■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。きょうは、どうぞよろしくお願い申し上げます。
今回、私たち民主党も、この改正に向けて多くの民間団体の皆さんや実際にDV被害に遭われている皆さんからヒアリングを行ってまいりました。いろいろな経緯を経て今回の法案提出ということになったわけでありますし、一定の前進もあったということで、その点は賛同をしたいというふうに思います。
私たちがヒアリングをしている中で、いろいろな方が口をそろえておっしゃったのが、やはりこのドメスティック・バイオレンスに対する社会的な認識が実はまだ定着をしていないということでありました。特に、今回、保護命令の拡大がなされて、その点については評価をされるんですけれども、例えば、長い間懸案となってまいりました加害者本人に対する処罰の適正化あるいは更生プログラムの実施などについては、今回も見送られることになったわけであります。ですが、諸外国の例などを見ておりましても、やはり加害者というものにきちんと視点を置かないとドメスティック・バイオレンスの再発防止はあり得ないのではないか、私はこのように考えるに至っております。
徳島県で、先般、大変悲惨な事件が発生いたしましたけれども、そういったことを繰り返さないために、警察や検察が加害者に厳しく対処するとともに、行政、学校が弁護士や支援者などと連携して被害者と家族などの安全を確保する体制を築き上げることが強く望まれていると考えております。
そこでお伺いしたいんですけれども、まず第一点目は加害者に対する指導についてであります。
保護命令を受けた者に対する警察の指導、これはもう既に行われているというふうに承知をいたしておりますが、やはりこれはもっと徹底して行うべきではないか。ですので、そのためには規定を何らか設ける必要があるのではないかと考えております。
例えば、警察は、必要があると認めるときは、保護命令を受けた者に対する保護命令の趣旨の通知、必要な指導その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるものとすべきであるというようなこと、この点についてはいかがでしょうか。
南野議員に伺います。
■南野参議院議員
西村先生も、DVにつきまして大変造詣が深く、研究されておられるというふうにお聞きいたしておりますので、先生のことにつきまして今いろいろお話しくださいました、そのことについて感激するわけですが、我々といたしましても同じような検討を加えてきております。
例えば、加害者という形の問題点をどのように展開していくかということについて、このたびの法改正は見ておりませんけれども、各省庁間でいろいろと検討を加えていただいており、一般のNPOの方々にもいろいろお聞きいたしましたけれども、加害者の問題よりも、まず被害者のことをもう少し充実してほしいというようなお声も出されておりました。
そういうようなことに関連しまして、加害者に対する更生のプログラムをどのようにつくっていくかということは、今各省庁挙げて検討させていただいているところでございますので、この問題もいずれ俎上に上げさせていただくときが来るというふうに思っております。また先生の御配慮、いろいろといただきたいと思っております。
■西村(智)委員
被害者に対する支援も充実していかなければいけない、しかし、加害者への視点も同時に持っていただきたい、こういう思いなんです。
加害者に対する研修、これはもう長年懸案事項となってまいりました。警察とDVセンターが協力して保護命令発令期間中における加害者に対する研修を行うことが考えられないか、これは短期的なカウンセリングなどというものではなくて、再教育プログラムなどを義務づけることが検討されるべきではないか、このように考えるんですが、いかがですか。
■南野参議院議員
先生おっしゃるように、DV法の第二十五条におきましては、国、地方公共団体は、加害者の更生のための指導の方法などに関する調査研究の推進に努めることということを規定いたしておりますけれども、保護命令を受けた加害者の行った行為が犯罪であるということをまず知っていただきたい、これを加害者にしっかりと認識していただきたい、このような犯罪行為を二度と起こさせるようなことにならないようにするということがまず重要であろうかと思っております。
平成十八年に内閣府がまとめました検討結果や他の犯罪加害者を対象とする処遇プログラムの動向等を踏まえまして、今後も引き続き、関係省庁におきまして、御指摘いただいた一定の期間継続して行われる再教育プログラムも含めまして、加害者の更生のための指導の方法について調査研究の推進に努めていきたいというふうに思っております。また、その動向を見守りつつ、私としてもさらに検討を加えていきたいと思っているところでございます。
■西村(智)委員
次に向けての検討課題であると認識くださっていること、理解をいたしました。
そこで、次は警察庁の方にお伺いをいたしたいわけなんです。
先月、山形市で、このDVに関して傷害致死事件が発生をいたしました。事件発生前に、山形警察署は、被害者が被疑者からの暴力により骨折を負ったにもかかわらず、被害者が被害届を出さなかったために刑事事件としては調べられなかったというふうに報道をされております。
被害者が被害届を出さなかった、ここのところの思いはいろいろあるんですけれども、たとえ被害者が被害届を出さなくても、被害者は既に骨折という重傷を負っているわけでありますので、ここは私は傷害罪等により積極的に取り調べるべきではなかったかというふうに考えております。
ほかの国の例になって恐縮なんですけれども、アメリカのサンディエゴ市、ここでは、DVの加害者を暴行や傷害の段階で早期に逮捕することによってDV殺人を半減することに成功したというふうにも聞いております。
そこで、警察庁の刑事局長にお答えをいただきたいんですけれども、警察庁は都道府県警察に対して被疑者の検挙に向けた迅速かつ積極的な対応について指導しておられると思いますが、それが都道府県の各警察署に勤務して傷害や暴行等の事件を現場で捜査する捜査員に浸透していないのではないかというふうに考えます。通達などのペーパーではなくて、ぜひとも、刑事事件の責任者である刑事局長みずからが、都道府県警察の刑事課員に対して全国会議などで指導していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
■縄田政府参考人
お答え申し上げます。
警察といたしましては、配偶者からの暴力事案につきましては、刑罰法令に抵触する事案につきましては被害者の意思を踏まえつつ検挙その他の措置を講じて、それ以外の事案につきましても被害者に対する防犯指導、加害者への指導、警告など、事案に応じた適切な措置を講じているところでございます。
配偶者からの暴力事案への適切な対応について、しっかり指導しろということでございますけれども、従来から、通達のほかには警察庁主催の会議で都道府県警察に対しまして指示してきたところでありますけれども、最近、昨年の十二月二十七日付でも、かなり詳細な生活安全局長、刑事局長連名の通達を出しました。
ことしに入りましても、全国捜査第一・第三課長会議あるいは刑事部長会議、それから生活安全関係の課長会議等におきまして、配偶者からの暴力事案に対しましては、警察署長の指揮を徹底させるということ、それから事案の内容に応じた組織的な対応をとるということ、これがポイントでありますが、一点目、指示をいたしておりますし、事案が刑罰法令に抵触する場合には、被害者の真意を見きわめた上で、これは十分に聞かないと本音といいますか真相がわからない場合もありますので、十分に聞いた上で、さらに、どうしても被害届が出ない場合においても、説得をしっかりするということで、被害申告を出していただきながら処理をすべきという点、指示をいたしておるところでございます。
今後とも、配偶者からの暴力事案につきましては、適切な対応がなされますように都道府県警察を指導してまいりたい、こういうふうに思っております。
■西村(智)委員
今回の山形のケースは、私は、適切ではなかったというふうに結果としてこれは言わざるを得ない事態になっているわけであります。実際に、この被害者の方は、その後、さらなる暴行でお亡くなりになっておられるわけであります。
そこのところ、警察庁の刑事局長として、本当にこういった事件が二度と起きないように徹底する、こういった考え方を指導する、そういう決意がおありなんですか。
■縄田政府参考人
山形の事案につきましては、委員御案内のとおりかと思いますけれども、六月七日に被害者の知人の方から、被害者が夫から暴力を受けているという届け出がございました。直ちに警察官が参りまして、被害者の方あるいは加害者とも接触をいたしました。被害者の方がかなりけがを負っておられるということで、女性の警察官が一時間にわたって説得をして病院に行っていただいた、それで入院をしていただいた。それから、ぜひとも被害届を出すようにということで説得も行ったけれども、これにつきましては被害者の方がこれを固辞された。夫につきましては、指導、警告を厳しくやった。同じような流れの中で、六月十四日の日も同じように意思確認等も行いましたけれども、同様の状態でございました。
今回の事案につきましては、被害者が被害届を強く拒絶する場合、これは犯罪事実の立証あるいは犯行の背景、原因等の真相解明を図ることが難しいということで、なかなか事件の立件には困難であるのが通常ではございます。これは、逮捕することによって本当に問題解決に直ちになるのかどうかというのもなかなか難しいものがございます。
さはさりながら、今回の事例も踏まえまして、事案によってはいろいろな対応、判断もあり得べしだろうというふうに私どもは認識をいたしておりますし、また、対応のあり方につきましては、関係機関と連携をしてやっていくということも十分大事だろうというふうに認識をいたしております。
今回、山形の事案につきましては、山形県警察としては一生懸命努力はしたということでありますけれども、結果において委員御指摘のような事態が生じたということはまことに残念であります。そのようなことがないように最善の策をとり得べくということで指導してまいりたい、こういうふうに思っております。
■西村(智)委員
現場にぜひ浸透させていただきたい、このことはまた機会があれば質問をいたしたいと思います。
つまり、ドメスティック・バイオレンスの難しさといいますか、本質がやはりそこにあると思うんです。なるべく隠しておく、そして公にしない、被害を受けている被害者が、自分がもしかしたら悪いのではないか、そういう罪悪感にすらさいなまれて非常に精神的に追い詰められている、そういうDVに対する理解そのものをやはり警察現場にもこれからはもっと徹底をさせていく必要があると思います。
残念ながら、今回の法改正の中ではその点については余り盛り込まれなかったようでありますけれども、この点についても次に向けての課題であると私は認識をしております。
そこで、今回の法改正で盛り込まれなかった点などについて何点か伺っていきたいと思っています。
配偶者からの暴力を発見した場合に、医療関係者による通報がこれはできる規定になっております。この医療関係者による通報を努力義務とする必要があるのではないか、このように考えております。
冒頭申し上げたとおり、法制定から六年たつわけでありますけれども、まだ国民への周知は十分とは言えません。現在、医療機関、医療関係者の対応マニュアルを策定している自治体は全国で五県だけ、通報が努力義務とされることによって医師等のDVに対する認識も高まっていくのではないか、このように期待をしております。
もちろん、被害当事者の安全に抵触しないような対策も必要であるということは考えておるんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
■南野参議院議員
先生おっしゃるとおり、医療従事者それ自身に守秘義務というのがかかっておりますが、これに対しても、DVを発見したら、自分の業務においてもそれを発見したならば通報することができるというこの項目をしっかり大切にしてほしいということで、初回のときからこの問題は検討されてきましたが、まだそれが徹底されていないということは先生のおっしゃるとおりであり、この問題についても、努力義務とか、いろいろな課題を課していくこともこれからの課題ではないか、まずは周知していくことにポイントを当てていきたいというふうに思っているところでございます。
■西村(智)委員
次に、自立支援事業について伺いたいと思います。
徳島県で発生した事件、このケースは、県境を越えて広域的な連携が被害者の自立支援をめぐって行われていれば防ぐことができた事件だったのではないかと私は考えております。
つまり、被害者の方が専門職にあられて、ほかの県などで就業が可能だったということでありますので、ほかの県のそういった関係者と連携をしていて、そこで就職のあっせんなりがされていれば、より遠くに逃げることができたわけですから防ぐことができたのではないかと思いますが、現実にこういったことは行われておりませんでした。
こういった広域的な連携を行い得るところはどこがあるだろうかといろいろ考えたんですけれども、例えば、支援などを行っている民間の団体には、こうした広域的な連携をとることができるネットワークを持っている、そういう団体がございます。南野議員も御承知のことと思います。
被害者の自立支援事業として、国ないし都道府県がそれをしっかりと負っているんだということを位置づけた上で、その事業を民間団体に委託できるようにするべきという声が非常に強いんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
もちろん、民間団体の持っているノウハウというのは、自立支援事業、被害者の自立支援のためのコーディネート全般を含んでいますけれども、例えば職員の教育、警察の方への教育ですとか関係者の教育ですとか、そういったことも含まれる、こういったものも委託事業の対象になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
■南野参議院議員
御指摘いただいたとおりだと思っておりますが、引き続き、DV被害者の自立支援、これが一番大切な課題であろうかというふうに思っております。それを強化拡充すべくというふうに認識いたしております。
その際には、国、都道府県自身の取り扱い、これをまず推進していっていただくということはもちろんでありますけれども、現に被害者の自立支援の活動に大きな役割を果たしておられる、先ほど先生もお話しになられた民間団体の取り組み、これを公的機関が援助していくということも大変有効であると考えております。
また、民間団体の活動の条件、これは非常に厳しい状況にあると思いますが、民間団体からは、自立支援事業の委託、また民間団体への支援といった方法により、こうした援助を強化するよう求める声が強くなっているとも承知いたしております。
今後も、政府における施策の状況、またこれら民間団体の状況、そういったものを見守りながら、十分な対応がなされるよう、議員の立場から取り組んでいきたいと考えておりますので、ぜひ先生も御協力を、一緒にしていきたいと思っております。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
次に、外国人被害者の件について伺いたいと思います。
DVの被害者は、もう既に多くの外国人女性が含まれておりますけれども、ことしの三月、小金井警察署でこのようなことがありました。小金井警察署が、夫からの暴力について被害届を出していたタイ人被害者、タイ人女性を入国管理法違反で逮捕いたしました。不法残留ということです。
ただ、被害者は、夫の協力が得られなかったために配偶者ビザを更新できなかったんです。そのためにオーバーステイになっていた。そこで、DV被害を受けているということでみずから警察署へ赴き、また、入国管理局へもみずから出頭しており、さらには、福祉事務所を通じて民間のシェルターに保護されていた人物、これが被害者の女性でありました。
そこで、もう一度警察庁の刑事局長に伺いたいんですけれども、捜査機関としては、たとえ被害者であっても、その被害者がほかの犯罪を犯しているのであればその捜査をしなければならないということ、そして、逃亡のおそれがあったり証拠隠滅のおそれがある場合は逮捕されるということは、これは私も理解をいたします。
しかし、今回のケース、DVの被害者が入国管理法違反である場合には逮捕しなければならないというケースには必ずしも当たらなかったのではないか。つまり、三つの要件をこのDVの被害者は満たしているわけです。
一つは、被害者みずからが入国管理局に出頭して、入管で出頭した事実の確認がなされている。二つには、被害者がDVセンターや福祉事務所が指定した入所施設で暮らしている。三つには、被害者みずから警察に出頭した。
こういう三条件があるわけでありますので、刑事訴訟法及び同規則の任意捜査の原則にのっとった対応がなされるように、都道府県警察の刑事課員に対して周知徹底していただきたいと考えるのですが、いかがでしょうか。
■縄田政府参考人
お答え申し上げます。
配偶者からの暴力事案等で、外国人の方が被害者でありましても、これが入管法違反であると認められれば、委員御指摘のとおり、任意捜査あるいは被疑者を逮捕して強制捜査する、こういうことになろうかと思います。
これは、個別の事案ごとに、諸般の事情に照らして逮捕の必要性を判断することになろうかと思いますけれども、委員御指摘のような事情がある場合には、一般的に言いまして逃亡のおそれは少ないと思われますし、逮捕の必要性は相対的に低くなるもの、このように考えております。
いずれにいたしましても、配偶者からの暴力事案の被害者が入管法違反の外国人である場合には、被害の確認とあわせまして、在留資格を有し得ない事情につきましても十分聴取をする。被害者の国籍を問わずその人権を尊重するというDV法の趣旨を踏まえつつ、関係機関と十分協議をした上で対応していくよう、全国会議などを通じて都道府県警察を指導しているところでございます。
委員御指摘の事案につきましては、恐らく昨年の三月に逮捕した事案だと思っております。四月に、関連する各課長会議でこの事案を事例に出しながら、捜査一課長等から各会議で指示を出しておるところでございます。適切に対応してまいりたい、こういうふうに思っております。
■西村(智)委員
法務大臣に伺いたいと思います。
先ほど刑事局長の方からは、適切に対応していきたい、全国会議の中でも周知徹底していきたい、そういう答弁をいただきました。ただ、これは法の運用のあいまいさから発生していることだと私は思っておりまして、DVの外国人被害者に対しては、被害者保護を第一に考えて、先ほど申し上げた三つの条件が満たせている場合には入国管理法違反の罪に問わないといった規定を入国管理法またはDV法に盛り込むことによって、このあいまいさというのは払拭することができるのではないか。
こういった規定を盛り込んではいかがかというふうに考えますが、法務大臣はどのようにお考えですか。
■長勢国務大臣
捜査活動については、今警察庁の方からお答えになったとおりだと思いますし、DV被害者については、いろいろな観点から慎重な対応をとるべきだと思います。
今、三条件のお話がありましたが、そういうことは当然一般的な捜査活動においての原則でありますし、DV被害者については特に慎重に対応すべきことだろうと思っております。
しかし、いろいろなケースがあるわけでございまして、DV被害者が別の犯罪を犯すということがあった場合に、そのDV被害の状況あるいはその被害と違反行為との関係等々、さまざまな事情があると思われますので、御指摘のように、DV被害のある場合には入管法違反の罪は問わないというふうに一律に法的な整備をするということについては、さらに慎重な配慮が必要ではないのかというふうに思います。
■西村(智)委員
いや、ほかの犯罪を犯しているケースはこれはまた別です。別ですけれども、単に、純粋に、例えば夫からの協力が得られずにビザが更新できなかったという単純な入管法違反というケースについては、これはやはり考慮の余地は大きいというふうに考えるんですけれども、南野議員は、この点についていかがお考えでしょうか。
■南野参議院議員
いろいろなケースがございまして、ケース・バイ・ケースというようなこともあろうかというふうに思っておりますが、DV法の第二十三条一項にありますとおり、被害者の国籍を問わず人権を尊重することとされている、これは先生も御案内のとおりだと思います。
この趣旨を踏まえながら、適切な配慮がされるよう関係者に働きかけていきたいというのが私の考えでございます。
■西村(智)委員
事は逮捕でありますので。DVの被害者が、いわゆるビザの更新がされなかったということも、見方によってはこれもドメスティック・バイオレンスなんですよ。ですので、ドメスティック・バイオレンスの被害によってビザの更新ができなかった、いわゆる二重の被害に遭っているわけですので、そういった人を逮捕するというのは、これは人道的に考えてやはり余りにやり過ぎではないか、私はこのように考えるんです。
そういった規定を今回法律の中に盛り込まないという法務大臣の答弁でありましたけれども、ここはやはりDVそのものに対する認識にかかわる大きな問題だと思いますので、ぜひここは検討していただきたい、強く要望いたします。
続いて、法案関係について伺いたいと思います。
電話等を禁止する保護命令が盛り込まれました。第十条の第二項でありますけれども、この被害者への電話等を禁止する保護命令が盛り込まれた趣旨、これが何か伺います。
■南野参議院議員
これは、被害者への接近禁止命令が発令されている状況であるにもかかわらず、被害者に対して一定の電話等が行われる場合には、戻らないといつまでも嫌がらせをされるのではないか、また、もっと怖い目に遭わされるのではないかなどといった恐怖心が高まってまいります。
被害者が配偶者のもとに戻らざるを得なくなったり、または要求に応じて接触までしなければならなくなったり、そういった場合には生命身体への危険が高まるということも考えられてくることから、接近禁止命令の実効性を確保するために、今回、保護命令として一定の電話等の禁止を命じることができるということにしたものであり、多くの御要望もいただいた件でございます。
■西村(智)委員
南野議員がおっしゃられたとおり、DVの被害者は電話を受けるだけでも非常に大きな精神的ダメージを受けます。声を聞くだけでもつらい体験がよみがえるということで、さらに自立がおくれるということもございます。
そういった加害者からの暴力によって既に追い込まれていることが多い被害者に対して、たとえ配偶者からの電話であっても、そこから受ける精神的な苦痛は、これはもうはかり知れないものがある。ヒアリングをした多くの支援者団体の皆さんや、そしてまた被害者であった方が、本当に涙を流しながらそのように発言しておられました。
そうしたことから、今回、電話等を禁止する保護命令が盛り込まれたということで、この点について伺いたいんですけれども、であるならば、被害者にとって苦痛である電話等、これはやはり原則禁止にすべきではなかったか。加害者と被害者の間の連絡手段を制度的に残しつつ、原則禁止とする方が、これは制度としてはよりよかったのではないか。それは、被害者の立場により立ったときに、そういう考え方に立てるのではないかと思います。
例えば、親族の不幸など、例外的に連絡できる場合を列挙したり、あるいは弁護士などを通じてのみ連絡することができるというように、連絡方法を制限するというようなことで、原則禁止とする方がよいのではないかと考えるのですが、この点については南野議員はどうでしょうか。
■南野参議院議員
先生御指摘いただきました、加害者と被害者との間の連絡手段を的確に残すという考え方から検討することも方法の一つと考えられるところでございます。
お尋ねの、例外的に連絡できる場合を列挙するということにつきましては、どのような連絡であれば許容されるかが、夫婦間の状況や加害者の生活状況等によって異なり得るものでありまして、法律においてあらかじめその類型を限定的に列挙しておくことは大変難しい点が多かった。また、弁護士の方を通じてのみ連絡を認めることについては、費用の負担ということなどが大きく重なってまいりました。そういうもろもろから、慎重に検討をすることが必要ではないかということになりました。
結局、マイナスのものを列挙する、またはプラス、ポジティブな問題点を列挙していく、または先生が先ほどおっしゃったように全面禁止をするといった場合、全面禁止は、これは憲法違反につながる、ではどこに穴を見つけていくかというような問題についても検討させていただきましたが、今はまだ成案が得られていないということから、今先生御質問になられたいろいろな、我々が法律に八項目つくらせていただきましたが、そのことについて展開したところでございます。
これらのことなども踏まえまして、電話等禁止命令につきましては、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するという観点から、被害者への接近禁止命令が発令されている被害者が、一般に配偶者との接触を余儀なくされるような著しい不安を感じる行為として評価できるものを列挙させていただき、これを禁止するものとしたところでございます。
■西村(智)委員
加害者の通信の自由よりは、私はやはり被害者の人権だと思います。ぜひそちらの方を優先させるという立場に政府全体が立っていただきたい、このように強く申し上げます。
続いて、同じく第十条の第二項の関係で、第四号、第五号に「緊急やむを得ない場合」というのが出てまいります。この緊急やむを得ない場合とは、どのような場合を指すのでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。
例えば、次のような事例は該当するでしょうか。
一つ、加害者が、離婚手続について話し合いたい、子供の親権について話し合いたいといった被害者にも有益な内容の電話や電子メールを繰り返し送信した場合。二つ、被害者が配偶者名義の預金通帳を持ってシェルターに入居している場合に、通帳を返してほしいと連続して電話をする場合。三つ、加害者が居住する自宅に保管中の預金通帳の印鑑の置き場所がわからない場合に、加害者が被害者に、どこにあるのかとその所在を電話で繰り返し尋ねる場合。四つ、加害者が、危篤ではないが命にかかわる病気に罹患したことを知らせるため、夜間に電話した場合。
緊急やむを得ない場合とは、どのような場合でしょうか。
■南野参議院議員
緊急やむを得ない場合といいますのは、まさに緊急性のある事項について被害者に連絡をとるために、手段として、電話、電子メール、ファクスなどによるほかないという場合を意味するものとして考えられているところでございます。被害者自身につきましても極めて重要と思料される事項を緊急に知らせる必要があり、かつ、その手段として、電話、電子メール、ファクスによるほかない場合がこれに該当いたします。
具体的には、被害者の子供さんたちが急病または急死の場合、被害者の子供さんが重大な事件、事故に巻き込まれた場合、または自宅に火災が発生した場合などを想定いたしておりますので、今先生が列挙してお尋ねになられたケースにつきましては、いずれにつきましても、さきに説明申し上げました場合に該当するものとは考えにくいということでございます。
■西村(智)委員
次に、被害者の親族等への接近禁止命令について伺います。
接近禁止命令の対象範囲が、被害者だけでなく、被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者に拡大されました。この趣旨について伺います。
■南野参議院議員
被害者への接近禁止命令が発令されているにもかかわらず、被害者の親族等に対して、その住居に押しかけて著しく粗野、乱暴な言動を行う場合等には、被害者がその行為を制止するために配偶者と面会することを余儀なくされる状態に陥る可能性が高いと考えられる場合がありますことから、被害者への接近禁止命令の実効性、これを確保するために、親族等につきましても、一定の要件を満たす場合には接近禁止命令の対象としたものでございます。
■西村(智)委員
第十条第四項の、「被害者と社会生活において密接な関係を有する者」とは、具体的にどのような者を指すのでしょうか。
民間のシェルターの支援員は含まれるのか、また、公務員である配偶者暴力相談支援センターの職員も含まれることになるのでしょうか。
■南野参議院議員
被害者の身上、安全などを配慮する立場にある者をいいます。配偶者暴力相談支援センターの職員、これは公務員であっても含まれるわけでございまして、民間のシェルターの支援員につきましても、被害者に対し、現に継続的な保護、支援を行っている者などがこれに該当し得るものと考えております。
■西村(智)委員
南野議員の答弁の中で、ぜひまた一緒にこのDV法を改正していきたい、そういうお気持ちも含めていただきました。
今回の改正も一定の前進ではありますが、やはりまだまだDVの被害が、件数としても減っていかない、そしてまた深刻化しているという状況の中では、やはり、さらにこの法律の適切な改正、見直しが必要になってくるんだろうというふうに考えております。
南野議員が参議院で尋ねられまして、三年待たずに見直しということもあるのだというふうに答弁をされておられましたけれども、この点について、もう一度南野議員のお気持ちを聞いておきたいんです。
私たちも、やはりDVを根絶したいと思っております。今回は、見直し規定が実は盛り込まれませんでした。南野議員の意思としては、見直しについてはどのように考えておられるのでしょうか。
■南野参議院議員
先生おっしゃいましたように、見直し規定を設けませんでした。それは、五年後に見直そうか、いや、三年後に見直そうかといいましても、この見直しが来年必要であるかもわかりません。また、加害者の課題はどのように今から発展していくかわかりません。このたびの法律が、いろいろと皆様方に功を奏していい形に展開されていくならばいいですけれども、やはりそこでも問題が出てくるかもわかりません。こういう課題については、いつでもフレキシビリティーを持って取り組めるようにしたいというふうに考えております。
また、先生方との御協力、または超党派での御協力、いろいろなものが必要となってくると思います。このたびの改正におきましても、各省庁がしっかりと手を携えてくださいました。各省庁との連携があってこそ、このたびの大変難しいだろうと思われていた法律の改正ができたということも、ひとつ皆様方に感謝したいことであります。
また、民間でお働きの方々からもいい情報をいただいております。いい情報というのは、状態がいいんじゃなく、自立支援に向けてこういうものとかいろいろな課題を提案していただいておりますので、そこら辺が、DVの被害者にとって、まずいい形に展開されていく、生きていくことの喜びを感じてもらえるような切り返しができる法律に持っていきたい、法律ができただけで終わってしまうのじゃなく、継続して使ってもらえる法律にしたい、そのように思っております。
以上でございます。
■西村(智)委員
終わります。ありがとうございました。