■西村智奈美分科員
民主党の西村智奈美でございます。
私は、きょうは、主に働く女性の問題、そしてまた、そこの先にあるワークライフバランスという観点から、昨年改正になりました男女雇用機会均等法の点から質問に入りたいというふうに思っております。
昨年の男女雇用機会均等法改正は、非常に大がかりなものだということで多くの女性たちが期待をしておりました。幾つか評価される点があるということはもう大臣も御承知のとおりでして、女性のみならず男性に対しても性を理由とした差別が禁止されたこと、あるいは妊娠、出産を理由とした不利益取り扱いが禁止になったこと、いろいろ評価される点はあるんですけれども、実は、昨年の法改正のときに一番大きな論点になったのは間接差別についてでありました。ILOの方からも何度となく勧告を受けてきたこの間接性差別について、昨年のこの均等法改正の中でしっかりと明記をされることが多くの働く人たちの希望であったわけなんですけれども、残念ながらこれは限定列挙ということになってしまった。
私たち民主党は、野党と一緒に修正案を提出いたしました。この中では、限定列挙にとどまらず、その考え方をしっかりと書き記すことによって、いわば職場の中で埋もれている間接差別をその法理を使って浮き彫りにしていくということを目指したものであったんですけれども、残念ながら賛成少数でこれは否決されております。
その過程の中で、いろいろな審議に対して答弁をいただきました。きょうは、まず、その均等法、1年前の改正のときに確認的に答弁をいただいた、その点が、1年たってみて実際どういうふうに取り組んでいただいてきたのかということから質問をしたいというふうに思っております。
まず第1点目は、間接差別の定義や法理について、これは当時の川崎厚生労働大臣から答弁をいただいているんですけれども、その定義や法理について指針に盛り込むとともに、均等法改正法案の第七条の内容とあわせてパンフレット等において周知を図ってまいりたいというふうに御答弁をいただいております。
これはどうなんでしょうかということで、私も伺いました。そうしたら、このように大変立派なパンフレット、緑色と赤色と2種類ありまして、これは改正前と改正後で違うんですと。どこが違うのかと言いましたら、「施行されました。」というところと「施行されます。」というこの文言の違いだということなんですね。非常に御苦労なことだったと思いますが、いずれにしても立派なパンフレットが作成されております。
これはどういうふうに作成されたのか、その中身はどうなっているか、また、作成部数、配付先などについても答弁をいただきたいと思います。
■大谷泰夫政府参考人(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)
お答え申し上げます。
間接差別を含みます改正均等法の内容につきまして、今お示しいただきましたが、「改正男女雇用機会均等法のポイント」というパンフレットあるいはリーフレット、これを28万1,200部作成いたしまして、各都道府県の労働局の雇用均等室を通じて事業主あるいは事業主団体等に配付して、周知を行っているところでございます。
それから、その中身のことでありますけれども、例えばパンフレットにおきましては、「省令で定めるもの以外については、均等法違反ではありませんが、裁判において、間接差別として違法と判断される可能性があります。」ということを書いておりまして、雇用管理に当たりましては、採用、募集とか配置、昇進などに当たり「不必要な要件を課して労働者の能力発揮を阻害していないか改めて見直しましょう。」こういったことも記載して、周知徹底を図っているところでございます。
なお、このパンフレット等の内容につきましては厚生労働省のホームページにも掲載しておりまして、パンフレット等の配付先のみに限らず、幅広く周知に努めているところでございます。
■西村(智)分科員
28万部つくっていただいた。その数字だけ伺うと、ちょっと多目につくっていただいたかなという気がしないでもないのですけれども、しかし、日本全国にある全事業所数の中では、28万部というのは非常に少ないわけですね。大海の中に石を1つ投げ込むような話だと思います。もう少し厚生労働省としてもしっかりとこの点のPR、ホームページに掲載しているからということで済む話ではないと思います、いろいろな関係団体を含めて、より一層積極的なPR活動に取り組んでいただけるように、ここは強く要望したいと思います。
あわせて、均等法の議論の中で、コース別雇用管理以外にも存在する不合理な雇用管理制度の存在について指摘をさせていただきました。これは今回のパート労働法の改正ともかかわってくる部分ではあるんですけれども、この点、同様のガイドラインをつくるべきだという私の問いかけに対して、審議会にそのことは意見として伝えたいという答弁をいただいておりますけれども、この点についてはどうなったでしょうか。
■大谷参考人
今御指摘の件でありますけれども、平成18年の7月20日に開催されました労働政策審議会の雇用均等分科会におきまして、衆議院の御審議の中で、コース別雇用管理以外にも男女均等の趣旨に反する不合理な雇用管理制度が存在するので、これについてもコース別雇用管理と同様のガイドラインをつくるべきという御質問があったということについて明快に御報告を申し上げた経緯がございます。
■西村(智)分科員
次に、同じく確認答弁についての確認でありますけれども、コース別雇用管理に関する留意事項、これについて、見直す必要があるという答弁をいただいております。このことについて、実際に見直しが行われたのかどうか、その内容いかんについて伺います。
■大谷参考人
コース別雇用管理に関する留意事項でありますけれども、この留意事項につきましては、間接差別の禁止等が盛り込まれた今回の改正均等法の内容に合わせまして改定して、平成19年の1月22日の労働政策審議会雇用均等分科会に御報告し、この4月1日より適用しているところでございます。
その改定の具体的な内容でありますけれども、まず、総合職の募集、採用に当たって合理的な理由なく転居等を伴う転勤に応じることができることを要件とすることを、均等法等に照らし男女労働者の能力発揮のために行うことが望ましい事項から、均等法に違反しないために留意すべき事項に格上げする。また、次のポイントとして、募集、採用時に転居転勤要件を設けるに当たりまして留意すべき事項として、転勤の期間、場所、それから頻度、実績等の情報提供を行うことが望まれるというふうに規定した等の見直しを行ったところであります。
■西村(智)分科員
続いて、附帯決議に関連して伺いたいと思います。
先ほどの間接差別についてですが、研究会報告にありました7つの事例も、解説本で紹介をいただけるという話ですし、また、パンフレットの方にはこの3つ以外にも間接差別というのは存在するというふうに明記をいただいたことは評価したいと思うんですが、やはりここが限定列挙であるということから生じる懸念というのはぬぐい去れないんだと思っています。
間接差別の見直しについて、附帯決議の中で、法律施行の5年後の見直しを待たずに、対象事項の追加及び見直しを図ることというふうに記載されておりますけれども、これは具体的にどのように見直すことになるのでしょうか。実際、各都道府県の均等室などにもいろいろな相談が行っているかと思うんですけれども、そこから拾い上げることになるのか、あるいは審議会の議論を経て、恐らくそうなるんだと思いますけれども、一体どのような手続で見直すことになるのか、そこを伺いたいと思います。
■大谷参考人
均等法上の間接差別となります措置について定めている厚生労働省令については、判例の動向等を見ながら適時適切に見直しを行うこととしておりますが、新たな判例が出されたといったような場合、また関係審議会において間接差別の対象の追加の提議がなされたような場合、こういったもののほか、今ちょっと御指摘にもありましたが、雇用均等室への相談事案等について、間接差別の対象とすることが適当な事案が把握された場合も見直しの契機となる、これは考えられるわけであります。このため、雇用均等室に対しまして、そのような事案が把握された場合には本省に報告するよう指示を行っているところであります。
いずれにしましても、この法律、まだ4月1日より施行されたばかりのものでありまして、今後の施行状況を見守らなければなりませんけれども、この附帯決議の御趣旨を踏まえて適切に対処していきたいと思います。
■西村(智)分科員
ぜひ、この間接差別の対象事項の追加、見直しに当たっては、広く働く人たちからの声を聞き入れてくれるように要望したいと思います。
つまり、裁判にまで持ち込まれるケースというのは、これは山でいきますと本当にてっぺんのところだけで、そこに至るまでに均等室などに相談に行くということが、事例としてたくさんあればいいんですけれども、現実には、この均等室も、相談に行きましても人員不足などでなかなかうまく対応されないというケースがどうもあるように拝見しております。
そういったことからいたしますと、審議会の議論でいろいろな事例が挙げられるということは期待するんですけれども、これはやはり働く人たちの問題でありますから、働く人たちの声をより広く聞き入れるように、そこはぜひ工夫をお願いしたいというふうに思っております。
続きまして、この附帯決議の第9の項目なんですけれども、ここで、ワークライフバランス、仕事と生活の調和ということが明記をされております。今回パート労働法の議論をしているときにも感じたんですけれども、ワークライフバランス、仕事と生活の調和がこれからより一層重要になる、恐らく大臣も同じ御認識でいらっしゃると思います。そうおっしゃっていただいている割には、実は、改正される法律の中にそのことは全くと言っていいほど反映されていないというふうに感じております。
この附帯決議の第9で、長くなりますが、ちょっと読み上げます、「男女労働者双方の仕事と生活の調和の実現に向け、仕事と家庭の両立がしやすい職場環境の整備を進めるとともに、特に男性労働者の所定外労働時間の抑制及び年次有給休暇の取得を一層促進するなど、長時間労働の抑制に取り組むこと。また、労働時間法制の見直しに際しても、男女労働者双方の仕事と生活の調和の実現に留意すること。」これは全党一致で採択されている附帯決議でありますけれども、これが一体どの法律の見直しに際して留意されているのか。これは、私、今回パート労働法の審議に当たっても非常に疑問に思う点でありました。
私たちは、パート労働法の見直しに当たっては、やはりこれまで男性はこういう働き方、女性はこういう働き方ということで枠が当てはめられてきた、その延長線上にパート労働の問題というのができ上がってきているんだというふうに考えております。ですので、そこを解消していくためには、もちろん差別そのものを見直していくということは必要なんですけれども、やはり、どちらの性の労働者もそれぞれがそれぞれの仕事と生活のバランスをとりながら働いていける、そういう法律が必要だ。
ところが、この間見ておりましても、残念ながら、労働契約法案の中にもそういった文言というのは見られない。大臣、このワークライフバランス、労働法制の中で、一体どこでどう担保していただけるんでしょうか。
■柳澤伯夫厚生労働大臣
ワークライフバランスをどの法律でうたい上げるか、またそれを実現するための実定法的な条文を置くかということでございます。
今委員は労働契約法の中にもないじゃないかというふうに仰せられましたけれども、私どもとしては、雇用管理の改善ということを書いた項目の中にはそれは含まれておりますよということを、あれは4条の1項の、ずっと10何項目にわたって号を立てまして、そうしたことをうたわせていただいておりますが、その中でも、その点はそうしたことを念頭に置かないでもないということであります。こういうことを、せんだって、西村委員は御在席ではありませんでしたけれども、私からは答弁したといういきさつがありましたので、そのことをちょっと触れておく次第でございます。
このワークライフバランスが大事だということは私もよく承知をいたしておりますが、同時に、うたい上げということもさることながら、実定法の中でそうしたことが実現できるような、そういう条文を置くということが非常に大事だというふうに考えているわけでございます。
そういう観点から、御質問でございますのであえて触れさせていただきますと、まず、今度の労基法における法定割り増し賃金率につきまして、そうしたことを念頭に置いた改正を考えているということでございます。
特に、限度基準告示におきまして、一定時間を超える時間外労働をできるだけ短くするよう努めることを労使双方に求めるということがこの法規の趣旨でございますけれども、そうしたことによって、具体的にワークライフバランスが実現するような、そういう時間外労働の抑制を図っていきたいということを考えているということが第1点でございます。
それから第2点目は、これは法規というより予算上の措置でございますが、時間外労働の削減に積極的に取り組む中小企業に対して助成金を創設する。
それからまた、先ほど第1に申したようなことにつきまして、労基監督署における重点的な監督指導の強化というようなこともあわせて行うことといたしているわけでございまして、私どもとしては、長時間労働の抑制の実効を上げましてワークライフバランスを実現させていきたい、このように考えているということであります。
■西村(智)分科員
長時間労働の抑制という、その問題意識は共有していただいているというふうに今お伺いをいたしました。
ですけれども、今雇用の現場で実際に起こっていることというのは、言ってみれば雇用の二極化ですね。長時間労働をする人は、もうとことん長く働く。しかし一方で、短時間で、まあ長時間という方も多くいらっしゃいますが、安い賃金で、低い労働条件で働いている人がいるというその二極化の状況というのは、今大臣がおっしゃった労基法の見直しで果たして本当に対応できるのかどうか、私は大いに疑問なところだと思います。ですので、パート法においても同様の課題が言えますが、やはり今回の労働契約法の中でも、いわゆる均等待遇原則、これはしっかりと打ち立てるべきではなかったのかというふうに考えているんです。
なぜ、政府の中で共有されているはずのこのワークライフバランスという考え方が法律の中で立法の趣旨としてはっきり出てこないのか、私は疑問ではあるんですけれども、その点についてはまたこれから私たちも議員立法という形でいろいろな提案をさせていただきたいと思っております。
質問を続けたいと思います。
ILOの100号条約及び156号条約の中で、均等待遇の問題、パート労働の問題に関して、パート労働の問題は性差別の問題であるというふうにはっきりと指摘をされているわけでありますけれども、近々ILOの総会が開かれまして、日本政府に対して幾つか、資料を提出しろとか報告をしろとかいうことが言われております。実際に、これは今どのように報告をするということで準備中であるのか、伺います。
■大谷参考人
ただいまの件につきましては、今回、パート労働法の改正について取り組んでおるところでありますが、そういったものとか、諸般の現在の制度の状況について今取りまとめをしておりまして、まだちょっと準備中でありまして、どういう形で整理するかは固まっておりませんけれども、6月の総会に向けて政府の考え方を準備している。
その中では、今回のパート労働法についても、これは性差別の問題として扱うというよりも、労働の実態の中で均衡待遇を行っていく、こういった整理で検討しているところであります。
■西村(智)分科員
ぜひ、ILOが納得できるような報告ができるように、そこのところはきちんと準備をしていただきたい。その前提として、やはり日本の国内法ではっきりとした規定が必要なわけでありますけれども、私も今後の動きについて注意深く見ていきたいと思っています。
最後に、公務員の非常勤職員及び臨時職員の問題について伺いたいと思います。
育児・介護休業法が制定されて、3年前でしたでしょうか、見直しが行われました。この中で、いわゆる期間の定めのある労働者も、一定の条件を満たせば育児休業が取得できるということになったわけなんです。
ところが、いわゆる公務員の世界でいいますと、ここも非常に臨時職員、非常勤職員の方が多いんだそうです。この前、委員会で伺いましたら、地方自治体で45万人、そして国家公務員で10何万人というような数でありました。恐らく、私、いろいろなところで拝見する限り、そのほとんどは女性なんだろうというふうに思います。この臨時職員、非常勤職員の方々で、1年以上の雇用が見込め、そしてまた週20時間以上の勤務である方は、いわゆる雇用保険に入っているんですね。雇用保険に入っているんだけれども、実は育児休業法の適用除外になっておりまして、育児休業そのものを取得することができない。しかし、その雇用保険の保険料が原資となって、そこから育児休業期間中の給与補てんというのが行われている。こういう非常に大きな制度の矛盾があるというふうに思うんです。
これは、公務員という身分の特殊性もさることながら、やはり制度としてほったらかしにするのはいかがなものかというふうに考えております。この点について改めて伺いたいと思いますが、どうでしょうか。
■大谷参考人
平成17年の4月より施行になりました改正育児・介護休業法におきましては、一定の期間雇用者を対象として育児休業の取得を可能としたところでございます。これは、考え方でありますけれども、期間雇用者であっても、育児休業を可能とすることにより雇用の継続が見込まれると考えられる労働者につきましては、休業の対象とするという考え方であります。
一方で、今委員からも御指摘ありました、地方公務員それから国家公務員の臨時職員、非常勤職員の育児休業について、これをどうするかということでありますけれども、これは、国家公務員あるいは地方公務員のさまざまな特殊性を勘案して、公務員法制における取り扱いの中で検討されるべきものというふうに考えておりまして、今お話にありました雇用保険制度との関連を含めて、厚生労働省としてその処遇についてお答えを申し上げる立場にないということを御理解賜りたいと思います。これは、前回関係の委員会で申し上げた答弁と同じでございます。
■西村(智)分科員
私、この点について質問いたしましたら、与党の皆さんからも、それはもっともな話だというふうなお声はたくさんちょうだいしているんですよ。これはやはり制度の大きな問題点だと思います。そこのところを踏まえて、公務員制度改革の中で議論されるべきだ、そう言って突き放してしまいたくなるお気持ちもわかるんですけれども、そこのところは厚生労働省としてやはり何がしかの一定の見解を示す必要があると私は思っています。強く申し上げたいと思います。
まだちょっと時間がありますので最後にもう1点伺いたいと思いますが、先ほどの話に戻りまして、労働契約法案についてであります。
この労働契約法の8条、9条、10条、このあたりを眺めておりますと、やはり就業規則に非常にウエートが置かれているなというふうに感じるわけなんです。
実際に就業規則をとらえて考えるときには、私は、就業規則による労働条件の一方的な変更は直ちに合意とは言えないという考え方を明らかにすることですとか、あるいは、労働契約変更請求権などというものを盛り込むべきだというふうに考えておりますけれども、質問は、この就業規則に関して現在存在している問題点についてであります。
これは民間団体が行ったある調査でありますけれども、実は、就業規則を見たことがないという人たちがかなりの割合でいるということなんです。就業規則を見たことがないという人たちがかなりの割合でいるというその現状において、労働契約法、言ってみれば就業規則万能主義とでもいいましょうか、それで本当に公正な働きが確保されるのかどうかという懸念を私は持っておるんですけれども、この点について、政府の答弁はいかがなものになるでしょうか。
■青木豊政府参考人(厚生労働省労働基準局長)
就業規則につきましては、お話ありましたように、労働契約法案において画一的、集団的に労働条件を変更するという1つのやり方を明らかにしようということでいたしておるわけでありますが、今の就業規則につきましては、現行法におきましても、使用者が就業規則の周知手続を、きちんと周知しなければならないということで労働基準法にも規定されているところでございまして、まずもってきちんと就業規則を周知していただいて、そして、そういったことをしっかりと認識していただいて働く場に労働契約が適用されていくというのが正しい姿だろうというふうに思っております。
■西村(智)分科員
時間になっておりますので短くしますが、そうなれば、それは正しい姿だと思います。ですけれども、現状見ていないという人たちがたくさんいるという中で、この労働契約法が就業規則万能主義になっているということに私は大きな問題を持っておりますので、また今後の質疑で見解を伺っていきたいと思います。
終わります。