■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美です。
我が党の理事が申し上げているとおり、この委員会、きょうの委員会は、委員長の職権によって立てられている委員会であります。冒頭、強く抗議をいたします。
しかも、理事会で、年金保険料のサンプル調査、特殊台帳とコンピューター記録の整合について3,000件のサンプル調査をされたようでありますけれども、この結果についても理事会に任されているということでありますが、全く出てこない。これを出さない限りは審議が進まない。そうではありませんか、委員長。冒頭、強く抗議をいたしますが、委員長のこれについての見解を伺いたいと思います。
■櫻田義孝委員長
職権で開会するということは現在の議会のルールによって認められたものでありますので、議会のルールに基づいて、本日、委員会を開催させていただいております。(発言する者あり)
■西村(智)委員
委員長、この国会、本当にこの厚生労働委員会は、大変重要な法案が大変多く提出されております。その委員会の中で委員長職権でこれほどまで多くの委員会が立てられているということ、これはもう前代未聞ではないでしょうか。今後の議会運営、憲政の歴史に大きな汚点を残すことになるということを強く申し上げたいと思います。
貴重な時間でありますので、年金の保険料問題についてはこの後の委員からも質問があると思いますので、私は、きょうの議案となっております労働契約法以下3法案について質問をしたいと思います。
私がきょう質問させていただきたいと思っておりますのは、労働契約法の中でも、特に就業規則といわゆる有期雇用契約についてであります。
私は、この国会の前半で提出されましたパート労働法、これについても民主党としての対案を提出し、この委員会にかけていただいて議論をいたしました。その中で、これまでに雇用が多様化し、そして大きな雇用の二極化が進んでいる中で、一体有期契約をどう取り扱うのか、このことについて、依然として私は立法府の意思というのは明確に示されていないというふうに考えています。一体このまま放置するのか、それとも、この雇用の二極化を何としてももう少し改善して均等待遇を実現するという方向に向いていくのか、そのことが明確になっていないまま今回の労働契約法案が提出されておりまして、この法案の中に期待するところも私も少なからずあったわけなんですけれども、中身的にはやはり弱い部分が非常に多いというふうに思います。
まず1点、この労働契約法案の中で就業規則についてでありますけれども、法案要綱、それから法案の実際に出てきている条文、見比べますと、大変大きな変更が6カ所にわたってあるというふうに承知をしております。このそれぞれの変更点についても、本来であれば1つ1つ伺っていきたいところでありますけれども、きょう伺いたいのは就業規則の変更であります。
この提出されております第7条で、就業規則が存在しない事業所において、使用者が新たに就業規則を制定することによって労働条件の変更を行うことを可能にするものではないかという点について危惧をいたしております。これは審議会の中での基本合意、そしてまた法案要綱と異なる部分ではないかと考えますが、これについて政府はどのように答えてくださるでしょうか。
■青木豊政府参考人(厚生労働省労働基準局長)
今委員御指摘になりました法案の7条でございますけれども、これは、現在多くの企業で就業規則の作成によって集団的に労働条件の決定が行われておりますけれども、その就業規則の労働条件が個々の労働者の労働契約の内容となっているのかどうかについて法律上は明らかでないのが現状でございます。
今般、7条を規定しましたのは、このため、労働契約の内容である労働条件について労使で特段の取り決めをしていなかった部分について、就業規則に定められている労働条件が合理的なものであり、かつその就業規則を労働者に対して周知させたという場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものとするということ、それから、労働者と使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していたという場合には、その合意が就業規則の定めに優先するということを明らかにするということでございます。
そういうことで、就業規則の法的効果とか、あるいは労働契約上の権利義務関係を確定させて、労働関係を安定させるという趣旨でございます。
今お話ありました、これまで就業規則を制定していなかった企業においてはどうかということでございますが、新たに就業規則を制定した場合についてもこの7条の規定は適用されるものでございます。労働政策審議会におきまして諮問した法案要綱では、ここの「周知させた場合」というのが「周知させていた」という文言を用いておりますけれども、この場合におきましても、その法的効果が生ずる時点が不明確でありますけれども、第7条の規定が適用されることには変わりはありません。
そういう意味では、御質問になりましたけれども、諮問要綱あるいはこの法案の要綱あるいは法案の条文そのものに変わるところはないというふうに思っております。
ただし、個別具体的な事情により判断されるものでございますけれども、一般的には、既に就業していた労働者との間では、個別に労働者と使用者が合意して労働条件を決定していることが多いというふうに考えられますので、このような場合には、第7条のただし書きの方が適用されまして、その両者の合意が優先されるということになります。
したがって、そういう場合には、就業規則の新規作成によって使用者が自由に労働条件を変更することができるということになるものではないというふうに考えております。
■西村(智)委員
今局長は、「周知させた」と「周知させていた」と、変わりはないという趣旨の答弁だったかと思いますけれども、それだったら、わざわざ変えて条文をつくる必要はなかったわけですね。この点については本当に強く申し上げたいと思います。いかがですか。
■青木参考人
私ども、法案の条文をつくる際には、内閣法制局において条文の審査をしてもらうということになっております。この際に、具体的な条文について御指摘のあったような変更になったわけです。
この理由につきましては、「周知させていた」、諮問要綱ではそうなっているわけですけれども、これではこの7条の法的効果の発生時点が不明確だということで、その発生時点を明確にするため、「周知させた」に変更したものでございます。
したがって、時点が明確になったということでありまして、その余のことについて変わるところはございません。
■西村(智)委員
この就業規則というのは、これは当然のことながら、使用者が主となって作成することになるわけでありまして、今の労働の現場の実態からいたしますと、やはり労働者がなかなか物を言いにくいという性質のものだと思うんですね。言ってみれば、使用者と労働者の関係でいうと、より弱い立場に置かれている労働者の権利保護のために、やはりこういった条文は、あいまいにするのではなくて、しっかりと趣旨が明確になるような書き方をすべきだったのではないかというふうに強く申し上げたいと思います。
また、この就業規則でありますけれども、これは民間の団体が行った調査でありますが、およそ30%の働く人たちが実は就業規則を見たことがないというふうに答えております。実態はどうなっているのか。これは、厚労省の方でも状況は把握しておられることと思いますけれども、就業規則をまだ見たことがない、どこにあるのかもわからないという人たちが、推計いたしますと全労働者の約3分の1いるというときに、この労働契約法案で本当にそういった実態に対応できるのか。就業規則を周知させるという点からも、本当にこの法案で実効が上がるとお考えなのでしょうか。
■青木参考人
今御指摘になりましたように、就業規則を周知させるというのは大変重要なことだというふうに思っております。
今回の労働契約法案におきましても、就業規則の効力発生のための要件として、周知をさせるということを求めております。したがって、法律的に言えば、使用者が就業規則を周知させずに、その結果、今お触れになりましたような、労働者が就業規則を見たことがないというようなことになっているのであれば、使用者は就業規則の効力を主張することはできないというふうに考えております。
ただし、使用者が就業規則の周知の手続を踏んでいるのであれば、個々の労働者が現実に就業規則を見たことがあるかどうか、あるいは知っているかどうかまでは問われないという規定でございます。これは、現在までの判例法理でなっているところでございます。
そういう意味でも、周知手続というのは大変重要なことだというふうに思っております。使用者が就業規則の周知手続をとっていないという場合には、現行の労働基準法の106条にも違反ということであります。そのような事案を把握した場合には、是正指導をいたしているところでございます。
周知というのは、具体的に指導している中では、常時各作業場の見やすい場所に掲示しろとか、あるいは備えつけるというようなことによって実効を図るとか、労働者に現実に交付をするという場合も多くあるわけですが、交付をする、あるいは、電磁的に、パソコン等に入れていつでも見られる状態にするというようなことなどの方法によって、希望すればいつでも就業規則の存在、内容を知り得るようにしておくということを指導いたしておるわけでございます。
そういうことで、私どもとしては、就業規則の周知については、今後ともしっかりと指導していきたいというふうに思っております。
■西村(智)委員
ただ、就業規則に含まれておりますところの労働条件一般でありますけれども、これは、働く人たちからのいろいろな訴えがありますね。私のところにも、例えば女性労働者が直面している問題について、本当に細かい具体的なケース、これは100近く手元に寄せられているんです。労働条件、使用者の方から一方的に、これは合理的な変更ですということで変更を強いられているケースというのが極めて多い、これは雇いどめも含めてであります。
そういう実態が今まさに現実の職場に横行しているということからいたしますと、やはり、就業規則を重視するということはよろしいんですけれども、そこに、それが例えば使用者側にとって一方的に有利に使われないような歯どめをかけていく必要が非常にあると私は思っています。
そういった目で見ましたときに、第9条のただし書き及び第10条でありますけれども、第9条のただし書き以下は、労働条件の変更ができない、ただし、次の場合はこの限りでないということで、第10条の4つの要件を勘案して合理的と判断されるときは変更できるんだというふうになっておりますけれども、この部分は労働者保護の観点から不必要な条文ではないかというふうに私は考えているんです。この点について削除するお考えはなかったんでしょうか。
■青木参考人
労働契約法案におきましては、労働契約は労働者及び使用者の合意により成立し、変更されるものであるという旨の合意原則をまず明確に規定しております。
そして、その上で、就業規則による労働条件変更に関する最高裁判所の判例法理に沿って、まず原則として、使用者が労働者と合意することなく就業規則の変更により労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできない旨をまず規定しております。さらにその上で、就業規則が労働者に周知されていること、そして就業規則が合理的であること、そういう場合に、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとするというふうに規定しております。
このように、今回の労働契約法案は、労働条件の変更に関して、労働者と使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿ったルールとするものでございます。今お触れになりましたような、使用者側にとって都合のよい労働条件の変更を認めてしまうというようなものではないというふうに考えております。
就業規則による労働条件の変更ができる場合の合理性の判断要素として、労働者の受ける不利益の程度という個々の労働者にとっての影響でありますとか、あるいは労働組合等との交渉の状況という就業規則の変更に当たっての労使協議の状況を明示しております。労働者の保護に十分配慮したものとなっているというふうに考えております。
委員も御指摘になりましたように、我が国の一般的な労務管理実務におきましては、就業規則によって労働条件を集団的に設定することが行われておりますので、労働条件の変更というものも就業規則の変更によって行うことが広く行われている。したがって、こうした就業規則に関する実務を適切なものとするようなルールをこの法案に盛り込むということが必要だというふうに考えております。
■西村(智)委員
そうしましたら、この第10条について具体的に伺いたいんですけれども、私は、さっき局長は労働者にとって不利益な変更を想定しているものではないとおっしゃったんですけれども、そうならないとも限らないのが労働行政の難しいところだと思うんですね。十分御承知のことだと思いますけれども、本当にひどい実態が、どんどん本当に複雑化して発生してきているわけですから、そこのところについてはしっかりとまた目を光らせていっていただきたいと思います。
第10条について、2点伺いたいと思います。
第10条で、合理的か否かを判断するいわゆる考慮要素、これが4点示されているわけなんですけれども、これは今までの判例、第四銀行の最高裁判決だそうですが、7つの考慮要素が挙げられていたと承知をしています。この最高裁判決の7つから、今回、法案の中では4つに絞り込まれているわけですが、判例法理に変更があったのかどうか、それを伺いたいのが1点。もう1つ、「労働組合等」と書いてあるんですけれども、この「等」というのは一体何を指すのでしょうか。
■青木参考人
第10条の考慮要素の御質問でございますけれども、第10条は、私どもは、第四銀行事件最高裁判決で示された判例法理に沿って、これを明確にしようということで規定したということで考えております。就業規則の変更が合理的であることと変更後の就業規則を労働者に周知させることを要件として、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとするという効果を付与しようというものでございます。
それで、お触れになりました第四銀行事件の最高裁判決で述べられた合理性を判断する際の考慮要素、7つございます。それぞれ、変更の必要性であるとか、内容の相当性でありますとか、代償措置その他労働条件の改善状況とか、労働組合との交渉の経緯だとか、他の従業員の対応でありますとか、一般的状況とか、それから労働者がこうむる不利益の程度というようなものもるる挙げられておりますけれども、この要素7つの中には内容的にお互いに関連し合うものもございます。このため、各条文では、関連するものについてはこれを統合して列挙をしたというふうなことでございます。したがって、10条の規定は、判例法理に沿ったルールを判例法理に変更を加えることなく規定したというふうに考えております。
それから、第10条の中にある「労働組合等」の「等」という御質問がございました。この「労働組合等」には、多数労働組合あるいは過半数代表者は当然でございますが、それのほか、少数労働組合とかあるいは労働者で構成される親睦団体など、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるというふうに考えております。
■西村(智)委員
続いて、第17条、いよいよ有期契約の方に移りたいと思いますけれども、「期間の定めのある労働契約」について、ここの第17条2項、「使用者は、」「労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」というふうに書かれてあります。
私は、これは一体どういう効果を生み出すんだろうかということで、右から左から斜めから、いろいろな読み方をしました。いろいろな読み方をしましたし、厚生労働省の方からも説明に来ていただきましたけれども、効果があらわれるというものではないという結論に達しました。つまり、「配慮しなければならない。」ですから、配慮していればいいわけで、配慮していますと言えばいいわけで、これはいわゆる罰則ということもないし、違反してもすぐどうなるというものではない、ただ書いてあるだけになるのではないかな、そういうおそれの強い法律だと思っております。
申し上げましたとおり、有期契約雇用については本当に大変大きな、多くの問題が出てきております。有期契約の皆さんは、例えば未払いの残業代を請求したら雇いどめに遭ったとか、保険に加入してほしいというふうに申し出たら不利益変更をされたとか、あるいは有給休暇を取得したいと言ったら雇いどめに遭った、社会保険に加入したいと言ったら和を乱す人だと解雇された、こんな例が本当に枚挙にいとまがないということになっています。
こういったような非正規雇用の労働条件の不利益変更、雇いどめを含めて、こういったことが横行している現状で、やはりきちんとこれに歯どめをかける、雇いどめのおそれなどがないというふうにきちんと歯どめをかける必要があると思うんですけれども、今回、この法律の中で、例えば不当や不法な使用者側の行為に物を言ったときにそういう雇いどめのおそれがあるわけなんですけれども、そういったことになりませんよという担保は一体この法律のどこでなされることになるのでしょうか。
■青木参考人
労働関係紛争を未然に防止するため明確なルールを定めるというのがこの労働契約法案の大きな目的でありますけれども、委員がお触れになりましたように、個別の労働紛争の中で、やはり何といっても労働契約の終了の場面、とりわけ有期雇用のような非正規雇用の場合では、お触れになりましたような雇いどめというのが圧倒的にトラブルとして多いわけでございます。これをまずやはりきちんとしたルールのもとで、できるだけトラブルを少なくしていくということが大切だというふうに私も思っております。
それで、確かに、有期労働契約労働者で物を言うと雇いどめのおそれがあるという、どこにそうならない担保があるんだという御指摘でございますけれども、この労働契約法案におきましては、雇いどめ、これは使用者による有期契約の更新拒絶ということでありますけれども、この雇いどめ自体を制限する規定は確かに設けられておりませんけれども、権利濫用に該当する解雇は許されないということについては16条に規定をしております。
有期労働契約の雇いどめに関する裁判例においては、その有期労働契約が期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる場合、あるいは労働者に労働契約期間満了後も雇用関係が継続すると期待することに合理性があると認められるような場合には、解雇に関する法理を類推適用いたしまして、その雇いどめが客観的に合理的な理由を欠いて社会通念上相当であると認められない場合は無効になるという判断が行われております。
したがって、仮に不当、不法な使用者側の行為に物を言ったことに対する雇いどめが行われた場合には、その有期労働契約が今のような期間の定めのない労働契約と同視するようなことができるような場合には、権利濫用に該当するような対応であると認められる場合も多いと思います。そういう場合には、この労働契約法案の第16条の規定が類推適用されて、権利濫用に該当する雇いどめとして無効になるという判断が行われるというふうに考えております。
それから、17条2項が御懸念があるということでございましたけれども、17条2項の規定自体は、確かに配慮しなければならないという規定でございますけれども、これらの配慮を行ってもなお、結果として短い期間の労働契約となった場合とか、配慮しなかったことをもって直ちに契約期間が変更される等の特定の効果が生じるものではございませんけれども、契約期間を細切れにしたことを原因とする紛争が起きて、雇いどめが安易になされたというような場合には、裁判所等において、この配慮を行ったことが当然考慮をされるものというふうに考えております。
■西村(智)委員
当然考慮されるものと考える、それはちょっと余りに楽観的なのではないかなというふうに思うんですね。大体、第16条の解雇においても、社会通念上相当であると認められない場合は無効とするということで、こういう書き方だといろいろな誤解、誤った解釈を生みかねないものだと思います。私たち民主党の方ではこの点についても修正などを今考えておるところでありますけれども、今後の議論にゆだねたいと思います。
厚生労働省御自身が平成17年に有期契約労働に関する実態調査結果というのを行っておりますので、既に御承知のことと思いますけれども、企業が有期契約労働者を雇用する理由として1番多いのは何か。1番は人件費節約のためであります。
本来、有期契約、有期雇用というのは、例えば仕事が本当に忙しい一時期に雇用するとか、あるいは、一時的に専門的な知識が必要になったからそういった知識を持っている人を取得するとか、本来そういった趣旨から始まったものだと思うんですけれども、やはりこの間の規制改革の流れの中で、有期雇用契約というのはどんどん拡大をされてきた。しかも、その有期雇用の、雇用の終了が容易だということで企業が注目をしてどんどん拡大をしてきたという経過があるのでありまして、これまで民法や労働基準法が想定していたものとこういった労働の実態はもう既に著しく乖離をしていると私は思います。
有期雇用を望む労働者は少ない、これも厚生労働省の調査から明らかです。正社員として働きたいが働ける職場がないと答えている男性の契約社員が有期雇用契約で働いている、これが非常に多いということでありますし、そういったことを考えると、有期雇用のいわゆる入り口規制そのものが必要なのではないかというふうに考えるんですが、今回、労働契約法案に入らなかった理由を教えてください。
■青木参考人
有期労働契約につきましては、確かに御指摘の面もございますけれども、もう1つ、契約期間中は雇用が保障されるからとか、あるいは勤務時間、日数を短くしたいのでといった理由でこの就業形態を選択している者が相当数存在いたしております。
有期労働契約については、おっしゃるように、使用者側のニーズもございます、当然ございますが、それのみならず、労働者の側にもニーズがあるものでございます。したがって、有期労働契約が良好な雇用形態となるようにするということがまず大切ではないかというふうに思っております。そして、労働者が安心して働けるようにすることが重要であるというふうに思っております。
したがって、有期労働契約を締結することができる理由を制限する、入り口を規制するということについては、やはり労使双方のニーズにもこたえられなくなるので、引き続き慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
■西村(智)委員
有期雇用の、その当該期間を定めた理由を明示することを少なくとも使用者に義務づけるべきではないかというふうに私は考えております。この点についてもう1回御答弁いただきたいのが1点。
そして、大臣、最後に、今局長の方から、使用者側のニーズがあると同時に労働者側のニーズもあるというふうに答弁がありました、有期雇用契約について。それは、働く人たちにとっても、本当に短時間あるいは短期間働きたい、そういうニーズがあるということは当然のことだと思いますけれども、しかし、問題は、そういったニーズというレベルから話がどんどん外れていって……
■櫻田委員長
西村智奈美君に申し上げます。
申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。
■西村(智)委員
既に有期雇用契約のトラブルが非常に多くなってきているわけでありますので、ここは、やはり私はもう1度原点に返って、すべての人たちに働きに見合った同一価値労働同一賃金の原則、均等待遇原則をこの契約法の中に盛り込むべきだったのではないかというふうに考えておりますが、その点について伺って、終わります。
■櫻田委員長
申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔に答弁願います。
■青木参考人
有期雇用についての理由明示についての御指摘でございますけれども、これは、今回は、先ほど申し上げましたように、契約更新時などの契約終了場面における紛争が多くなっているので、まずこれをきちんとルール化しようということで、今回法案にお願いしております。
それ以外のお触れになりました理由明示のようなものにつきましては、労働政策審議会におきましても、就業構造全体に及ぼす影響も考慮して、良好な雇用形態として活用されるようにするという観点を踏まえつつ、引き続き検討するということで、全体として引き続き検討ということになっておりますので、今後もこの答申を踏まえて必要な検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
■柳澤伯夫厚生労働大臣
有期雇用を含めましていろいろな雇用形態がある中で、それぞれについて、これを良好な雇用形態にしたいという観点から、労政審においても諸般の検討が行われました。
その際、雇用形態あるいは雇用の実態に応じた労働条件について、均衡の考慮ということも審議が行われたこと、これは以前パートタイム労働法の改正につきましても委員からそういう御質疑があり、私もお答えしたわけですけれども、結局、労働者側の代表者からはそうした御主張があるということの中で、使用者代表委員からは、具体的にどのような労働者についてどういうことをしろと言っているのかということについて不分明であるということから、労働契約法制の中に位置づけられないという御主張があって、コンセンサスに至らなかったということでございます。労政審としても今後引き続き検討の課題だというふうになっておりますので、今後、この答申を踏まえて必要な検討を進めたい、こういうことでございます。
それから、同一価値労働同一賃金の原則につきましては、これもまた以前もお答え申し上げましたように、日本が職務給でないということで、給料が職務以外の人材育成や処遇の仕組みを全体として考えて設定されているということから、そのような客観的な賃金の分析あるいは評価ということが前提になるその前提が欠けている、確立していないということから、直ちにこれを導入する、あるいはそれをうたい込むということは現状にそぐわない、そういうことを御指摘申し上げる次第でございます。
■櫻田委員長
以上をもちまして西村智奈美君の質疑を終了いたします。