■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美と申します。
きょうは、参考人の皆様、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。全部メモがとり切れなかったんですけれども、後で議事録をよくまた読みまして、今後の法案審議の参考にさせていただきたいと思います。本当に貴重な御意見を、大所高所から、また細かいところまでいただいたというふうに考えております。
今回の健全化法案でありますけれども、私は、国と地方の関係を見直す上で、大きなパラダイム転換のきっかけになるのではないかというふうに実は考えております。約50年ぶりの大型改正ということになるわけでありますけれども、言ってみれば、この50年間というのは、長期安定政権があり、そしてまた中央集権によってこの国はコントロールされ、そして高度経済成長が行われてきた。この3つが進んできた、こういう50年間だったんだろうと思います。
しかし、もう時代は大きく変わりまして、高度経済成長というよりは人口減少、そして国際化など、本当に社会の潮目が大きく変わっている中で、国と自治体のあり方を大きく変えなければならない、変えざるを得ない、そういう時期にあるんだろうとも考えています。今回、竹中総務大臣の時代からの議論もあったんでしょうが、言ってみればこれは時代の必然たる法案ではないのかなとも考えております。しかし、その大きなパラダイム転換のきっかけとなり得る法案である割には、いささか議論が小さいなというふうに感じております。
特に、3人の参考人の方々が指摘してくださったいわゆる基準、指標についてでありますけれども、早期健全化基準と、それから財政再生基準、この2つについては、この法律の中ではなくて政令で定められるということになっております。もっと地方からいろいろな声が上がってきていいというふうに考えておりますし、また、住民にしっかりとこのことを公開して、議論にも加わっていただいて、もっと大きな議論を巻き起こしていく必要があるのではないかと考えています。
今ほど、いろいろな重要な点、御指摘をいただきました。早期に、来年度の予算編成の都合もあるので、ことしの秋ぐらいには示していただきたいというような御意見ですとか、あるいはその規模や実態に合わせて示すべきであるというようなことでありますとか、また、実際にその指標をつくったときに、それをどう評価するのか、分析するのか、この問題がまた別の軸としてあるという話ですとか、他の自治体と比較できるようにすべきだというような話ですとかいろいろあったわけなんですけれども、伺いたいのは、この基準づくりのプロセスについてであります。
この指標づくりのプロセス、つくるまでのプロセスがどうあるべきで、そしてまた、つくってからのプロセスといいますか、つくって以降の基準の生かし方、使い方、また見直しの仕方、これについてはどうあるべきだとお考えなのか、3人の参考人の方々にそれぞれ伺います。
■井戸敏三参考人(全国知事会総務常任委員会再建法制等問題小委員会委員)
私は、この健全化法は地方自治を促進する意味での1つの基礎的な装置ではないか、こう思っております。
といいますのは、地方公共団体の自主性や自立性がこれからますます高まっていくということになりますと、その財政運営につきましてもその団体自身が責任を負わなきゃいけないわけであります。そのときにその責任をどのように負っていくかという、その最後のシステムをきちっと用意しておかないと、その地方団体自身の財政運営上の責任度合いが見えてこないということになりますので、そういう意味からすると、自主決定、自主責任、そして自主経営、そういう土俵を提供する1つの基盤をなす制度として位置づけられてしかるべきではないか。だからこそ事前情報の提供が制度化されている、このように私自身は理解をいたしております。
今おっしゃいました具体の数値の作成に当たって、我々も、知事会や6団体自身も、自分たちが置かれている状況を踏まえながら意見を申し上げていこうと思っておりますし、総務省の担当の方も、できるだけそのような協議の場をつくって相談していこうと言われておりますので、そのような過程がとられていくだろうと思います。
本来ですと法律でもっと明確に書くべきではないかという御指摘がありましたが、数値の成り立ちそのものが非常にいろいろな諸要素がありますので、私は、技術的にも書き切れなかった、あるいは実態的にも追加の事情等も踏まえる必要があるというような御考慮があったのではないか、このように拝察しています。
あと、指標の運用等につきましては、先ほど来、健全化段階、再生段階のトリガーとしての機能もあると思いますが、私が評価しているのはその前の段階、当該団体の置かれている財政的な状況が公開されていく、そしてその公開に伴っていろいろな意味での評価の対象になっていく、そしてそれが団体の運営に対する県民、市民の判断基準になっていく、そのような意味での運用を期待していきたい、このように考えております。
■宮脇淳参考人(北海道大学公共政策大学院教授)
お答えいたします。
今御指摘いただきましたように、この法案というものは地方分権、地方自治を確立する上での1つの基礎になる、そういう法案であろうというふうに私は思っております。
といいますのは、御承知のように、地方自治体におけます普通会計、こういったところの自由度というのが現状におきましては非常に小さいところがございます。したがいまして、そういった自由度が小さい中で、第三セクターですとかそういったところに新たな政策の展開というのを求めていく、そういう傾向があるわけですけれども、これから分権が進んでいく中におきましてはやはり財政面でも自治というものが求められるわけで、その意味で、そうした住民のチェック、議会のチェックというものを支えるための1つの仕組みとしてこういった法律ができていくのではないかというふうに思っております。
ということは、指標をつくる、あるいは指標をチェックするに当たりましても、地方自治体あるいは住民の皆様がわかりやすい、そういった観点からの指標づくりというのはやはり必要であろうと思っております。
ただ、先ほども御紹介させていただきましたように、指標というのは絶対的に正しいというものはございません。したがいまして、できた後のチェックというものがやはり常に必要であろう、そのチェックにつきましても、第三者的なところが継続的にチェックをし、その指標の体温計としての役割というのが本当に適切なのかどうなのかということを開かれたプロセスの中で整理していくことがやはり必要なのではないかというふうに思っております。
■宮内忍参考人(日本公認会計士協会副会長)
お答えいたします。
私どもも、先ほど申しましたように、指標自体が、毎年毎年変わるようなことがあっては困るわけですが、未来永劫変わらないというようなものには恐らくならないであろう、それから、まさしく今回これが初めてトライするという局面にございますので、これを継続的に、適正な運営が行い得る指標になっているのかどうかについての開かれた機関における再チェックという仕組みを用意して進めていくことが必要になるのではないかというふうに思っております。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
続きまして、それぞれの参考人の方に伺っていきたいと思いますが、まず、宮内参考人からお願いいたします。
私も、実は地方議会におりまして、監査委員の制度、多少なりとも近くで見ておりました。これは本当に機能しているのかなと思うことがしばしばあります。むしろ、外部の監査の方々の方が厳しい意見を述べておられることが多かったように記憶をしております。大きい自治体ですと、議員と都道府県、市町村のOBなりが入り、あるいは場合によっては有識者の方が入る、こういう構成になっているんだと思うんですね。
この監査制度の現状について、公認会計士のお立場からどんなふうにごらんになっておられますでしょうか。知事に伺った方がよかったかもしれません。
■宮内参考人
実は、監査委員になっている公認会計士もおりますところから、どのように回答していいのか、ちょっと私も困っております。
かなり多くの行政OBの方が監査委員になられているというのが実態であろうかと思います。この辺は、監査機能がなければいけないということで制度というのはつくられてきております。企業においても監査役監査というのが同じように存在しており、この監査役監査が機能しているのかどうかというのは常に問題になり、なおかつここをエンパワーメントする仕組みというのが常に構築され改革されてきているという歴史を持っております。そういう意味で、監査委員制度が今のままで大丈夫なのかという点に関して言えば、これをより機能化するためにどうしたらいいのかという問題を抱えておるのではないかと思います。
また、先ほど申しましたように、これの補完的な役割として包括外部監査制度というものも入ってきているということからすると、人によっては二重になっているのではないかという意見を述べられる方もおられるかと思いますが、もともとの機能自体は監査委員監査よりもより限定されたものに包括外部監査制度はなっておりますので、そういう意味では、今の仕組みとしては必ずしも二重になっているわけではないというふうに感じておるところでございます。
お答えになっているかどうか、ちょっとわかりませんが。
■西村(智)委員
私、自治体の中にある監査委員制度、これはもうちょっとやはり機能を強化していく必要があるのではないかと感じております。常勤で、常にチェックできるわけですので、ここはもうちょっと何とかできるのではないかなというふうに感じておるんですけれども、この点について宮脇参考人にも御意見をお伺いできればと思います。
■宮脇参考人
監査に関する御質問でございますけれども、私も、地方自治体に対しますそういう監査のあり方ということは、やはりもう少し見直していかなければいけないというふうに思っております。
今、外部監査につきましては包括と個別ということで御指摘ございましたけれども、ここで行っている監査の領域というのは、ある意味でいいますと非常に限定的な性格を持っております。自治体に対します全体的な財務諸表も含めた監査ということになりますと、外部監査ということではなくて、きちっと継続的にやっていくという機能が必要でございますので、先生御指摘の監査機能の強化といったようなことはやはり大きな課題であるというふうに私は思います。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
先ほどいろいろな意見を述べていただいた中で、公営企業ですとか第三セクター、公社についてこの法律が適用されることになれば、恐らくかなり厳しい状況になるのではないか、そういう御意見があったかと存じます。
私も、実際に多くの例えば地方の公立病院などを見ておりますと、まあ間違いなく、間違いなくといいますか、指標がどうつくられるかというところがまず問題になるわけでありますけれども、実際にかなり厳しい経営を迫られているというふうに承知をしております。
先ほど債務調整についても少しお話が出ていまして、議論を聞きながら考えたんですけれども、つまるところ、何が地方自治体にゆだねられるべきなのか、国と地方との関係あるいは公と民との関係で、何が地方自治体にゆだねられるべきなのかという議論がやはり放置されたままになっているところからこういった問題が出てきているのではないかなと考えております。
ここは井戸参考人に伺いたいんです。
そういったいわゆる地方行財政改革、今、第二期分権改革の中にあると言われているわけなんですけれども、この点の議論がもう少し進むべきなのではないか、そしてその上で再建法制の中での基準づくりも考えられていくべきではないかな、私はこんなふうに考えているところなんですが、井戸参考人、いかがお考えでしょうか。
■井戸参考人
非常に大事な御指摘だと思います。
といいますのは、今の日本の国、地方を通じた仕事のやり方というのは、二重、三重になっているんです。道路1つつくるのを見てみましても、市町村道も国の補助金と市町村の出し分でつくっている。県道もそうです。2けた、3けた国道の管理は県がやっていて、県道の整備も、県分のほか国の補助金を受け、あるいは受益者負担で市町村からももらっている、こんな構造になっているわけですね。つまり、1つの事務にそれぞれのレベルの政府が関与しているという形になっています。
これを、截然と1つの事務は1つの政府に分けるべきだというのが実を言うと事務配分の基本ではないか。そこがきちっと分けられれば、国の関与や国の権限でもって地方を縛るということもなくなっていく。そのためには、事務配分の原則を明確にして、内政は基本的に全部任せてしまえというぐらいのことを柱に立てて、そしてそれを賄える財政システムをつくり上げていくということが基本だと思っております。
ただ、これはこれからの大議論でありますので、地方分権を進める上で考えていかなければいけないと思いますが、今の時点では、どうしても、そういう二重、三重関与の各種政府がタッチしているという事務、介護保険にしても、半分は国が持ちますが、4分の1ずつ県と市町村が持ち合って、そして全体の半分を保険料で賄っているというような、こういう構造ですので、ですから、それを急に改めろというわけにもいきませんが、それはそれで前提としながら考えていかざるを得ないのではないか、このように思います。
それと、つけ加えさせていただきますと、監査委員制度については、監査委員の監査が、従来は財務監査中心でしたが、ようやく事業評価を含めた事業監査も入ってまいりました。ただ、どうしても財務監査中心であった時代の名残が続いておりまして、監査委員事務局や監査委員さんの視点が、やはり財務は絶対にきちっとしておきたいという点に重点が置かれている嫌いが強いのではないか、もっと自由に事務評価をして、それに対する事業ごとの評価監査をしていただくとまた違ってくる可能性はあるのではないか、このように思っております。
ちなみに、本県の場合は、県会議員2人、それから学識経験者として銀行のOBの方1人、それと県職OBが1人入っているという構成で運用しております。
■西村(智)委員
最後に、1点伺いたいと思います。先ほど岡本委員も最後に少し触れておられたふるさと納税についてであります。
菅大臣が、この委員室だったと思いますが、私が質問したときに、首長さんたちからふるさと納税みたいな仕組みをつくってくれという要望があったような御発言をされました。
私、地元に帰りまして何人かの首長さんにお会いして、そういうことはありましたかと伺いました。そうしたら、確かに、住民が学齢期や社会人になったときに、それまで投資した分をいわば無駄にするような形で区域外に出ていくということについては本当に残念でならない、そういう思いは話したことがあると。ただ、だからといって、その人から税金を地元の自治体に納めてくれというような、そういう話をしたことがないということなんですね。
この点について、井戸参考人、いかがですか。
■井戸参考人
ふるさと納税制度、菅大臣がおっしゃっておりますが、住民税の一部を直接納入するという方式ではなくて、先ほど申しました寄附金を活用するという方式については、例えば福井の西川知事などは、2年ほど前から提案をされてきておりました。
私は、税制度として仕掛けることについては難しい点があるということを先ほども申し上げましたが、寄附金控除制度等をうまく活用することができれば、一部対応する余地はあり得るのではないか。それとあわせて、ふるさととの関係をどういうふうにつけるかということが難しいと思います。例えば、家族がふるさとにいる。家族との関係で、一定の範囲内であるならば、いわば一種の仕送りみたいな発想を入れることも可能なのではないかなというふうには思いますけれども、これは、仕掛けも、それから趣旨も、十分議論していく必要があるのではないか、このように思っております。
■西村(智)委員
今の御発言で、少なくとも井戸参考人は、菅大臣にふるさと納税のような仕組みをつくってくれというふうな要望をしたことがないということがわかりました。ありがとうございます。
終わります。