■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、冒頭、午前中の憲法調査特別委員会での強行採決に抗議を申し上げたいと思います。国民投票法案、メディアもかかわる極めて重要な法案でありますが、NHKの予算案が審議されているこの日の午前中に強行採決されたということは、あってはならないこと、遺憾でありますので、今後こういうことがないようにぜひお願いをします。
それでは、質問に移ります。
まず、命令放送について伺いたいと思いますが、私も新潟出身の議員でありますので、拉致問題の解決には積極的にかかわっていきたいと非常に強い思いはございます。しかし、そこから先の手段、そしてまた、放送の自由とどう両立をとるかということは、多少大臣と考えが違うところがありまして、昨日、電波監理審議会に大臣が諮問されて、昨日のうちに答申が出されているようでありますけれども、これについても、知らないうちに出されてしまった、私たちは本当に青天のへきれきという思いでおるんですが、そのことについてはまた後でお伺いをしたいと思います。
まず、NHKの方に、昨年11月の10日に、ラジオ国際放送において放送の内容にまで命令が加わった、その後、一体放送がどういうふうに変化したのか、それをお伺いしたいと思っております。命令が具体的にどういうふうに反映されたのか、内容あるいはその頻度、どんなふうな変化があったのかということをお伺いしたいと思います。
■原田豊彦参考人(日本放送協会理事)
お答えいたします。
NHKは、ラジオの国際放送におきまして、この命令が出ました前も後も、報道機関といたしまして、自主的な編集判断のもとで拉致問題の放送に当たっているところでございます。
この命令が出されましたのは11月10日でございましたけれども、この日を基準に、前の2カ月それから後の2カ月、原稿の本数を比較いたしますと、後半の方が多うございます。
ただ、これは、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議が開催されたり、あるいは、APEC、アジア太平洋経済協力会議で拉致問題の解決への協力を日本が各国に訴えた、そういう首脳会議が開かれたり、あるいは拉致の被害家族による初めての国際会議が開催されたというふうなことによるもので、すべてNHKの判断できっちりお伝えをしているところでございます。
■西村(智)委員
今の御答弁ですと、地下核実験が行われたり、それから、実際に6カ国協議に関するニュースが多かったりしたので、全体としては北朝鮮に関するニュースの出稿本数がふえた、そういう御答弁でありましたし、しかも同時に、その編集はNHKの自主的な編集によって行われた、こういう御答弁だったと思います。
そこで、総務大臣にお伺いしたいんですけれども、総務大臣は、昨年の11月10日の命令変更後、つまり内容について変更を加えた後のNHKの対応について、どのように評価していらっしゃるのでしょうか。
■菅義偉総務大臣
当時も私は、編集権には言及しない、編集の自由というのは尊重する、当然だという話をさせていただきました。NHKより提出をされる週間の番組表だとか、あるいは実施報告書によれば、命令というのは適正に実施されているものじゃないかなという判断をいたしております。
■西村(智)委員
でも、今のNHKの答弁ですと、命令に適切にこたえたという表現は一言もなかったわけですよね。ところが、大臣は、自分の命令に適切にこたえてくれたのではないかと思っている、ここはやはり食い違っているんではないかなと思うんですね。つまり、大臣は、命令は出してみたものの、そしてNHKがそのようにこたえてくれたと思ってはいるけれども、NHKの方はどうもそういうふうには考えていない。これははたから見るとちょっとこっけいでありまして、大臣の命令はされっ放しだったのかなというふうに考えるわけなんです。
新年度のNHKの予算は、事業収入の区分で見ますと、国からの交付金収入ということで、昨年度が22億円であった交付金収入がことしは25億円ということでふえております。この内訳、大体ざっと内容もお伺いしたんですけれども、3億円がテレビ国際放送に対するものだということでありました。
そして、昨日、電波監理審議会の方に諮問が行われ、即日答申が行われたところの内容は、ラジオとテレビにそれぞれ命令が出される。ラジオについては昨年の11月の10日に出された命令書の内容と同一のものであって、テレビについては、放送内容の指定といいますか記載はなかったものの、初めてテレビ国際放送に対しての命令が出される、こういうことであります。これは極めて画期的なことであるし、重大なことだと私は考えております。
総務大臣にお伺いいたします。
今回の命令は、テレビに対しては内容についてまでの事項は含まれていなかった。今後、テレビ国際放送に対してもラジオと同様に内容についてまでの命令を行う可能性があるでしょうか、ないでしょうか。
■菅大臣
私、ラジオについて、ことしも拉致問題というものを特定させていただきました。それはまさに、自由を奪われて助けを求めている多くの日本人が北朝鮮にまだ生活をしています。帰ってこられた人たちの話の中でも、この放送によって、日本の家族や国民や、そして政府が、何年たってもまだ救出のために働いてくれる、そのことを知って生きていこうと思ったという、ある意味では非常に大きな希望を持てたと。そういう中から、私は、人道的問題であるということで、ラジオについてはことしも命令放送の中に入れさせていただきました。
また、国際放送でありますけれども、北朝鮮における日本人の拉致問題というのは、北朝鮮のテレビというのは、まずチャンネルが固定をされていて、放送しても受信をできないというふうになっておりますので、北朝鮮の拉致問題に留意するとの項目というものは入れなかったということです。
■西村(智)委員
いえ、私がお伺いしたのはそういうことではありませんで、テレビ国際放送についても個別の放送内容に踏み込んだ命令を行う可能性があるかどうか、一般論として伺っています。
■菅大臣
まず、御承知の放送法の第33条の1項において、総務大臣は協会に対し、放送区域、事項その他必要な事項を指定し国際放送を行うべきことを命じることができるとされておりまして、どのように命令をするかというのは、私は、その時々のやはり国際情勢というものを判断して適正に判断すべきものだというふうに思っています。
■西村(智)委員
今後行う意向はございますか。大臣、いかがですか。可能性はわかりました。
■菅大臣
現時点ではありません。
■西村(智)委員
昨年からの予算案と比べますと、交付金収入、国からNHKに交付されている交付金の額は22億円から25億円とふえている。しかも、ラジオ国際放送に対してだけではなくて、テレビ国際放送に対しても今回初めて命令が出されます。これは、はたから見ていますと、NHKに対するいわゆる国の関与が相当拡大してきているように見えます。
これは、3億円ですから、どのくらいの大きさなのか比較も難しいですが、初めの一歩。小さな一歩かもしれません。ですけれども、ここから先にこれがどういうふうになっていくのか。これはいろいろな想像があるでしょう。そうしますと、NHKというのは国のための放送なのか、あるいは視聴者のための放送なのか、そこを問われてくる、そういうおそれもなきにしもあらずであります。
NHKに対してお伺いをいたしたいんですけれども、命令放送に対して会長のお考えは現時点でどのようなものでしょうか。つまり、この間いろいろ、私たちの民主党の方でもヒアリングをしておりますけれども、この放送法第33条、命令放送の規定は、由来もはっきりしないし、なくてもよい、そういう項目ではないか、こういう意見もあるわけですね。
お伺いは2つです。つまり、制度として、命令放送という制度が要るのか要らないのか。NHKとしては、本当にこれは必要なものだと思っているのか、不必要だと思っているのか。そしてまた、それを1つ区切りといたしますと、個別内容の命令が行われることについて、これも必要か不必要か。この点について、会長のお考えをここは明確にいただきたいと思います。
■橋本元一参考人(日本放送協会会長)
お答え申し上げます。
国際放送あるいは命令放送という仕組みにつきましては、これは国の行政と大変かかわっていると思っております。命令放送自体というのは昭和27年から長い間行ってまいりましたけれども、国として海外に対して国の意思を伝えるために設けられている制度と心得ております。したがって、この是非あるいは制度そのものについては、やはり国民的な議論が大変必要なものだと考えております。
現在我々が行っております国際放送、NHKの国際放送自体につきましては、やはりNHKの編集権という中で情報発信を行っているわけでありますが、これは当然ながら、命令放送という、国として必要な命令放送の内容を加味した形で、一体的に、しかしNHKの編集権の中で放送しているという構図をとっております。
こういうふうに、NHKの自主的な編集権で行うことによってしっかりと海外でも広く聴取されているということでございますけれども、しかし、先ほど御指摘がありました個別事項というものを示していく、指定していくということになりますと、この点には、その内容いかんによってはやはりNHK自身の編集方針に制約を与える、あるいはそごを与えるという懸念も否定できないというふうに考えておりますので、この運用につきましてはくれぐれも慎重な上に慎重に行わなければならないというふうに考えております。
■西村(智)委員
答えていただいたのか、答えていただいていないのか、わからないんですけれども、答えていただいていないですよね。私は、制度として必要ですか、必要でありませんかというふうにお伺いしたんです。はっきりと答えていただけませんでしょうか、会長。どうですか。
■橋本参考人
今申し上げたように、国際放送には国として必要な国際放送というものがあろうと思います。それから、NHK自身が行っている国際放送というものもございます。これを、国として必要なものをどう行うのかという点で、やはり一体的に放送しているという構図が今行われているということで、国として必要な国際放送という点について、これが要るか要らないかという点については、NHKとしては、申し上げるというよりも、やはり国民的議論が必要だというふうに考えております。
■西村(智)委員
はっきりと制度として必要だという答えではない。同時に、不必要だというふうにも答えていただけなかったわけですけれども、必要だというような答弁でもなかったという理解をしております。
でも、会長は大変大事な、重要なことをおっしゃったと思います。国として必要な放送かどうか、これはやはり1つの論点立てとして重要なところだと思うんですね。
総務大臣、私は、放送法第33条というのは、やはりこれは見直した方がいいと思っております。大臣は今後、この命令を要望という文言に変えて、しかも、報道によりますと、応諾義務を付すというふうにお話しになっておられるようでありますけれども、応諾義務のついた要望というのは一体どういうことかなと思うわけです。少し時間がなくなりましたので、本当はこのこともお伺いしたかったんですが、恐らくそちらから出てくるであろう放送法改正案の議論にまたそちらは譲りたいと思います。
きょうは、最後に確認をさせていただきたいのは、先ほど会長が、国として必要な放送かどうか、こういうふうにおっしゃいました。仮にそれがあるんだとすれば、私は、今の33条の枠の中で、交付金というお金を入れて、NHKに、何だかわからない、薄めてやるのではなくて、諸外国でやられているように、例えば時間枠を買い取って、ここからここまでは政府の命令でやっています、そういう切り分け、これが必要ではないか、これから今後続けていくのだとすれば。政見放送ですとかいうような仕組みもありますし、先日は、拉致の関心を喚起し維持するための政府CMがつくられた、そういうこともありました。
ということからすると、そこは編集権の独立をしっかりと確保する、要するに、自主的編集権でやっているという部分と、それから政府が命令したのでやっているという部分がきっちりと切り分けられる、そういう仕組みが必要ではないかと思うんですけれども、大臣はどのようにお考えになりますか。
■菅大臣
この国際放送による命令というのは、日本の見解や国情をまさに外国に伝える、あるいはまた、海外同胞に災害、事件等を迅速に伝えられること、そういう中で、私は、拉致問題はまさに人道的な問題であるということでさせていただきました。この放送は、国として実施をすることが必要なものについて、みずからの意思で行うものであって、私は今後とも必要なものであるというふうに考えております。
この命令放送の実施に当たっても、何回も私は申し上げていますけれども、表現の自由やあるいは報道の自由が極めて重要であるという認識のもとに立って、従来からNHKの編集権にも配慮してきているところであります。
命令放送の部分を切り分けるのではなくて、NHKの自主放送と命令放送を一体として行うことによって国際放送が効果的に行われていく、私はこういうふうに考えています。
■西村(智)委員
NHKの予算、事業収入の6,348億円に占めるうちの交付金収入は25億円です。比率としては小さいかもしれません。ですけれども、確実にこれは昨年度と比べてふえております。ぜひそこは、政治と報道の切り分けといいますか、国による関与がないんだ、まさにそれがあるというような疑念が生じないような、そういうNHKの毅然とした態度と、そして、引き続きしっかりとこの委員会の中での答弁をしてくださるようにお願いをいたしまして、時間になりました、質問を終わります。
ありがとうございました。