■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回の教育3法、提出の過程からしてかなり今までとは違う、多くの方がそのように見ておられると思います。
そもそも、この教育3法に関する法案審議は、本来であれば文科委員会で行われるべきでありますけれども、ここのところは政治状況ということになるのでしょうか、特別委員会ということに相なったわけであります。
率直に申し上げまして、かなり中央教育審議会と教育再生会議の役割分担が不明確だったのではないかというふうに私は拝見しております。多くの方がもうこれまでにも指摘をされたことでありますし、繰り返しにならないようにというふうには思うんですけれども、しかし、これは大事な点であるというふうに思います。
まず、文科大臣にお伺いをいたしたいんですけれども、今回、この3法が提出されるまでに非常に短い期間で中教審の審議が行われたというふうに承知をしておりますけれども、大体1カ月ぐらいでしたでしょうか、この1カ月間の議論はどういうペースで行われてきたのか、かなり過密スケジュールであったというふうに承知をしておりますけれども、その点について大臣は今どのようにお考えでしょうか。
■伊吹文明文部科学大臣
期間長きをもってとうとしとせず、内容充実しているをもってとうとしとなすということだと思います。
日曜日も皆さん出てきて御審議をなすっておりましたし、多くの団体から御意見を聞いていただいたようでございます。審議会でございますから、一々大臣がその場に出て審議を監視するというのもいかがかと思いますが、私が伺っているところでは、大変濃密な議論をしていただいたと感謝を申し上げております。
■西村(智)委員
これまで中央教育審議会というのは、大臣は先ほど長ければいいというものではないという御趣旨だったと思いますけれども、大体、その中教審の議論というのは一定の期間をかけて行われているわけでございますね、委員長も御存じだと思いますけれども。
例えばということで、ちょっと文部科学省のホームページから、どういう期間でどういうことが審議されているのかということを見てまいりました。例えば特別支援教育を推進するための制度のあり方に関する審議、これにつきましてスタートをしたのは平成16年の3月、答申が出ているのは平成17年の12月、1年半ほどの期間がかけられているわけでありますね。ここで見ますと、日曜日開催というのは見られませんし、大体、会議の開催自体も、前回の議事録が審議できるほどの時間的な余裕を置いて開催されているということが見られると思います。
私は、今回の教育3法の改正に当たって問題なのは、大臣とは私は見方が逆でありまして、極めて短期間で、何といいますか、非常にアリバイ的に、中教審の答申を出すためのものとして無理無理に、この日程を詰め込んできたんじゃないか、そういうふうに思うわけです。1カ月の間で開催された会議、審議会は12回、合計の審議時間が約31時間45分ということでありますので、これは非常に過密だと思いますね。
そこで、大臣に改めて伺いたいんですけれども、この審議会の途中で、2月の27日、そして2月の28日に関係団体からのヒアリングが行われております。先ほど大臣もおっしゃいました。ここでいろいろなところからヒアリングがされておるんだと思うんですけれども、これはどういう目的で、どういう形で行われたのでしょうか。
■伊吹文部科学大臣
まず、中教審は山崎会長という第一流の文化人を会長にいただいてやっておりますので、国会議員であっても、アリバイづくりという言葉は少し、先生、品性を持って慎んだ方が私はよろしいんじゃないかと思います。審議をしていただいている先生方にも失礼じゃないでしょうか。
そして、私は、30を上回る、40弱の各団体から今回の3法についての意見をお伺いしたということは後で伺っておりますが、どういう内容であるかということは、私は大臣として一々審議会の審議に立ち会うということはかえって不適当だと思いますから、必要があれば事務局からいつでも御答弁をさせます。
■銭谷眞美政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)
教育3法につきまして中教審で議論を進めていく中で、その審議を深める観点から、初等中等教育分科会と教育制度分科会の合同の会議は、2月の28日に、これらの法案の内容に具体的な関係を有する教育関係団体、学校関係団体、合わせて39の団体から意見聴取を行いました。意見聴取は、3法案に関する検討事項の資料を事前に配付した上で、これに対する書面での意見を提出いただくとともに、日程の御都合のつきました30団体からヒアリングを行ったところでございます。2つのグループに委員が分かれまして30団体からヒアリングを行った後、全体会を開催いたしまして、両グループで出されました主な意見を確認の上、さらに審議を深めたところでございます。
それから、大学分科会におきましては、2月の27日にヒアリングを実施いたしております。具体的な進め方といたしましては、8団体からヒアリングを行ったところでございます。
■西村(智)委員
私は今どういう進め方でというふうに伺いましたので、局長の今の御答弁になったんだと思うんですけれども、今回の中教審の進め方は、むしろ委員の皆さんにとって本当に納得のいく経過だったのかということを私は申し上げたいわけであります。
そうそうたるメンバーの方がいらっしゃるということも私は十分承知をしておりますし、本当に納得のいく議論をしたいと恐らく委員の皆さんも思っていたはずなんですね。それが国会の日程ということもありということで非常に急がなければいけない、そういう背景があったとすれば、それはよくないのではないかと思っているわけでありまして、そこのところを指摘したいわけであります。
今局長から答弁いただいたヒアリングですけれども、仄聞いたしますと、ここのヒアリングに参加をした審議会の委員の方は極めて数が少なかったというふうに聞いております。半分もいなかったんじゃないかということでありますけれども、その点については今答弁がありませんでした。また私の方でもう一度調査をいたしまして、改めて伺いたいと思います。
さて、続いて再生会議について伺いたいと思います。
官房長官、この再生会議、ここも非常にそうそうたるメンバーが顔をそろえておられます。ですが、実際に教育現場をよく知っておられる方々が少なかったのではないか。こういうことは、マスコミあるいはこの委員会の中、文科委員会でも恐らく議論されたことであると思いますが、そういう指摘がされております。
私もお顔ぶれを拝見いたしまして、ほかのテーマでも十分議論していただけるようなメンバーだなと思ったんですけれども、率直に言ってどうなんでしょうか、教育という課題を議論するメンバーとして、これは現場のことがよく反映されたというふうにお考えですか。
■塩崎恭久内閣官房長官
これの第1次報告で、「社会総がかりで教育再生を」、こう書いてあります。社会を構成しているのは先生だけではないわけであって、社会は人が構成しているのであって、いろいろな人がいるわけであります。
この教育再生会議、我々としても、メンバーはどういう人になってもらおうかと、いろいろ考えたわけでありますけれども、やはり、単に教育だけを専門にされている方たちだけではなくて、アカデミズムあるいは経済界、芸術、スポーツ。社会を構成するいろいろな人たちが、今再生をしなきゃいけないような状態になっている教育をみんなで一緒に考えようじゃないかということで、幅広い観点から議論してもらおうということで、こういうメンバー構成に今回なっているということでございます。
一方で、もちろん、教育のことを知っている方にも来ていただいているわけでありまして、現場の教師の出身、教育長など教育行政にかかわった人たち、あるいは企業の方でも学校経営とか教育委員をして教育にかかわっている人たち、そういうような人たちに、一人一人、私どもとしても丁寧にお願いをして、今回の会議を構成しているということでございます。
けさほどの質問にも、伊吹大臣御自身が、私は教育の素人だ、こういうふうに言っておられました。そういう方が文科大臣をおやりになるわけでもありますから、やはり広い立場で教育というものを社会全体で考えていこう。こういうことで、我々としては、真剣な議論を今、教育再生会議にお願いをしているというところでございます。
■西村(智)委員
官房長官が、うちの内閣の大臣は専門家ではありませんと正面切って言う国というのはほかにあるのかなと思いますね。
先ほどの伊吹大臣の御発言を伺っているときも私そう思ったんですけれども、少なくともゼネラリストであるということ。これは私は、国会議員、地方議員もそうでしょうけれども、必要な資質ではあると思っています。しかし、大臣の任にあるうちに、私は素人ですと言うのは、これはちょっと、学校の現場の方々ですとか勉強している子供たちは、やってられませんよ。どうですか、伊吹大臣。
■伊吹文部科学大臣
専門家であるかどうかというのはいろいろな観点がありますが、私はいわゆる文教族ではございません。広い意味での知識は持っているつもりでありますし、(発言する者あり)深いかどうかは人が判断してくだされば結構なことなんですが、教育というのは、やはり一番、リベラルアーツの深みと、それから歴史観と、しっかりとした人間としての厚み、常識を持っているということが、私は大臣として最大のポイントだと思っております。小さな、ちまちまとした、補助金がどうだとか、法律がどうだとかということよりも、もっと大臣として大切な資質が私はあると思っております。
だから、細かなことを知っていなければ学校の先生がやっていられないなどということは、1度も私のところにはメールは来ておりません。いろいろな面で御答弁をしたり、テレビに映ったりしていることについて、賛成の立場、反対の立場からいろいろな御意見をいただいておりますが、いわゆる政界的玄人ではないからこそ言えることをたくさん言っていただいてありがとうという御意見はたくさん来ております。
■西村(智)委員
文教族でないとおっしゃったことは、私は大変結構なことだと思います。いわゆる補助金ですとか、文教族というのは、どうなんですか、やられたんでしょうかね。補助金ですとか、そういったこととは無縁だと大臣がおっしゃったのは、これは非常にすばらしいことだと思います。
ですけれども、やはり、大臣の任にある間は、教育、文部科学に一定の知見を持っていると思って、この議院内閣制の中で、閣僚の1人としてその任を担っていただいているわけでありますので、どうぞそこのところをよく認識しておいていただきたい。
■伊吹文部科学大臣
日本という国の規範、伝統からして、おれは知識を持っている、私の意見はこうだといって、我を張っていろいろ言い募るというのがいいのは、ちょっと日本の文化ではないと私は思いますね。私が本当の意味で知識があり、どうかということは、多くの有権者や皆さん方やマスコミの人たちが判断してくださることでしょう。
■西村(智)委員
官房長官は内閣の官房長官ですからね。大臣の今の御発言も、私はもう少し言っていただきたいんですよ。ですけれども、官房長官として、やはりさっきの発言は、これは、安倍総理が指名した大臣が不適格だというふうに聞こえますけれども。(発言する者あり)こんなことで余り時間をとりたくもないんですが。
■塩崎内閣官房長官
いや、私は、伊吹大臣の言葉を引用しただけであって、それはもう当然のことながら、先ほど御自身が答弁されたように、言ってみればへりくだってお話をされているのはもう当然のことでありますから……(発言する者あり)そういうことで、伊吹大臣は御自身のことをおっしゃったということでありまして、ただ、いろいろなバックグラウンドの人たちに教育を議論してもらってやろうという我々の考え方は変わらないわけであって、伊吹大臣には、これまでの長い長いいろいろな方面での知見に加えて、もちろん教育に対するみずからの哲学をお持ちの方でありますから、それは謙遜しておっしゃっていることをそのまま直接お伝えしただけの話でございます。
■西村(智)委員
質問に戻ります。
再生会議での議論を文科大臣は、この間ずっと、その大局的な見地から議論してもらって、法改正は中教審でやるんだというふうに発言をされておられますけれども、では、逆にお伺いいたしますと、中教審で今回再生会議が議論してきたことというのは議論できなかったということなんでしょうか。中教審では再生会議で議論された中身は議論できないのだ、こういう理解なんでしょうか。
■伊吹文部科学大臣
中教審の所掌というのは、当然、先生はもう国会議員として該博な知識をお持ちでございましょうから、国家行政組織法に基づいてつくられており、そして文部科学省設置法によってその内容が決まっておりますから、教育に関することについてどういうことを議論なさろうと、それは中教審の全くの自由です。ただ、これは文部科学大臣の諮問機関ですから、私が諮問をしているから審議をしてくだすっているわけですよ。
再生会議というのは諮問機関でも何でもありません。これは、教育について意見をいろいろ述べていただくために閣議決定で決められた、むしろ、官房長官が先ほどおっしゃったように、広い立場でいろいろなことをおっしゃったっていいんですよ。そして、その中でどれをとるかとらないかというのは、それは立法府との関係で言えば、当然、行政府である内閣が憲法の規定によって判断するんですよ。もっと言えば、行政府である内閣の長である総理大臣がその中からいいと思ったものを内閣として立法府に御審議をゆだねたいと思われるわけでしょう。だから、この項目とこの項目とこの項目を、安倍さんが判断されて、中教審にかけていただきたいとおっしゃったから、中教審に総理の指示どおり私はお願いした。これは憲法の常識じゃないんですか。
■西村(智)委員
仮にそうだとすれば、文科大臣が中教審にその諮問をなさればよかったと思うんですね、再生会議で議論をするようなテーマ、いわゆる教育再生全般について、というふうに私は考えるわけなんです。そのことはちょっと指摘にとどめたいというふうに思います。
きょう私が中心的に伺いたいと思っておりますのは、この後の質問なんですが、地方分権との関係、そしてまた免許の更新制についてであります。
昨日、実は、全国の首長さんたちが集まって、とある場所でシンポジウムが行われたそうであります。そこでどういうことが語られているかといいますと、例えば、現在の教育現場に強い危機感を持って、改革に向けて行動してきた人ほど、現在政府が行っているいわゆる教育再生改革には批判的である、それはどういうことかというと、余りにもやはり現場の実態を知らないということが理由だ、こういうふうに言われているわけなんですけれども、質問の第1点目は、地教行法の改正についてであります。
地方自治法の245条の5。先ほど伊藤委員でしたでしょうか、質問がありました。ここで自治事務に対しても是正の要求を行うことができるというふうになっているわけですね。それとセットで、現行の地教行法の第48条で、指導、助言、援助、これを行うことができるとあるわけなんですけれども、実際に、この地方自治法の245条の5、それから現行地教行法の48条、これらの規定を受けて、今までに何件、どういう指導や助言や援助が行われてきたのか、この点について伺いたいと思います。
■銭谷参考人
まず、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の48条には、文部科学大臣の指導、助言、援助にかかわる規定がございます。これは、国が、都道府県や市町村が行う教育に関する事務の処理が適正に行われるようにすることを目的として、指導、助言、援助ということが行われているものでございます。
そして、この指導、助言、援助は、非常に日常的に行われているというものでございますので、何件という件数を申し上げる以上に行われているというふうに御理解をいただきたいと存じます。
例えば、学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導、その他の学校運営に関しまして、指導という形で申しますれば、通知を発出したり、会議を通じて指導を行ったり、あるいは個別にいろいろ課題を抱えている教育委員会に対して指導をしたりするといったことが行われているところでございます。
また、これらの事項に関しまして、いわゆる助言という形で、教育委員会からの照会に回答したりするということが行われております。
さらに、援助という形で、研修会等を開催したり、手引書や実践事例集を作成して配付したりするといったようなことが行われているところでございます。
それから、地方自治法の245条の5に規定がございます是正の要求については、これは地方分権一括法以降できたわけでございますが、この是正の要求ということを行ったということはございません。
■西村(智)委員
245条の5、是正の要求というのは今まで行ったことがない……(発言する者あり)地教行法の48条についての指導、助言、援助は日常的に行われているということでありました。今自民党の理事の方から、そこが問題なんだというふうにあったわけなんですけれども、是正の要求を行ったことがないわけですよね。
それで、私の問題意識は、今回改正法の中で、改正法49条それから50条、これが条文として復活をしています。もちろん削除された中身とは違いますが、条項は復活をしていて、ここで、是正の要求の方式、それから指示ですね、こういったことが復活をしているわけなんですけれども、2つの物の考え方というか見方があると思います。
つまり、是正の要求が今まで一度も出されていなかったのに、49条と50条がつき合わさったことで、一体これでどうやってその実効性が出るのか、そういう問題意識。もう1つは、私はこちらの立場に立つんですけれども、49条と50条がついたことによって、より国の関与が地方の教育委員会に対して強められるのではないか、こういう問題意識であります。
文科大臣にお伺いをいたしますが、教育再生会議の第1次報告、ここで、済みません、ページで言わせていただきますが、19ページです。括弧の3、丸の下の方2つで、地方自治法第245条の5などの規定による云々かんぬん、この規定をより実効あるものとして活用する、そして最後の丸は、地教行法の48条なんですけれども、これらの規定を適切に活用するというふうに書かれております。私はこれを読みまして、再生会議の報告書は、49条や50条をつけ加えるということではなくて、むしろ、48条あるいは地方自治法の法の活用の方を言っているのではないか、こういうふうに理解をしたんですけれども、どうでしょうか。
■伊吹文部科学大臣
再生会議がどういう意図でおっしゃったのか、私は再生会議の最終報告の起草のメンバーにも入っておりませんから、それはよくわかりません。
ただ、先ほど来日本の統治のシステムの憲法上のあり方のことを申し上げましたが、安倍総理が最終的にいろいろな、中教審の、再生会議の提言あるいは意見等を参考にされて、御自分の判断として、官房長官と総務大臣と私とを官邸にお呼びになって御指示があったわけです。
その御指示の内容は、教育長の承認制の復活はやらない、しかし、今御提案しているような2つの是正の、具体的な内容を付しての是正の要求ですから、これは従来の法律の内容とは違いますよ。先生、今回提案している法案をよくお読みいただいて。そして同時に、この是正要求をした場合には必ず、是正の要求の対象になった教育委員を任命した自治体の長、そしてそれを承認した地方議会にその是正の要求の内容を通知するということがついていると思いますよ。
つまり、地方自治の力を最大限に発揮していただくことが一番いいことであって、地方自治の力が発揮できない、地方議会が議会として機能しない、そういう場合において、国民の代表が国会で決めたことが実行されない場合に、文部科学大臣がそれに対応できる措置を考えろということを総理がおっしゃったから、私は内閣の一員としてそのことを中教審にお諮りをして、実は、これは新聞に出ていたことですから率直に申し上げていいと思いますが、再生会議の委員の中には、中教審にかけずに法案化をしてくれとおっしゃった方がおられるんですよ。私は、それは、そんなことはできません、閣議決定でできている再生会議の御意見を私が法案化して立法府に出すなどということはできません、日本は日本の仕組みの中で法治国家としてきちっとやるんですと。
だから、先生、これは、再生会議の意見は意見としてそれは結構ですが、判断をされたのは安倍総理なんですよ、そして我が安倍内閣なんですよ。そして、それを受けて、中教審にお尋ねをして、中教審の広い範囲の御意見を伺って、今まさに国民の代表である立法府にその審査をおゆだねしているわけですから、日本の統治のシステムどおりやっているということなんですよ。
■西村(智)委員
私は、この6点目、7点目が求めているのが48条の法の活用ということではないかと伺ったんですけれども、その点については御答弁がいただけなかった。
ちょっと視点を変えまして、改正法の49条と50条について伺いたいと思います。
これは、削除される前は全く違う条文だったんです。これが地方分権一括法で削除されて、第49、50、この数字だけは残っていたわけなんですけれども、これが今回復活した。先ほど、自治事務についての是正の要求そして指示である。
まず総務大臣に伺いたいと思いますけれども、地方分権一括法で削除されたこの規定が今回また新たに条文として、内容は違いますよ、ですが、出てきたわけです。これは、先ほどの自治事務に対する是正の要求あるいは指示ということを含めて、地方分権の趣旨に反するのではないかというふうに考えますが、総務大臣の見解はどうでしょうか。
■菅義偉総務大臣
国務大臣 私も総務大臣として、地方分権のもとに教育改革が行われる、このことは必要だというふうに思っています。
ただ、そういう中で、これは6団体の皆さん方ともいろいろ話をしたわけですけれども、今回の改正というのは自治事務で認められる関与の範囲内である、そういう中で、地方分権がこれによって後退をすることもないというふうに私は考えています。
■西村(智)委員
文科大臣の御見解はいかがですか。
■伊吹文部科学大臣
これは先生、11年の行政改革特別委員会のときはまだ先生は議員ではなかったと思いますが、このときいろいろなやりとりがあったんですよ。私はそのとき筆頭理事をしておりましたからよく事情は知っておりますが。
ありていに言いますと、地方分権一括法でこういうことをする前は、地方公共団体に対して直接の是正要求ができる大臣は、法律上、当時の文部大臣だけだったんですよ。だから、そのことが地教行法に書かれていたわけです。他の大臣は、地方自治法により、内閣総理大臣を通じて是正要求がなされるということになっていたわけです。11年の地方分権一括法による地方自治法の改正に伴って、各大臣共通の権限として是正の要求が規定をされて、そのために地教行法の規定だけが削除をされたわけです。そして、地方自治法の一般ルールに収れんするということになったということなんです。
したがって、今先生がるるおっしゃった今回の49条に文部科学大臣独自の規定を置くことになっておりますけれども、これは、今おっしゃっておる地方自治法の245条の5に定める是正の要求を行う際の方式を定めているわけです。さっきおっしゃったように、文教行政にかかわる方式を定めている。このため、地方分権一括法以前の措置要求の復活という、先生はもうよく御存じで、内容は違うよとおっしゃっているから、あえて私が言葉を挟むのもいかがかと思いますが、地方分権一括法以前の措置要求の復活だという御意見は、これは法制的に少し違います。
■西村(智)委員
先ほど総務大臣が答弁の中で、関与の範囲内だとおっしゃった。先ほど藤井局長もたしかそんな答弁だったと思います。地方自治、要するに関与の範囲内と認識していると局長はおっしゃいました。大臣の御答弁はそれよりもう少しまたあいまいで、関与の範囲内という、私たち、何かその中でというようなことだったんですね。
そこで、はっきりさせておきたいんですけれども、つまりその、関与の範囲内だと認識している、そのことについてなんですが、つまり、そういう関与の範囲内だということを期待しているだけなのか、それとも総務省として求めていくなりのことをすることになるのか、その辺についてはどうなんでしょうか。
■菅総務大臣
私どもは、これは地方自治法で定める関与の基本原則にのっとったものである、このように明確に考えています。そして、現に地方自治法では、国民の生命あるいは身体または財産の保護のために緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等特に認められる場合に、その中で、個別法では自治事務に対する指示に係る規定を設けることができるものとされておりますけれども、現に警察法だとかあるいは感染症予防法、こういうものは指示を行うことができるという、この範囲の中で認められておりますから、それと私どもは同じように考えております。
■西村(智)委員
関与の範囲内と明確に認識しているということでしたけれども、仮に関与の範囲外の事象が起こったときには、これは総務省として何がしかのアクションを起こすということを御検討されていますか。
■菅総務大臣
当然、この法律の中で認められることが自治法で決められておるわけでありますから、それ以外については私どももやはり認めないということです。
■西村(智)委員
それ以外については認めないということであります。
続いて伺いたいんですけれども、第48条、第49条、50条、それぞれの中身の整理について答弁をいただきたいんですけれども、これは局長の方でしょうか。
■銭谷参考人
先ほど来申し上げておりますように、地方における教育は各地方自治体が責任を持って行うということがまず基本でございます。そして、国の関与といたしましては、まず、先ほど申し上げましたように、地教行法の48条に基づきます指導、助言、援助ということで行うことが一般的なやり方でございまして、これまでも、またこれからも、これが原則ということになろうかと思います。
一方、今回の法改正は、教育委員会が自浄能力を発揮できず十分な責任が果たせない場合に、まず地教行法の49条では、憲法で保障する国民の権利を守るために文部科学大臣が講ずべき措置の内容を示して行う是正の要求ということができる旨の規定を置くものでございます。それから、第50条は、これも同様に、教育委員会がやはり自浄能力を十分発揮せず十分な責任が果たせない場合で、児童生徒の生命身体、これに危険が迫るような場合に、文部科学大臣が指示を行う、こういう規定を設けるものでございます。
この第49条、第50条の是正の要求、指示という規定は、極めて例外的に講じられる国の関与であるというふうに私どもは考えております。
いずれにいたしましても、この是正の要求、指示、49条、50条の規定は、先ほど来申し上げておりますように、地方自治法の考え方の範囲の中で規定をしているものでございます。
■西村(智)委員
49条、50条、ここの是正の要求、それから指示、この2つの法的な効力について、文言の説明も、きのうレクに来ていただいたときは、ちゃんとしていただいたんですけれども、局長の答弁にないので、あれ、どうしてかなと思うんですが。つまり、要求に従わなくちゃいけないのか、指示に対して何がしかの報告なりをしなければいけないのか、そのあたりを明確に答弁してください。
■銭谷参考人
まず、地教行法の49条、50条の規定についてでございますけれども、それぞれの規定に基づく是正の要求、指示を行った場合には、文部科学大臣が当該地方公共団体の長と議会にその旨を通知するということになっております。それは、やはり教育についての地方自治の自浄作用というものを期待いたしまして、教育委員の任命権者である知事、そしてその任命に同意を与えた議会にこのような是正の要求、指示を行ったということをお知らせをいたしまして、その自浄作用に期待をするというものでございます。
それから、是正の要求を行った場合には、法令違反、あるいは教育委員会がなすべき行為を怠っている場合、子供たちの教育を受ける権利を保障するために是正の要求を行うわけでございますけれども、教育委員会は、是正、改善のために必要な措置を講じなければならない義務を負うわけでございます。その具体的な内容というのは、私どもは内容つきの是正の要求を行いますけれども、最終的には教育委員会の裁量になるということでございます。
それから、指示につきましては、これは指示された内容に従わなければならないというものでございます。
■西村(智)委員
是正の要求の方は、これはそれぞれの、自浄作用と今おっしゃいましたか自浄機能とおっしゃいましたか、そこに期待をする。ただ、教育委員会の方では必要な措置をとらなければならないということでありました。
指示の方は、これは文言どおり、言われたとおりにしなければならないということでありますけれども、私は実は懸念をしております。
指示、これも非常に限定された書きぶりにはなっているんですが、ここのところ、まだあいまいで明確になっていない。この点については後で伺いたいと思います。
是正の要求というのも、実は、文部科学省からかなり強い調子で物を言われたというふうに地方の方は受け取るのではないか。
つまり、現状は、これはもう多くの方が知っておられるとおり、文部科学省のどちらかというと管理的な行政が地方教育行政に対して、かなり明確な上下関係になっている。そういう現状からいたしますと、仮に是正の要求であったとしても、これはやはり現場に近い方は指示と同じような受けとめ方をするのではないか。つまり、是正の要求と指示というのは、結局同じ結果を生むことになるのではないかというふうに懸念をしておりますけれども、この点について、文科大臣と総務大臣の見解をそれぞれ伺いたいと思います。
■伊吹文部科学大臣
指示と同じ受けとめ方をするとは私は思っておりません。しかし、調査だとかあるいは要請だとかということとは違って、かなり強い立場で物を言われたと受けとめると思います。受けとめてもらわなければ困るから、この法律をつくっているわけです。
もし、先生がおっしゃっているように、本当に強い上下関係、統制権限があるのならば、なぜ文部科学省の職員がいじめの現場に行ったときに学校の現場へ直接行けないんですか。もし本当に上下関係が強くあれば、なぜ野田理事が何度も御質問になったり調査の依頼をされたような未履修の問題が平然と行われるんですか。そういうことがあるからこそ、強い言葉で言われたなと受けとめてもらいたいと思ってこの条項をつくっているわけです。
■菅総務大臣
先ほど来いろいろ議論が出ていますけれども、指示は、生徒等の生命身体の保護のため緊急の必要がある場合と、これは明確に限定をされています。そして、是正の要求についても、教育を受ける権利の侵害がある場合に限りということであります。
いずれにしろ、私は、今回の指示また是正の要求についても、私どもにとっては自治法で認められる範囲内である、そして分権とのバランスもよくとれている、そのように理解をしています。
■西村(智)委員
総務大臣はすごく自信満々で両立できるとおっしゃいますけれども、また後で質問させていただきますけれども、私はそうはならないのではないかと思っているんですね。
第50条の指示の範囲について答弁をいただきたいと思うんですけれども。
自治事務であっても指示ができるケースがあると。具体的に、この第50条というのはどういうケースが想定されるのでしょうか。先ほど文科大臣は具体的な事例をおっしゃいましたけれども、そういった具体的に……(伊吹国務大臣「49条です、50条ではありません」と呼ぶ)49条の方ですね。はい、理解をしております。50条ではありません。50条についてどういう具体ケースが想定されるのか、それについて答弁をいただきたい。
■銭谷参考人
地教行法の50条の文部科学大臣の指示でございますけれども、これを発動する場合には、1つには、教育委員会に法令違反があって、あるいは教育委員会の事務の管理及び執行を怠るものがある場合におきまして、児童生徒等の生命または身体の保護のため、緊急の必要があるときでございます。そして、他の措置によってはその是正を図ることが困難である場合に限るというのが指示の発動の要件ということになるわけでございます。
そこで、第50条の指示の場合の児童生徒等の生命身体の保護が緊急に必要な場合に該当するというのは、これはケース・バイ・ケースでございますけれども、例えば悪性の伝染病の予防のために学校を臨時休業しなければならないようなときとか、激しいいじめ等によりまして生命身体の保護が明らかに必要な生徒がいるようなときであるにもかかわらず、教育委員会が何らの措置も講じないで、緊急の必要がある場合、こういったことが想定されるわけでございます。
■西村(智)委員
いや、具体的でなかったと思います。私は具体的なケースについてと申したんですけれども、それについては答弁がない。つまり、この規定で何が一体もたらされるのか、どういう状況がやってくるのかというのは、これは明らかでないということだと私は思っております。
総務大臣に伺いたいと思うんですけれども、私、先月、総務委員会の方で質問をいたしました。この教育改革とそれから地方分権の関係について、いずれも両立できるし、そしていずれも強力に推進させることができるんだ、こういうふうに答弁をしておるんですけれども、私は、これまでの質疑を通じても、とてもそういうふうには思えない。むしろ、国の地方教育行政に関する関与の度合いというのが高まって、逆に地方教育行政が萎縮してしまうのではないかというふうに思うんです。ですので、これは両立しない世界の話ではないかと思うんですけれども、総務大臣はまだ、やはり両立するというふうにお考えですか。
今、地方分権の推進委員会が開催されておりますよね。これは3年以内の立法を目指して、事務の移譲ですとか、どういった仕事を地方に任せるかという、地方分権に向けての積極的な話が進んでいるわけです。その分権委員会をつくる法律をつくった総務大臣として、本当にこれは両立できるとお考えでしょうか。
■菅総務大臣
そういう質問であれば、当然、私はできるとお答えさせていただきたいというふうに思います。
と申しますのは、先ほど来申し上げていますけれども、私どもが一番今回の法律について地方分権を推進できるかどうかということで考えたことは、やはり自治事務に認められるその関与の範囲内であるかどうかということを、私どもは一番、今回の法律をつくるについて考えたところであります。
先ほど来申し上げますけれども、今回の指示だとか是正の要求というのはその範囲内である、私どもはこれを明確に確認をいたしておりますし、そしてこの是正の要求についても、教育委員会と同時に、自治体の長や議会にも行くわけですから、そこでもいろいろな議論がされると思います。そういう意味で私はこの地方分権と両立できるということを申し上げているのであります。
■西村(智)委員
ただ、文科大臣の方は、地方教育委員会に対してより強く物が言えないようでは困ると先ほどおっしゃったわけですね。第49条、第50条のところで、先ほど伊吹大臣はそうおっしゃいましたよね。そうしますと、先ほど総務大臣が非常に楽観的に、善意で答弁されたことと食い違ってくるのではありませんか。
■伊吹文部科学大臣
それは全く食い違いません。私は、さっき先生が地方自治体はより強い立場で物を言われたと受けとめるのではないかとおっしゃったから、そういうふうに受けとめてもらいたいと思ってこの法律をつくっているんですと申し上げたわけですよ。地方の自治事務、例えばこれを法定受託事務に直して、そして今のような方向性をつくったのなら、おっしゃっていることは正しいと思いますよ。
では、先生に逆にお伺いしたいけれども、あの未履修だとかいじめだとか、そのままの教育行政をほうっておいていいと思っておられるんですか。私はそんなことはないと思いますよ。それはやはり是正の要求をしなければならないし、そして指示をしなければならないときがあるわけでしょう。ですから、総務大臣がるるお答えしているように、これは何も自治事務を法定受託事務に直して立法をやっているわけじゃなくて、自治事務の範囲の中でその手続を規定しているわけですから、これは、立法論として少しそのあたりの構成を御理解いただいた上で御批判をいただきたいと思います。
■西村(智)委員
私の質問について、どうも真意が伝わっていないんでしょうか。
つまり、今の教育現場の問題を解消するために、49条、50条によって、では本当に解決できるのかと。実際に現状を見たときに、保護者の皆さんや子供、それから子供たち自身、地域の皆さん、それから学校の教育関係者、こういった人たちが一緒に集まって議論をして、そこからやはり解決していかなければいけない課題だと思っているんですね。
そういう流れ、いわゆる草の根、ボトムアップ式からこういう問題というのは解決が導かれるんだと私は思うんですけれども、今回の教育3法の中では、それとはどうも逆の方向を向いているのではないか、こういう問題意識なんです。ですので49条、50条のあたりを伺ってきたわけなんですけれども、では、ちょっと見方を変えまして、政治論で伺いたいと思っています。
中教審の3月10日の答申、ここは両論併記になっております。両論併記でこういうふうに書いてあります。「国が指示できるような制度を新たに設けることは、地方分権の流れに逆行するとの意見や、是正の要求を行った事例が無いのに、より強力な関与を設ける必要性は無い」との意見が付されております。
また、規制改革会議、これは2月15日に出されている見解でありますけれども、「地方分権等の流れに逆行する形で国の権限を強化し、文部科学省の裁量行政的な上位下達システムの弊害を助長することがあっては断じてならない。」と書かれています。
地方6団体、2月27日に、教育委員会への国の関与の強化案に対する反論として、こういうふうに書かれています。「教育委員会の再生のためになぜ国の関与の強化が必要なのか、何ら論理的に結びつく説明や立証がなされていない。」
こういうふうに指摘をされているわけなんですけれども、これについてどういうふうに大臣は御答弁になりますか。総務大臣から伺いたいと思います。
■菅総務大臣
地方6団体とかいろいろな皆さんから、私にもそういう要望書がありました。
そういう中で、やはり皆さんは、例えば教育長を文科大臣が任命するだとか、いろいろな意見が出てきた中で、この自治事務に対して、そういう性格が変わるんじゃないかなということで御心配をされたというふうに思っています。
しかし、今回の決着の仕方は、先ほど来申し上げていますけれども、自治事務で認められている関与の範囲内ということで、このことについて6団体の皆さんも理解をしていただいていると思っています。
■西村(智)委員
もう一点だけ伺いたいことがありますので、ちょっと地方分権の関係で伺います。文部科学大臣に伺いたいと思います。
第24条の2でありますけれども、知事部局は、スポーツと文化のところに関する事務のいずれかまたはすべてを管理し、及び執行することができる、そういうふうにされたわけなんですけれども、私は最初、これは私たちの考え方に向けて一歩前進したのかなと。つまり、首長部局にこういった事務権限を移すということは、いわゆる教育地方行政の強化ということで、一歩前進したのかなと思ったんですが、この2つを規定したことで、所掌事務を将来的にこの2つに限定することになるのではないかという懸念を実は私は持ったわけなんです。今後の首長部局に対する事務の移行について、大臣の見解を伺います。
■伊吹文部科学大臣
このスポーツと文化行政を移すというか、地域づくりの総合的推進などの見地からこれを首長に移譲するということについては、既に規制改革の閣議決定が行われているわけですね。ですから、この2つに限定することになるのか、あるいはもっとゆだねていくことがあるのか、それは国民が決めるんですよ、先生。国会が決めるんですよ。何も、私が限定するとか限定しないなんというようなことがあったら、えらいことになるんじゃないんですか。これは将来の国民が決めるんです、ここのところは。
そして、いろいろ、現場のことを知らないとかというような不規則発言もさっきありましたが、少なくとも、私は、文部科学大臣になってから、現場の方との対話あるいは現場を見にいった回数は、失礼ですが、ここにいらっしゃる皆様よりはるかに多いと思います。
■西村(智)委員
いえ、大臣の考え方を今伺ったのでありますけれども、はっきりとは答弁いただけなかった。
私たちは、やはり教育はもっと地方分権をすべきだというふうに思っております。ただ、今回の教育3法の中にはそういう方向性が全くないということですので、民主党案も出しておりますので、御理解いただいて、ぜひ酌み取っていただきたいと思います。それで終わります。
■伊吹文部科学大臣
私の考えを聞かれたということであれば、これは政治家としてのお答えとして理解していただきたいと思いますが、私は、何度も申し上げているように、知事部局にイズムの伴う教育行政の執行権を渡すべきではないと思っております。