■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美です。
きょう案件となっております法案についてまず数点伺いたいと思います。
先ほどの森本議員の質問に大方尽くされているという思いもいたしますけれども、基本的なところに立ち返りまして何点か伺いたいと思っております。
情報通信産業の国際競争力強化という点については、総理も、また総務大臣も言及されておられるとおりですし、私もその点については強化していく必要があるというふうに考えています。もちろん日本として明確な戦略を持つことが必要だということで、ICT国際競争力懇談会が開催されたりですとか、また、このたびはICT国際展開対策本部が設置されるなどなど、あと、後ほど質問いたしますが、局の再編も考えておられるということでありますけれども、それなりに取り組みが内部的には進んでいるのかという感じがいたしますが、実際にこの法案の中身をそういう目線で見ましたときに、本当に十分なのかという思いはやはりするわけであります。
例えば、今回の日米間のMRAの実施に伴いまして、日本から電子通信機器の輸出の手続が簡素化されるわけでありますけれども、これはまた逆に、米国からも我が国、日本への輸出手続が簡素化されるということになるわけでありますけれども、現状、日本の情報通信産業における国際競争力というのは、競争力そのものは余り強くない。先ほど大臣がおっしゃったとおり、技術的には非常に高いものがあるというふうにも私は思っておりますが、この状況の中でMRAの実施がどういう影響を与えることになると考えておられるのか。
■森清政府参考人(総務省総合通信基盤局長)
MRAと貿易との関係ということでちょっと絞ってお答えすればよろしいのかと思いますけれども、一般論として、MRAの制度が入りますと、認証が容易になったり、期間が短縮されたり、費用が縮減されたりということで、輸出入の促進に資するのではないかというふうに期待するわけでございますけれども、現実には、欧州との間の例をとって見てみますと、平成15年2月から認証業務が向こうで始まっております。それ以降の電気通信機器の貿易額を見ますと、大体300億前後で横ばいで推移しておりまして、MRAが入ったから貿易額が急速に伸びるというものではどうもなさそうだ。
もう1つの理由は、最近の企業活動というのは非常にグローバル化しておりまして、第三国に生産拠点を置いてそこから製品を出荷するということになりますと、MRAのそれぞれの国のカウントに入らないという問題も一面の要素としてございまして、日米間につきまして、現在、相互で大体900億円前後のそれぞれ輸出、輸入の構造になっておりますが、これがMRAによって促進されることは期待するものの、どのように数字に反映できるのかというのは、少し長い目で見させていただいて分析をさせていただく必要があるのではないかというふうに現状は見ております。
■西村(智)委員
MRAを使わずに認証しているケースがかなりあるわけでありますよね。ですので今の局長の答弁ということになるんだと思いますけれども、ただ、MRAがきっかけとなって貿易が活性化するということも期待されるということでありました。
安倍総理がこの通常国会の冒頭の施政方針演説で、イノベーションにあわせてICT産業の国際競争力を強化するというふうに発言をされております。また、MRAの活用が必要だというふうにICT国際競争力懇談会の最終取りまとめにもあるわけでありますけれども、やはりその活用を図っていかなければならないということであります。
先ほどの森本委員の話にも出てきたんですけれども、現在、タイですとかフィリピンですとか、そういう一部の国との交渉は行われているんだけれども、それ以外にMRAの交渉を行っている国はないということであります。これはやはり、今局長が答弁された、このMRAを活用していきたい、そういう気持ちといいますか方向性と少し合わないんじゃないか。やはりここは、IT先進国とも言われる例えばインドですとか、市場が急速に拡大すると予想されるロシアなどとの交渉を重点的に行っていく必要があるのではないかと考えておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
■森参考人
今、3つの国を御指摘いただきましたので、その間の事情をちょっと申し上げますと、インドとロシアにつきましては、現時点で、電気通信機器の貿易額は、合わせて、インドですと85億円、ロシアですと116億円という程度にとどまっております。また、中国につきましては、貿易額の総額は2,337億円と大きいのでございますが、中国からの日本への輸出、日本としての輸入額が大体96%、2,242億円を占めておりますので、国内の関係業界からの要望というのが、今の時点ではこの3カ国については上っていない、現状ではメリットが小さいという問題がございますので、これらの国についてはもう少し時間がかかるのかなというふうに理解しております。
■西村(智)委員
総務大臣、ちょっとお伺いをしたいと思います。
今回、こうやってMRAが一般法になるわけでありますけれども、局としては、今交渉を行っている国以外とでMRAの交渉を行っていく上では余りメリットは大きくないのではないかというふうなお話でありました。ただ、これは大臣も同意してくださる、やはり国際競争力というのは総合的に日本として強化をしていく必要があるというふうに考えています。
そういう中で、先日、大臣が、旧郵政省関係の3つある局を再編するというふうな御発言をされました。国際戦略局ですか、そんな名前だというふうに拝見をしたんですけれども、どういう局を設置して、それぞれにどういう仕事を分担するというふうにお考えなのか、イメージだけでもお聞かせいただきたいと思いますが、どうでしょう。
■菅義偉総務大臣
私、昨年に副大臣、そして今回総務大臣になって感じていますのは、このICT分野がどんどんと広がっているということであります。それは、地域はもちろんですけれども、海外においても広がっている。そして、先ほど申し上げましたけれども、我が国経済成長分野の40%がこの分野である。そういう中で、例えば私自身が地方に出ても、地方でも、携帯電話の問題だとか、あるいはブロードバンドの問題だとか、あるいは地上デジタルテレビ化など、そういう問題が非常に多く、私自身、地元の皆さんからも要請を受けるようになりました。
そして、国際戦略というのを考えたときに、今、私ども3つの局があるわけでありますけれども、その中を、いわゆる国際競争力の強化、情報通信の将来を考えたときに、私は、この分野に充てるべきじゃないかなというふうに実は考えまして、この8月末、平成20年度の機構の要求に向けて、現在検討をいたしているところであります。
まさにICT産業の国際競争力の強化というのは、先ほど申し上げましたけれども、携帯電話の技術力があるにもかかわらず、海外に行くと、ノキアやモトローラ、あるいは韓国のサムスンに私どもははるかにおくれている。どこにそういう原因があるのか、そういうことも含めて、全体として情報通信の国際戦略を考える局があってもいいじゃないか、そういう形で、今の郵政の行政郵政局をそういう方向にしていきたい。ちょうど10月1日から郵政も民営化するものでありますから、そういうことも見据えた中で、そのような方向というものを8月の末に機構要求していきたい、こう考えているところであります。
■西村(智)委員
情報通信産業の国際競争力強化の前提は、やはり国内に住む1人1人の国民が安心して、将来への不安感なく暮らせることだというふうに考えます。
そこで、今般問題になっております年金記録問題について伺いたいと思います。
6月の4日に、厚生労働省と社会保険庁が「年金記録問題への新対応策の進め方」ということでペーパーを出されました。ここで、納付記録がない場合の第三者委員会及び検証委員会を設置するという旨がありまして、6月の8日に、総務省に年金記録問題検証委員会というのを発足させましたというふうに通知が出ました。
それで、年金の納付記録の問題を議論しているときに、やはり極めて拙速に過ぎるのではないかと私は思うのですけれども、これは後ほど質問に立ちます山井委員からも指摘があると思いますが、昨日の夕方になって、第三者委員会を設置するということになって記者発表があったということなんですけれども、これはいずれも総務省に置かれるということであります。
振り返って考えてみますと、党首討論で安倍総理が第三者委員会を設置するという考えをあらわされた。その後、最初に出てきたのは年金記録問題検証委員会でありまして、私も地元に帰って何人かと話をしましたら、第三者委員会を検証委員会と勘違いされている方がいらっしゃったんです。これで政府が対応をとったねというふうに思っている人もたくさんいらっしゃったわけでありますけれども、私は、検証委員会で責任追及というのももちろんやるべきことではあろうけれども、本来やるべきことというのは、年金の保険料を払ったという人たち、しかしその納付記録が残っていない人たち、こういう人たちの救済が先なのではないかというふうに考えているんですね。それで、今週になって第三者委員会が設置されるということになったようなんですけれども、これもやはり私はかなり問題点があるのではないかというふうに考えております。
まず最初に伺いたいのは、下村官房副長官にお答えいただくことになるんでしょうか、先週末の検証委員会の立ち上げの方が第三者委員会の設置よりも時期的には早かったわけでありますけれども、私は、これはやはり政府の対応としては順序が逆だったのではないかというふうに考えています。この第三者委員会も非常に問題はありますけれども、検証委員会の方をなぜ先に設置されたのか、この点について伺います。
■下村博文内閣官房副長官
お答えいたします。
今お話ございましたように、6月4日付で「年金記録問題への新対応策の進め方」が厚労省、社保庁連名で発表となりました。その中で、納付記録がない場合の第三者委員会それから検証委員会を設置するということを決めたわけでございます。
今御指摘がございましたように、検証委員会は、年金記録の管理、事務処理に関して今回問題化した諸事項について、その経緯、原因、責任等の検証を行う、そして第三者委員会は、領収書等の証拠がない方であっても第三者委員会によって客観的な状況を把握しながら総合的に判断できるような、そういうものとしてつくることになったわけでございます。そして、検証委員会は、6月5日に総務大臣のもとに設置することにしたところであり、委員7人の人選を終えて、明後日、14日から発足することになりました。
御指摘の、第三者委員会、こちらの方が早くすべきではないかということについては、御指摘のとおりだというふうに思います。
ただ、両方とにかく急いでつくって、年金についての不安感を国民の皆さんから払拭する努力をするということが必要でございまして、第三者委員会については、申し立てをされる方のできるだけ住所地に近いところに設置をして事案に対応することが望ましい、また、数もかなりの数になるだろうということで、中央だけでなく地方における仕組みも含めて準備をしているところでございまして、検証委員会に比べますと規模的にもかなりの規模になる、人選も含めますと、その準備で今、時間が検証委員会に比べてちょっとかかっているところでございます。
いずれにしても、今回の年金記録の問題については、国民の皆さんの不安を1日も早く解消することが求められており、第三者委員会それから検証委員会を早急に立ち上げて、国民の皆さんの信頼を回復するように努めてまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
中身が非常に膨大になって、多少人選にも時間がかかったので検証委員会と比べると設置の時間が少し先延ばしになったということでありますけれども、その割には余りにも何も決まってないんじゃないですか、第三者委員会。余りにも何も決まってないと思います、時間をかけた割には。8日からですから、14日に設置すると6日ですよね。6日という時間、これも短いと思うんですけれども、例えば、どういうメンバーで構成されるのか、どういう手順で審査というのが行われるのか、どういう基準で、いわゆる年金の保険料を払っていた、払っていないということを判断するのか、こういった判断基準も全く示されていない。こういう状況の中で、私は本当に、総理からの指令だけでスタートすることができないんじゃないかというふうに考えているんです。
そもそも、この第三者委員会を総務省に置くことになるときに、何らかの法令上の措置、法的な根拠が必要になるのではないかというふうに思いますけれども、この国会、残り会期もあと2週間です。どういうふうに取り組むつもりですか。法的根拠が必要になるんじゃないですか。
■下村内閣官房副長官
第三者委員会を総務省に設置することにおきましては、総務省設置法第4条第21号の中で、総務省は各行政機関の業務に関する苦情の申し出についての必要なあっせんに関することを所掌しているというのがございます。そういう観点から、総理が総務大臣に、総務省の中に第三者委員会をつくることを指示したわけでございます。
特に、都道府県には管区行政評価局それから行政評価事務所がありまして、また、各市町村には行政相談員約5,000人の方々が配置をされているということからも、申立人に身近な場所に多様な窓口があるということも含めまして、総務省に設置するということにしたものでございます。
■西村(智)委員
苦情の申し出ですよね。総務省設置法、この第4条第21号ですか。苦情の申し出は、それは当然総務省の仕事だと思いますけれども、果たしてそれで年金の受給権についての裁定まで行えるんですか。どうですか。総務省の方から答えていただきたいんですけれども。
■熊谷敏政府参考人(総務省行政評価局長)
お答えいたします。
第三者委員会の判断に基づきまして、総務省が厚労省にあっせんするということでございます。要は意見を提示するということでございます。裁定そのものはあくまでも厚労省、社会保険庁の権限というふうに理解しております。
■西村(智)委員
あっせんを行うというのは、ちょっと違うんじゃないですか。では、報道が間違っているんですか。「年金支給の是非を判断する第三者委員会」と書いてありますよ。これは、6月4日に出された厚生労働省と社会保険庁のペーパーにもそういうふうに書いてありますよ。では、判断しないんですか。
5,000人の行政評価員が全国にいらっしゃるとさっき下村官房副長官がおっしゃった。では、どっちが正しいんですか。その人たちが判断するんですか、あっせんするだけなんですか、どっちですか。
■菅大臣
先ほど私どもの局長からもお話し申し上げましたけれども、この苦情の申し出についての必要なあっせんに関することというのは私どもの業務にもなっておりますので、私どもは、このことを厚労省、社会保険庁にあっせんをする、最終判断はそこでしていただく、そういうことであります。(西村(智)委員「そことはどこですか」と呼ぶ)社会保険庁でしていただくということであります。
■西村(智)委員
いや、おかしいな。柳澤厚生労働大臣も、これまで委員会の答弁で、社会保険庁はもう既にこういう問題を起こしている機関なので、そこで判断するということになると信頼されないだろうから、それ以外のところに第三者委員会を設置して、そこで判断してもらう、こういうふうに答えていたはずですよ。下村さん、どちらなんですか。
■下村内閣官房副長官
行政機関たる厚生労働省、社会保険庁の年金に関する業務についての苦情の申し出があった場合に、第三者委員会における有識者としての公正な判断を踏まえて、総務省が厚労省に対して記録の訂正に関してのあっせんを行うものでございます。
そういう意味でこの第三者機関は総務大臣のもとに置かれているわけであり、これについては、厚生労働省、社保庁もこのあっせんに対して謙虚に対応するということが求められると思います。
■西村(智)委員
2つ伺います。その謙虚というのは何ですか。それを、まず第1点、お答えください。
それからもう1つ。これ、おかしいんですよ。柳澤大臣は、今まで、例えば、社会保険庁に私は年金保険料を払っていると思っていますと、ところが、領収書がなかったりということで門前払いになっている人たちが約2万人、件数が約2万件ですか、あると。その2万件ないし2万人、ちょっとこの辺は記憶があやふやなんですけれども、そういう人たちは、では、新しく設置される第三者委員会に行くことになるのでしょうかという質問に対して、そうだというふうに答弁をされています。
社会保険庁に行く、そこでだめだった、第三者委員会に行く。そこで、総務省のこの行政評価員の人たちが本当にそういうことを判断するんですかね。そういうふうな判断をする。それでまた社会保険庁の方にあっせんをされる。また社会保険庁の方に戻る。これはたらい回しじゃないですか。何の根本的解決策にもならないと思いますけれども、そんなずさんなやり方で、本当にこれで救済できるんですか。
■菅大臣
いわゆる第三者機関というのは、例えば社会保険庁の中に、厚労省の中に設けたとしても、そこで審査したことについて尊重をして、最終的な判断というのは社会保険庁になるわけでありますから、私ども総務省において、そうした苦情の申し出、あるいはその必要なあっせんというものを第三者委員会の中で方向性を出して、そのことについて社会保険庁の中で私どもは尊重してほしいということであります。
■西村(智)委員
謙虚についてお願いします。
■下村内閣官房副長官
先ほど御指摘がございましたように、6月4日の「年金記録問題への新対応策の進め方」の中で、第三者委員会の位置づけでございますけれども、「社会保険庁や市町村に記録がなく、ご本人にも領収書等の証拠がない場合であっても、銀行通帳の出金記録、元雇用主の証言など周辺の状況に見られる事実を基に、第三者委員会によって、総合的に判断を示していただく。」それで、この総合的に判断を示していただいたことに対して、厚労省、社保庁が対応していただくということであります。
■西村(智)委員
謙虚の意味を答えてください。
■下村内閣官房副長官
これは、第三者委員会によって総合的な判断をされたことに対して、基本的にはそれに対応していただくという意味で、謙虚と申し上げました。
■西村(智)委員
いや、これはちょっとまずいですよ。(発言する者あり)いや、先ほど申し上げましたけれども、国際競争力の確保のためには、国内で暮らす1人1人の国民の社会保障制度は重要ですから、私は質問をしております。
そういうあいまいなやり方でこの年金の納付記録の問題に幕引きを図ろうとするのはやめていただきたいんですよ。
では、最終判断は一体どこがするんですか。本当にこれでは解決策にならないじゃないですか。本当に判断が行ったり来たりですよ、第三者委員会、社保庁。それで、その第三者委員会の総合的判断で、それを基本的に踏まえてもらおうといったって、基本があれば例外がある。行政相談窓口のあっせんがどこまで法的拘束力、法的効果を持つかというのは、これはわからないわけですよね。
どの程度拘束力を持つわけですか。これは、あっせんされたらきちんとそれに従って社保庁は仕事をしなければならない、そういう厳しい拘束力まで持つものなんですか。
■熊谷参考人
お答えいたします。
あっせんにつきましては、法的強制力というものはございません。ただ、この第三者委員会の意見に基づいて総務省が厚労省、社会保険庁にあっせんした内容については十分尊重されるというふうに考えております。
■西村(智)委員
そんな、善意で仕事してくれるはずだという局長の答弁で、今この年金記録の問題で本当に心配している人たちが納得できますか。できないでしょう。
■菅大臣
私どもの第三者委員会であっせんをしたことについては、当然私は社会保険庁で尊重してくれるものと思っていますし、それは私どもは社会保険庁から権限を奪うわけではないわけですから、あくまでも権限というのは社会保険庁にあることは法的にも当然のことであります。
これは何も私どもに置くとか社会保険庁の内部に置くということではなくて、そういう形の苦情申し出について私どもはあっせんの権限があるわけでありますから、そうしたものについては当然社会保険庁において尊重してくれる、そういうふうに考えます。
■西村(智)委員
苦情を受け取るだけだったら、今の行政評価局だけでいいでしょう。わざわざ第三者委員会を設置することはないでしょう。
これで年金問題に終止符を打つなんという考えはやめていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので終わります。