■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の地方税法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、平成19年度地方財政計画について質問いたします。(拍手)
民主党は、今国会を格差是正国会と位置づけ、これまで自民党政権のもとで拡大した格差を是正し、国民の生活を向上させることを目指しております。
これに対して、安倍総理の格差問題への関心は低く、格差を感じている人もいるだろうと渋々認めても、まだ他人事のようです。率直に格差の存在を認めて、成長力底上げなどというまやかしの政策課題ではなく、格差問題への対応策を早急に示すべきではありませんか。本日議題となっている2法案及び地方財政計画も、格差問題への対応策を全く示していない代物です。
安倍内閣を含めた自公政権は、格差是正どころか、格差拡大に拍車をかけかねない措置を着実に実行してきました。これまで、年金課税の強化など、個人に対する増税を繰り返し行い、ことしの1月からは所得税の定率減税が廃止、6月からは住民税も続く予定です。
安倍総理の就任以来初めてとなる税制改正でも、企業に対する減税が中心で、個人に対する減税は小粒なものにとどまっております。当然、今回の地方税法にもこれといった施策は見当たりません。安倍総理は、今後も個人負担にツケを回しながら企業減税を行うのですか。総理の答弁を求めます。
次に、自治体間の財政格差への対応策について質問します。
景気回復と言われますが、地方の景気は依然として低迷しております。過疎地など条件に恵まれない地域などでは、税財源を確保することが切実な問題となっているんじゃありませんか。そうした中で、富める自治体とそうでない自治体との間の財政格差の問題が指摘をされております。
過去数年間、自民党政権は、中央政府の赤字を地方につけかえるなど、地方に対して厳しい財政運営を求めてきました。平成16年度から3年間の地方交付税及び臨時財政対策債削減額は5兆1千億円に上ります。平成19年度予算でも、自治体が受け取る地方交付税の総額は、前年度に比べ、約7千億円も削減されております。そして、地方財政計画の規模そのものは、国の一般会計が2年ぶりの増額となるにもかかわらず、6年連続で前年度を下回っているのです。
昨年12月に成立した地方分権改革推進法には、民主党の働きかけにより、「地方税財源の充実確保」という文言が盛り込まれました。安倍総理は、この法律に基づいて、今後どのような方法で自治体の税財源を確保しようとしているのでしょうか。特に財政力の弱い団体に対する方策についてお答えください。総理の明確な答弁を求めます。
地方の税財源の充実確保が喫緊の課題となっている中、政府は、地方交付税の一部を人口と面積を基準に配分する、いわゆる新型交付税を導入するとしています。これは、経済財政諮問会議及び地方分権21世紀ビジョン懇談会での議論を経て浮上したものですが、自治体関係者のだれ1人として直接この場での議論に加われませんでした。懇談会の座長だった大田大臣は、とうとう議事録を公開しませんでした。
言うまでもなく、交付税は財政調整機能を担っています。地方自治体が受け取る交付税の額を大幅に変え、地方の財政を混乱させてしまうようなことがあってはなりません。
総務省は、新型交付税導入による交付税への影響額について、都道府県分については明らかにしていますが、市町村分についてはいまだに具体的な数値を明らかにしていません。市町村が受け取る交付税の額はどのように変わるのですか。また、市町村に関する具体的な試算結果をいつまでに国会に対して提示するのですか。総務大臣の答弁を求めます。(拍手)
政府は、頑張る地方応援プログラムなるものを実施し、政府が頑張ったと認めた自治体には、頑張りの成果を交付税の算定に反映させるとしています。(発言する者あり)黙ってください。しかし、政府に本当に求められているのは、頑張りたくても頑張れない自治体の現状を現場第一主義で把握し、自治体間の格差を是正するため、財政力の弱い過疎地など、頑張っても結果を出しにくい自治体に対して何らかの支援を行うことでしょう。
ところが、政府がそうした自治体現場の要望にまるきりこたえていないことは、先般スタートした頑張る地方応援懇談会の初回、現役首長の皆さんから異論が出されたことからでも明らかです。2月17日には私の地元新潟市でも懇談会が開催されましたが、人口流出が続いている地方は頑張っても成果を出せず、都会のひとり勝ちになるのではないかなど、運用方法を懸念する意見が続出したということです。
そもそも、頑張る地方応援プログラムという、ごろだけはいい施策の内容が全然はっきりしません。総務省は、農業産出額、出生率など九つの指標を頑張りの成果として交付税算定する方針だけは示していますが、地方自治体がどれだけ頑張ったら交付税算定にどれだけプラスされるのかという具体的な基準を全く示していません。
そこで、総務大臣に伺います。
例えば、たまたま前年度より少しだけ指標の数字が上昇したような場合でも、頑張ったと評価されて交付税算定にプラスされるのですか。また、人口減少のペースダウンに成功した自治体は、指標自体がプラスにならなくても評価されるのでしょうか。プログラムの内容が私たちや自治体に伝わるよう、総務大臣に具体的な答弁を求めます。
頑張る地方応援プログラムの中には、特定分野の事業の頑張りを地方に求めるものが含まれています。つまり、本来使い道を限定しないで交付すべき地方交付税を、地方自治体が特定の事業を行った場合にお金を出す補助金のように扱うものと言えます。これは下手をすると、地方の自由度を高めるという地方分権の流れに逆行するものとなりませんか。2月13日の予算委員会で安倍総理は、地方に対して、国が余計なことに口出しをしないという仕組みもつくっていかなければいけないと答弁していますが、このプログラムは総理の答弁と矛盾しませんか。総理の答弁を求めます。
また、このプログラムには、自治体が何らかのプロジェクトを実施することを国に申し出ると、1年間で1自治体当たり3千万円まで支給される措置が盛り込まれています。プロジェクトといっても具体的な定義はなく、自治体が申請すれば、ほぼ自動的にお金がもらえる仕組みです。竹下内閣で行われたふるさと創生資金を思い出したのは私だけでしょうか。安倍内閣が古い自民党に回帰していることを実にわかりやすく示していますね。しかし、これは単なる地方へのお金のばらまきではないのですか。総理の答弁を求めます。(拍手)
次に、交付税特別会計借入金の償還計画について質問します。
政府は、交付税特別会計借入金のうち地方負担分の約34兆円について、20年間の償還計画を定めた上で償還を実施するとしています。しかし、償還計画は、償還額を毎年10%ずつふやし、計画の最終年度である平成38年度に約3.5兆円を償還するという非現実的なものです。この計画は、今後我が国が経済成長を続け、税収を伸ばし続けるといういわゆる上げ潮路線を前提につくられていますが、今後20年間、経済成長し続けるという保証はどこにもありません。単に償還を先送りする無責任な計画です。こういうのを絵にかいたもちと言うのを御存じですか。本当にこのような計画で償還可能かどうか、総務大臣の明確な答弁を求めます。
次に、児童手当の財源について質問します。
政府は、今回、児童手当の支給額を引き上げるとしています。対象はゼロから2歳の乳幼児のみ、また、支給額を引き上げるといっても、第1子と第2子の支給額を第3子に合わせて現在の月5千円から1万円に引き上げるだけです。それだけの措置で子供を安心して産み育てられる社会を構築できるのか、甚だ疑問です。
また、この措置の財源のうち地方負担分については、地方特例交付金を増額することで工面するとしております。しかし、これは平成19年度に限った措置であり、与党の税制改正大綱によれば、平成20年度以降の財源は「税制の抜本的・一体的改革の中で検討する。」とされています。政府は、平成20年度以降、どのような財源から児童手当を支給しようとしているのですか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
柳澤厚生労働大臣は、産む機械、子供2人以上が健全という発言について弁解したとき、少子化問題にしっかり取り組むと決意を述べておられましたよね。今、その決意が本物だったかどうかが問われているのですから、平成20年度以降の財源の見通しもきちんと示してください。
最後に一言申し上げます。
これからスタートする第2期地方分権改革は、中央政府の権限を温存したい官僚や族議員などから、これまで以上に激しい抵抗が予想されます。しかし、総理からは、そうした抵抗を突破して分権をなし遂げるという明確なメッセージも熱意も全く感じられません。それは、新年度の予算案、法案、いずれにも真の分権改革につながるようなものがなく、頑張る地方応援プログラムや新型交付税などの言葉の目新しさだけでお茶を濁していることからも明らかです。
総理が分権改革に向けての熱意と明確なリーダーシップを示せない以上、民主党はいつでもそれにかわる用意があることを述べ、私の質問といたします。
ありがとうございました。(拍手)
■安倍晋三内閣総理大臣
西村議員にお答えいたします。
税制改革についてのお尋ねがありました。
年金課税の見直しについては、世代間及び高齢者間の公平を図る観点から、負担能力に応じた税負担を高齢者に求めることとしたものであり、その際、標準的な年金以下の収入のみで暮らす高齢者世帯については、同水準の給与収入を得ている現役世代よりも軽い税負担となるよう配慮を行っているところであります。
定率減税は、平成11年当時、景気対策として導入された暫定的な負担軽減措置であり、こうした導入の経緯や経済状況の改善を踏まえ、半減、廃止をしたものであります。
また、平成19年度税制改正においては、我が国経済の成長基盤を整備する観点から減価償却制度の抜本的な見直しを行うとともに、住宅・土地税制の見直しなど国民生活に配慮した措置を講じています。これにより、経済の活性化が図られ、さらには家計部門にも好ましい影響があるものと考えられます。
いずれにせよ、今後の税制改革においては、所得税、法人税など各税目が果たすべき役割を見据えながら、税体系全般にわたる見直しを行っていく必要があると考えております。
地方税財源の充実確保についてのお尋ねがありました。
今後、地方分権改革を進めるため、国と地方の役割分担や国の関与のあり方を徹底して見直してまいります。その上で、役割分担に応じた地方税財源の充実確保等の観点から、交付税、補助金、税源配分の見直しの一体的な検討を進めるとともに、地方公共団体間の財政力の格差の縮小を目指してまいります。
その際、財政力の弱い地域にあっても、一定水準の行政サービスを提供することができるよう、地方交付税などにより適切に対応してまいります。
頑張る地方応援プログラムは地方分権の流れに逆行するのではないかとのお尋ねがありました。
頑張る地方応援プログラムは、特定の事業に限ることなく、魅力ある地方を目指す自治体の取り組みを幅広く支援するものであります。また、交付税は使途を特定されない一般財源であり、このプログラムを含め、全体として算定された交付税の使途は自治体の創意工夫にゆだねられます。したがって、地方の自由度を高める地方分権の流れに逆行するとの御指摘は当を得ず、また、予算委員会での私の答弁とは何ら矛盾はいたしておりません。
頑張る地方応援プログラムは地方への自動的な資金の付与ではないかとのお尋ねがありました。
頑張る地方応援プログラムは、地方行革や地場産品のブランド化など、地方独自のプロジェクトに取り組む自治体に対して、その取り組み経費についてまず支援を行います。このプログラムの基本は、行政改革の実績を示す指標や製造品出荷額などの客観的な成果指標を用いて交付税の割り増し措置を行うものであり、地方への金のばらまきとの御指摘は当たりません。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
■菅義偉総務大臣
西村議員から3つ質問がありました。
まず、新型交付税についてであります。
新型交付税の導入に当たっては、各地方公共団体の財政運営に支障が生じないように、変動額を最小限にとどめることにいたしております。
現在、各地方公共団体と試算結果についての確認を行っており、確認ができ次第、速やかに試算結果を公表いたします。
次に、頑張る地方応援プログラムについてお尋ねがありました。
頑張る地方応援プログラムの交付税の支援措置として、全国的かつ客観的な指標が全国標準以上に向上した地方公共団体に対して、その程度に応じ、交付税の割り増し算定を行います。
具体的な算定方法については、地方公共団体の御意見も十分に踏まえながら、例年7月末に行う普通交付税の決定まで検討いたしてまいります。
最後に、交付税特別会計借入金の償還計画についてお尋ねがありました。
交付税特別会計借入金は、交付税の持続可能性の確保の観点から、できる限り早期に償還することが必要であります。
このため、現在、平成38年度までとしております償還期間を変更しないこととし、また、平成19年度の一般財源総額確保の観点も踏まえ、平成18年度補正予算における償還額5,336億円から毎年度段階的に増加する形で償還計画を策定したところであります。
今後、安定的な経済成長に努めつつ、歳出の効率化努力や歳入確保の努力を続けていくことにより、計画に沿った償還に努めてまいります。
以上です。(拍手)
■柳澤伯夫厚生労働大臣
西村議員にお答え申し上げます。
私に対しましては、児童手当の乳幼児加算に関する平成20年度以降の公費財源につきましてお尋ねでございます。
平成19年度に乳幼児加算をしましたけれども、その財源は、19年度予算の中で、いわば基金の取り崩しで手当てをした。したがいまして、20年度以降は財源がどうなるのかという観点の御質問でございます。
西村議員も御指摘をいただきましたように、平成19年度、与党の税制改正大綱におきまして、少子化対策のために国、地方を通ずる必要な財源の確保について、税制の抜本的、一体的改革の中で検討するとされておりまして、このことを踏まえ、政府・与党におきまして今後検討を進め、地方の負担分も含めて適切に対応してまいる所存でございます。御心配は御無用でございます。(拍手)