■西村(智)委員
民主党の西村智奈美でございます。
先回の内閣委員会におきまして、私は、官房長官に対して人身取引の問題について質問をさせていただきました。その後、大変自分の不勉強を恥じるようなんですけれども、きちんとした人身取引に対する研究報告を国が行っていたということを知りまして、改めてきょうはその点について上川大臣にお伺いをしたいと存じます。
先週お伺いしたときにも申し上げたんですけれども、日本という国は、人身取引においては大変な受け入れ国として、世界から、特に国連の委員会の方からも警告を受けておりますし、また、アメリカの国務省が毎年発表しております人身取引報告書において、そこで世界で人身取引を行っているとしている国を三つにランク分けされて、今現在はその真ん中の二等級なんですけれども、かつて二等級と三等級の間にある監視対象国ということにもランクをされていたり、非常に人身取引の面では人権を軽視しているということで警告を受け続けてまいりました。
先進国の中でこのように二等級になっている国はほかにはありませんで、ぜひこの点を改善していかなければならないと思っておりますし、民主党の方からも被害者保護ということに着目をして法案を提出いたしておりますけれども、この人身取引の問題にかかわる国際社会のスタンスというのは、やはり基本的には被害者の保護と免責ということが中心になっております。
供給側の、いわゆる末端で働かされている女性たちを取り締まるというよりは、まずは保護の対象としてきちんと調査などを行い、その結果として人身取引を低減させていく、なくしていくということが言われておるわけでありますが、日本でも人身取引対策行動計画を策定して取り組みを進められておりますけれども、やはり私はもう少し被害者保護の視点を強化すべきではないかというふうに考えております。そのことを改めて主張し、この点について上川大臣の所見を伺いたいと思います。
■上川国務大臣
人身取引についての被害者保護の視点の強化という御質問ということでございますが、御指摘のとおり、人身取引は重大な人権侵害である、また国際的な組織犯罪であり、政府を挙げて対策を講じる必要があるというふうに認識しております。
政府といたしましては、平成十六年の四月に人身取引に関する関係省庁の連絡会議を組織いたしまして、十六年の十二月には、御指摘がございました人身取引の防止、撲滅と、そして被害者の保護を含む総合的、包括的な対策として、人身取引の対策行動計画を策定しているところでございます。
御質問の被害者保護の点についてでございますが、人身取引被害者への在留特別許可の付与、そして国際移住機関、IOMを通じた被害者の帰国支援など、また本年十月からは、人身取引事犯等を対象とした匿名の通報ダイヤルの運用を開始するというような形で、その強化に努めているというふうに思っております。
こうした被害者保護の視点を含め、引き続き人身取引対策の推進を総合的に図っていくことが重要であるというふうに思っております。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
やはり国際社会とアメリカなどのスタンスは、被害者の保護と免責、それと同時に、加害者側への禁止と処罰ということだと思います。ぜひ両面あわせて日本でも取り組みが進められていくように期待をしたいと思います。
その一助となる研究報告書について伺いたいんですが、これは独立行政法人国立女性教育会館が科研費の補助を受けて行った研究成果報告書でありまして、「アジア太平洋地域の人身取引問題と日本の国際貢献」、こういうタイトルで、非常に中身の濃い、学術的にも独創的な調査研究、しかもいわゆるアクションオリエンテッドであるということで、非常に貴重な研究をしていただいたと思っているんですけれども、大臣もこの研究報告、ごらんになったと思います。
実は、この研究の中で国会議員へのアンケート調査も行われておりまして、後ろの方にその内容も出ておりました。先ほどの被害者保護の点で言いますと、被害者保護を進めるべきだと回答していた国会議員は、男性議員よりも女性議員の方が多かった、比率としては非常に高かったというようなことも示されておりました。
大臣、この報告書をごらんになったと思いますけれども、大臣は、これまで人身取引の問題、非常に高い関心を持って取り組んでこられたことと思います。どのような御感想をお持ちでしょうか。
■上川国務大臣
ただいま御指摘がございました独立行政法人国立女性教育会館が実施した「アジア太平洋地域の人身取引問題と日本の国際貢献」のこの三カ年のプロジェクトについては、人身取引の需要と供給という構造の分析から始まり、現地のさまざまな調査も含め、また、ただいまのような議員へのアンケート調査という形で、体系的に科研費を使って取り組まれた大変密度の濃い報告書だというふうに私も思っておるところでございます。
また、昨年、十八年の二月でございますが、外務省とこの独立行政法人国立女性教育会館、また国際移住機関、IOMの共同の主催によりまして、国連大学の方でこの件に関しての国際的なシンポジウムもとり行っているところでございまして、私もそれに参加をいたしたところでございます。
こうした実態に対しての十分な調査をしっかりと踏まえた形で、先ほどの、総合的な施策の立案、またその実施に向けてのさらなる充実への大きなバックアップになる資料というふうに私自身思っておりまして、こうした視点の取り組みについてはさらに努力をしていただきたいというふうに思っております。
■西村(智)委員
この国立女性教育会館、ちょっと名前が長いので略称でヌエックというふうに呼ばせていただきますけれども、ヌエックは、そもそも、例えばこういう人身取引に関する国際的な調査研究を行っているのみならず、国内の生涯学習にも資する事業を行っている、そして国内の男女共同参画政策の推進に資する事業も数多く実施していると承知をしております。
そこで、調べてみましたら、第二次男女共同参画基本計画、これは平成十七年の年末に閣議決定をされておりますけれども、この中で、四カ所にわたってヌエックの果たすべき役割ということが記載をされております。ヌエックは、女性教育会館と名前がついておりますこともあって直接の所管省庁は文部科学省ということになっておりますけれども、男女共同参画基本計画を推進する上で、その担当大臣である上川大臣がヌエックの役割に期待するところも大きいのではないかというふうに考えております。
今後、男女共同参画基本計画を推進していくに当たって、どのような活動をこのヌエックが行うことを大臣は期待されておられますか。
■上川国務大臣
男女共同参画基本計画の第二次、平成十七年の十二月に閣議決定されたこの内容について、この中で、ヌエックの役割については、大変充実した形でこれからも展開してほしいということでの施策の方向性をしっかりと明示しているところでございます。
この国立女性教育会館、ヌエックは、国内外の女性の皆さんの教育のナショナルセンターとしての役割を果たしていると同時に、基幹的な女性教育の指導者の育成あるいは女性のチャレンジ支援のための情報提供あるいはDV問題教育プログラムの開発など、現下の大変厳しいさまざまな課題についても対応をしているということでございますし、また、アジア太平洋地域等の女性の皆さんのエンパワーメントの支援もしている、そういう意味ではアジアの中でのリージョナルセンターの役割も担ってきつつあるということでございます。
また、女性の過去のさまざまな活動をアーカイブセンターという形で機能充実を図るなどの施策を展開しておりまして、そういう意味で男女共同参画社会の形成に資するための大変大きな拠点というふうに位置づけ、そしてその役割を果たしていただきたいと大変期待をしているところでございます。
■西村(智)委員
大臣のその御感想を裏づけることになるんだと思うんですけれども、それぞれの独立行政法人についてはいろいろなところが評価を行っております。もちろん所管省庁の中にあります評価委員会も評価を行っていて、そちらの方を繰ってみましたら、このヌエックに対する評価はやはりよろしいんですね。AだけではなくてSもついていたりいたします。
それで、これは総務省が設置している政策評価・独立行政法人評価委員会の評価年報なんですけれども、この中で、ヌエックの業務実績に関する評価で、私はこういう書き方というのは初めて見たんですけれども、非常に高い評価がされておりまして、「研修等の参加者から高い評価を得ており、全国の女性関連施設や団体及びアジア・太平洋地域等諸国からの支持や期待は高い。」こういうふうに書かれております。
評価委員会の方から、例えばこういう活動を行うことを期待するですとか、こういう活動を行うように検討されたいというような記載はかなりあるんですけれども、いわゆる外部ですとか研修に参加した人たちからの支持や期待が高いというふうに特筆されているのは、私はちょっとほかのページも見てみたんですけれども、ヌエックだけだったように思うんですね。
先ほど大臣は、アジア太平洋地域の中核としての機能を持つようにというふうにも御発言をされておりますけれども、ヌエックの国際社会における位置づけについて大臣はどのようにお考えになっているか、個人的な感想でも結構ですが、お聞かせいただきたいと思います。
■上川国務大臣
国立女性教育会館は、三十年の歴史のある、女性のさまざまな社会活動の拠点としての大変重要な役割をこの間果たしてきたと思いますが、同時に、アジア太平洋における女性のエンパワーメントの支援という観点からも大変力を入れて、その成果を上げていらっしゃるというふうに私自身感じております。
先ほどの高い評価ということは、ヌエック自身が中期目標をしっかりと掲げて、そしてその目標に従って、今国際的な評価ということでありますが、アジア太平洋の女性のリーダーの方たちを研修したり、そしてシンポジウムをやったりというような活動をこの間積み上げてこられた、そうしたことが利用者から評価をいただいてきているということで、この努力に対して高い評価がなされたというふうに思っております。
とりわけ利用者の評価が高いということについては、これは利用されなければ施設としての意味がないわけでありますので、そういう意味では大変前向きな評価が得られたというふうに、私自身は大変、これからもそうした視点を伸ばしていっていただきたいなというふうに思っております。
■西村(智)委員
このヌエックですけれども、国内に向けての研修事業などだけではなくて、いろいろ国際的に大変大きな貢献をしている。例えば、JICAの指導者研修や情報能力向上のための研修、それからアフガニスタンの女性のエンパワーメントのための行政官研修などを通じて、国連で合意されておりますミレニアム開発目標の実現に大いに貢献をしておりますし、先ほど大臣おっしゃったアーカイブ、国際的な情報交流、情報発信、共同作業なども非常に積極的に行っている。
つまり、ナショナルセンターとしてのヌエックがこれほどまでに国際的な活動をしているということは、とりもなおさず、日本が男女共同参画政策に極めて真剣に取り組んでいるということの証左にもなる。逆に言いますと、これが仮に国がやったものでないということになると、国際社会からは、日本の男女共同参画政策がいわば実質的には後退したことになるのではないかというふうに見られる、私はそういうことを考えているところなんです。
そこで、昨今、独立行政法人の見直しが同じ内閣府の中の行政減量・効率化有識者会議というところで検討されているということで、昨日、その有識者会議が指摘事項をまとめられました。この中で、幾つかの独立行政法人が廃止をされるとか、あるいは統合が検討されているというようなことであります。
指摘事項で幾つかの論点が挙がっているほかは、具体的な独法がどこがどうなるかというようなことというのはまだ公表もされておりませんし、年内に整理合理化計画ですか、これがまとめられる方向だというふうには聞いているんですけれども、三年前、平成十六年にこの独法の見直しがあったときにも話があったんですが、漏れ聞こえるところと、それからその三年前のことを勘案して考えますと、やはりこのヌエックが、もう一度いわゆる青少年関連の施設などとの統合、そして機能縮小ということがどうも検討されているのではないかというふうに聞くわけなんです。
そこで、果たしてそんなことができるものだろうかと思って、この有識者会議の指摘事項というところを見てみたんですが、整理合理化計画の四つのポイントというのが挙がっておりまして、一つ目が事務・事業の見直し等、二つ目が法人の廃止、民営化、三番目が統合、他機関・地方への移管、四番目が非公務員化ということで、例えば、仮に統合ということになりますと、この項目の三つ目の統合というところに当たるわけなんですけれども、類似業務を行っている法人、これが統合の対象になると申しますか、「類似業務を行っている法人、融合効果の見込める研究開発法人、小規模な法人については、他法人との統合や他機関・地方への移管を行うべき」、こういうふうに記載をされているわけなんです。
そこで、ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、このヌエックといわゆる青少年機構ですか、そちらの方が類似している業務を行っているのかどうか。これは所管であります文科の方から参考人にお越しいただいていると思いますので、その点をまず一点確認したいと思います。
■関口政府参考人
お答えを申し上げます。
国立女性教育会館につきましては、平成十六年に中期目標期間の終了に伴う見直しが行われまして、今委員御指摘のとおり、独立行政法人に関する有識者会議、現在の行政減量・効率化有識者会議に当たる組織でございますけれども、ここから、青少年教育三法人、現在の青少年教育振興機構でございますけれども、それとこの会館の業務が類似しているということで指摘を受けまして、四法人を統合すべきであるという指摘をいただいたところでございます。
これに対しまして、文部科学省といたしましては、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会等に対しまして、男女共同参画社会の実現が二十一世紀の我が国の重要課題でありまして、そのための女性教育の振興を図ることが不可欠であるということで、我が国の女性教育のナショナルセンターとしての国立女性教育会館の果たすべき役割にかんがみて、独立した法人として存続させるべきであるということを御説明申し上げまして、最終的に、一部事業の重点化などを骨子とした見直し案が了解されたというふうに承知をしております。
現在、国立女性教育会館につきましては、単独法人として第二期の中期目標期間の二年次に入っておるというところでございます。
■西村(智)委員
類似業務を行っていないということですよね、そうしますと今の御答弁は。それでよろしいですか。
■関口政府参考人
済みません。確かに外観上、研修等、似た業務はございますけれども、趣旨、目的等は異なっておるということでございます。
■西村(智)委員
趣旨、目的等が異なっている、これは事業内容は両者大いに性格を異にするものだと私は理解をいたします。
そうしますと、ではなぜ今回またこの青少年教育振興機構とヌエックとの統合の話が浮上してくるのかということなんですけれども、私はやはりここに、何といいますか、男女共同参画社会とは相入れない考え方を見るわけなんです。つまり、女性と子供を一くくりにするという発想。業務内容というところでいいますと、研修や研究をやっている機関はほかにもたくさんあると思います。例えば、労働について研究をしているところもありますし、いわゆる研修と名のついている機関もいろいろあるわけなんですけれども、なぜそこではなくて女性と子供なのかということで考えますと、これは言ってみれば家父長的なにおいが少しする発想ではないかなというふうにも考えるんです。
大臣、今、ヌエックと青少年教育振興機構が一つのものとして統合されるという提案が出されるやに伺っているこの現段階で、非常に微妙な時期だとは思うんですけれども、これは男女共同参画社会の理念と相入れないものではないかと私は考えておるんですが、大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。
■上川国務大臣
独立行政法人の整理合理化ということで、十九年の八月に閣議決定された独立行政法人整理合理化計画の策定に関する基本方針にのっとって各所管省庁において責任を持ってその整理合理化案が策定されて、現在、それらの計画に基づいて行政改革推進本部において検討が行われている、そうした段階であるというふうに思っております。
そこで、国立女性教育会館についてでございますが、先ほど私からも申し上げましたが、第二次の男女共同参画基本計画にその事業の充実という形でしっかりと明記されているということでございますし、また、この間、申し上げたように、我が国唯一の女性教育のナショナルセンターとして、また同時に海外からもこれからのリージョナルセンターとしての機能の期待ということも大変大きなものであるというふうに思っておりますので、男女共同参画の推進にかかわる大変重要な拠点であるというふうに認識しているところでございます。
行政改革推進本部においても、男女共同参画の推進におけるこのヌエックの果たす役割あるいは意義ということについて、また、国民の皆さんのさまざまな意見ということも十分に踏まえた上で、慎重な検討を行っていただきたいというふうに私自身考えております。
■西村(智)委員
このヌエックは、国内社会における男女共同参画政策の推進に大きな貢献をしているのと同時に、やはり国際的な場における日本の名声といいますか、そういったものにも非常に強くアピールをしている組織だと思うんですね。
韓国では、日本でいいますとこのヌエックのような機関が二つの機関に分かれていて、それぞれ、研究開発と、それから教育研修などを行っている機関に分かれているわけでありますけれども、ヌエックはここときちんと連携をして、いろいろな交流事業も行っている。それから、アジア太平洋地域にもいろいろな、アフガニスタン、中国、タイ、カンボジア、インドネシア、フィリピン、フィジー、本当に多くの国の政府機関とこのヌエックが連携をいたして、そしてまた同時に、国内の関連施設や地方、大学、JICAとも連携をして活動を進めているということで、国内的にも国際的にも本当に大きな働きをしていただいているセンターだなと私は思っております。
仮にこれが統合されてしまった場合に、やはり、こうしたこれまでの取り組み姿勢が弱まったのではないか、後退したというふうに受け取られかねない、このようにも私は懸念をしているんですけれども、大臣はこの点についてはどのようにお考えでしょうか。
■上川国務大臣
ただいま委員から御指摘がございました、アジア太平洋諸国のさまざまな機関と連携をしながら交流事業をしていくという形で大変大きな役割を果たしていることの評価というのは非常に高いものがあるというふうに思っておりまして、それが男女共同参画社会推進の一つのシンボリックな役割も担っているというふうに思っております。
先ほど申し上げましたとおり、行政改革の推進本部におきまして、男女共同参画の推進におけるヌエックの果たす役割また意義ということについてぜひ議論していただき、また、今御指摘がございましたが、仮にそうした他の施設と統合した場合には我が国の男女共同参画の推進が後退するのではないかというような懸念の声も承知しているところでございますので、そうした国民の皆様の声も十分に踏まえていただいて、そして慎重に検討を行っていただきたいというふうに思っております。
■西村(智)委員
質問を終わります。ありがとうございました。