■西村(智)委員
民主党の西村智奈美と申します。
きょうは五名の参考人の皆さん、大変お忙しいところ、この委員会で貴重な意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。
児童福祉法等の一部改正案と、そして私が筆頭提出者となっております児童扶養手当法の一部改正案についていろいろな御意見をいただき、今後の質疑に大いに参考になることと思いますし、また筆頭提出者の立場といたしましては、母子家庭の現状などについて今大変貴重な御意見をいただきましたので、これで与党の皆さんも心を動かして、賛成に傾いてくださるのではないかと大いに期待をしているところでございます。
この法案の審議の中で幾つか明らかになったこともありますので、その点も少し御紹介をしながら、私からさらに引き続き、参考人の皆さんからの御意見を伺っていきたいと思います。
まず、赤石参考人にお伺いをいたします。
二十数年前の母子家庭ですと大変厳しい状況で、今もその状況はなお変わっておらず、むしろ正社員への道が狭まっているということで、より一層困窮の状況であるというお話がございました。本当に身につまされる思いでお話をお伺いいたしましたけれども、やはり今回の、厚労省が発出いたしました児童扶養手当の一部支給停止除外事由届出書ですか、この厚労省のやり方というのは、母子家庭の皆さんだけではなくて、市町村の窓口の方々にも大きな混乱をもたらしていることだと思います。
先ほど、赤石参考人は、この届け出の提出に係って、事務費ゼロとおっしゃったようなんですけれども、ところが、先日、私がこの委員会で質問いたしましたら、厚労省の方では、その事務費分として総務省の方に合計で二億二千六百万円の交付税要求をしているということなんです。
つまり、この削減規定がなくて、こういった届け出を提出させなければ、この二億何がしの事務費は生じなかったというふうに見るのが相当でございまして、そういう数字を具体的に聞きますと、この規定があることによってさらなる事務費の増嵩が生じているということで、本当に腹立たしく思っているんですけれども、やはりこういった事務費が、この規定が残っている限り、つまり二〇〇二年の法改正で、半分まで削減しますという規定が残っていく限り、ことしは二億、そしてまた来年も二億、そしてその次の年も二億というふうに、事務費は毎年かかっていくということになると思うんですね。
そういうことからしても、この規定はきっぱりと削除すべきである。そして、何よりも、母子家庭の皆さんの安心のためにこれは削除すべきであるというふうに考えますけれども、この点について赤石参考人の御意見を伺います。
■赤石参考人
そうですね。本当に自治体の方は御苦労されていると思います。
二月からお手紙を送ることになっておりましたけれども、いろいろな自治体で本当に対応にばらつきがございました。それで、例えば子供八歳以上で五年間受給している方というのを、全受給者の中から抽出しなきゃいけないんですよね、その名簿を。ところが、そのソフトがうまく動かないからおくれている自治体があったりというようなうわさを聞いたり、そしてまた、その書類を、全部の書式のものを全部送るとすごい量なんですね、それを全部送っていらっしゃる自治体と、本当にお知らせとちょっとだけで書面は後でお渡しするというような自治体と、本当にばらつきがあり、皆さんも苦労されているなというのがすごくよく会員の人たちのあれからわかったわけです。
このようなことは一体何の意味があるのかというのが、本当に腑に落ちない。全く要らないんじゃないかなと。八月に現況届を出すことである程度の生活状況はもう把握していらっしゃるのですから、それでいいではないですかというふうに前も申し上げました。ぜひ、窓口と受給者の関係が本当によくなるためにも、毎回毎回、毎年これを出させるというのはやめていただきたいというふうに切に思います。
困った方が窓口に行って相談できるような雰囲気にはこれではなりません。書類が、ここが不備がある、ここが不備があるということを言われるだけ。もう窓口に行ったら逃げるように帰るしかないわけです。そんなことでは、母子の支援ということにはほど遠いというふうに私は思っております。
■西村(智)委員
非常に的確にお答えをいただいたと思っております。
やはり、本来、行政が母子家庭に対してなすべきことというのは、前回の法改正の理念で盛り込まれたように、総合的な自立支援、自立のためのお手伝いということですので、窓口でのそういったやりとりがさらに母子家庭の尊厳を損ねることになってしまうのではないか。おっしゃるように、私も現況届で就労の実態などは十分把握できると思います。ですので、改めて、このような届け出の提出を求めるこの法律の規定は、今回ぜひとも削除していきたいというふうに考えています。
先ほど、赤石参考人もおっしゃいましたけれども、やはり経済的な支援と就業支援がセットで行われないと、本当の意味でのサポートにはならないと思うんですね。ところが、この間の政府の基本的な考え方というのは、いわゆる自立促進、これはいい意味の自立と余りよくない意味の自立があるんですが、自己責任論に基づいた自立を何となく促そうとしているようでありまして、支援を打ち切ればみんなが自立に向かうのではないか、こういう考え方によって立っているような気がしてなりません。
そこで、この二〇〇二年の法改正と同時に、いわゆる母子家庭に対する特別措置法が制定をされて、就業支援も五年間行われてきたんですけれども、これはなかなか実効が上がってまいりませんでした。今年度の予算措置として、先ほど参考人の方も御紹介くださいましたが、高等技能訓練促進費ですか、こういったことなんですけれども、生活費の補助を訓練期間の最後の方だけやるとか、ことし創設された仕組みで、入学金相当の額を、その訓練が終わった修了時に渡す、こういうこと。しかし、本来生活支援とセットで行われなければならないということですから、やはり生活の基盤が安定していてこそ訓練への集中ができるということだと思います。
こういった点を含めて、本来どういう就業支援であるべきだというふうに参考人はお考えでしょうか。
■赤石参考人
高等技能訓練促進費というアイデアは、私は何か支持するものがあるんですね。
やはり資格、看護師なり理学療法士を取るということは、その後、児童扶養手当の所得制限を超える収入を見込めるようなことだと思います。ただ、原資を持っていらっしゃる方だけが利用できるというような気がするんですね。例えば、財産分与が多くいただけたとか、実家の御支援があるというような、既に支援がある人しか利用できないような制度であれば、かえって本末転倒じゃないかというふうに思います。
貸付金利用のモデルも示されているんですが、六百万円を超える貸付金を利用されればこの制度を利用できますよというモデルを示されております。六百万円かける母子家庭がいらっしゃるでしょうか。それだけ借りて、自分が資格を取ったころには、もう子供の高校の入学のための貸付金を借りなければならなくなるんです。ですので、やはり生活保障と訓練というのは一緒でなければならないというふうに思います。
あと、高等職業訓練校、ちょっと名前がことしぐらいから変わったかと思いますけれども、そこでは、母子家庭になって三年以内には訓練費を十四万何がし支給する制度がございます。これの方がずっといろいろな、ヘルパーの資格とか取れますので、この枠をもうちょっと拡大するようなことはあり得ないのかというふうに思ったりする次第です。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
この児童扶養手当法の関係で、森田参考人にも一点お伺いをしたいと思います。
先ほど、森田参考人が行われました調査の結果、私も大変興味深く見させていただいておりますけれども、特に注目をいたしましたのは、これは七ページになるんでしょうか、子供への影響についてであります。
この項目で、先ほど森田参考人も御紹介くださいましたけれども、生活保護を受給している母子世帯で子供が学校にきちんと通学をしているという方が約七割。逆に言いますと、あと三割の子供さんは学校にきちんと通学をしていないということですね。
母子家庭の支援といいますと、特に母への支援ということのみに目が行きがちなんですけれども、実際に私たちは、その家庭の中で育っている子供にこそ目を向けるべきではないか。やはり子供に確実にこのように影響があるということですので、子供の育ちを支えるという点からも、この児童扶養手当は削減できないというふうに考えるのですけれども、この点について、子供を中心にということでお答えいただきたいと思います。
■森田参考人
ありがとうございます。
私は、子供の権利の視点から、先ほど来先生方が、子供はどの家庭で育とうと何の責任もないということを強くおっしゃっていますけれども、この母子家庭で育っている子供たち、実は私、四年ほど前に、しんぐるまざあず・ふぉーらむでも、母子家庭で育った成人した子供たちに、自分が育ったことを振り返ってもらうという追跡のインタビュー調査というのを一緒にやらせていただいたことがあります。
今回初めて、こうした生活保護を受給されている方々が御協力くださって、これからの施策に生かすということで、千葉県の八千代市の方で、皆様の御協力と市の御快諾をいただきました。そういう形でこういったデータを出せることというのは、私は大変重要なことだと思っております。
国の方は、実は平成十五年に最近の調査を行われていますけれども、母子家庭の数すら出せていない、推計値すら出せない状況にあります。つまり、そうした実態を明らかにしないで施策をつくり出すということはできないわけですね。そうした意味もありまして、私たちは、子供たちの側、あるいは子育てをしていらっしゃる母子家庭の側に立って調査をしたいということで、御本人たちのインタビュー調査も含めて、こういった調査をやってまいりました。
その中で一番私どもが感じたことは、今、西村議員がおっしゃったように、子供たちのところにかなりの影響が出てきている。端的に申し上げると、生活保護を受けているということは、本来ならばだれにもわからないはずなんですけれども、結局、わからなくしようとすると、すればするほどやはり家庭の中にこもっていってしまう、あるいはその生活、あの人はなぜ働いていないのに暮らしていけるのかねという言葉からくる母親たちへの非常に厳しい目線、あるいはその子供たちへの目線、こういったものが子供や親たちを苦しめているんだというふうに思っているんですね。
そういった意味で、生活保護を受給する前の段階でどうにか子供たちの暮らしというのを食いとめられないだろうか。そういった意味で、社会的手当としての児童扶養手当というものの持っている意味というのは非常に大きいというふうに思っています。
今、子供たちは、大人たちの言葉を何かと耳にして、そして、学校やあるいは地域の中での子供たちのいじめとかという問題も深刻です。そういった中で暮らしているからこそ、子供たちが親とともに家の中に引きこもってしまう、そして結果として、学校に通う力が十分にあるにもかかわらずそこに通い切れない。あるいは、その中で、実は関係も非常に少ない、お友達も少なかったり、支えてくれる大人たちもいなかったりという結果が出てきております。これは母子ともに出てきているということで、このことがやはり子供たちや母親たちを追い込んでいるというふうに思います。
ぜひとも、児童扶養手当の拡充、そして、余り自分たちの中でスティグマを伴わない形でできる限りこういった手当が出せて、次のステップにこの母子が向かえるような制度であってほしいというふうに願っております。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
それでは、児童扶養手当法についての私の参考人の皆さんへの御意見は以上といたしまして、児童福祉法等の改正案について、関連で何点かお伺いをいたします。
先ほど答弁いただいた流れもございますので、森田参考人にもう一点お伺いをいたしたいと思います。
先ほどの母子家庭の児童扶養手当の話もありましたけれども、やはりこの国の政策というのは、全般的に子供に対する視点がとても弱い、視線がとても弱いというふうに考えております。この子どもの権利条約の最終報告にもあらわれておりますけれども、日本の中で子供政策というものを総括する、総合的に見る省庁がないこと、そしてまたそれを支える法律もないこと、これはやはり問題だと。
私たち民主党は、かねてよりチルドレンファースト、子供第一ということで、子ども家庭省の創設を政策として掲げておりますけれども、こうした政策への抜本的な大転換が今こそ必要なのではないかと考えています。
今回、児童福祉法等の一部改正案のもとになったのは、子どもと家族を応援する日本重点戦略ですか、ということになるんですけれども、この「重点戦略策定の視点」というものを見ましても、ここに、例えば働き方とか人口減少とか労働力人口減少というようなことは書いてあるんですけれども、子供への視点というのが一言も書かれていないわけです。
この点について、森田参考人はどのように政策転換を図っていくべきだとお考えでしょうか。
■森田参考人
どうもありがとうございます。
私の本日の資料の最後のところに、子育て支援の政策から子供支援へという視点を、私が書いたものをつけさせていただきました。ぜひ後でお読みいただきたいというふうに思っております。
ここの資料としてつけさせていただいたのは、第一回の政府報告書に対する勧告と言われております一九九八年の国連子どもの権利委員会の最終見解、そして二〇〇四年の第二回の最終見解というのを出させていただきました。
具体的には、第一回にも第二回にもございますが、法制度として総合的な法律が未整備であるということ、あるいは独立した省庁がないということ、そしてまた、独立した監視機関ですけれども、特に今、各基礎自治体のところでは、幾つかの自治体がオンブズパーソン制度というものをつくり出してきておりますが、そういったものは国としてはまだ非常に弱い状況にあります。そういった意味で、子供たちの政策というものを子供たちの目線でもう一回つくり直してみる。
私は、ちょうど、昨年からことしにかけて、韓国の研究者の方々や実践の現場の方たちと一緒に少子化対策室にお伺いすることがありました。そのときに韓国の関係者の方々から大変驚かれたのは、日本は子供施策を少子化対策でやるのかということを聞かれました。でも、結局、この政策を全体としてわかるのは少子化対策室しかないということ自体がやはり日本の中で非常に大きな問題で、やはりそれは、子供たちの側からすれば大きな間違いである。
やはり私たちがやらなければいけないことは、子供が育つということ、そしてまた、親たちもまた子供が育つということを最も願って子供を育てるわけですから、そうした意味で、子供施策というものを何よりも優先させるということが大事な視点だと私は思っております。どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。
■西村(智)委員
OECDの各国の中でも、子供のいる家庭の貧困率は、日本は多分最低水準、最低水準というのは非常に貧困率が高いという意味ですけれども、そういったことを含めても、やはり子供にきちんと視線を向けた政策の柱がどうしても必要だというふうに感じました。
福川参考人にもこの児童福祉法の関係で伺いたかったんですけれども、残念ながら時間となりました。調査会でもいろいろお話を伺っておりましたので、また今後も参考にさせていただきたいと思います。
参考人の皆様には、本当にきょうはありがとうございました。終わります。