■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。おはようございます。
まず冒頭、昨日の憲法調査特別委員会におきまして、極めて不正常、強行的な採決がなされたことに対して強く抗議を申し上げたいと思います。
与野党の協議が円満に進んできた中で、それを水泡に帰するがごとき与党側の強行採決は断じて許すことができない。きょうのこの委員会も、不正常に近い、円満とは決して言えない状況の中で開催をされております。このことについて強く抗議を申し上げ、そして、数の力におごった国会運営が決して行われることのないように、強く申し上げたいと思います。
それでは、この法案について質問に入りたいと思います。
今回、パート労働法、大変大きな改正でありましたけれども、政府の方は何度も、この法案が現時点では百点満点の法案だというようなことを繰り返し述べておられます。しかし、実際にパート労働者の側から見ますと、これは決して百点満点ではなくて、むしろ後退している面が多々生じるのではないか、そういうことが懸念をされている、これはもう何度もこの委員会の中で繰り返し議論されてきたことであります。
つまり、通常の労働者と同視すべきパート労働者の3つの要件のハードルが余りに高くて、対象となる労働者は実際には1%ぐらいにしかすぎないのではないか、そのわずか1%の労働者において均衡の処遇を実現するということと引きかえに、残りの99%のパート労働者は、言ってみれば、底辺のところに張りつけられるという、このパート労働の格差がさらに拡大して固定化するのではないか、こういうことが懸念をされているわけでございます。
こういったことに加えて、特に、このパート労働というのは女性の労働者が極めて多いということになっておりますし、実質的に、女性労働者の雇用の平等の実現、これがさらに遠のくのではないか、こういうことが懸念をされております。私も同じ見方をしております。
政府法案の審議に当たっては、もちろんのこと、対象となるいわゆる1%と言われるパート労働者が一体どれだけ広がってくる可能性があるのか、そしてまた、総合的な施策の推進によって、女性労働者、性差別をどうやったら解消できるのかということが議論の中心であるべきだというふうに考えております。きょうは、これまで議論されてきたことを含めまして、確認的に幾つか伺っていきたいと思っております。
まず、私たち民主党の法案の中では、特に、今回、この法律を理由とする処遇の切り下げに大変大きな懸念を持って取り組んでまいりました。つまり、経済財政諮問会議での議論及びその周辺の議論を伺っておりますと、このパートの待遇改善によって、言ってみれば、正社員の労働条件の切り下げもできるんだ、そういう議論がちらほらと聞こえていたわけでございます。
一体それにどうやって歯どめをかけるかということは大変大きな問題だろうと思っておりますけれども、例えば、期間の定めのない短時間雇用から有期の短時間雇用への切りかえ、そして正社員の労働条件の切り下げ、正社員からパート労働契約への切りかえなどなど、この法律の運用の結果として、立法の意図とは裏腹に、労働条件の不利益変更が生じることもこれは十分考えられることだと思います。こうした事態は決して許されるべきではないと考えますが、いかがでしょうか。
この法律の中には明確な規定というのはありません。ですが、合理的な理由なく一方的な労働条件の不利益変更は認められないというふうに考えてよろしいかどうか、また、未然防止のために行政としてはどう対応するのか、伺います。
■大谷泰夫政府参考人(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)
お答え申し上げます。
御指摘がありましたように、今回、提出しておりますこの法案には明確な規定はなくても、労働条件の不利益変更を事業主の一存で合理的な理由なく一方的に行うということは、およそ法的に容認されないものというふうに考えております。
それから、今後の改正法の施行までに、合理的な理由なく不利益変更を行えないということも含めまして、具体的な事例や対応方法をわかりやすく解説したパンフレットやQアンドAの作成また配布等によりまして、事業主に対する十分な周知に努めてまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
次に、この法律の対象でありますけれども、今回の改正パート法では、いわゆる疑似パート、フルタイムパート、これは対象外となるということであります。
先日、川内委員の質問の中にもありましたように、フルタイムパートの数は今や全国で345万人という数だそうであります。これは非常に驚くべき数字でありましたが、今回、この改正法の中で対象にならないということは、これは明らかにおかしいと私は思います。差別的取り扱いを禁止する必要があるという点で考えまして、いわゆるフルタイムパート、疑似パートと言われる労働者は今回は対象外でありますけれども、短時間労働法の、この法改正の考え方が配慮されるべきであるというふうに考えますが、いかがでしょうか。
■大谷参考人
パート労働法に規定します短時間労働者は、これは御承知のとおり、通常の労働者よりも週の所定労働時間が短い者を指すということでありますために、フルタイムの有期契約社員は、どういうふうに呼ばれているか、その呼称を問わず、パート労働法の対象とはならないものでございます。
しかしながら、この改正パート労働法に基づきまして、例えば、事業主がパート労働者について、その働き、貢献に見合った公正な対応を実現するという観点から正社員との待遇の均衡を図るといった場合には、雇用している労働者全体の納得性とか公平性を考えれば、法律によって措置を求められていないフルタイムの有期契約社員の雇用管理に当たりましても、当然、この改正法案の考え方が考慮されるべきであるというふうに考えております。また、企業の雇用管理の実態を考えましても、当然、そのようになっていくということが望ましいというふうに考えているところでございます。
■西村(智)委員
次に、通常の労働者と同視すべきパート労働者のいわゆる3要件について伺っていきたいと思います。
冒頭申し上げましたように、この3要件が極めてハードルが高いということは、この委員会の中でも何度も繰り返し指摘をされてまいりました。このハードルをよりわかりやすく、見えるようにしていきたいという思いで、以下、何点か質問をいたします。
比較対象となる通常の労働者でありますけれども、これまでに何回か答弁をいただきましたが、つまりは、今の日本の働き方というのは極めて二極化されております。猛烈に働く人は長時間残業をして働いているという状況があることを考えますと、そういった猛烈な長時間残業を行っている通常の労働者と比較するのであっては、これは、今、日本が目指しているワークライフバランスに逆行するので、それはあってはならないというふうに私は考えます。
それとの均衡を図るということではなくて、将来的にはワークシェアリングなどということも視野に入れながら比較を行っていくべきだというふうに考えておりますけれども、この通常の労働者にはいわゆる短時間正社員も含まれるという理解でよろしいでしょうか。
■大谷参考人
この法律で言う通常の労働者とは、いわゆる正規型の労働者を言い、具体的には、社会通念に従いまして、フルタイム勤務の者について、当該労働者の雇用形態、それは期間の定めのない契約であるかどうか、また待遇、これについては長期雇用を前提とした待遇がなされているかどうか、こういったことを総合的に勘案して判断することとされております。
いわゆる短時間正社員でありますが、ほかにフルタイムの通常の労働者がいる中で極めて短い労働時間勤務する短時間正社員につきましては、いわゆる正規型のフルタイム労働者というふうに判断される可能性は低いと思いますが、そうでない場合は、さきに述べました要件を満たせば、これは通常の労働者として判断されることになると考えております。
したがいまして、この短時間正社員が通常の労働者と判断されるということであれば、一つは、これらの社員類型への転換というものもこれは通常の労働者への転換というふうになりますし、また均衡待遇の比較対象にもなり得るというふうに考えます。
■西村(智)委員
それでは、具体的に二つ伺います。
まず一つは、育児短時間正社員が近年広がってきております。ある職場においては、育児短時間正社員の方が例えば週35時間勤務、しかしパート労働者の方が週36あるいは37時間勤務というふうに、実際には勤務時間で見ますと逆転している、そういう現象も生じております。
このように、育児のために短時間勤務を行っている正社員も、比較対象たる通常の労働者となり得るのでしょうか。
■大谷参考人
育児あるいは介護を行うために短時間正社員という身分になっている方につきましては、この短時間正社員が通常の労働者というふうに判断されれば、さっき申しましたように、これらの社員類型への転換もこれは通常の労働者への転換となり、また均衡待遇の比較対象にもなり得るというふうに考えております。
■西村(智)委員
次に、もう一つの事例で伺いたいんですが、例えば、週に2日しか業務が発生しないというケース、土曜日、日曜日だけ業務が発生するというような場合において、実際にフルタイムで土曜日、日曜日勤務する労働者と、午前と午後と分けてパートで勤務する労働者とある、しかし、その労働条件には非常に大きな格差が存在しているという場合において、このフルタイム労働者は通常の労働者となり得るかどうか。改正法の8条によって、この格差是正を行うことが可能でしょうか。
■大谷参考人
ただいま御指摘のありましたようなケースであれば、これは通常の労働者になり得るというふうに考えます。
■西村(智)委員
次に、短時間労働者が同一の職務に該当するか否かの判断は、これはどのようにして行うことになるのでしょうか。作業マニュアルなどで分類するということになるのかどうか、その点について伺います。
■大谷参考人
職務の内容が同じであるということは、これは、一つは業務の内容、それから二つはその業務に伴う責任が同じである、こういった場合を指すところでございますが、事業所における作業マニュアルや作業分担の実態の分析等によりまして職務内容を分類し、ある職務に通常の労働者とパート労働者の双方が従事しているかどうかということによって判断するわけでございます。
通常の労働者の中には、業務の困難性等が異なるものが複数存在することもあると思われますが、このような分類を行った上で職務の内容が同一のものと比較することになります。
ちょっと長くなりますが、例えば販売職というものの例をとりますと、一般的な職務内容として、商品の発注、それから接客の応対、また売り上げの数値管理といったものが考えられますけれども、これらを役割分担せずに販売職の者全員で担当しているといった例えば小規模事業所もあれば、さらに細分化して、さっきの接客応対のみであるとか商品の発注のみであるとか、こういった分担をしている大規模事業所もあるところでございます。
この小規模事業所の例によりますと、明確な職務内容の違いがなく、一つの販売という職務が存在するわけでありますが、一方で、先ほどの大規模事業所の例では、これは販売というものの内容が三種類ある、こういったことで、ケース・バイ・ケースであると思います。
■西村(智)委員
それは、異なる事業所との比較ということで、別の問題にもなってくるかと思います。
続きまして、責任について伺いたいと思います。
同一の責任という場合に、時々事例として挙がってまいりますのはクレームの処理でありますけれども、例えば、事業所の中に、顧客のクレームを受け付けるだけの正社員もいれば、またクレームの処理にまで携わる正社員もいるとしたときに、パート労働者と同じような責任を負う正社員と比較することになるという理解でよろしいのかどうか、伺います。
■大谷参考人
通常の労働者の中には、責任のレベルが異なるものが複数存在するということもあると思われますが、このような分類を行った上で職務の内容が同一の者と比較することとなります。
御指摘のケースについて申し上げますと、当該パート労働者について、クレームの受け付けと処理の双方を行っている正社員と比較するということになると思います。
■西村(智)委員
そういたしますと、確認ですけれども、通常の労働者の中にもさまざまな業務の範囲や責任のレベルがあって、同一の職務という場合には、パート労働者が担う業務の範囲と責任のレベルが同一の通常労働者との比較を意味する、こういうことを確認させていただきますが、よろしいですね。
■大谷参考人
お見込みのとおりだというふうに思います。
■西村(智)委員
次に、異動について伺いたいと思います。
改正雇用機会均等法においては、間接差別禁止の要件として、募集、採用に際しての全国転勤要件が挙げられております。今回のパート労働法改正における同一職務の判断に当たっても、こうした間接差別禁止の趣旨が考慮されるべきだと思います。
人事異動の、転勤の要件について、職務との関連において合理的なものであるべきと考えますけれども、同一職務の判断に当たっては、この転勤要件の有無で、入り口で排除しないということを周知徹底する必要があると考えておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
■大谷参考人
改正法案の第8条、それから第9条2項におきまして規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲につきましては、当該事業所における慣行その他の事情から客観的に見ることとしておりますが、これは、当該の転勤を含む人事異動の範囲等が合理的かどうかという目的は問わず、実態により判断することとなると思われます。
しかしながら、この転勤要件につきまして考えますと、その転勤要件そのものが男女間の間接差別とみなされるような場合も、これはあるのではないかというふうに考えております。
■西村(智)委員
この異動の範囲と頻度についてでありますけれども、単なる形式ではなくて、職務との関連性が伴わなければならないと考えております。異動の範囲についても、取り決めではなくて、きちんとした実態を伴うものでなければならないと考えるんです。
この異動の範囲と頻度の見込みについて、これは何度も議論になってまいりましたけれども、使用者側の恣意的な判断にゆだねられることが往々にして考えられます。使用者側の方が圧倒的な力を持っている今の日本の現状において、そういった恣意的な判断に任せないための具体的な措置が必要ではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。差別禁止の対象要件として掲げられている3要件の判断、これに当たって、事業所の判断にすべてをゆだねるようなものにすべきではないというふうに考えますが、いかがでしょうか。
■大谷参考人
本改正法案におきましては、差別的取り扱いの禁止の対象者につきまして、一つ、職務内容、二つ、人材活用の仕組み、三つ、実質的契約期間と、この三つの基準を定めたところでございます。
これらの基準は、労使の意見を踏まえまして平成15年に改正しましたパート労働指針に沿って指導してきたものをベースといたしまして、今回の労働政策審議会においてさらに議論を深め、我が国の雇用管理の現状を前提としたものとして最終的に労使に受け入れられた客観的なものというふうに考えております。
この改正法案の第8条や9条第2項において規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲の判断につきましては、一義的には事業主が判断することになりますが、その判断に当たっては、当該事業所における慣行その他の事情から見ることとされておりまして、今御指摘がありましたように、客観的な事情により判断することとなると考えております。
今後、そういった趣旨を徹底してまいらなければなりませんが、これは、通達によりましてより詳細を明らかにするとともに、成立いたしますれば、改正法の施行までに、具体的な事例や対応方法をわかりやすく解説したパンフレットやQアンドA集の作成、配布等によりまして、事業主に対する十分な周知に努めてまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
ぜひ、事業主に対する周知徹底とあわせて、パート労働者自身にもこういった周知が届くようにお願いをしたいと思います。
続きまして、期間の定めについて伺います。
私の意見をちょっと先に述べさせていただきたいんですけれども、やはり有期の問題は、このパート労働法の中に含めてしっかりと議論されるべきだったと、今でも私はそう思っております。8割以上のパートが有期契約でありますし、また、その有期契約労働者に対する合理性のない差別というのは、言ってみれば合理的理由のない有期雇用や契約更新回数の上限設定が禁止されていないということから生じるものだろうと考えております。
また、合理的理由のない有期雇用や反復更新した有期雇用は、期間の定めのない雇用契約とすべきだというふうに考えます。つまり、継続する仕事に有期で従事させるという正当性はどこにも存在しておりません。有期契約は女性差別につながってまいりました。しかし、審議会の中では、この問題が全く審議されないまま、また今回も置き去りにされようとしております。
こういった状況の中で、非常に不満の多い今回の法案制定過程ではあったんですけれども、改めてきょう伺いたいのは、この第8条の範囲についてであります。期間の定めについてであります。
第8条の要件である期間の定めのない雇用については、その実態で判断されるべきだと考えますが、いかがでしょうか。第8条は、契約更新により継続して働くことを前提とすると客観的に判断できる場合も含まれるのかどうか、確認いたします。
■大谷参考人
先ほどの、今回の3要件の周知につきましては、今御指摘いただきましたように、事業所のみならずパート労働者の方々についても周知徹底できるように体制をとってまいりたいと考えております。
それから、今御指摘の第8条の要件となっております期間の定めのない雇用でありますが、この8条第2項は、期間の定めのない契約となっているかどうかを実態で判断することが趣旨であることから、御指摘のケースが、例えば期間の定めがない契約と実質的に変わらないと客観的に判断できる場合には、対象となり得ると考えております。
■西村(智)委員
これも確認でありますけれども、そうしますと、実際に反復更新をしていなくても第8条第2項の要件を満たすことはあるという理解でよろしいでしょうか。
■大谷参考人
個々のケースに基づく判断にはなると思いますが、期間の定めがない契約と実質的に変わらないと客観的に判断ができる場合には、過去に1度も反復更新していなくても対象となり得るケースはあると考えております。
■西村(智)委員
次に、残業について伺いたいと思います。
責任は、これは職務内容に必然的に伴うものでなければなりませんし、また、業務の責任に伴って、あるいは業務全体が忙しいからということで残業が発生するケースも考えられるんですけれども、その前に、責任の程度を判断するに当たって、あらかじめ残業に応じられるかどうかが要件になってはならないと考えますが、それでよろしいかどうか確認をいたしたいと思います。
つまり、残業対応できるかどうかといった問題については、これは考慮の対象外であって、いわゆる同一義務説と言われる立場はとらないものと理解してよろしいかどうか、伺います。
■大谷参考人
職務の内容の要素であります責任が同じかどうか、これは、トラブル発生時や臨時、緊急時の対応、ノルマ等が同じように職務上の責任として含まれるかどうかということによって判断することとなるわけでございます。したがって、残業につきましても、職務上の責任の軽重に伴って差異が生じることはあると考えられますが、残業を責任と見る際の一義的な要素ということは考えておりません。
■西村(智)委員
業務の責任については、働く側の判断と働かせる側の判断が一致しないというケースが圧倒的に多いだろうと思います。今後、どういう取り組みが必要になると考えておられるか、職務との関連性を明確にすべきだと考えておりますが、行政としての取り組みはどのようなものになるでしょうか。
■大谷参考人
職務の内容の要素であります責任が同じかどうかは、個々の実態を見て、責任の違いがあらわれている業務を特定して比較していくこととなります。そのような実態判断に当たりましては、労使間の認識が大きくずれるといったことのないように、通達等で判断の目安について解説し、明らかにした上で、また、先ほど申しましたように、具体的な事例や対処方法をわかりやすく解説したパンフレットやQアンドAの作成、配布等をいたしまして、事業主、労働者に対する十分な周知に努めてまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
次に、職務給に向けた取り組みについて伺っていきたいと思います。
私たち民主党の案の中では、この職務給の確立に向けて第一歩を踏み出そうということで意思を示しました。今現在の日本の雇用システムのもとで、職務分析の手法がすべてのケースに適用できるとは考えにくいわけでありますけれども、事業主が職務内容を分析、判断する際の一つの手法としてこの職務分析が活用されるべきであるというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
■大谷参考人
現状におきましても、先進的な雇用管理を進めておられる企業では、いわゆる職務分析により職務を評価し、実務に生かしておられる例はあると聞いております。このような事例は、正規雇用、非正規雇用との間で働き方の評価基準を公正かつ中立的なものとしていくためには望ましいものであると考えております。
この職務分析の手法が確立されているとは思えない我が国の現状を踏まえまして、今法律改正案におきましては一律に強制することとはしなかったところでありますが、今後、この先進的な雇用管理事例について把握に努めて、できる限りそれを情報提供してまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
それは、私は、やはり立法府としてはきっちりと意思を示していくべきだろうと考えております。
次に、相談体制について伺いたいんですけれども、先ほど、フルタイムパート345万人だという数字を挙げましたが、そういった人たちが相談に行ったときに行政がこれまで以上にしっかりと対応してくださるのかどうか、その点について伺いたいと思います。
相談件数自体は大変多いということなんですけれども、これまで指導や勧告が行われたのはゼロ件であるということであります。労働局ないし均等室では、フルタイムパート労働者も含めて幅広い相談に応じるという理解でよろしいでしょうか。
■大谷参考人
このパート労働法が施行されましたら、そういったことに対する違反等の相談に応じることはもとより、フルタイムパートの方につきましても、その相談を含めて、都道府県労働局の、これは雇用均等室それだけでなくて、全国に約300カ所設けられております総合労働相談コーナーにおきましても、基本的な事項については相談に対応することとしたいと考えております。また、専門的な事項や事業主への指導が必要な事項については雇用均等室に円滑に引き継ぐなど、都道府県労働局全体で適切に対応してまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
引き継ぐということもよろしいんですが、ワンストップサービスの観点からいたしますと、やはり全国300カ所の労働局に専門官の配置が必要ではないかと考えますが、現時点で、厚労省、この配置に向けてやるおつもりがあるかどうか、伺います。
■大谷参考人
まずは、今回の法律の周知徹底を見ながら、その業務の実態を勘案して今後の体制をまた固めていかなければなりませんが、当面は、まだ確定的に専門官配置とか、そういうことまでは考えてはおりません。
■西村(智)委員
私は、やはりきちんと配置していくことに努めるべきだというふうに考えております。
続きまして、少し時間が迫ってまいりましたので走りたいと思いますが、賃金について伺いたいと思います。
賃金は、とりわけ事業主が思うままに決定しているというのが現状でありますけれども、今回、法律第9条1項でそれを防ぐための手当てをされたということであります。しかし、これは努力規定でありまして、行政権限の発動はどうなのかというふうに考えておるんですけれども、質問は、賃金の決定方法を合わせることは、これは既に企業の取り組みが進んでいるように、法律で範囲を限定するのではなくて、行政として普及や促進を図っていく施策が必要だというふうに考えております。そういう取り組みを強化する考えはあるのかないのか。同一の賃金決定方法について普及のための措置を講ずるというふうに考えておられるのかどうか、伺います。
■大谷参考人
御指摘のありました改正法の第9条第1項でありますが、これも努力義務でありますけれども、その実効性の担保のために、これは御相談があれば労働局において対応していきたいということで考えております。
また、本法案に規定をしております均衡待遇の確保のための措置は、法律で一律に強制することができる最低限のものにすぎないということでもあります。したがいまして、御指摘の賃金の決定方法を通常の労働者と合わせることに限らず、個々の事業主がより進んだ雇用管理を行っていくことが望ましいということは言うまでもないところであります。
厚生労働省といたしましては、短時間労働援助センターによる助成金の給付を通じた支援を行うほか、先進的な雇用管理事例についても、今後も把握し、できる限り情報提供してまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
今回の法案、周知を図っていくという、今ずっと政府参考人からの答弁がありましたけれども、冒頭申し上げたように、この法案というのは本当にパートの労働格差の拡大につながりかねないというふうに懸念をしております。特に、今回、法律事項にならなかった指針の項目がありますけれども、これについてしっかりと、これは後退しないのだ、引き続き指針に掲げ続けて後退させないようにするというふうなことで確認をしたいと思いますけれども、いかがですか。
■大谷参考人
新たなパート労働指針の内容につきましては、これは改正法が成立いたしますれば、その後、改めて労働政策審議会の御議論も経た上で内容を検討することとなりますが、厚生労働省の立場といたしましては、今回の法改正を契機として、現行のパート労働指針の内容が後退することのないように努めたいと考えております。
■西村(智)委員
大臣に伺いたいと思います。
労働条件を低下させることが許されないという原則、また疑似パートの差別禁止問題、これは有期契約の問題なども含めて、やはり今後の法制上の課題とされるべきだというふうに考えております。現行のパート法の対象は短時間労働者に限定をされておりますが、日本では、多くのパート労働者は何度も申し上げますけれども有期契約雇用者です。短時間であることに起因する課題だけでなくて、有期契約であることに起因する課題の方がむしろ、もしかしたら多いのかもしれない、そういう有期契約について、大臣は先日検討するというふうに述べていただきましたが、改めてその決意を述べていただきたいと思います。
■柳澤伯夫厚生労働大臣
今、るる西村委員から今回のパート労働法の改正の内容について確認的に御質疑をいただきました。それに対して雇・児局長からお答えをいたしまして、労働条件を引き下げるというようなことを招来しないようにしっかり取り組んでいくという趣旨の答弁をさせていただきましたが、これは、私といたしましてもそのように取り組むということをはっきりここで申し上げておきたい、こう思います。
それから、加えまして、有期、無期の問題につきまして御指摘をいただきました。
有期契約労働者の均衡待遇ということについては、今回は、パートというか短時間労働者だけについては有期であっても実質期間の定めがないものについてはとか、そういったようなことで均衡の処遇を図る道を設けたわけでございますけれども、全般としてこの有期の問題というものを考えていくべきではないかということでございます。
これは、前回も御答弁申し上げましたように、労政審におきましても検討はいたしたわけでございますけれども、やはり、有期の労働者というのが、現状の実態からすると、非常にいろいろな性格の労働者が多岐にわたってお仕事をなさっているというようなことがございまして、そういう実態からすると、そういうことを定めた場合に、使用者側の委員の意見でもあるわけですけれども、どのような労働者をどういうふうに、どこを直して処遇していけばいいかというのが必ずしも一義的にわかってこない懸念があるというところから賛成を得られなかったということでございます。
しかし、この問題については、やはり引き続いて検討しなきゃならないということで……
■櫻田義孝厚生労働委員会委員長
大臣、時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
■柳澤大臣
はい。ということで、我々としては、この問題を引き続き検討していくということにいたしたということでございます。
■西村(智)委員
立法者の意思は、労働条件の切り下げにつながらないということであると大臣はおっしゃいました。
しかし、その意思に反して、この法律が世に送り出されたときに、その意思とはまた逆の現象が起きるかもしれないということを私たちは強く懸念しております。
■櫻田委員長
西村議員、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。
■西村(智)委員
ですので、すべてのパート労働者に対しての差別禁止を私は盛り込むべきだったというふうに思いますし、同一価値労働同一賃金、この原則の確立に向けて、引き続き私たち民主党は取り組んでいきたいと考えております。
これで、質問を終わります。