■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
先週、新潟県内の高校で、女子高校生が校舎のトイレの中で出産をして、その直後ということになるんでしょうか、生まれた男の子が死亡するという事件が発生いたしました。同性としても大変悲しくつらい事件でありましたし、また、現場で指導に当たってこられた先生方にとっても、こういう事件が起きないようにということで指導してきたわけでありますけれども、残念ながらこういう結果になったということで、少し落胆をしておられるようでございます。
あってはならないことだったと思いますし、その高校生本人にとっては、いわゆる性知識、正しい性に関する知識がなかった。それは、その女子高校生に対してだけ言えることではなくて、私は、やはり相手方とされる男性、そちらの方はちょっとわかりませんけれども、そちらの方においても正しい知識がなかったということでこういう事件になったんだろうというふうに思っております。
こういったことで、十分送れるはずだった高校生活が危ぶまれているということを本当に残念に思っておりますけれども、まず、この事件、高市大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
■高市早苗少子化・男女共同参画担当大臣
私も報道で承知をいたしておりますけれども、まず1つは、子供の命が失われてしまった、たった1つの命が失われてしまった、非常に痛ましい事件でございます。
それからもう1つは、あくまでも感想ということですけれども、妊娠をしてから出産をするまでの間に、本人もだれにも相談できなかったのか、周りの大人も、御家族も教員も含めて気づけなかったのか。気づいた場合に、例えば児童相談所に相談して子供の命だけは守るというような対策もとれたかと思いますが、どうしても周囲も気づけなかったのか。それが大変残念だという思いでございます。
■西村(智)委員
それで、いわゆる高校における性教育がどのように行われているのかということについて、改めて私は、今回、いろいろな資料をいただいて調べてみました。
文部科学省の方からは、「学校における性教育の考え方、進め方」、これは平成11年の3月に出されたもののようであるわけなんですけれども、読んでみましたけれども、率直に申し上げて、無味乾燥なガイドラインだなということであります。
文部科学省としては、これをどう読み込んで、性教育をどう行っていくべきだと考えているのか、とりわけ高校における性教育について、政府の進め方、考え方について伺いたいと思います。
■小渕優子文部科学大臣政務官
お答えいたします。
高等学校におきましての性教育のあり方ということでありますけれども、義務教育の段階で、小学校、中学校の段階で、基礎的な性教育については勉強して知識を積んでいると思うんですけれども、やはり生徒の発達段階に応じた性教育というものが大切であるというふうに考えております。
その中で、小学校、中学校の性教育を踏まえて、高等教育での保健体育、性教育の授業に関しては、人工妊娠中絶の心身への影響、エイズや性感染症の予防、あるいは受精、妊娠、出産、そうした家族計画によるもの、そうした科学的知識の理解を深めるということとともに、やはり性に関する情報の適切な判断、みずからの行動の結果とそれに対する責任を自覚し、適切な意思決定や行動の選択を行うこと、そうしたことを中心に教えることにより、望ましい行動がとれることをねらいとしています。
■西村(智)委員
今政務官がお答えくださったのは、ガイドライン、この平成11年の「考え方、進め方」にも書いてある内容だと思うんですけれども、実際にそれが現場でどのように取り組まれているか、幾つか事例をお伺いいたしましたけれども、もう少し積極的に進められるのではないかなというのが私の印象です。
もちろん、私の地元の新潟県内では、県の教育委員会が本当にしっかりとした手引書をつくっておりまして、それをもとに進めているところもあるというふうに承知はしているんです。ただ、ではほかの自治体はどうなんだろうかということで調べたいと思ったんですけれども、実は、高校でいわゆる性教育がどのように行われているかという実態調査が行われていないんです。
義務教育諸学校における性教育の実態調査というのは行われているんですけれども、私は、やはりこれは高校についても行っていただきたい。そのことによって問題点がより把握でき、今後の対応についてもより促進できるのではないかというふうに考えていますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
■西阪昇政府参考人(文部科学省大臣官房審議官)
お答えいたします。
御指摘の義務教育諸学校における性教育の実態調査でございますが、これにつきましては、児童生徒の発達段階や受容能力等を踏まえていない性教育が実施されているのではないかというような指摘もございまして実施をしたものでございます。
この調査によりまして、都道府県、市町村教育委員会の取り組み状況、あるいは指導内容に関しての学校が行う保護者への説明、あるいは指導内容、教材等について学校内の共通理解がどのようになっているのかというような現状について把握をしたところでございます。このような状況につきましては、高等学校を含めた学校についても共通する問題ではないかというふうに考えているところでございまして、高等学校について特別に実態調査をするということを現在のところは考えておりません。
ただ、この実態調査を踏まえまして、私ども、性教育のより適切、効果的な実施ということで、望ましい取り組みや全国に参考となる取り組みの実践事例集を作成、配付をしたいと考えております。
また、平成19年度から、効果的な指導方法の普及を目的といたしまして、都道府県教育委員会への委託事業といたしまして、性教育の指導に関する実践推進事業というのを新規事業で始めているところでございます。これらにつきましては、高等学校も対象に含めて推進していきたいと考えております。
■西村(智)委員
よくわかりました。
それで、義務教育諸学校における性教育の実態調査で、調査結果を私もいただきまして、細かな数値まで全部私なりにクロスをさせてみました。
そうしましたら、例えば、先ほど局長が、児童生徒の発達段階や受容能力等を踏まえていない性教育が実施されている学校があると指摘されているという件については、これは極めて少数だったと。クレームが多少あったケースに対しても、保護者や関係者に説明を求めたところ、その説明が理解されたという結末を迎えている案件が1番多いわけですね。
つまり、私これを見て思いましたのは、問題は、そうやって一部に行き過ぎているとされる性教育、行き過ぎている性教育というのは定義は何なのかと思うわけなんですけれども、仮にそういうのがあったとしますと、そういった一部の少数校が指摘されていたということよりは、むしろ、指導方針が示されていない自治体が余りに多いではないか、この点だと思うんです。
政務官に伺いたいんですけれども、この調査結果を見ますと、やはり性教育に係る指導方針が示されていない自治体が非常に多いんです。この状況を何とか改善していく必要があるのではないかというふうに考えるんですけれども、文部科学省としてこの点どう取り組んでいかれるのか、伺います。
■小渕政務官
今御指摘いただきましたように、指導方針を都道府県の教育委員会で出しているところが66%で、市町村教育委員会では12%という結果が出ているというふうに承知をしております。
各地域の実態を踏まえた指導方針や教師用の指導資料というものが適切に示されることがやはり重要だというふうに考えておりますので、先ほど政府参考人からも答弁させていただきましたように、文科省としては、そうした実践事例集のようなものを作成いたしまして、今後、都道府県の教育委員会また市町村の教育委員会によって各学校に対しての指導の参考となるように、こちらとしても適切なものを提示してまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
性教育の基本は、カイロ会議で採択された行動計画の中にもありますリプロダクティブヘルス・アンド・ライツ、ここがやはり基本になるんだろうと思います。そういった方向で進んでいくことを期待しておりますけれども、いずれにしても、指導体制というのが、やはり現場レベルに近くなればなるほど不足してきているのではないかというふうに考えております。
今、事例集を作成してそれで啓発に努めていきたいというような御答弁だったわけでありますけれども、学校全体の教育計画の中に、やはり正しい知識、発達段階に応じた性教育というのをきちんと組み込んでいく、プログラムしていく必要があるのではないかというふうに考えております。
もちろん、性教育というのも、最近は性教育というと、セクシュアリティー全体に対する教育ということで、人格と人格の触れ合いを大切にするですとか、一斉に、クラス全体、学年全体、学校全体に対する指導とセットで、発達段階というのは人さまざまなので個別の指導がそこに組み合わされるべきであるというような、こういう専門的な見地からの指摘もいろいろあるわけなんですけれども、ここに、やはりそういったプログラムとあわせて、そういった専門的な指導ができる教員の方がいなければいけない。教員でなくてもいいでしょう、外部の産科、婦人科の医師に来ていただいて、学校の教員が話せないことまでそこで指導していただくというのも、それも大変結構なことだと思います。
この点について検討する必要があるんじゃないかと思っておるんですが、文部科学省の見解はいかがでしょうか。
■西阪参考人
学校におきます性教育につきましては、先生御指摘のとおり、児童生徒の発達段階に沿った時期、内容で実施をする、あるいは体育や保健などだけではなしに、道徳、特別活動など学校教育活動全体を通じて行っていく必要がある、あるいは保護者の方々、地域の理解も得ながら進めていく必要がある、そういう学校全体で共通理解を図って推進していくということが必要であろうというふうに考えております。
このような中で、発達段階に応じてできるだけ効果的に進めていくということを考えましたら、授業の中にゲームを取り入れるなど、いろいろな工夫を凝らしていく効果的な指導ということが必要であろうというふうに考えております。
また、御指摘のように、集団指導の性教育だけでは性に関するさまざまな健康問題などを抱えるすべての児童生徒に対して十分な対応がとり得ないということもございますので、個別指導を補完的に用いていくということも必要であるというふうに考えております。
また、指導の体制につきましては、先ほど申し上げましたように学校全体で取り組んでいくということでございますが、特に、平成10年の教育職員免許法の改正によりまして、養護教諭の方々が体育や保健体育の授業の指導ができるということになりましたので、このような方々もできるだけ積極的に参加をしていただきたいと思っておりますし、御指摘いただきましたような地域の医療関係者、看護婦の方々、そのような方々の御協力も得て効果的に進めていくということが必要であるというふうに考えております。
■西村(智)委員
かけ声だけに終わらないように、きちんとプログラム化ということをぜひ検討していただきたいと思います。先ほどの望まなかった妊娠の話だけではなくて、先進国の中で、これほどまでのスピードでエイズが蔓延している、拡大している国というのは日本だけです。そういった性感染症の予防ということも含めて、ぜひその辺は、かけ声だけに終わらせない積極的な取り組みをお願いしたいと思います。
政務官にもう1点伺いたいんですけれども、学校での指導も大変重要なことだとは思いますが、やはりこういった少し微妙な問題になってまいりますと、年の離れた人が指導するということよりも、年が近い、同じ世代同士での知識共有というものが効果的ではないか、こういう話があります。ピアカウンセリングとかピアエデュケーションと呼ばれているものですけれども、そのことをまた学校での取り組みとあわせて進めていく必要があるのではないかと考えておりますが、いかがですか。
■小渕政務官
先ほどから委員が性教育につきまして積極的な御意見がありまして、私自身も、やはり一昔前に比べて、性教育というものに対して、エイズがふえているというお話もありましたけれども、かなり真剣に考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。
その中で、今委員が御指摘ありましたピアカウンセリングということで、自分自身のことを考えましても、例えば、先生に相談できない、親には相談できない、しかし同世代に対しては相談できるということもある中で、こうしたことが1つの効果的な教育方法になっているということは、私自身もそのとおりであるというふうに考えております。
しかし、それを学校における性教育の実施ということにこれから組み込んでいけるかどうかということを考えますときに、やはり今いる担当の教諭と生徒の発達段階なども踏まえて、そうした内容というものを実際どうしていったらいいのかということを具体的に十分に協議する必要があると思いますし、少し上の年代の、指導する立場の、大学生なりそのくらいの年になるのかもしれないんですけれども、その人たちがまた性に関してどのような考え方を持っているかという認識をしっかりこちらとしても承知しなければいけないということもあるかと思います。
また、保護者との共通の理解というものも考えていかなければならない中で、そうしたことはしっかりと留意して行われる必要があるのではないかと考えております。
■西村(智)委員
私が今回質問するに当たりまして、実は大変参考になった資料があります。それは、平成14年度に厚生労働省の科研費による調査が行われておりまして、男女の生活と意識に関する調査ということで、本当に意義深い調査研究が行われているんですけれども、ここでの結論はつまりこういうことなんです。子供に性行為の是非を教えるだけでは不十分だ、親が積極的に自己開示をしオープンに話をすることで、子供が親の性に対する価値観や態度を学び、子供自身が自分の性行動をコントロールできるようになるという関連性が見られたというふうに書いてあります。
ここの研究項目、いろいろありますけれども、例えば、親ときちんと会話をしている、コミュニケーションをとっている子供は、いわゆる最初の性交の年齢が高くなっているんです。つまり、そういったことがだめだということよりも、逆に最初の性行為をおくらせている、こういう調査結果が出ておりまして、やはり基本はコミュニケーションなんだろうというふうに考えているんです。
そこで、高市大臣、時間になりましたが、最後に1点伺いたいんです。青少年に対する性教育というのはどうあるべきだと大臣はお考えでしょうか。
■高市大臣
私が若い人たちに1番知っていただきたいのは、命の重さ、自分の体の大切さ、そういうことを認識していただきたい。もちろん、正しい性知識も持っていただきたいと思います。
それから、先ほど来委員が御指摘いただいておりましたように、割と近い年齢の方々とのコミュニケーション、当然、親とのコミュニケーションも大切でございます。相談できる場所、相手、これをきちっと充実することが非常に重要だと感じました。