■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。統計法案、トップバッターとして質問させていただきます。
今回の統計法案は、60年ぶりですか、抜本的な見直しで、しかも法律の全面改正ということで、非常に大きな改正だというふうに思っておりますし、またそのようにも言われているところです。統計のあり方そのものが根本的に変わる重要な法案だと思っておりまして、特に、概要で説明いただいた内容では、公的統計を体系的に整備するということ、もう一つは統計データのいわゆる二次利用、これが非常に大きな項目なんだろうというふうに思っております。
ここの統計法の改正に至るまでの経過というのは、私は極めて速いテンポで来たというふうに見ておりまして、昨年の6月の5日に、これは全く同じ日でしたが、内閣府に設置されておりました統計制度改革検討委員会、それから総務省に設置されておりました統計法制度に関する研究会、これがそれぞれ報告を出した、それが昨年の6月の5日でありました。
その後、7月の7日にいわゆる基本方針2006が閣議決定をされて、この中で統計法の見直しということで方針が決定されているんですけれども、この中で、このように基本方針2006には書かれております。「統計整備の「司令塔」機能の中核を成す組織を内閣府に置くこととし、同組織は、基本計画の調査審議や内閣総理大臣等への建議等を行う統計委員会(仮称)として設置する方向で検討する。」こういうことであります。
これまで政府の行ってきた公的統計、非常にむらがあるということは多くの方々が指摘したとおりです。重なっているところは重なっている、だけれども、穴になっているところはそのまま穴になっているということ、言ってみれば効率が悪いということなんだろうと思います。そこで、司令塔機能が必要だ、こういうことになったんだと思いますけれども、まず冒頭お伺いいたしますのは、そもそもこの司令塔機能というのは何を指して呼ぶのでしょうか。
■菅義偉総務大臣
委員が今御指摘されましたけれども、統計制度改革検討委員会、昨年の6月5日、これにおいても指摘をされておりますように、統計整備の司令塔機能というのは、公的統計の整備に関する基本的な計画の案の作成や個別統計の作成に関する調整といった企画立案・調整機能、さらに、国民経済計算などの包括的な勘定体系の整備や政府横断的、共通的な統計の作成といった基本的な統計の整備機能、各府省が行う統計調査の共通の母集団情報の整備、提供や研究開発といった統計の基盤整備機能と考えており、中でも、この企画立案・調整機能が最も重要なことであるというふうに考えております。
■西村(智)委員
大臣、この法案の趣旨説明をされたときにもそのように述べておられます。企画立案それから調整機能の強化を図るためということなんですけれども、改めて確認をいたしたいんですが、今、統計業務にかかわる企画や調整、これは実際に、現段階では総務省の統計局それから内閣府の経済社会総合研究所国民経済計算部、こういったところが中核となってやられているんだろうというふうに思います。
今回、新しい統計法の中で統計委員会というのが新たに設置されるということなんですけれども、これからいわゆる司令塔機能を担っていくのはどの組織なのでしょうか。
■菅大臣
いわゆる基本的な統計の整備機能、また基盤整備機能を担う組織というのは、御指摘がありましたように、総務省の統計基準担当政策統括官と統計局、内閣府の経済社会総合研究所、さらには、これらの機関が所掌事務を遂行するに当たって第三者的な立場から意見を述べる統計委員会であります。
統計委員会は、専門・中立的な立場から基本計画案の調査審議や法律の施行状況に関する意見具申などを行うことによって司令塔機能の中核的な役割を果たすということになるというふうに考えています。
■西村(智)委員
そういたしますと、今の御答弁がちょっとはっきりしなかったんですけれども、総務省統計局は総務省統計局として、内閣府の中にあります研究所の国民経済計算部はそれとして、そこも司令塔機能を担うんだけれども、司令塔機能の中核を統計委員会が担う、こういう理解でよろしいんですか。
■菅大臣
委員の御指摘のとおりです。
■西村(智)委員
そうなんですか。
では、その3つが司令塔機能を担う、しかし、その中でも統計委員会が司令塔を担うということですね。それは少し想定外の答弁で驚きました。
いずれにしても統計委員会が司令塔機能の中核を担うということなんですけれども、法案を細かく全部見てみました。そうしましたら、実は、この統計委員会というのが本当に司令塔機能の中核的な機能を担う組織たり得るのかということを疑問に思わざるを得ない点が出てきたわけです。
つまり、何かといいますと、統計委員会の役割というのは、総務大臣が何か諮問をしたときに、それに対して答申を行う、言ってみればアクションに対してリアクションをする、そういう役目のようでありまして、例えば基本計画をつくる、行政機関の長の基幹統計調査を行うこと、また、変更、中止を承認すること、行政機関の長の基幹統計の作成方法について意見を述べること、統計基準を定めること、基幹統計を作成するときに行政機関の長への必要な資料の提供など協力を求めること、基幹統計調査に係る匿名データを作成すること、そういう際に総務大臣があらかじめ統計委員会の意見を聞かなければならないというふうになっているんですけれども、このことを指して司令塔機能の中での中核の機能というのでしょうか。
これは結局、アクションを一番最初に起こすのは、本当に司令塔機能というのがそこにあるのであれば、本来は統計委員会だと私は思うんですね。ところが、この法文を見ている限り、むしろ総務大臣の方が中核的な役割をどうも果たしているように思うんですけれども、この点については大臣はどんな御見解ですか。
■菅大臣
統計委員会は、企画立案・調整機能の一環としての基本計画の案の作成など、総務大臣等の関係大臣からの諮問を受けて調査審議を行う。そのほかに、統計整備の司令塔機能の中核をなす組織として、専門・中立的な見地からこの法律の施行全般について能動的に幅広い意見を述べることが可能であるというふうになっております。
■西村(智)委員
いや、専門・中立的に意見を出す、しかも能動的にというふうにつけたようにおっしゃいましたけれども、これはどの委員会でも専門・中立的に意見を出すということはできるはずですよね。ですから、わざわざ能動的にという言葉はつけていただかなくても結構であります。
専門的、中立的な見地から意見を言うのが統計委員会。しかし、その業務の多くは、総務大臣がアクションを起こして初めてそれに対してこたえるような形になっている。
そもそもこの法案の最大のポイントは、言ってみれば司令塔の機能の強化です。これは、内閣府の統計制度改革検討委員会の報告書の中でまさに目玉として出されているこの司令塔機能という言葉が、果たして本当にこれでいいのか。この法案の中身を見ている限り、これで司令塔機能の強化が行われたと言えるのかどうか、このことについては甚だ疑問なのでありますけれども、大臣、もう一度、いかがでしょうか。
■菅大臣
今申し上げましたけれども、企画立案・調整機能、これが基本になるわけでありますけれども、その一環としての基本計画案の作成をこの委員会で行うことができる。さらに、総務大臣初め関係大臣からの諮問を受けて調査審議を行うほか、幅広く意見を述べられる。何といっても、企画立案・調整機能の一環としての基本計画案の作成というのはやはり司令塔として大きな役割だというふうに私は考えます。
■西村(智)委員
ただ、今大臣の御説明を伺っていますと、統計委員会というのは、私の耳に入ってくるとやはりアドバイザリーボードとしか聞こえないんですよね。しかも、基本計画をつくるときにだれが原案を作成するんですか。どこが原案を作成するんですか。統計委員会ですか。
■橋口典央政府参考人(総務省政策統括官)
お答え申し上げます。
基本計画は、政府が総務大臣の策定した案について閣議決定をするということになってございます。このときに、あらかじめ統計委員会の意見を聞かなければならないということになってございます。
それから、先ほど御質問のございました能動的なアクションということでございますけれども、これは、法案の第五十五条で、総務大臣が毎年この法律の施行状況について報告を各行政機関等に求めます。そして、その報告を取りまとめまして、その概要を公表するとともに、委員会に報告することになってございます。そして、この報告を受けたときに、この法律の施行全般に関しまして、委員会は内閣総理大臣、総務大臣、関係行政機関の長に対しまして意見を述べることができるとなってございます。これについては、個々の事項にこだわらず、また、そういう施行状況の報告を受けられたときには、タイミングを問わずそういう意見を申し述べることができるという権限を与えられている。これが委員会に与えられた非常に大きな権限ではなかろうかというふうに思っております。
■西村(智)委員
御丁寧に、伺っていないことも御説明いただきました。
結局、基本計画は、政府の方が原案をつくる、総務省の方が原案を作成するというふうに伺っております。このこと一つとってみても、統計委員会の司令塔機能というのが本当に機能するのか。
また、今55条という説明もあったんですけれども、委員会は意見を述べることができるというふうになっておりまして、結局これは、設置された統計委員会の言ってみれば意欲によるところが大きくて、法律の中では積極的に動いてもらうような書き方にはなっていないと私は思うんですよね。ですので、この司令塔機能の強化という点一つとってみても、やはりこれまでの検討委員会などで目玉として挙げられてきた項目が条文化されたにしては余りに弱過ぎるし、ここは、本来であればよくよく法律の細かい規定をしておくべきだったのではないか、もっと積極的な、能動的な書き方をしておくべきだったのではないかというふうに考えております。
この統計委員会の件に関係してもう一点お伺いしたいんですけれども、基本的な計画を策定するということで、統計委員会に諮って閣議決定する、そういうお話でありました。今は基幹統計ではなくて指定統計ですか、名称は違うと思うんですけれども、既に、例えば公的な統計をどこでどう調整していくかということについては、各省の統計担当者による会議体というのが存在しているというふうに承知をしております。
いわゆる公的統計の整備のための作業というのは、この改正統計法案の登場を待たずともこれまでやられてきたはずなんですけれども、今回、この改正統計法が掲げているスキームで本当に公的統計がきちんと整理されていくのでしょうか。司令塔機能も、私が今述べたように、非常に弱い、不十分なものだと思いますが、これで十分整理が図られるんでしょうか。
■菅大臣
御指摘のとおり、これまでも、政府内で統計主管部局長等会議によって取りまとめられた「統計行政の新たな展開方向」などを踏まえて統計行政は進められてきておりますけれども、こうした取り組みは、統計関係部局以外も含めた政府全体の方針として強力なものにはなっていなかったというふうに思っています。
今回は、こうした状況を踏まえて、基本計画に明確な法的根拠を与える。公的統計整備に関する府省間の調整機能の強化、見直し等の各プロセスにおける統計委員会の調査審議を通じた専門性や適時性の確保、統計整備への国民的参加の促進といった目的の実現が可能になり、公的統計を総合的かつ計画的に整備することができる、このように考えています。
■西村(智)委員
本当にそうなっていくかどうか、もう少し質問を進めていきまして、確認をできればさせていただきたいなと思っております。私は、この司令塔機能の強化についてはやはり不十分だという点を申し上げたい。
次に、統計業務のスリム化についてお尋ねをいたします。公的統計の整備の中には、やはり統計業務全体のスリム化というのも一つの課題として入ってくるんだろうと思います。
先般、報道でも出されておったようでありますけれども、統計業務にかかわってきた職員の方々がほかの省庁に転出されたというような報道もありましたけれども、確認も含めて伺いたいと思います。
先般、成立、施行いたしました行政改革推進法、ここの中で、農林水産省の地方支分部局が所掌する統計について、減量に向けた検討を加えて、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとするというふうに規定をされているんですけれども、公務員の数、それから統計の本数、それぞれについて減量というのはなされたのかなされないのか、確認をいたします。
■橋口参考人
お答え申し上げます。
いわゆる行革推進法を受けまして昨年6月に閣議決定されました「国の行政機関の定員の純減について」におきまして、農林統計部門4,132人については、実地調査の原則廃止、企画、取りまとめ業務の合理化、管理業務の合理化により、平成22年度までに定員1,904人の純減を行うこととされております。
この実績でございますけれども、平成18年度に定員230人、19年度に定員442人の合理化が行われたと承知しております。
■西村(智)委員
数の減量は行われたということです。これは今月の4月2日の報道でありましたけれども、国家公務員の配置転換が行われて、農林水産省の農林統計部門の方からも、どこに行かれたのでしょうか、刑務所か、入管か、あるいは国税局かというところなのかもしれませんけれども、そのように数は減っていると。
それでは、続いて伺うんですけれども、今度は地方支分部局全体の方です。行政改革推進法にはまた、地方支分部局が行う統計に関する事務について、民間への委託その他の方法による減量を行うことと規定をされているんですけれども、この点において、公務員の数そしてまた統計の本数、これは減量なされたのかどうか伺います。
■橋口参考人
お答え申し上げます。
統計の関係の合理化、効率化、これについては、例えば調査方法の改善、いわゆる調査員調査から郵送調査等に改善する、あるいは統計調査そのものの統廃合、あるいは調査客体の減、こういったものを通じて、先ほど申し上げましたような定員の合理化を行っているということでございます。
個別的にその本数がどのくらいかということについては、今のところまだ把握してございません。
■西村(智)委員
まだ把握していないと言われると、もうそれ以上質問のしようがないんですけれども、つまり、何かと申しますと、先ほどの司令塔機能の話にも重なるんですが、結局、公的統計をやはり整理統合するというのは相当な力わざなんだと思うんですね。その力わざをこれからやるというときに、それだけの体制がちゃんとでき上がっているのか、また、そういった意気込みというのがどうなのかということが問われるんだろうと思っております。
公的統計、国の統計業務、これから整理統合が図られていく。そのときには、もちろん統計委員会の意見を聞くということにもなるんでしょうが、しかし原案をつくるのは総務省だということで、お伺いをいたしたいんですが、整理統合が必要と考えられる統計業務、これは具体的に何でしょうか。
■橋口参考人
お答え申し上げます。
総務省では、平成15年6月に策定いたしました「統計行政の新たな展開方向」に基づきまして、すべての統計調査について計画的な見直しを行うに当たっての指針を策定するなど、統計調査の整理合理化に努めてきたところでございます。
今御質問のございました、今後整理統合が必要な統計につきましては、基本計画の策定過程におきまして、統計委員会の御意見も踏まえつつ検討してまいりたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
統計委員会の意見も聞きながらということですけれども、でも、原案をつくるのは総務省ですよね。
では、今全くの白紙だ、全く白紙の考えです、こういうことですか。
■橋口参考人
基本計画につきましては、総務大臣がその案を策定し、統計委員会にお諮りするということになってございます。その案につきましては白紙ということでございます。これから検討していくということになるかと思います。
■西村(智)委員
そうすると、この法律が通った後に実際に国の統計業務というのがどこまで整備されるかという像が見えないわけですよ。全く手探り、手で探っても何もつかめない、そういうことなんだろうと思います。
つまり、私たちは、公的統計の体系的整備をきちんとやるための統計法案の改正だと思っているわけでして、その公的統計の体系的整備の姿がかけらも見えないというのは、これは法案の審議の中ではちょっとやはり準備不足のような気がしております。そこのところは明確にお答えいただきたかった部分でありますけれども、それでは、ちょっと角度を変えてお伺いいたします。
計画の中で決めていくということでありますけれども、改正統計法の中では基幹統計という新しいカテゴリーをつくるということになっております。現在は、この基幹統計というのは存在しなくて、指定統計、そういうカテゴリーがあるだけなんですけれども、今度は、その指定統計の看板をかえて、それで基幹統計にするということなんですが、今伺っていても、実際にどれだけの統計業務が整理統合されるのかというのは全く明らかになっていない。ということは、統計の数を減らす、そういう合理化が行われるわけじゃないんだなというふうに私は判断をいたします。
そうすると、指定統計の看板が基幹統計というのにかけかわるだけで、実際にその整理合理化が何も行われないというのであれば、これは改革とは呼べないんじゃないでしょうか。
■橋口参考人
お答え申し上げます。
ただいま御指摘がございましたように、指定統計につきましては、附則第5条の規定によりまして、本法案の施行時点において総務大臣が公示いたしますことによりまして、新法における基幹統計として移行することにしております。
そうしまして、今おっしゃいました個別の基幹統計となるものの整理合理化、これにつきましては、新たに発足した統計委員会での御審議もいただきながら、計画案の策定の中で検討されていくというふうに考えております。
■西村(智)委員
そうしますと、統計委員会の方が、現在の指定統計の中に含まれている公的統計はどれも減らす必要がない、そして、これは全部基幹統計に移してよろしいんだ、そういう意見であったならば、統計の数を減らすなどの合理化は行われずにそのままになっている可能性もあるという理解でよろしいですか。
■橋口参考人
お答えいたします。
この法律案をお認めいただきましたときには、公布の日より半年以内に統計委員会に関する規定が施行になります。そうしまして、その統計委員会のもとで御意見を賜りながら新たな基本計画が策定されるということになるわけでございます。
その中では、今の指定統計がこの法案全体の施行のときに新しい基幹統計になるということでございますけれども、それが公布の日から2年以内、施行が2年以内というふうにされております。したがいまして、その間の計画案の検討の中で、その基幹統計、現在の指定統計をどういうふうにするかも含めて検討が行われるものと考えております。
■西村(智)委員
スケジュールについて私は伺ったのではありませんで、要するに、指定統計、その移行期間はあるでしょう、そして意見を述べる期間というのもあるでしょう、ただ、その期間が経過した後で、それはそっくりそのままで、数は減らさなくてもいいですよと統計委員会が意見を言ったときには、それでは統計の数が減らない可能性もあるということですね。どうでしょうか。
■橋口参考人
お答えいたします。
この新法に基づきまして公的統計の整備に関する基本的な計画を定めるということにされているわけでございますけれども、この策定によりまして、全体として整合性のとれた統計整備が推進されるということでございます。その中で、個別統計調査に関する厳格な審査、承認とあわせまして、公的統計の効率的な整備を行うことが可能となるものでございます。
この新法の趣旨を踏まえまして、既存統計調査についても効率化、合理化を推進していくということでございます。
■西村(智)委員
ぜひこの統計委員会がきちんと機能するように、総務省の方は、細かいところは全部統計委員会にお任せしますということのようでありますけれども、やはりこれまで統計調査の大部分を担ってきたのは総務省でありますから、もう少し責任を持って、明確にその方針を示していただくこと、これはやはり私は大事なことだと思っております。
引き続きまして、今度はちょっと視点を変えてみたいと思います。
今回の統計法案というのは、大変大きな改正、全面改正で、この後、同僚の委員からも多角的な質問があると思います。独立行政法人の改革の問題ですとか、本当にたくさんの論点があると思いますけれども、きょう、私、これからは、いわゆる統計調査を受ける市民の側、国民の側の感覚に立って少し質問をしたいというふうに考えております。
今回、国の行政改革の流れの中で、行政機関同士で統計のデータをやりとりするといいますか連携をするということ、これは意味のあることだと思っております。また、そのデータの二次利用ということについても、いわゆる学術目的の方々や教育目的の方々が高い経費をかけずに国民の一般的な状況などについて知るというためにいわゆる二次利用ができるようになる、公にできるようになるということは、これも意味のあることだと思います。
ただ、その統計調査を受ける市民の側に立ってみたときに、私たちは、例えば統計調査が行われるときに、実は余りその目的というのをはっきりと知らされていないことが多いのではないか。また、今回、そういうふうにしてとられた情報なりが、私たちの手を離れたところで二次的に加工されて、それが全くまた別のところで提供されているということは、見えないところで行われているがゆえに少し肌寒い感じがするところでもあるんですね。
ですので、そういう懸念を払拭するためにこれから質問していきたいというふうに考えておりますけれども、今回の法案のそういった意味からのポイントは、私は法律の13条かなと思っております。
13条は報告義務でして、結局、個人や法人は、調査を求められたときにはそれに対して報告を拒んではならない、また虚偽の報告をしてはならないというふうに書かれております。こういうふうに義務がある以上、いわゆるその情報の保有者である個人や法人の思いや気持ち、考えなりは少し考慮されるべきではないかということであります。
そういった点から、少し具体的に伺っていきたいと思いますけれども、まず一点目は、法律の29条の関係でございます。
この29条で「協力の要請」、何度も申し上げますけれども、この協力の要請自体に私は反対しているわけではありません。ただ、この法律と同種の法律でちょっと考えてみたいんですけれども、例えば行政機関の個人情報保護法あるいは自治体が作成している個人情報保護条例、こういった中では、個人情報の目的外での外部提供を、法令等に基づく場合はそれは例外的にできます、そういうことを定めております。
今回の改正統計法の29条で、行政記録情報を求めるということは、これは従うべき義務という扱いになるのでしょうか。それが妥当な提供の求めであるということは、やはりどこかできちんと担保されるべきだと思いますけれども、どこで担保をされるのか、またどの範囲で行政記録情報の提供を求めることになるのか、この点について伺います。
■橋口参考人
お答え申し上げます。
第29条、行政記録情報の提供の求め及び統計調査以外の方法による基幹統計の作成は、基幹統計が公的統計の中で特に重要性が高い統計であるということから、個人情報保護法第8条第2項第3号に該当するものと考えております。
今申し上げました規定でございますが、どういう規定かと申しますと、個人情報保護法の第8条第2項第3号は、他の行政機関等に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務または業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるときには目的外の利用ができるというふうな規定でございます。これと趣旨を同じくして、この29条の行政記録情報の提供の求めができるというふうに考えております。
■西村(智)委員
それで、続いて第32条の関係なんですけれども、ここで調査票情報の二次利用ということが規定をされております。
実は、調査票情報の二次利用と類似と言えるんだと思いますが、現行の統計法の15条に、目的外使用について規定があります。この現行の統計法第15条の目的外での統計票情報の利用というのと改正統計法の32条の二次利用というのと、これは同じなのでしょうか、それとも異なるのでしょうか。趣旨として同じことなのかどうか、この点について伺います。
■橋口参考人
お答えいたします。
現行の統計法第15条は、総務大臣の承認を得た場合に限って調査票の目的外使用を認めているものでございます。
その場合の承認の要件でございますけれども、これは運用でございますが、原則行政機関や地方公共団体などによる行政目的による使用のみといたしまして、民間研究者等については、行政機関等との共同研究、行政機関等からの委託を受けた研究等、行政との関連性を有する場合に限って使用を認めてきたところでございます。
今回の法案でございますけれども、これは現行法とは異なりまして、調査票情報を利用し得る場合を法律上明記する。それは、まず第一点が、統計の作成または統計的研究を行う場合、それから、統計を作成するための調査に係る名簿を作成する場合ということに限りまして、その範囲で各府省が判断することができるということとしたところでございます。
■西村(智)委員
現行法の目的外利用については、現在は公示することになっていますよね。目的外利用をしたケースについて公示するんでしたでしょうか、するケースについてだったでしょうか、いずれにいたしましても、公示制度というのがある。
改正法については、これはどういう形でその状況について明らかにすることになるのでしょうか。
■橋口参考人
お答えいたします。
調査票情報の利用提供制度の適正な運用を確保するために、各府省において具体的にどのような場合に調査票情報が利用され、または提供されているのかということにつきましては、これを明らかにしておく必要があるというふうに考えております。
このために、第55条の規定によりまして本法の施行状況の報告を求めるということになってございますので、この際、各府省から調査票情報の利用、提供の状況につきましても報告を求めまして、その概要を公表することを想定しているところでございます。
■西村(智)委員
そうしましたら、次に、法律の第15条の関係であります。
13条には、基幹統計等について被調査者に報告義務が課せられていまして、被調査者は調査にこたえるという以外の選択の余地がない、そういう構成になっております。
それで、その後の第15条に「立入検査等」とあるんですけれども、法の第13条で報告義務を課している上に第15条で立入検査等を行うということは、これは何に対して立入検査を行うということになるんでしょうか。この報告義務違反に対して立入検査を行う、つまり報告義務に違反した個人や法人に検査を行う、こういうことになるのか、どういうものに対して行うことになるのでしょうか。
■橋口参考人
お答えいたします。
第15条の規定は、「基幹統計調査の報告を求められた者に対し、その報告に関し資料の提出を求め、又はその統計調査員その他の職員に、必要な場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」と規定してございます。今御指摘のございましたような申告義務違反の事案に対して立入検査を行うということも想定されると思います。
また、それだけでなく、例えばオートロックマンションであることから入居者と接触できない、このためマンションの管理者に入居状況を質問する必要があるような場合、こういったこともあり得るだろうというふうに考えております。
■西村(智)委員
もう少しそのあたりを明確にしてから法案の審議に入るべきではないかと思うんです。
これは、現時点で、例えば今オートロックマンションのようなケースということでお話しになりましたけれども、それ以外はどういう場合に行使することになると考えていらっしゃいますか。ほかにあったら、ぜひ答弁をいただきたいと思います。ほかにないのであれば、ほかにないで結構です。
■橋口参考人
事業所などに対しまして、外見からわからない、あるいは名簿等で把握できていないといったような場合、こういう場合が想定されるのではなかろうかなというふうに思います。
■西村(智)委員
ちょっとこのあたりは、もう一度研究して、質問の機会があればというふうに思います。
次に、法の第26条ですけれども、統計調査以外での基幹統計の作成という項目でありますが、ここで「統計調査以外の方法により基幹統計を作成する場合」とあるんですけれども、これは一体何を指すのか。つまり、行政機関が保有している個人情報を目的外利用することがあるということをここは意味しているのでしょうか。法人情報の利用なども含めて、何を根拠に基幹統計の作成に本来の作成取得目的以外で情報を利用して統計調査を行うことになるのでしょうか。
■橋口参考人
お答えいたします。
法案では、行政機関の長等は、この法律または条例に特別の定めがある場合を除き、その行った統計調査の目的以外の目的のために利用することを禁止している、調査票情報の利用目的については禁止しているということでございますが、ここで、調査票情報の利用が認められる法律に特別な定めがある場合とは、具体的には、総務大臣が事業所母集団情報を整備する場合、行政機関等が統計の作成等を行う場合、行政機関等が民間研究者の委託によりそのニーズに応じた統計の作成等を行う場合、学術研究のために提供する匿名データを作成する場合でございます。
■西村(智)委員
次に、32条についてもう一度戻って伺いたいと思います。
統計を作成するための調査に係る名簿でありますけれども、この利用範囲ですね。調査票情報は統計調査によって集められたものだというふうに法案の中で定義をされております。この場合に、原則として調査票情報の統計以外での利用を禁止しているんですけれども、調査に係る名簿は調査によって収集されるものとは限りません。
調査票情報の利用方法に関してどのような制限をかけているのか、この点について伺います。
■橋口参考人
お答えいたします。
第32条に規定いたします名簿とは、統計を作成するための調査に係る調査対象名簿のことを申します。調査対象名簿は、あくまで統計を作成するための調査の実施のみに用いられる名簿であって、その調査の結果を受けて統計が作成されることとなるものでありまして、最終的には個体が識別されない形で利用されることになるものでございます。したがいまして、個人情報保護の観点からの問題はないものと考えております。
それで、調査対象名簿を利用する者に対しましては、本法におきまして、守秘義務、適正管理義務を課すとともに、罰則規定を整備しているところでございます。
■西村(智)委員
守秘義務で罰則規定を科すというところは、それはその法律の意思として私も理解をいたしました。理解をいたしましたけれども、いわゆるそれが匿名データというものになったときに、本当にその匿名性というのが担保されるのかどうか。これはちょっと技術的なことになってしまうんだろうとは思ったんですけれども、ここは大きな問題点だと思います。つまり、匿名データの提供を求めるところというのは学術研究者であったりいろいろな方がいらっしゃるのでしょうけれども、そういった匿名データを求めるところというのは、言ってみれば、特別な調査を行うことのできる、そういうところもあるというふうに考えられます。
これは、具体的に何と指して言っているのではありませんが、恐らくそうだということが考えられるということで、つまり、そういうときにどういう状態であれば匿名性が担保できるというふうに考えているのか。つまり、大きな町内で何歳から何歳までのどういう条件の人といったときには、人口の多いところであれば、それは特定はかなり難しいと思います。ですけれども、例えば、集落が非常に小さいところで、4軒とか5軒しかないときに、名前を排していわゆる匿名性をつけたと外見的に私たちがそう思ったとしても、いわゆる特別な調査をしたりすれば個人が特定される、個人識別ができてしまう、そういうケースというのはあると思うんです。
そういうように、つまり、地域性などの情報を排除すれば特別な調査を行っても個人識別は不可能であるというふうに考えられるんですけれども、地域的なくくりでデータの提供を求められると、限られた地域においては特別な調査で個人や事業者が特定される可能性はあるということからいたしますと、この匿名データの提供先についてもやはり明らかに、公にすべきではないかというふうに考えます。つまり、そこが言ってみれば歯どめのようなものになるのではないかと考えるんですけれども、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
■橋口参考人
お答えいたします。
匿名データの利用制度の適正な運用を確保するため、各府省において具体的にどのような場合に匿名データが提供されているのかについて、やはりこれは明らかにしておく必要があるだろうというふうに考えております。
このため、先ほども申し上げましたけれども、第55条の規定による本法の施行状況の報告の中で、各府省から匿名データの提供の状況につきまして報告を求め、その概要を公表するということを想定しているところでございます。
■西村(智)委員
その匿名データの状況の公表項目の中に匿名データの提供先というのを含めるお考えはありませんか。これは法律事項ではなくて政令事項になるんだろうかと思いますけれども、どうでしょうか。
■橋口参考人
お答えいたします。
今後検討してまいりたいと思います。
■西村(智)委員
後ろで丸が出ていたのに、今後検討でというようなことは、もう一歩踏み込んで答えていただきたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。
先ほど私、めちゃくちゃ言いましたけれども、匿名データの提供先をちゃんと統計委員会に報告するということは、一定程度やはり匿名性の確保という点からはかなり大きなハードルになってくると思うんです。この点について、ぜひこの項目の中に含めていただけないかと思いますが、いかがでしょうか。
■菅大臣
その方向で検討させていただきます。
■西村(智)委員
ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
この項目の最後に、調査票の保存年限について伺いたいと思います。
調査票そのものは個人名や法人名が特定されることになりますが、これが一体どのくらいの期間保存されるのか。また、その保存の形態はどういうことでしょうか。また、調査票情報等の提供を受けた者がどのくらいの期間調査票情報を保存することになるのか、この点について伺います。
■橋口参考人
お答えいたします。
まず第一点目の、調査票の保存期間、保存形態でございますけれども、これは、各統計調査によって異なっております。総務省における調査の一例を申し上げますと、国勢調査につきましては、紙の調査票は3年、氏名を除く調査票の内容を転写した電磁的記録は永年保存、また、労働力調査につきましては、紙の調査票は1年、氏名を除く調査票の内容を転写した電磁的記録は永年保存、事業所・企業統計調査につきましては、紙の調査票は3年、調査票の内容を転写した電磁的記録は永年保存と、それぞれ省令で定めているところでございます。
これは、各府省の統計調査におきましてもおおむね同様に、紙の調査票は1年ないし3年程度保存した後廃棄する、そして調査票の内容を転写した電磁的記録は永年保存しているものが多いという状況でございます。
それから、調査票の提供を受けた者がどの程度の期間当該情報を保有することになるのかという御質問でございましたけれども、調査票情報の提供を求める際には、その情報の使用目的、希望する使用期間、使用後の処置を明記させることを想定しております。そして、調査票情報を提供する機関がその妥当性について確認することになるというふうに考えております。
したがいまして、調査票情報の提供を受けた者は、当該情報の使用目的を達成するために必要最小限の期間に限って当該情報を保有することになるということでございます。
なお、調査票情報の提供を受けた者による当該情報の適正管理については、要領等を作成し徹底してまいりたい、こういうふうに考えております。
■西村(智)委員
細かい点について本当はここでもっと詰めていきたいとは思うんですけれども、残り時間も少なくなっておりますので、これはまた別の機会に回すことにいたします。
最後に、国勢調査の件について伺いたいと思います。平成22年ですので3年後に行われる国勢調査についてであります。
現在、国勢調査の実施に関する有識者懇談会、また、平成22年国勢調査の企画に関する検討会、これが開催をされているようなんですけれども、この両方の懇談会と検討会の中で住民基本台帳の活用が検討されているというふうに伺っております。
つまり、国勢調査はこのところ非常に回収率も悪くて、調査員の方々はもう二度とやりたくないというような声も多いようであります。そういった状況の中で、調査員が調査票を配付するために担当調査区の世帯名簿を作成するに当たって、不在世帯など情報が確認できない世帯については住民基本台帳を活用するということが検討されているようなんですけれども、これは実施する方向で検討が現在進んでいるのでしょうか。
■川崎茂政府参考人(総務省統計局長)
お答え申し上げます。
ただいま先生御指摘の有識者懇談会の報告でございますが、この中では、世帯がその場所に住んでいるかどうかという居住状況の把握、こういったことにつきまして住民基本台帳を活用するという方策について検討するということが提言されております。
私ども総務省といたしましては、この提言を踏まえまして、今後、有識者あるいは地方公共団体などの意見もよく聞きながら、法令上の観点なども含めまして、国勢調査が円滑かつ正確に実施されるように幅広く検討してまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
先般、NHKの受信料徴収の問題のときに、ちょっとこれはどういう趣旨だったのかはっきりとつかみかねるんですが、受信料徴収のときに住基を活用できるのではないか、そういう話になったときに、総務省の事務次官が、法的根拠や個人データ保護など問題がいろいろ出てくるというふうに述べられて、慎重な姿勢を示されたということです。
今回、国勢調査に関して実施する、つまり住民基本台帳を利用するということになったときには、今まさにおっしゃいましたけれども、関係法令の整備が必要になってくるんだと思うんです。これは、事実といいますか、そういう関係法令の整備が必要だということに当然なると思いますが、いかがでしょうか。
■川崎参考人
お答え申し上げます。
この検討におきましては、さまざまな観点からの検討が必要でございまして、まず調査方法を一義的には確定させまして、その上で、さまざまな観点、法令上の観点も含めまして検討していかなければいかぬというふうに思っておりまして、どのような形になるか、今後とも引き続きまして検討してまいりたいと思っております。
■西村(智)委員
この住民基本台帳の整備をどんなふうにされるのか、今まだ明確な答弁じゃないんですけれども、今後、住民基本台帳の転用に大きく道が開かれるおそれがあるというふうに私は考えております。非常に重大な問題だと思っておりますので、今後とも慎重に見きわめていきたいと思っております。
次に、この項目の次なんですが、国勢調査で、オートロックマンションが非常にふえてきたということから困難になってきているというふうに指摘をされております。
それで、平成22年の国勢調査の際には、マンション管理会社などへの協力依頼及び連携が検討されているようなんです。管理会社の職員が調査員になるなども含めて、管理会社の所有する個人情報がそのまま国勢調査票に転記される、こういう事態が発生するおそれがありますけれども、この点についてはどのような見解でしょうか。
■川崎参考人
有識者懇談会の方で提言がございます。
確かに、先生御指摘のように、オートロックマンションの調査というのは非常に難しくなっておることは事実でございまして、調査員が立ち入りにくい状況が現実に発生しております。
そのような中で、この有識者懇談会は、こういう状況を解決するための方策の一つといたしまして、管理会社に業務の委託をするというようなことを提言しているというふうに理解しておりますが、これは、調査の方法としてそのようなことも考えられるということが言われているのでございまして、管理会社が所有する個人情報を国勢調査の調査票に転記するということを意図したものではないというふうに私どもとしては理解しております。
そういうことで、今後、先生の御懸念の点も含めまして、これからどのような対応ができるかということを検討いたしまして、世帯が安心して協力できる調査となるように努めてまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
当然、意図していないということはわかります。わかりますけれども、そういう事態が発生するおそれがあるということは十分御理解をいただきたいと思います。
時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。