■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
泉大臣におかれましては、新潟県の中越沖地震、現地を視察していただいて、ありがとうございました。また、木村副大臣におかれましては、先日、中越地震の三年目に当たります合同追悼式、ありがとうございました。
きょうは、被災者生活再建支援法について、そしてまた宅地造成地の問題、そしてまた原子力防災について伺いたいと考えております。
まず、被災者生活再建支援法でありますけれども、民主党は、住宅本体への適用と、そして中越沖地震、そして能登半島での地震、これらにさかのぼって適用可能である、こういう法律を参議院に既に提出いたしております。与党の方からは、ようやく、きょうですか、この後趣旨説明があるやに伺っておりますけれども、いずれの案におきましても、住宅本体にこの被災者生活再建支援金を適用するということが中身としては盛り込まれております。
政府の方ではことしの3月から検討が始まっていたということでありますけれども、大臣、この両法案において住宅本体への適用拡大が含まれているということについて、大臣はどういう御感想をお持ちでしょうか。
■泉信也国務大臣(国家公安・防災担当)
平成10年の最初の議論のとき、そして16年の改正のときも、この議論は多くの先生方から御指摘をいただいたことでございます。しかし、いずれの場合も、本体への公的資金の投入については、私的財産の最たるものである住宅にという御意見が多くて、実現をいたしませんでした。
与党と民主党からそれぞれ提出されていますこの支援法の改正案について、与党案に関して申し上げますと、住宅本体の再建費用を直接支給対象にしているわけではないと認識しておりまして、支援金を定額化して使途を限定しないとすることで、この改正案を、本当に被災者の立場に立った、使いやすい、使い勝手のよいものにするという案であると私は理解をいたしております。
民主党の提案された案は、まさに先生御指摘のように、本体に一つずつ積み上げた上で支給をするという仕組みになっておるようでありますが、いずれにしましても、具体的な方法はともかくとして、被災者の立場に立った支援法の実現にこの国会で御議論をいただければ、このように思っておるところでございます。
■西村(智)委員
与党の方の案は、直接そのようには書かれておりませんけれども、実質的にはこれは住宅本体への適用拡大だと言って差し支えないんだろうと思います。大臣がそのように丁寧な答弁をしていただいたことには感謝をいたしますけれども、私は、もう少し率直な大臣のお考えが伺いたかったなと思っているんです。
次に、民主党案とそれから与党の提案、きょう、山積みされておりましたので拝見をいたしました。見ますと、大きな違いは一つ。それは何かと申しますと、ことし発生をした能登の地震と新潟の中越沖地震、ここにさかのぼるかどうかということであります。
私たち民主党の案では、とにかく被災から間もない人たちが実際に住宅復旧のまだ途上である、途上であるどころか、まだスタートラインに立てない人たちが大変多くて、地元の自治体などでは、こうした人たちにどうしたら呼び水をやれるかということで義援金を、新潟でいえば、住宅の倒壊の度合い、そしてまた二重にローンを組んでいる方も大変多くいらっしゃいますので、そうした人たちへの重点的な配分ということで、自治体はそうやって一生懸命やっているんです。
しかし、与党の方にはそうしたことというのはない、これから起きる地震のみが対象であるということになっておるんですけれども、この点について、民主党の案では遡及ということが含まれておるんですけれども、これについて大臣はどうお考えでしょうか。
■泉国務大臣
この遡及の問題も、10年の当初のときから、阪神・淡路に遡及するかどうか大変議論があったことを私は承知いたしております。
したがって、民主党が、この1月以降、能登あるいは中越沖、こうしたところに適用すべきではないか、そういうお考えで法案を出していただいていることも私は承知をいたしております。
しかし、そもそもこの制度というのができ上がりますときに、将来の災害に備えて都道府県が相互に扶助をするという観点から積み立てた基金を原資として被災者に支援金を支給する、これがこの法案の基本的な枠組みであったと私は理解をしておるわけでありまして、既に起きてしまった能登地震等の災害について、この基金の原資を使った支援金、いわゆる遡及適用は、本来のこの制度の考え方、趣旨になじまないのではないかという考え方を私は持っております。
しかし、先ほど申し上げましたように、いずれにいたしましても、国会での議論をいただきまして早く成案を得るということが、私どもの、私自身の願いでございます。これから再建制度について本委員会で御議論をちょうだいするということを承知いたしておりますが、議論を尽くしていただきたい、この思いでございます。
■西村(智)委員
そもそもの制度の趣旨というのは、大臣が今おっしゃったとおりであろう。しかし、ここは、今私たちは、立法者の意思としてこの制度をどう変えていくかということで提出をいたしておりますので、その点についての御意見を伺いたかったのですが、同じことなんでしょう、きっと。国会の中で議論を尽くしていただきたいということなのかもしれません。
では、ここで私は、地元の皆さんの思いを大臣にお伝えしたいと思っております。
国会の議論を今非常に地元では注目しております。国会議員がこの法律の改正に向けてどういう働きをしているかということについて特に注目をしております。
先ほども申し上げましたけれども、中越地震で被災した皆さんが二重ローンを組んでいるケースというのも大変多くあります。また、地盤が、滑落といいますか、ずるっと落ちてきてしまったところもかなりありまして、町中などでは、非常に狭い宅地だったものですから、家が本当に屋根から押しつぶされるようにつぶれている。もう大臣もごらんになったので、おわかりだと思います。
高齢者の方が多い、ローンが組めない、中には、もといた場所にもう住めないからということで、住みなれた土地を離れてお暮らしになる選択をされた方も少なくありません。そうした方々が、この被災者生活再建支援法を通して、何とか生活を再建しようという、その気持ちを持つということが私は大切なんだろうというふうに考えておるんですね。
今回の民主党の提案については、本当に多くの皆さんから実は期待を寄せていただいております。ぜひこの提案で通してもらいたい、そういう声が非常に強いんです。ところが、与党の案が先般まとまったその際には、かなり多くの落胆の声が、これは地元住民からだけではなくて、行政の中からも実は上がっているんです。
ここから先は少しはしょりたいと思いますけれども、復興支援基金、今回、総務省と今度は経産省も加わっていただいて、合計で1600億円規模で設定をされました。これについては、本当にいろいろなメニューがここから実現できることになりますので、大変に効果が上がることを期待しておるんですけれども、どうも、一部漏れ聞こえてくるところによりますと、新潟、能登での地震で被災した皆さんに、この法律、改正法が、仮に改正されたときに、仮に与党案が通って遡及がないということになったとしても、その基金で何とか、例えば住宅本体へ適用できるようにするから、そこは大丈夫だ、心配しないでくれ、こういう声がどうも政府内部の方かららしいんですけれども出ている、こういう声が聞かれるんです。
これは、大臣、確認させていただきたいんです。そういう声は本当にあるんでしょうか、本当でしょうか。
■泉国務大臣
今御指摘の、基金を活用して支援法と同程度のことがお手伝いできないかという議論が与党の中で行われておるやには私も承知をいたしております。
これは、阪神・淡路あるいは石川という過去の幾つかの、兵庫県と石川県ですか、そうした例を参考にしながら、遡及が難しければ、被災者の方々に何か実質的にお手伝いできるように、あるいはまた再建へ向けて背中を押してさしあげられるような仕組みが考えられないかということで議論があっておるやには承知をしておりますが、私自身は確認をいたしておりません。
■西村(智)委員
大臣は承知していない、この被災者生活再建支援法を行政府の長として執行する、その責任者として大臣は御存じないというお話でした。
ですので、その大臣におかれて、では、仮に与党案が通って遡及がされないというときに、本当に基金で対応できるようにするということと、それから、住宅本体への適用ということになれば、新たなメニューを自治体の方ではつくらなければなりませんので、今まで計画しているメニューを削っていかなければならないわけです。そうすると、その分の大幅な基金の上乗せというのが必要になる。だけれども、今、大臣の御答弁では、これは約束できないというふうに言うしかないんだと思います。ですので、約束されない空手形を見せられて私たちは与党案でよしと言うわけには決していきません。そこのところは強く申し上げておきたいと思います。
ですので、今後の議論になろうかと思いますけれども、参議院で今民主党案が審議されております、衆議院の方でも与党案が審議をされる、ここは、被災者の皆さんの立場に立った議論、気持ちを酌み取った議論ができるように、ぜひ大臣からも政治的なリーダーシップを発揮していただけますようにお願いをいたします。
ちょっと事務的な話になりますけれども、もう一点、この生活再建支援法について伺いたいことがあります。罹災証明です。
この再建支援法の適用に向けて罹災証明が必要になるわけでありますけれども、実は、この発行手続が非常に煩雑で、住民の皆さんは、この認定、判定に至るまでに何度も何度も手続を踏まなければならない、そういう御苦労をされておられます。仮設住宅に暮らしている方が、一次判定、二次判定、三次判定、このたびに役所に行ってかけ合ったり日程調整をしたりというのは大変な苦労が必要になるわけですが、これはもうちょっと簡略できないものかどうか。
これは総務省の消防センターの室崎さんもずっと御提案をされておりますけれども、例えば、応急危険度判定から罹災証明書の発行までを一連の流れとして建築のプロの方が一度にできるような、そういう仕組みをつくれないものか、こういうふうに提案をされております。
この提案を踏まえて、大臣、この罹災証明の発行、もう少し改善できませんでしょうか。
■加藤利男政府参考人(内閣府政策統括官・防災担当)
お答えいたします。
被害認定に関して今先生おっしゃられたような声があったということは、よく承知をいたしております。ただ、この被害認定は、各種の被災者支援策に密接に関連する罹災証明の発行のために必要とされているものでもございますので、被害認定には迅速性が求められるということがあろうと思います。一方で、的確性も要求されるということがございまして、いわば相反する要素を持ってこの被害認定に当たらないといけないという難しさがあろうと思っております。
今のお話ですが、例えば一回で認定結果を出そうということになりますと、例えば地震でいいますと、余震がいろいろある中で、しかも多数の物件を処理しないといけない。その中で、一回でやろうといたしますと、外形的な判断といいますか、外形的に目視で判断できるということではなくて、実際、建物の内部に立ち入っていろいろ調査をするということが必要になってこようかと思うんですが、そうなりますと、今申し上げましたように、片っ方で余震のおそれがある、そして多数の物件を処理しないといけないということになると、どうしても時間がかかってしまう。そういうことからすれば、先ほど申し上げたような迅速性の要請にはこたえられない、こういうような悩ましい問題があるというふうにぜひ御理解をいただきたいと思います。
ただ、私ども、そういうことでもございますけれども、その被害認定にまつわる課題についてはいろいろお伺いしておりまして、そういう声を一つ一つ点検して、さまざまな観点から検討を加えて、できることからではありますが、一つずつ運用の改善に努力をしていきたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
次に、国土交通省の方からもお越しをいただいておりますので、質問をしたいと思います。
制度というのは、やはり事態に応じて運用の幅が生じてくるものであるというふうに思いますし、必要とあらば、そうした制度の対象ですとか考え方も変えていくということの証明のようなものを、実は今回、国土交通省から見せていただきました。
といいますのは、柏崎の山本団地でございます。おそらく団地の皆さんが国土交通省に直訴に行かれましたよね。宅地が盛り土がされていて、そこがずるっと動いた。ところが、現在の仕組みでは個人の宅地に対して公共的な支援をするということができなかったわけなんですけれども、昨年の法改正で、大規模盛土造成地滑動崩落防止事業というのが創設をされて、これは本来、この造成地の滑動それから崩落を防止するためのいわゆる予防的な事業であったはずなんですけれども、今回、その山本団地の皆さんが、国土交通省の方にも、あるいは地元自治体とも話をして、この既にずれてしまった土地に対して適用ができるようにということで、今相談は進んでいるというふうに聞いております。
本来、この事業は、申し上げたとおり、予防的な事業であったはずです、制度のそもそもの趣旨は。ですけれども、山本団地は既にもうこうなっている。ここのところ、どういう論理的な根拠で適用ができるようになるのか、この適用の見込み、この山本団地に対するこの事業の適用の見込みについて伺いたいと思います。
■増田優一政府参考人(国土交通省都市・地域整備局長)
お答え申し上げます。
御指摘の大規模盛土造成地滑動崩落防止事業、ちょっと難しいんですが、盛り土した造成地が崩れ落ちることを防止する事業ということでございますが、これは、先生御指摘ありましたように、十八年に宅地造成等規制法を一部改正いたしまして、既存の危険な盛り土造成地の耐震化を進めようということで、法改正と同時に事業制度としてつくった制度でございます。
基本形は、まず、既存の盛り土造成地を調査いたしまして、いわゆるハザードマップ、宅地ハザードマップをつくります。その中で特に危険な盛り土造成地の一定のものにつきまして御指摘の滑動崩落防止事業を行うという流れが基本形ではございます。
ただ、既存の危険な盛り土造成地を選択する過程は、当然、調査してももちろんわかりますし、今度の山本団地のように、もう地震で一部崩れているわけですから、そういうところにつきましては調査を抜きにしてそういった造成宅地防災区域という区域指定ができるという、もともと制度がそういうふうになっておりますので、もちろん主目的は事前予防の事業でございますけれども、当然、発災後にも適用できる事業ということでございまして、決して山本団地を特例的に扱っているわけではございません。
現在、地元の県、市とも協議を進めておりまして、御指摘の山本団地は、かなり大規模な盛り土造成地でございまして被災を受けておりまして、かつ、二次災害のおそれが非常に強いということでございますので、もちろん発災後でございましても本事業の適用は十分、要件がございますけれども、可能ということでございますので、今、そういったところを地元と協議を進めているというところでございます。
■西村(智)委員
適用の見込みについてはどうですか。まだ協議を続けているという段階なんですか。
■増田政府参考人
お答え申し上げます。
現在、私ども、新潟県それから柏崎市と協議を続けておりますが、当然、適用の方向で私どもは考えています。ただ、一部、地元の皆様の負担がございますので、そういうところを今現地で詰めていただいておりまして、地元の皆様の大方の合意が得られ次第、多分、補助申請いただけるものというふうに考えております。
■西村(智)委員
政府の方では申請があれば適用のつもりである、そういうお話を伺うことができました。
私の質問の最後は、原子力防災について伺いたいと思います。原子力保安院長、お越しいただいておりますでしょうか。どうもありがとうございます。
今回、中越沖地震の特徴、幾つかある中の一つは、この柏崎刈羽、大変最大規模の原子力発電所での被災にあるだろうと私は考えております。
もう改めて申し上げるまでもありませんけれども、10時13分にあの地震が発生いたしまして、あそこの、建屋と申し上げたらいいんですか、要するに、一号機から順に並んでいるところの脇に、言ってみればオペレーションをするセンターのようなところもありますけれども、そこも見せていただいたんですけれども、非常に大規模にやられておりまして、あそこで働いている方々もかなり恐怖を覚えたのではないかなと思っております。
とめる、冷やす、閉じ込める、これはうまくいった。うまくいったというのは本当によかった。ですけれども、これは、今後の原発震災の防災を考える上で必ず教訓にしていかなければいけないことだというふうに考えています。
原子力保安院の方でもいろいろ対策調査委員会ですか、設置をして議論が進んでいるというふうに聞いているんですけれども、どうも私の目からいたしますと、地元の人たちとやはり乖離をしているんです。その保安院の方から実際に現地にどのくらいの回数赴かれて、保安院長が実際にその地域の皆さんとどのくらいお話をされているのかわかりませんけれども、今回の地震のときに、地域からは、原子力保安院の顔がほとんど見えなかったと。ほとんどというのは言い過ぎかもしれません。全く見えなかったと言われておるんです。
何でこういうことになるのか。本来、安全を規制するための規制機関である院が本当にこういうことでよかったのかどうかということなんですけれども、ちょっと時間もなくなってきましたので、事務的なところから確認をさせていただきたいと思います。
今までに原子力災害の防災訓練を行われていると思います。いわゆる原災法の15条で言うところの事象が発生してから避難指示が出るまでに大体どのくらい時間がかかっているのでしょうか。
■薦田康久政府参考人(経済産業省原子力安全・保安院長)
お答えいたします。
この15条、住民避難までの指示というのは、基本的には、訓練において事象を想定して、どういうシナリオという形の中で決まっていくものでございまして、そういうようなことで、シナリオ上設定した時間でございますけれども、参考までに今お話をいたしますと、平成13年度の訓練、これは泊発電所でやったものでございますが、これにつきましては、15条、発生から住民避難の指示まで1時間45分、平成14年度の訓練では2時間5分、平成15年度の訓練では2時間15分、17年度につきましては2時間9分、平成18年度、1時間42分、平成19年度、1時間10分となっております。
■西村(智)委員
原発での震災、原発震災が起きたときの訓練というのはなさっておられますか。
原災法15条というのは、いわゆる時間的な経過、余裕のあるケースのもとで行われているのではないかと想定するんですけれども、原発震災が起きたときの、そういうケースを想定しての訓練というのは行われているんでしょうか。
■薦田政府参考人
今、年に一回この原災法に基づいて訓練をしているところでございますけれども、このときには、各原子力発電所でどのような事象を前提としてやるかということにつきましては、地元の方と相談をさせていただきまして、こういう中で事象を設定し、訓練をしているというものでございます。また、設備につきましても、原子力発電所だけではなくて、再処理施設等も含めてやっている。
また、そのときの想定の仕方でございますけれども、例えば、ことしでございますと、これは必ずしも地震を想定したわけではありませんけれども、柏崎刈羽で火災が起きたというようなこともございましたものですから、今回は、原子力災害とあわせて火災の発生ということも想定をして行うというようなことで、地元と御相談をしながら、いろいろなケースを想定しながら訓練をしている、こういうところでございます。
■西村(智)委員
そうしますと、原発震災を想定しての防災訓練というのは行われてこなかったということだと理解をいたします。
今回の地震で、結局、地震が発生したのが10時13分、そして、東電の方がいわゆる緊急時対策室へ入室できたのがそれから30分以上たってからのこと、原子力保安院長が避難の必要はありませんというふうに県に回答されたのは、地震発生から1時間20分経過してからの後。でも、それから、大変微量であって、これは微量であったというのは結果論だと私は思いますけれども、実は放射能汚染水が海に流れていたということがわかって、本当に微量だったのでよかったんですけれども、そういうような経過をずっと追ってきていろいろ考えますと、原災法が想定している範囲がどうも狭いのではないか、こういうふうに考えてしまうんです。
つまり、原災法の今の枠組みというのは、事象が発生してから放射能が放出されるまで時間的な余裕のあるいわゆる自損事故を中心に想定されていて、今回のように、火災が起きたりとか何が起きているのかわからない事態に対しては、そうしたことについて、避難の必要性の有無ですとか、事態がどうなっているのかということを判断する、そういう具体的なシステムがないんですよ。実際には、事業者からの例えば基準以上の放射能漏れが起きていたり停止機能が喪失されているなどの通報がない限り、対応は想定されていないということになっております。
例えば、今回は第三号機の変圧器が火災を起こしておりました。あれは一体どうなっているのかということで、多くの皆さんが情報を欲しかったわけなんです。ところが、この間、原災法の枠組みの中でいうところのいろいろな要件にはひっかからなかったので、原子力保安院の方から適切な情報提供がなかった。
ということからいたしますと、これは二つお伺いをいたしたいと思います。
一つは、住民の避難の必要性を判断する責任の所在というのはどこにあったらよろしいというふうにお考えなのか。これがまず一つ。
もう一つは、この原災法、やはり原発震災といったものを想定したものに改正していく、これは大変重要なことだと思いますけれども、それを検討すべきではないかというふうに考えるんですが、この点についてはいかがでしょうか。
■薦田政府参考人
お答えいたします。
まず、原子力災害時におけます住民避難の必要性を判断する際の責任はどこにあるかということでございますけれども、まず、放射性物質が大量に環境中に放出されるようなおそれのある原子力緊急事態におきましては、先生御指摘のように、まず、原子力災害特別措置法に基づきまして、内閣総理大臣が地方公共団体の長に対して住民避難等の指示をすることとされているということでございます。
また、政府の原子力災害対策本部が設置された段階におきましては、本部長であります内閣総理大臣の権限を委任することによりまして、今度は、現地に派遣をしております現地対策本部長が地方公共団体等と調整しつつ現地で住民避難等の指示をすることができることとされているということでございます。
他方、今ございましたように、では、原子力災害であるかわからないような場合については、こういう住民避難の必要性をどのように判断するのかということでございますけれども、地震等の自然災害におきまして原子力緊急事態に至っていない場合につきましては、これは災害対策基本法に基づきまして地方公共団体の長が住民避難等の指示を行うものとなっておるところでございます。
ただ、当然、いろいろな情報が必要でございまして、原子力安全・保安院といたしましては、こういった原子力災害に至らないような場合におきましても、今後は、原子力施設の状況につきまして、地元に対して迅速かつ的確に情報連絡、提供することが重要であるというふうに考えておるところでございます。
現在、先ほど先生からございましたように、この調査委員会におきまして、ここで、どのような情報をどのように伝えていくべきなのかということにつきまして検討していただいているところでございまして、こういうことで適切に対応していきたいと考えておるところでございます。
それから、もう一つのお尋ねでございますけれども、原災法の改正の必要性の有無ということでございますけれども、先ほどこれも先生御指摘のように、今回の中越沖地震の際の発電所につきましては、まさに原子炉が設計どおり自動的に停止をいたしまして、最も重要な安全機能であります、とめる、冷やす、閉じ込めるという機能を適切に維持されたところでございます。
しかしながら、他方、ございましたように、所内変圧器の火災といったものに事業者みずからが消火活動に迅速さを欠いた、あるいは、こういう放射性物質の漏えいに対します報告のおくれがあったということで、幾つかの問題があったということは事実でございます。
こういうことから、既に経済産業大臣から原子力事業者に対しまして、化学消防車の配置を初めとします自衛消防隊の強化や、あるいは迅速かつ的確な事故報告体制の構築について指示をするとともに、国や原子力事業者におきましてもより的確に対策が講じられるよう、現在、先ほど申し上げました委員会を設置しまして、情報提供のあり方を検討しているということでございます。
保安院といたしましては、こういった検討を踏まえまして、今回のような大地震等におきます原子力施設の安全、それから周辺住民の、国民の安心が確保できるように事業者を指導するということとともに、国といたしましても、先ほどございましたような、情報を的確に出していくというような遺漏のない対応がとれるよう体制の構築に努めていきたいと考えているところでございまして、現時点で原子力災害対策特別措置法の改正が必要であるとの認識は持っていないということでございます。
■西村(智)委員
時間になりましたけれども、保安院長、国民の安全、安心、安全のところは、これはやはり専門的なところになってくると思いますので、対策調査会やあるいは原子力安全委員会などの議論になってくるんだろうとは思いつつも、それが地域の皆さんの安心につながっていないというところをぜひ認識してください。
伝わっていないんですよ。わからないんですよ。議論の経過もわからない。議論されたことをおろされて、それでよしとされる。本当にそこのところはぜひ認識していただきたいと思います。
■薦田政府参考人
実は、国といたしましても、今申し上げました、やはり安心ということにつきましては極めて大事であろうと思っております。
そういうことから、今回の国におけます委員会におきましては、まず一つは、今回は県の代表、市の代表、そして刈羽村の代表にも入っていただくということで、地元の御意見が的確に伝わるようにしております。それから、この委員会は、すべて公開でやっておりまして、資料も全部出しております。
こういう中で、我々の意図、あるいは中でどういうディスカッションがされたのか、そして、その地元の皆さんが、まさに自治体の代表の方がどういうような御意見を持っていて、それがどのように最終的に報告書としてまとまっていくのか、こういう過程をすべて出した上で報告書をまとめていただきたいと思っておりまして、今先生がおっしゃいましたようなものにつきましては、可能な限り地元の声あるいは安心というものを反映していきたい、かように考えているところでございます。
■西村(智)委員
保安院長がぜひ地元の皆さんと直接意見交換をされることも含めて、対応を強く要望して、終わります。