点、それから国内法令においても幅広く障害者という言葉が使われているということも踏まえまして、「障害者」というふうに訳したわけでございます。
また、パーソンズ・ウイズ・インペアメンツということにつきましても、我が国が既に締結をしておりますほかの条約におきまして、人のインペアメンツということを障害というふうに訳出しておりますし、また、同じ障害者分野の条約でございます障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約、ILO第百五十九号におきましてもフィジカル・オア・メンタル・インペアメントということを身体的または精神的障害というふうに訳出をしているということを踏まえまして、「障害者」というふうに訳出をしたわけでございます。
また、インクルージョンということにつきましては、これも今申し上げたようなプロセスを経まして、確かに文脈上、含めることと訳すると不自然となるということもありまして、いろいろな観点にかんがみまして、「社会に受け入れられること」ということで訳出をしたということでございます。
また、インテグリティーということの仮訳につきましても、これは我が国が既に締結しております他の条約等においてもいろいろな訳例がありますが、その中で、本条の内容、文脈にかんがみて、「健全であること」というのが本条約の趣旨を反映しているのではないかというふうに考えまして、そういうふうに訳したわけでございます。
いずれにいたしましても、これから締結に向けて作業を行っていくわけでございまして、その際に、仮訳ではなく訳文を作成するということでございます。その作成に当たりましては、本条約の意義を十分に踏まえ、いただいた御意見も参考としつつ、さらなる検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
■小野寺副大臣
私も、超党派でございますこの推進議連の事務局長として、この団体から仮訳文に関してさまざまな御意見をいただいております。このような御意見を踏まえつつ、可能な限り早期の締結を目指して、訳文の作成を含めて検討を進めていきたいと思います。
■西村(智)委員
やっていただけるという意味なのか、やっていただけないという意味なのか、どっちなのかわかりませんけれども、これは本当に障害者の基本的な、今後の政策の根幹にかかわるところですので、ぜひそこは見直してくださるように要請して、質問を終わります。
ありがとうございました。