■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
今回、地方公務員そして国家公務員の育児休業等に関する法律が一部改正をされることになりました。ちょっと時間がかかり過ぎたのかなという感じが、これまでの経過を見ておりまして、しております。本来であれば、この前の国会で、公務員制度の法案のときに一緒に出てきてしかるべきだったんだろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、今回このような形で育児短時間勤務制度が導入されるというのは非常に喜ばしいことだと思っております。
社会的な要請であるワークライフバランスの確立にも、いよいよ官職の面からも進んでくるということは非常に重要な意義があると思っておるんですけれども、細かい点については先ほど福田委員の方からいろいろと質疑がありましたので、私の方からは、多少大きな点になるかもしれませんが、この育児短時間勤務制度導入の対象などを中心に伺っていきたいと思います。
まず、今回の法案で、地方公務員の法の方では第10条、国家公務員の法の方では第12条にありますが、ここにおけるその対象となります職員の意味について伺いたいと思っております。つまり、今回その対象となる公務員の職種と言ったらよろしいんでしょうか、雇用形態、こういったものはどうなっているのか。例えば、地方公務員の方ですと、任期付職員法、それから地方公務員法の3条3項3号、それから第17条、22条ですか、国家公務員法でも同様に定めがあるんだと思いますけれども、そこで定められておりますいわゆる非常勤職員や臨時職員、こういった方々は今回育児短時間勤務制度の対象の内側となるのか外側となるのか。その点から伺っていきたいと思います。
■吉田耕三政府参考人(人事院事務総局職員福祉局長)
お答え申し上げます。
国家公務員の育児休業法につきましては、臨時的任用職員それから非常勤職員については短時間勤務制度の対象にはならないというふうに規定されております。
■上田紘士政府参考人(総務省自治行政局公務員部長)
地方公務員につきましての基本的な考え方を申し上げますと、育児短時間勤務制度を利用できる地方公務員の範囲は、非常勤職員、臨時的に任用される職員、配偶者がこの法律により育児休業している職員その他条例で定める職員を除いた職員としております。具体的には、その条例の中において国家公務員と同様の事項を規定するということを考えているところでございます。
■西村(智)委員
今回の育児短時間法は、臨時職員と非常勤職員は対象外となる、こういう御答弁だったと思います。これは、地方公務員と国家公務員の育児休業法の方でも同様なんですよね。臨時職員と非常勤職員が対象外となっている。ただ、実態を見てみますと、果たしてそれでいわゆる社会的な要請にこたえているのか、そういう点が幾つか見られるんですけれども、臨時職員と非常勤職員が育児短時間法それから既にあります育児休業法の対象外となっている理由について明確に答弁をいただきたいと思いますが、それぞれいかがでしょうか。
■吉田参考人
お答えいたします。
非常勤職員を対象から除外している理由といたしましては、公務における非常勤職員が、臨時または緊急の必要に応じて任用されるものでありまして、民間の一部の有期雇用者のように雇用の継続を前提として任用されるものではないこと、それから、短時間勤務に限って申しますと、日々雇用でない非常勤職員はもともと短時間勤務であることから、短時間勤務制度にはなじまないことがございます。
■上田参考人
ただいまの対象にならない理由につきましては、地方公務員の場合におきましても、臨時的任用、非常勤職員について、国同様に長期的、継続的な勤務を前提としていないこと、そういったことが理由となっておりますことは同様でございます。
■西村(智)委員
雇用の継続を前提としていないので臨時職員及び非常勤職員は対象外となっている、そういうお話でした。しかし、これは民間の部門でも問題になってきたことだったんですけれども、つまり、期間の定めがあるといいながら、実際には長期間働いてもらうことを前提として職場に雇用されているというケースが非常に多かったり、しかも、それが反復更新をされて、実質的には期間の定めのないものとみなされるような雇用というのはたくさん例があったと思います。
実際に、官職の部分においても、ある調査によりますと、雇用期間というのは、こ
れは契約の期間ではなくて実際の雇用期間でありますけれども、臨時職員の平均は大体3.9年、それから、嘱託、非常勤の職員は平均5.7年、こういう調査結果も出ておるんですけれども、こういうことからいたしますと、雇用の継続を前提としていないというふうには一概に言えないんじゃないかというふうに思います。
ちょっと視点を変えまして、民間の方の育児・介護休業法の方から伺っていきたいと思いますけれども、先ほど福田委員の質問の中にもありましたが、最初は有期雇用の方々は対象となっていなかったこの育児・介護休業法ですけれども、3年前の改正だったでしょうか、ここで、そういった期間の定めのある雇用者に対しても育児休業が取得できるようになりました。実際に契約更新を繰り返して、実質的には期間の定めがなくなっている地方公務員そして国家公務員、こういった分野の臨時職員や非常勤職員は、こういう民間の育児・介護休業法からは除外されている、いわば適用除外となっているわけですね。しかも、地方公務員、国家公務員の育児休業法からも除外されているということなんですけれども、いかがなものかと思うわけです。
まず一点目、伺うんですけれども、民間の育児休業法に基づいて、休業期間中は育児休業手当金が支給をされる、ここの財源には雇用保険の保険料が入っているというふうに承知をしているんですけれども、その雇用保険に臨時職員や非常勤職員は加入しているのでしょうか。
■岡崎淳一政府参考人(厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長)
公務員に対する雇用保険制度の適用でございますが、常勤職員につきまして、退職手当法等に基づきまして雇用保険制度を上回る退職金制度がある方、これについては適用除外でございますが、それ以外の方については、一般の民間の方々と同じ適用基準になっております。したがいまして、週所定労働時間が20時間以上で1年以上の雇用見込みがあるという方につきましては、国や地方公共団体のいわゆる非常勤職員につきましても雇用保険法の対象になっている、こういう状況でございます。
■西村(智)委員
そういたしますと、1年以上の雇用が見込まれる人で週20時間以上の勤務をしている人たちは雇用保険に入っている、つまり雇用保険料を払っているわけですね。ところが、雇用保険が財源となっている育児休業手当金は、その方々はどう頑張っても支給をされないわけですね。これはちょっとおかしいんじゃないでしょうか。こういったことをずっと放置しておくというのは、これは制度設計の面からも非常に大きな問題があるというふうに思っております。
二点目のお伺いは、こういった状況、つまり臨時職員や非常勤職員の方々が育児休業法から排除されている状況というのは、男女共同参画社会基本法、それから少子化社会対策基本法、あるいは、これは厚労省の方からの発案だったんでしょうけれども、次世代育成支援対策推進法、こんないろいろな法律が出てきており、また、ワークライフバランスが非常に重要だと言われるこういった社会的な背景からいたしますと、やはりこれはおかしいのではないかというふうに考えるんですけれども、この点について、厚生労働省の見解はどのようなものなのでしょうか。
■村木厚子政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)
先生御指摘がございましたとおり、次世代育成支援対策推進法、それからワークライフバランスの観点から、民間であれ公務の分野であれ、働きながら子供を生み育てることができるような制度を充実していくということは、私どもがどの分野であっても制度を向上させていかなければいけないということはそのとおりでございます。ただ、具体的にそれぞれの分野でどういう制度を設計していくかということについては、それぞれの所管のところで制度設計をしていかなければならないわけでございます。
先ほど先生から御指摘がありましたとおり、民間の分野につきましては、平成17年の4月から、一定の期間雇用者を対象として育児休業の取得が可能になったところでございます。公務員につきましては、育児・介護休業法を制定いたしましたときに、国家公務員や地方公務員のさまざまな特殊性を勘案いたしまして、これは特例を設けて公務員制度の方で制度設計をしていただくという仕分けをしているところでございます。
■西村(智)委員
今の御答弁ですと、もう厚労省には責任はありませんという御答弁なのかなというふうに思います。
総務大臣、こういう仕切りがされているんだそうでありますが、仕切りの問題もあ
るんですけれども、要するに法律と法律のはざまでたくさんの臨時職員、非常勤職員が育児休業や育児短時間勤務制度が取得できないという実態に目を向けていただいて答弁をいただきたいと思うんです。民間の育児・介護休業法それから公務員の育児法、こういったはざまに置かれている状況が実際にあるわけなんですけれども、これを総務大臣としてはどういうふうに認識されておられますか。
■菅義偉総務大臣
総務省としても、子育て支援というのは積極的に取り組んでいかなければならない、そういう立場の中で、今回短時間勤務制度を導入するということは仕事と子育ての両立を行う方向で導入することでありますけれども、この制度そのものは、職員の継続的勤務を促進しよう、そういう制度の趣旨によって今回長期継続勤務者も対象に設けられたというものでありまして、国家公務員と同様に、やはり非常勤
職員は地方公務員としてもその対象になっていない、そういうことであります。
■西村(智)委員
では、今のままほうっておいておいてもよろしいという御認識なのでしょうか。
臨時職員や非常勤職員、事実上長く働いている方はたくさんいらっしゃると思います。正確な数字を教えてくださいませんかとお願いしていたんですけれども、なかなかこれは数値がとれていない。ただ、一般論として言われますのは、例えば20年前、30年前には臨時職員、非常勤職員は、例えば自治体、地方公務員の分野では約9万人だった。1980年の段階で9万人であった臨時職員、非常勤職員が昨年の段階では40万人に近いということですと、これは飛躍的に伸びているわけですね。かつてのような季節的な、あるいは臨時的な、補助的な働きというよりは、既に多くの非常勤、臨時職員の方々が、恒常的に、基幹的に働いています。そういう意識を持っている方が大変多くなっているというふうに私は承知をしております。
では、実際そういう方々が育児休業や育児短時間勤務、育児時間を取得することができるケースというのはどういうケースなんでしょうか。どういう法律を根拠にそれを取得できるのか。できないとすれば、やはりこれはきちんと整備をしていくべきではないかと考えますけれども、これは人事院総裁と総務大臣にそれぞえ考えを伺います。
■谷公士政府特別補佐人(人事院総裁)
先ほどから何度か御答弁もございましたけれども、基本的に現在の非常勤の制度は臨時または緊急の場合に設置される非常勤官職に充てるということでございます。また、その運用につきましては、閣議決定によりまして、会計年度内の任期で運用するようにという指導になっております。その前提で考えますと、そういった短期の非常勤職員についてこういう制度を導入するかどうかということにつきましては、民間における状況、これを十分注視して考えていく必要があると思います。
それから、先生御指摘のありましたように、そういった期間を限定する非常勤職員制度の運用では公務の運営に支障を来すという実態が明らかになってまいりました際には、公務運営のあり方そのものを職員の制度を含めて見直すという可能性もあるわけでございますが、それは現在予定されているところではないというふうに考えております。
■菅大臣
先ほど来お話しさせていただきますように、育児休業だとか短時間勤務、これは、職員の方に長期的また継続的な勤務をしてもらおう、そういう制度の趣旨によって設けられたものでありまして、今の制度の趣旨からしますと、非常勤職員の皆さんを育児休業の対象とするということは現時点では非常に難しいというふうに言わざるを得ないと思います。
■西村(智)委員
閣議決定の方向などからいたしますと難しいということなのかもしれません。ただ、私、先ほど申し上げたように、臨時職員それから非常勤職員というのはこの間ふえ続けてきているわけですね。ふえ続けてきているんだろうと思うんです。なぜかというと、行政改革という一つの方針が立っていて、地方公務員においてはこの間、5.7%でしたか、5.9%でしたか、これからも減らし続けましょうね、そういう方向性が出ているわけですが、しかし、このところ、行政に対するいろいろな意味での期待というのはむしろ逆に大きくなっている。この前の「頑張る地方応援プログラム」ではありませんけれども、役所の仕事というのはやはりふえてきていると思うんですね。しかも、非常に専門化してきていますし、高度化してきている。
そういった意味で、業務量全体はふえているんだけれども、定員法の枠でどんどん役所の方はスリム化されている。では、どうやって定員の枠の外でふえてくる業務量をカバーするかということになると、やはり非常勤職員とか臨時職員とか、あるいはいわゆる物件費という枠の中で支出をされている人たちにやってもらう、そういうことしかないんだろうと思うんですね。
これは別に地方自治体を責めているとかということではなくて、そうせざるを得な
い状況に今まさに追いやられているということだと思うんです。これをやはり放置するというのはよくないと思いますし、今回公務員制度改革の中でもこの点はきっちりと議論されていってほしいと願っております。
実態を把握いたしたいのですが、そもそも、任期付職員法ですとか、あるいは非常勤や臨時などという形で雇用されている就業者の実態を政府は把握しているのでしょうか。私の手元にも正確な数字というのは実はありません。探してみたんですけれども、ありません。国と地方それぞれで、実数そしてまた性別でどうなっているのか、この点について伺いたいと思います。
■上田参考人
申しわけございません。先生のお尋ねすべてはちょっと今控えを持ちかねておりますので、地方公務員における臨時、非常勤の数の調査をここで御答弁させていただきます。
平成17年4月1日現在ということで調査をいたしました。全地方公共団体の臨時、非常勤、これはいわゆる任期付短時間など一定の職員を除いておりますけれども、その中で、任用期間が6月以上または6月以上となることが明らかで、かつ、1週間あたりの勤務時間が20時間以上、こういう条件のもとで調査を行いました。この結果が、先ほど申し上げた17年4月1日現在で45万5,840人ということでございます。
ちょっと男女のあれは統計がございませんけれども、例えば一般事務職員ですと11万2,315人、技術職員では7,147人、医師が9,955人等々となっているところでございます。
■戸谷好秀政府参考人(総務省人事・恩給局長)
国家公務員の方でございます。平成18年7月1日現在の数字を手持ちで持っています。一般職非現業の国家公務員のうち非常勤である者、これはいろいろな種類がございますが、総数としては約14万9千人という数字に上っております。
■西村(智)委員
性別ですとか、きのう通告していたと思ったんですけれども、入っていないんでしょうか。それはまた後でしっかりお聞かせいただきたいと思います。
つまり、今御答弁いただいたのは、いわゆる根拠法の定めがきちんとある人数ですよね。その中に、先ほど申し上げた、いわゆる人件費として支払われているものではなくて、物件費で採用されている方々の数というのは入っていないんだろうというふうに思うんですね。やはり、こういう実態をしっかりと把握するところから、今後のこういった非常勤、臨時、このあり方を考えていく必要があるのではないかというふうに考えております。
民間の範たるべき公務サービスの分野でこのようなあいまいな雇用が継続されていいというふうに言う人はどなたもいないと思いますし、今、パート労働法を厚生労働委員会の方で審議いただいておりますけれども、そういった民間部門とのバランスをしっかりととらえながら、大変難しい問題であることは私も承知をしております、身分は公務員ですから非常に難しいということはわかるんですけれども、そこは、今の実態が既に難しいと言っているレベルからさらに上のところに上がってしまって、やはりもう一工夫、知恵を出すところまで今来ているんだということをぜひ御認識いただきたいなと思っています。
最後に一点、総務大臣、やはりこういった雇用形態による格差といいますか差別、これを是正するために、公務分野における均等待遇への取り組みが進められるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
■菅大臣
非常勤職員ですけれども、例えば国家公務員を見てみますと、事務的な補助のところ、あるいは保護司の方も4万9千人いる、あるいは審議会委員等、職務内容、勤務形態、それぞれ非常に多様でありますので、処遇を統一的に考えること
は非常に困難なのかなというふうに思っております。
いずれにしろ、こうした個々の実態を把握しているそれぞれの府省庁において、こうしたことに適切に対処していくべきかなというふうに考えます。
■西村(智)委員
ぜひお願いいたしまして、終わります。ありがとうございました。