■西本委員
自由民主党の西本勝子でございます。
提出されています二つの改正法案について質問をさせていただきます。
アメリカの大統領選挙で、民主党の予備選が話題になっていますが、かつての民主党大統領ケネディの就任演説の中に有名なくだりがございます。それは、国家があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国家に対して何をできるかを問おうというものです。このくだりは、自由のための闘いにエネルギーと信念と献身をささげることによってのみ国が輝き、その国の国民が輝くのだという文脈の中で使われたものであります。
どんな境遇にあっても個人が輝くためには、働くことがもとであると私は考えます。幼い子供を育てながら母親が就労することは大変な御苦労があると思います。しかし、子供たちは懸命に生き抜いていく母の姿をしっかり見ていると思います。また、国はそうした努力をする方々に対する支援を惜しむものではないと確信しております。そういう思いで、児童扶養手当法の一部を改正する法律案について提出者にお伺いいたします。
現行の法律は、母子世帯の生活の安定と自立の促進に寄与するためにこの手当を支給し、そうすることによって児童の福祉の増進を図るものであり、みずから進んで自立を図らなければならないとしている第一条、第二条からしますと、この法律の内容は、個人への金銭給付であっても、母子世帯の自立支援法と解釈するところであります。それがゆえに、第十四条では、正当な理由がなく能力の活用をしない場合は、給付の廃止及び減額を定めているのであります。
今回提出されました一部改正法案は、第十三条の二を削除するのが主な改正となっておりまして、関連する第七条の規定以外は改正しておりませんので、当然、法律の立法趣旨等はお認めになっておりながら、第十三条の二で、五年以上受給している者について最大二分の一の減額をする規定はまかりならぬということであります。
しかし、どうでしょう。全額が支給される五年という期間は、この法律の第二条で規定している、みずから進んで自立を図らなければならないとするための自立計画の目標期限となり、それに向けての準備期間としては十分であると考えますし、受給期間が五年を超えますと手当が減額されることで、さらに自助努力の目標となるのではないかと思うのであります。
仮にこの条文を削除した場合は、養育する児童が十八歳になるまで、自立意識を持たないまま全額の支給を受けることができるようになるわけですので、この法律の目的である自立の促進に寄与するどころか、自立を阻害する危険性があると私は考えています。
そうしますと、提出されました改正法は、母子世帯の自立の促進という本法律の趣旨を逸脱しているのではないかと考えるのですが、これについての御所見をお願いいたします。
■西村(智)議員
お答え申し上げます。
憲法に規定されております十三条、幸福追求の自由というのは、これはだれにしも認められなければならない権利であろうと思います。しかし、その幸福を追求する自由がままならない方がこの日本国内にたくさんいらっしゃるということに思いをいたし、私たちは立法作業をしているわけでございます。
午前中の参考人質疑、委員もお聞きになられたことかと思いますが、森田参考人から大変貴重な調査報告が出されておりました。それはすなわち、ある特定の自治体についてでありますけれども、児童扶養手当を受給して四年から六年たっている母子家庭において、依然として、平均所得は月額で二十万そこそこ、そのうちの約二割を児童扶養手当が占めているというものでございました。
やはり幸福を追求するための自由を保障するという観点からも、私は、所得の保障という点で児童扶養手当が果たしている役割は非常に大きいというふうに考えておりまして、今回このような法案を提出している次第でございます。
さて、委員の御質問に答弁を申し上げたいと思いますけれども、この児童扶養手当法の目的におきましては、母子家庭などの自立の促進の寄与だけではなく、生活の安定への寄与も掲げられております。また、母子家庭の自立のためには、これも午前中の参考人質疑の中でもありましたが、経済支援だけではなくて、子育て支援や就労支援などの総合的な支援が必要不可欠だ、これはセットで行われなければならないという指摘がありました。
しかし、法改正から既に五年を経過いたしましたけれども、これらの施策はいまだに十分な効果を上げているとは言いがたく、母子家庭をめぐる状況は年々厳しくなりつつあるという認識でおります。こういう現状において経済支援の削減のみを進めていこうとする政府の施策こそが、母子家庭の自立を促進するどころか、生活の安定を阻害して、さらに子供の育ちにもマイナスの影響を与えるものであると考えるものです。
母子家庭に、就労意欲の有無についての挙証に係る新たな負担を負わせる以前に、経済支援を確保した上で一層の子育て支援や就労支援を行っていくなど、国として、母子家庭の生活の安定及び自立の促進に向けた環境整備こそが重要だと考えており、したがって、この改正案は、法の立法趣旨に沿うものでこそあれ、これを逸脱するという御指摘は当たらないと考えております。
■西本委員
ありがとうございました。
私は、自分も母子家庭の経験がございました。そして、依然として本当に厳しい状況下に置かれている母子家庭の実態があるからこそ、自分も経験したからこそ言えるんですけれども、やはりそういう中でも、母親が一生懸命、子供のために頑張っているという姿を見せるということは、子供のために大きな教育だと私は思っております。
次に、提出された法案の趣旨説明で、経済的に厳しい実態に置かれている母子家庭で育つ子供が将来に向かって希望を持ち、安心して学び、生活できるよう、改正法案に賛同を求めると述べられているのですが、私は、全く逆で、この法律の第九条の二で定める所得以下で漫然と児童扶養手当を受給していて、その家庭で育つ子供が、本当に将来に向かって希望が持て、安心して学び、生活ができるとは思えません。全面的に公的扶助に頼るのではなく、母親が一生懸命働いて、その家庭に一定の所得があってこそ、提案趣旨で言っているような生活ができるのではないかと思うのであります。
社会的弱者への公的扶助、特に個人への金銭給付については、税金を投入するわけですから、受給者に一定の義務を課し、身体の障害などでやむを得ない場合を除いて、社会的責任を果たしてもらうシステムでなくてはなりません。今回提出された一部改正案では、結果的に、長期間漫然と金銭給付が続けられるということですが、このことについて納税者の理解が得られるのでしょうか、提出者の御所見をお伺いします。
■郡議員
御答弁申し上げます。
まず、西本委員も母子家庭の経験があるというふうなお話で、一生懸命頑張ってこられた、その背中を子供たちに見せて、教育の一環であるというふうにお話しになっていました。
今働いておられる母子家庭の皆さんたちも、本当に一生懸命、一生懸命に働いておられます。この間お話を聞かせていただきましたけれども、二つも三つもパートをかけ持ちして、子供といる時間がないというぐらいに、大変厳しい状況の中で仕事をされている母子家庭の母親が大勢おられる、まさに頑張っておられるわけでございます。
質問の初めにございましたけれども、社会的弱者への公的扶助というのが、入り口のところで義務をかけ、そしてまた責任を負わせるというのが公的扶助の入り口のところの必要条件であるというふうな考え方には、実は、私どもは、その政策の立ち位置としてちょっと違うのではないかという立場でございます。
これまでも申し上げましたように、まず現在の母子家庭の状況というのは、非正規雇用などがほとんどであって、その就業形態というのは大変不安定な状況である。また、収入も平均で百三十万円程度にすぎず、厳しい状況が続いている。これまで打ち出されてきた自立支援策、就業支援策というものが実態に合ったものであったのかどうかということが問われるところなんだろうと思います。
また、午前中の参考人の皆様方との議論にもございましたけれども、この児童扶養手当の目的というのは、児童の福祉の増進を図ることとされておりまして、親の置かれている状況によって子供が貧困に陥ることのないようにするものであります。
母子世帯の母への手当を削減するということは、未来を担う子供たちの福祉をさらに削ることにつながるんだ、そんなふうに思います。近年の三位一体改革で、全体的に社会保障関係の削減が続いているわけですけれども、このような中で、今回政府は、あいまいな政令を定めまして、いつかは削減するという主張を続けておられるわけで、私どもの提案する、この削減規定すべてを廃止する法改正を行うことこそが、母子世帯が安心して生活できていく、自立につながるその一助になるものだと私どもは信じております。
民主党は、就労支援と経済的な支援、これを車の両輪としてしっかりと機能させていくことで母子世帯の自立促進を図るべきだと考えておりまして、西本議員の御質問に対する私どもの答弁ですけれども、これについては、納税者の理解も当然のごとく得られるものと考えております。
以上でございます。
■西本委員
ありがとうございました。
先ほどの答弁、私も感じ入るところは多々ございました。
ただ、今問題視されている一部停止措置の運用に当たっては、あくまでも、母子世帯への就業支援を初めとする各種の支援策を総合的に実施し、就労の受け皿がしっかりしていることが肝要であると考えております。それは同じ御意見だと思います。この法律の第十三条の二を受けた政令には十分配慮が必要と思っていますので、その点を政府にお願いして、児童福祉法の一部を改正する法律案に関する質問に移ります。民主党の先生、どうもありがとうございました。